落ちこぼれの魔獣狩り

織田遥季

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ブレンダムにて

ドワーフについて

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「まだ着かないの? もう結構歩いたよ」

 シンピの家を出発して四日目。
 ララが何度目かの問いを投げかける。
 リンネは律儀にも地図に目を落としてから、半ばうんざりしたように答えた。

「まだしばらくかかるわね……明日着くかどうかってとこじゃないかしら」

 それを聞いて肩を落としたのはララだけではなかった。
 無理はない。
 レオン達は切り立った断崖の上を歩いているのだ。
 おまけに遭遇する魔獣だって少なくない。
 こうも気を張っていると、どうしても疲労を隠せなくなってくる。

「ベル、なにか面白い話とかないの?」

「面白い話ですか? そうですねぇ……面白いかはわからないですけど、私たちドワーフの話でもしましょうか。ドワーフの里であるブレンダムに行くなら聞いていて損はないでしょう」

「ああ、たしかにな。是非とも頼むよ」

 レオンに促され、ベルがドワーフについての話を始める。

「皆さんご存じだとは思いますが、ドワーフという種族の特徴として第一に、強力な筋力が挙げられます」

 ベルが言うと、レオンが少し苦い顔をしてみせる。
 以前ベルと腕相撲をして完敗したことを思い出したからだ。

「ベルもすごかったもんな……」

「ははは。私はハーフドワーフなのであの程度ですが、純血のドワーフはもっとすごいですよ~」

 レオンの表情がさらに渋いものになる。
 種族による違いというものはなかなかに残酷なようだ。

「その他の特徴としては職人気質で集中力のある方が多いですね。優秀な鍛冶職人が多いのはこの特徴によるものが大きいのかもしれません」

「あ~、たしかに。ベルのお父さんも何というか……職人気質よね」

「あはは……あれは頑固なだけかもしれませんが、たしかにドワーフらしいドワーフではあるかもしれませんね」

 ベルは軽く苦笑してみせる。
 たしかにカモメ亭の主人は低身長で筋骨隆々、長い髭も蓄えていておまけに頑固だから、彼こそが世間一般で想起されるドワーフのイメージそのものなのかもしれない。

「それと、誠実で真面目な人が多いんですよ!」



 岩山の崖上でベルがそう言った次の日、レオン達はブレンダムにある鍛冶場に来ていた。
 壁や屋根はボロボロで辺りには酒樽が散乱している、一目には鍛冶場とわからないような家屋。
 そんな場所で、『誠実で真面目』なはずの女主人ドワーフはニヤリと笑い、言い放った。


「お前が抱いてくれるんなら、これ、治してやってもいいけどなぁ?」

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