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「『爆裂』」
シンピが呪文を唱えると、右の手で触れていた扉が吹き飛ぶ。
爆裂系魔法の基礎となる呪文だが、通常のそれとは威力が段違いだ。
半ば粉微塵となった扉の先は長い廊下のようになっており、少なくない数の魔獣が控えていた。
一行はそれぞれが戦闘態勢に入る。
「……いくぞ」
魔獣たちを倒して進んだ先では、通路が二つに分かれていた。
入口を過ぎると襲撃は止んだので、あれで全てだったのかもしれない。
「ララ、どちらに進めばママがいるんだ?」
レオンが聞く。
「えーっと……こっち!」
ララが指差したのは右手の通路だった。
「それじゃあこっちは?」
左側を指差してリンネが訊ねると、ララは首を横に振った。
「わかんない。そっちいったことない」
「そう……」
なにがあるのかわからない左側に一抹の不安を覚えながら、一行は右に進むことにした。
しかしレオンはなんとなく気になって、少し後ろ髪を引かれた。
「……」
「どうしたレオン。置いていくぞ」
「あっ、師匠すいません。今行きます」
選んだ通路の途中にはいくつかの扉があった。
「ララ、これはなんの部屋なんだ?」
「それは……みんなのへや」
「みんな?」
「うん……わたしとおなじ『しっぱいさく』のへや。わたしは『まし』だからままといっしょにいれたけど、ここにいるこたちはだめなんだって。はかせがいってた」
「……そうか」
レオンは胸が痛かった。
『はかせ』に、“奴”に対する怒りと憎悪が溢れて仕方がなかった。
――殺す
「でかい扉があるわよ!」
リンネが通路の先を指差す。
確かにそこには、他よりも大きな扉があった。
「そこにままがいる!」
そのララの言葉を聞くや否や、シンピが呪文を唱えた。
「『爆裂弾』」
シンピの右手から炎にも似た球が現れ、扉に向かって飛んでいく。
そして弾丸は扉に着弾した瞬間に弾け、先ほどの『爆裂』と同様の爆発を起こした。
「ちょ、師匠! 中に人がいるかもしれないんですよ!?」
「大丈夫だリンネ。ちゃんと調整はした」
扉が崩れ、部屋の中が見えてくる。
その先にあったのは石造りの広く無機質な部屋、そしてその中央に居座る一体の巨大な黒毛の狼だった。
「魔獣……!」
黒の中に怪しく光る赤の瞳。
異常に発達した鋭い牙。
そしてなにより、漂ってくる強烈な血の臭いが凶悪な魔獣であることを強く主張していた。
「よく来たねぇ侵入者ども。それと一八番」
声とともに、魔獣の影から一人の男が顔を出す。
禿げ散らかった頭と下種な笑顔が相まってなんとも気色が悪い。
「は、はかせ……」
ララは男から逃げるようにレオンの陰に隠れた。
――こいつが博士か
「失敗作の分際で面倒をかけやがって……せっかく『ママ』と一緒に暮らさせてやったのになぁ……よほど教育が悪かったんだろうなぁおい!」
急に声を荒げた博士が足元のなにかを蹴りつける。
それにつられて一行が視線を下げると、そこには一人の女性が服も着らずうずくまっていた。
「まま!」
ララが声を上げる。
しかし博士はそれを気にも留めず女性を蹴り続けた。
「このくそ女がぁ! てめえのせいであいつは戦わねえどころか逃げたじゃねえか! どうしてくれんだこのボケが!」
「やめて! はかせ、やめてよぉ!」
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
謝る女性の声を聞いて、シンピの表情が一変した。
それは『許せない』というよりも正に『信じられない』といった表情だった。
彼女はゆっくりと口を開き、呟いた。
「……リディア?」
シンピが呪文を唱えると、右の手で触れていた扉が吹き飛ぶ。
爆裂系魔法の基礎となる呪文だが、通常のそれとは威力が段違いだ。
半ば粉微塵となった扉の先は長い廊下のようになっており、少なくない数の魔獣が控えていた。
一行はそれぞれが戦闘態勢に入る。
「……いくぞ」
魔獣たちを倒して進んだ先では、通路が二つに分かれていた。
入口を過ぎると襲撃は止んだので、あれで全てだったのかもしれない。
「ララ、どちらに進めばママがいるんだ?」
レオンが聞く。
「えーっと……こっち!」
ララが指差したのは右手の通路だった。
「それじゃあこっちは?」
左側を指差してリンネが訊ねると、ララは首を横に振った。
「わかんない。そっちいったことない」
「そう……」
なにがあるのかわからない左側に一抹の不安を覚えながら、一行は右に進むことにした。
しかしレオンはなんとなく気になって、少し後ろ髪を引かれた。
「……」
「どうしたレオン。置いていくぞ」
「あっ、師匠すいません。今行きます」
選んだ通路の途中にはいくつかの扉があった。
「ララ、これはなんの部屋なんだ?」
「それは……みんなのへや」
「みんな?」
「うん……わたしとおなじ『しっぱいさく』のへや。わたしは『まし』だからままといっしょにいれたけど、ここにいるこたちはだめなんだって。はかせがいってた」
「……そうか」
レオンは胸が痛かった。
『はかせ』に、“奴”に対する怒りと憎悪が溢れて仕方がなかった。
――殺す
「でかい扉があるわよ!」
リンネが通路の先を指差す。
確かにそこには、他よりも大きな扉があった。
「そこにままがいる!」
そのララの言葉を聞くや否や、シンピが呪文を唱えた。
「『爆裂弾』」
シンピの右手から炎にも似た球が現れ、扉に向かって飛んでいく。
そして弾丸は扉に着弾した瞬間に弾け、先ほどの『爆裂』と同様の爆発を起こした。
「ちょ、師匠! 中に人がいるかもしれないんですよ!?」
「大丈夫だリンネ。ちゃんと調整はした」
扉が崩れ、部屋の中が見えてくる。
その先にあったのは石造りの広く無機質な部屋、そしてその中央に居座る一体の巨大な黒毛の狼だった。
「魔獣……!」
黒の中に怪しく光る赤の瞳。
異常に発達した鋭い牙。
そしてなにより、漂ってくる強烈な血の臭いが凶悪な魔獣であることを強く主張していた。
「よく来たねぇ侵入者ども。それと一八番」
声とともに、魔獣の影から一人の男が顔を出す。
禿げ散らかった頭と下種な笑顔が相まってなんとも気色が悪い。
「は、はかせ……」
ララは男から逃げるようにレオンの陰に隠れた。
――こいつが博士か
「失敗作の分際で面倒をかけやがって……せっかく『ママ』と一緒に暮らさせてやったのになぁ……よほど教育が悪かったんだろうなぁおい!」
急に声を荒げた博士が足元のなにかを蹴りつける。
それにつられて一行が視線を下げると、そこには一人の女性が服も着らずうずくまっていた。
「まま!」
ララが声を上げる。
しかし博士はそれを気にも留めず女性を蹴り続けた。
「このくそ女がぁ! てめえのせいであいつは戦わねえどころか逃げたじゃねえか! どうしてくれんだこのボケが!」
「やめて! はかせ、やめてよぉ!」
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
謝る女性の声を聞いて、シンピの表情が一変した。
それは『許せない』というよりも正に『信じられない』といった表情だった。
彼女はゆっくりと口を開き、呟いた。
「……リディア?」
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