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ブレンダムにて
わしらにもわかる
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レオンは中空で身を翻し、ゴーレムの脚部に手を引っ掛ける。
そして落下の勢いそのままに回転すると、腕の力を使いコアに向かって飛んだ。
レオンが瞬時に自分の右手を確認する。
すると執念だろうか、短剣は変わらず握りしめられていた。
「やるじゃん、俺」
からかうように笑って、崩れ始めたゴーレムの塊から塊へ飛び移りコアを目指す。
その間、レオンは既に限界を迎えている足を使うことは一切なかった。
そうして紫の閃光の源に辿り着いたレオンは短剣を突き出す。
――転移先は、はるか上空
「座標転移!」
刃の切っ先がコアに突き刺さった瞬間、レオンが魔法を唱える。
すると短剣はたちまちのうちに崩れ去り、眼前のコアは消え去った。
否、正しく表現するのなら消え去ったのではなく、転移したのだ。
はるか上空に。
崩れ去るゴーレムの身体と共に落下しつつ、レオンが天を見上げる。
そこには、二つ目の太陽のように輝くコアがあった。
「爆ぜろ」
コアが爆発するタイミングを知ってか知らずか、レオンが呟くと天空のコアは一層強烈な閃光を放ち、消え去った。
「はは……アハハハハ!!」
その光を見て、レオンは笑った。
まるで悪魔のように。
そして地上では、ギギルが絶望に満ちた表情で硬直していた。
「う、そだ……噓だっ! 僕のゴーレムの『核崩壊』が、なんで! どうして!?」
「ギギル」
そんなギギルに声をかけたのは、ビーディーだった。
ギギルはゆっくりと振り返ると、憎らし気にビーディーを睨みつける。
「ビーディー……お前、帰ってたのか……! そうか。お前のせいか! お前があのコアを……」
訳知り顔で話すギギルに対し、ビーディーは首を横に振る。
「私じゃない」
「なんだと……? じゃあ誰が……」
ビーディーは懐から葉巻を取り出した。
火をつけ、煙をくゆらせながらゆっくりとギギルに言い聞かせる。
「……たまたま来てた、よそ者の冒険者だよ。そいつがあのゴーレムをなんとかしてみせたんだ」
その答えにギギルは頭を抱える。
「よそ者の冒険者……!? そ、そんななんでもないような奴にぼ、僕のゴーレムが……? う、噓だっ! 噓をつくな!」
「噓じゃねぇよ」
ビーディーが静かに言い放つと、ギギルはがっくりとその肩を落とした。
大きく煙を吐き、ビーディーはギギルに問いを投げかけた。
「なぁギギル。お前、自分の力を認めてもらいたかったのか?」
すっかり落ち込んだ肩がピクリと動く。
ビーディーが宙に揺蕩う煙と戯れながら答えを待っていると、ギギルは小さく答えた。
「お前らみたいな低俗な奴らには、どうせ僕の才能は理解できないよ……」
「それは……」
「それは違う!」
ビーディーが答えるよりも先に、ドグマが大きな声で割り込んでくる。
その老ドワーフの眼には後悔の色が浮かんでいた。
ドグマは壊れゆく巨大ゴーレムを指差し、続ける。
「……お前の造ったあのゴーレム。その用途は褒められたもんじゃねぇ」
その言葉に、ギギルは唇を噛む。
「はっ! やっぱりくそじじぃに僕の才能は……」
「じゃが!!」
気迫の籠った大声によって、ギギルの発言は遮られる。
「一切の狂いなくあれを造りきった技術、そして根性! それらは称賛されて然るべき、大したもんだ……それは、わしらにもわかる」
ドグマがそう言うと、周りの弟子達も、それに賛同するかのように頷いた。
ギギルはなにか言い返そうとしたけれど、言葉に詰まって、やめた。
段々、嬉しいような、悲しいような感情が奥底から湧き上がってきて、ギギルはただ、泣いた。
そして落下の勢いそのままに回転すると、腕の力を使いコアに向かって飛んだ。
レオンが瞬時に自分の右手を確認する。
すると執念だろうか、短剣は変わらず握りしめられていた。
「やるじゃん、俺」
からかうように笑って、崩れ始めたゴーレムの塊から塊へ飛び移りコアを目指す。
その間、レオンは既に限界を迎えている足を使うことは一切なかった。
そうして紫の閃光の源に辿り着いたレオンは短剣を突き出す。
――転移先は、はるか上空
「座標転移!」
刃の切っ先がコアに突き刺さった瞬間、レオンが魔法を唱える。
すると短剣はたちまちのうちに崩れ去り、眼前のコアは消え去った。
否、正しく表現するのなら消え去ったのではなく、転移したのだ。
はるか上空に。
崩れ去るゴーレムの身体と共に落下しつつ、レオンが天を見上げる。
そこには、二つ目の太陽のように輝くコアがあった。
「爆ぜろ」
コアが爆発するタイミングを知ってか知らずか、レオンが呟くと天空のコアは一層強烈な閃光を放ち、消え去った。
「はは……アハハハハ!!」
その光を見て、レオンは笑った。
まるで悪魔のように。
そして地上では、ギギルが絶望に満ちた表情で硬直していた。
「う、そだ……噓だっ! 僕のゴーレムの『核崩壊』が、なんで! どうして!?」
「ギギル」
そんなギギルに声をかけたのは、ビーディーだった。
ギギルはゆっくりと振り返ると、憎らし気にビーディーを睨みつける。
「ビーディー……お前、帰ってたのか……! そうか。お前のせいか! お前があのコアを……」
訳知り顔で話すギギルに対し、ビーディーは首を横に振る。
「私じゃない」
「なんだと……? じゃあ誰が……」
ビーディーは懐から葉巻を取り出した。
火をつけ、煙をくゆらせながらゆっくりとギギルに言い聞かせる。
「……たまたま来てた、よそ者の冒険者だよ。そいつがあのゴーレムをなんとかしてみせたんだ」
その答えにギギルは頭を抱える。
「よそ者の冒険者……!? そ、そんななんでもないような奴にぼ、僕のゴーレムが……? う、噓だっ! 噓をつくな!」
「噓じゃねぇよ」
ビーディーが静かに言い放つと、ギギルはがっくりとその肩を落とした。
大きく煙を吐き、ビーディーはギギルに問いを投げかけた。
「なぁギギル。お前、自分の力を認めてもらいたかったのか?」
すっかり落ち込んだ肩がピクリと動く。
ビーディーが宙に揺蕩う煙と戯れながら答えを待っていると、ギギルは小さく答えた。
「お前らみたいな低俗な奴らには、どうせ僕の才能は理解できないよ……」
「それは……」
「それは違う!」
ビーディーが答えるよりも先に、ドグマが大きな声で割り込んでくる。
その老ドワーフの眼には後悔の色が浮かんでいた。
ドグマは壊れゆく巨大ゴーレムを指差し、続ける。
「……お前の造ったあのゴーレム。その用途は褒められたもんじゃねぇ」
その言葉に、ギギルは唇を噛む。
「はっ! やっぱりくそじじぃに僕の才能は……」
「じゃが!!」
気迫の籠った大声によって、ギギルの発言は遮られる。
「一切の狂いなくあれを造りきった技術、そして根性! それらは称賛されて然るべき、大したもんだ……それは、わしらにもわかる」
ドグマがそう言うと、周りの弟子達も、それに賛同するかのように頷いた。
ギギルはなにか言い返そうとしたけれど、言葉に詰まって、やめた。
段々、嬉しいような、悲しいような感情が奥底から湧き上がってきて、ギギルはただ、泣いた。
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