落ちこぼれの魔獣狩り

織田遥季

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崩壊、そして

運命の日〈序〉

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 森の中に、狩人がひとり。

 闇よりも黒い髪をなびかせる彼、レオンは、静かに矢をつがえる。

 狙う先は一匹の野兎。

 意識を集中させるため、静かに、されど大きく息を吸い込んだ。瞬間――



「――ああっ!」



 気配を感じ取ったのか、野兎は怯えるように逃げ出してしまった。

 思わず、大きなため息が洩れる。



「ばれてないと思ったんだけどな……」



 レオンが天を仰ぐと、それは既に赤みがかっていた。



「仕方ない。そろそろ帰るか……」





 ブレンダム山地の辺境にある小さな町、テディーレ。そこがレオンの住む町だ。

 レオンは幼い頃、妹とともに教会に捨てられた。だから、親のことはあまり憶えていない。



「よお、レオン! 狩りの帰りか? お疲れさん」

「はは……ありがとうございます」



 だけど、こうして気さくに接してくれる町のみんなのおかげで、さみしさはあまり感じなかった。だからこそ、レオンはテディーレの町が大好きだった。

 そして、そんな町のそのまた外れにある小さな教会の横。そこにレオン達の家はあった。





「ただいま……」

「おっ、兄ちゃんおかえり! ……家を出た時と同じ荷物ってことは今日も収穫なし?」



 帰ってきたレオンを出迎えたのは、レオンと同じ黒髪の少女、メル。彼女がレオンにとって唯一の肉親であり、なにより大事な妹だ。



「ま、まあな……だめな兄でごめんな、メル」

「ううん、気にしないで。兄ちゃんの分までアタシが狩るからさ!」



 そういってメルは胸を張る。

 それに対しレオンは「そうか、ありがとう」と返す他なかった。



 実際、メルが大口をたたいているというわけではまったくない。彼女はその並外れた身体能力を武器に、いつも好きな数の獲物をしとめてみせる。

 それに対してレオンは、獲物を狩ったことが一度もなかった。

 もちろん努力はしている。弓の腕や身体能力も、メルほどではないが優秀な部類だ。しかし、なぜかいつも獲物に逃げられてしまうのだ。



「……なんでかなあ」

「おや? レオン、どうかしましたか」



 ミスト神父が心配そうにレオンの顔を覗き込む。捨てられていたレオンとメルを拾い、育ててくれた恩人が彼だ。レオンもメルも、ミスト神父のことは父親のように慕っている。



「ああ、いや、なんでもありませんよ。それより、なんだか外が騒がしくありませんか?」



 レオンはふと、風に乗って聞こえてくる、叫び声のような音に気づいた。



「え? ああ、言われてみればなんだか騒がしいような……喧嘩でもしているのでしょうか。少し様子を見てきます」



 そう言って、ミスト神父がドアノブに手をかける。



「あのっ、俺も一緒に行きます」



 レオンはなんとなく嫌な予感がして、声をかける。

 だけどミスト神父は微笑んで、それを断った。



「ありがとう。だけど、大丈夫。少し様子を見てくるだけです。二人は、夕食の準備を進めておいてください」



 そう言い残して、ミスト神父はうす暗い外へと出ていった。
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