落ちこぼれの魔獣狩り

織田遥季

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追憶の中に

それでもいい

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 そして舞台は、過去から現在に戻る。

 星空の下、木に腰かけた二人の頬を涼やかな風が撫でる。
 過去のことを話し終わると、リンネは少々自嘲気味に笑って目を伏せた。

「要するに私のエゴってことよ。他人の為に生きなきゃ、私は脱け殻になっちゃう。だから誰かを……あんたを助けたい。この気持ちは、善意なんて綺麗なものじゃない」

「そうか」

 レオンが低く呟いた。

――きっと、嫌われた

 そう思うと、リンネは泣きたくなる程に悲しくなった。
 だけど仕方ない、レオンの覚悟に棲みついた寄生虫の自分は排除されて当然だと彼女は思った。

――でもやっぱり、こいつには嫌われたくなかったなぁ

 レオンが、ゆっくりと口を開いた。

「ありがとう、リンネ」

「……は?」

 リンネは開いた口が塞がらなかった。
 レオンがどうして礼を言うのか、まるで意味がわからなかった。

「あんた、話聞いてた? 私は自己満足でついて行ってるのよ?」

「それでもいい」

 そう答えるレオンの声は力強く、そして優しかった。

「俺は、俺を選んでくれてありがたいって思うし……リンネのこと、優しいと思う」

「は、はあ!? 私が優しいってあんた……!?」

「おっと、もう交代の時間だな。ララを起こしてくる」

 そう言うと、レオンがさっさとテントに向かってしまった。
 リンネは嬉しい気持ちと謎の怒りが交差してどうしようもなくなって、唸った。

「なんなのよあいつ……」


「むぅ……リンネ、おはよう」

 レオンが天幕に入って暫くすると、ララが目をこすりながらのそのそと出てきた。
 その顔はどこか呆けていて、まだ意識がはっきりと覚醒しているわけではないようだ。

「おはよう。眠かったらまだ少し寝ててもいいわよ。なにかあれば起こすから」

「いや、起きてる……リンネ、なんか顔赤い?」

「え? 嘘っ……!」

 リンネが自分の頬に触れると、たしかに通常よりも温かかった。

「病気? 体調悪いなら無理しなくていいよ」

 ララが心配してくれるけれど、今はリンネの羞恥心を煽るばかりであった。

「い、いや、大丈夫っ! 大丈夫だから……!」

「ほんと? 無理しないでね」

「え、ええ!」

――あいつ、ほんとになんなのよ!

 それからしばらくしてリンネが休憩する順番が回ってきたが、彼女は一睡もすることはできなかった。
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