落ちこぼれの魔獣狩り

織田遥季

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地獄への同伴者

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 時は少し遡り出発前。三人はララについての話を聞いていた。

「魔獣と人間のハーフ……!?」

 レオンが聞き返すと、ララはそれに頷いた。

「うん。わたしのママは人間なんだけどね、パパはでっかいおおかみなんだって。はかせがいってた」

 そう話すララに特別落ち込んでいる様子はなかった。
 少女にとって、この恐るべき事実は当たり前のことでしかないのだ。

「……そうか。それじゃあ行くぞ。ララ、研究所までの案内を頼む」

 いつも通りの無表情でシンピが案内を促す。
 リンネとレオンはなんていえばいいのか分からず、ただ黙ってそれについていくことにした。




 研究所はいかにも厳重な警備体制が敷かれていた。
 周囲にはオークやワーウルフが徘徊しており、入り口の扉固く閉ざされている。

「……レオン、〈殺気〉と〈魔獣王〉を試してほしいんだができるか?」

 シンピの問いに頷き、レオンは近くにいたオークの前に出ていった。
 オークの視線がレオンに集まる。

「まずは〈殺気〉……!」

 レオンは短剣を抜き、その意識をオークに集中させる。
 するとオークが目に見えて怯んだ。

――今だ

『周りの魔獣を殺せ』

 レオンの命令を聞いたオークが他のオークへと突撃していく。
 成功だ。

「ふう……師匠、うまくいきましたよ」

 声をかけると、シンピとリンネ、そしてララが茂みから姿を現した。

「上手く扱えるようになったな、レオン。それじゃあ奴が他の魔獣たちの気を引いているうちに入り口を突破するぞ」

 シンピの指示に、一行は入り口に目を向ける。
 入り口を守っているのは人間の兵士二人。
 それぞれ上等な装備を身に着けており、魔獣への恐怖などは見られない。
 また、いくらか距離があるためか、こちらには気づいていない様子だ。

「師匠、“奴”には人の部下もいるんですか……?」

「ああ。“奴”はドロップアウトした人間や亜人なんかも取り込んでいる。リンネ、“奴”に加担している時点でどうしようもない悪人ばかりだ。容赦することはない」

「……はい」

「それじゃあレオン。リンネと二人で見張りを倒してこい。殺しても構わん」

「わかりました」

 返事をして、レオンは敵の方へと歩き出す。
 遅れてリンネもそれについてきた。

「ちょ、ちょっとレオン……!」

「なんだ」

 振り返ると、リンネはなんとも苦しそうな表情を浮かべていた。
 手は小さく震えている。

「……怖いのか」

 訊ねるとリンネはキッと顔を上げた。

「そりゃそうに決まってるでしょ! だって人間よ!? 殺したくないって思うのが普通じゃないの!? あんたは……」

 リンネが言葉に詰まる。
 その目じりには涙が溜まっていた。

「あんたは……怖くないの……?」

 そう問いかけるリンネの声に力はない。
 きっとリンネもわかっているのだ。
 彼らは打ち倒さなければ悪なのだということを。
 しかし、優しい彼女はまだ割り切ることができていなかった。

「……俺も、怖い」

 呟くように、自分に言い聞かせるようにレオンが答える。

「だけどな、決めたんだよ。魔獣どもを……“奴”を狩るって」

 リンネがまっすぐにレオンを見つめる。
 彼女の目に映るレオンの姿はどこか悲しげで、吐く言葉はまるで呪いのようにも思えた。

「だから、俺は迷わない。何があってもな」

 リンネが涙を拭う。
 この人は、レオンはきっと、ひとりで地獄に向かおうとしている。

――だけど、そんなの

「さみしすぎるよ」

「……? すまない。何か言ったか?」

「なんでもないわよ。いいわ! あんたがその気なら私も付き合ってあげる……地獄の底まで、ね」

 リンネの意外な心変わりに、レオンは驚きを隠せなかった。

「いいのか?」

「いいって言ってんの! いいから早くやるわよ。あんまりもたもたしてるとあいつらが異変に気づくわ」

「あ、ああ……」

 リンネは歩き出す。
 彼女の足どりに、もう迷いはなかった。
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