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崩壊、そして
〈殺気〉
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「〈殺気〉スキル……?」
「ああ。おそらくそれがお前の第二スキルだ。〈威嚇〉系スキルの最上位と呼ばれている。相手を怯えさせる効果はもちろん、場合によっては魔法やスキルの効果を打ち消す効果を持つ」
「そんな強力なスキルが俺に……!」
レオンは百人力を手に入れた思いだった。この〈殺気〉スキルがあれば“奴”の〈魔獣王〉スキルを打ち消せる!
「ただし」
抑揚のない声でシンピがレオンの熱を冷ます。
気づけば、シンピはいつもの無表情に戻っていた。
「殺気を消せなければ不意打ちができないなどといった欠点がある上に、“奴”がもっと強く〈魔獣王〉スキルをかけていたら解除は難しかったはずだ……同じ手が二度通じる相手だと思わないほうがいい」
シンピの忠告に、レオンは冷静さを取り戻し、ひとつ頷いた。
「利口だな。それじゃあまずお前には、殺気をコントロールできるようになってもらう」
「殺気をコントロール?」
「そうだ。それじゃあリンネ、お前も手伝ってくれ」
「わかりました」
脇で見守っていたリンネがレオンの前に出る。美しく凛と立つその姿は正に威風堂々という言葉がぴったりだった。
「よし。レオン、リンネを殺そうとしてみろ」
「……は!?」
シンピの言葉にレオンは困惑を隠せない。それはついさっきまで美しく仁王立ちしていたリンネも同じであった。
「師匠! なに言ってるんですか!?」
「なにって言った通りだ。実際に殺しにかかれというわけじゃない。殺そうという気持ちを作れということだ」
その説明にレオンは納得した。
殺気のコントロールとはつまり、〈殺気〉を自由自在に発動できるようになることだ。
シンピはそのために、まずはリンネに向けて〈殺気〉を発動させろと言っているのだ。
しっかりと発動させることができればリンネが感じ取る。
リンネには付き合ってもらって申し訳ないが、シンプルでありこの上ない修行だ。
「わかりました。それじゃあリンネさん、なにか感じ取れたら教えてください」
「えっ、ちょっと……!」
レオンは神経をリンネに集中させる。
リンネを獲物に見立てる。
そして、今から殺す。そう頭の中で念じ続けた。
そしてそれを続けて一分ほどが経った。
「……どう、ですか?」
「どうって……別になんともないわよ。あんた、睨んでるだけじゃない」
リンネにそう言われて、レオンの力がガクリと抜ける。
「ダメかあ……!」
それをジッと見ていたシンピが口を開いた。
「一朝一夕で身につくものではないということだな。それじゃあ私は部屋に戻る。リンネ、悪いが夕飯の準備まではレオンの修行に付き合ってやってくれ」
「わかりました! 師匠、今日の夕食はなにがいいとかありますか?」
「ん……なんでもいいよ。リンネに任せる」
それだけ言うと、シンピは家に戻っていった。
シンピの姿が見えなくなると、リンネは大きくため息をついた。
「仕方ないわね、師匠の頼みだからあんたに付き合ってあげるわ。その代わり、夕飯の献立一緒に考えてよね!」
ああ、夕飯の案がなかったんだな、とレオンは気づいた。
しかしその気持ちは痛いほどわかるので、言わないでおいた。
「もちろん! よし、それじゃあいくぞ!」
その日、夕暮れになるまでレオンはリンネを睨み続けたが、〈殺気〉スキルが発動することは一度もなかった。
「ああ。おそらくそれがお前の第二スキルだ。〈威嚇〉系スキルの最上位と呼ばれている。相手を怯えさせる効果はもちろん、場合によっては魔法やスキルの効果を打ち消す効果を持つ」
「そんな強力なスキルが俺に……!」
レオンは百人力を手に入れた思いだった。この〈殺気〉スキルがあれば“奴”の〈魔獣王〉スキルを打ち消せる!
「ただし」
抑揚のない声でシンピがレオンの熱を冷ます。
気づけば、シンピはいつもの無表情に戻っていた。
「殺気を消せなければ不意打ちができないなどといった欠点がある上に、“奴”がもっと強く〈魔獣王〉スキルをかけていたら解除は難しかったはずだ……同じ手が二度通じる相手だと思わないほうがいい」
シンピの忠告に、レオンは冷静さを取り戻し、ひとつ頷いた。
「利口だな。それじゃあまずお前には、殺気をコントロールできるようになってもらう」
「殺気をコントロール?」
「そうだ。それじゃあリンネ、お前も手伝ってくれ」
「わかりました」
脇で見守っていたリンネがレオンの前に出る。美しく凛と立つその姿は正に威風堂々という言葉がぴったりだった。
「よし。レオン、リンネを殺そうとしてみろ」
「……は!?」
シンピの言葉にレオンは困惑を隠せない。それはついさっきまで美しく仁王立ちしていたリンネも同じであった。
「師匠! なに言ってるんですか!?」
「なにって言った通りだ。実際に殺しにかかれというわけじゃない。殺そうという気持ちを作れということだ」
その説明にレオンは納得した。
殺気のコントロールとはつまり、〈殺気〉を自由自在に発動できるようになることだ。
シンピはそのために、まずはリンネに向けて〈殺気〉を発動させろと言っているのだ。
しっかりと発動させることができればリンネが感じ取る。
リンネには付き合ってもらって申し訳ないが、シンプルでありこの上ない修行だ。
「わかりました。それじゃあリンネさん、なにか感じ取れたら教えてください」
「えっ、ちょっと……!」
レオンは神経をリンネに集中させる。
リンネを獲物に見立てる。
そして、今から殺す。そう頭の中で念じ続けた。
そしてそれを続けて一分ほどが経った。
「……どう、ですか?」
「どうって……別になんともないわよ。あんた、睨んでるだけじゃない」
リンネにそう言われて、レオンの力がガクリと抜ける。
「ダメかあ……!」
それをジッと見ていたシンピが口を開いた。
「一朝一夕で身につくものではないということだな。それじゃあ私は部屋に戻る。リンネ、悪いが夕飯の準備まではレオンの修行に付き合ってやってくれ」
「わかりました! 師匠、今日の夕食はなにがいいとかありますか?」
「ん……なんでもいいよ。リンネに任せる」
それだけ言うと、シンピは家に戻っていった。
シンピの姿が見えなくなると、リンネは大きくため息をついた。
「仕方ないわね、師匠の頼みだからあんたに付き合ってあげるわ。その代わり、夕飯の献立一緒に考えてよね!」
ああ、夕飯の案がなかったんだな、とレオンは気づいた。
しかしその気持ちは痛いほどわかるので、言わないでおいた。
「もちろん! よし、それじゃあいくぞ!」
その日、夕暮れになるまでレオンはリンネを睨み続けたが、〈殺気〉スキルが発動することは一度もなかった。
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