落ちこぼれの魔獣狩り

織田遥季

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魔龍動乱

もう一人の目的

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 は真っ暗で、ただ一つ、怪しい炎のようなものが赤く揺蕩っていた。

「ここ……は……」

 もう一人のレオンは愕然とする。
 そう。
 ここは本来、彼のいた場所だった。

「……仕方ないか」

 もう一人のレオンは立ち上がり、ゆっくりと炎に近づく。
 揺れる赤の先からは予想通り、レオン・ハルベルト本人が覗いていた。

「俺の体、返してもらおうか。魔獣王」

 炎越しにレオンが告げる。
 もう一人のレオンはそれを鋭く睨み返してみせた。

「断る。ウルフ・ハルベルトは俺が殺す」

 その言葉には、なにか強い意志が込められているようにレオンは思えた。

「……何故だ? 何故お前が奴の殺害に拘る」

 レオンが率直な質問をぶつけると、もう一人のレオンは少しの逡巡の後にポツリと呟いた。

「メルだよ」

「え?」

 もう一人のレオンの口から、妹の名が出てきたことにレオンは驚く。
 目の前の自分とメルは一度だって会ったことがないはずだったからだ。

「お前もここで見ていただろ? 外の様子を」

 レオンが頷く。
 たしかにレオンはここにいる間、もう一人のレオン越しに外の様子を認識していた。

「それと同じように俺はここから外を眺めてた。ティガー・ハルベルトの魔獣王から分離されて、それからずっとだ」

 レオンが生唾を飲む。
 ゴクリ、という音が暗い場所で小さく鳴った。

「見てたのか。俺の……俺たちのことを」

「ああ……だからだろうな。お前の可愛がってるメルに、だんだん俺も愛着みたいなものが湧いてきた」

 どこか懐かしむように話していたもう一人のレオンの顔が歪む。
 苦痛と屈辱によって。

「だからこそ……だからこそだ! あの男には腹が立つ……メルを苦しめるウルフ・ハルベルト。奴だけは絶対に許せない」

「……俺も、同じ気持ちだよ」

 そう同意するレオンの表情もどこか沈んでいた。

「それならば俺にやらせろ。お前こそ、どうして俺を止める? 目的は同じはずだ。俺に任せていればお前は妹との生活を取り戻せる。リンネやララ……お前の仲間達にも手出しをするつもりはない」

「駄目だ」

 レオンが断言する。
 その瞳は、真っ直ぐにもう一人のレオンを見据えていた。

「たしかに俺とお前の目的は同じ……ただ、その手段は見過ごせない。俺たちがやられたからって、関係のない人に同じ道を辿らせていいわけじゃない」

「手段?」

 もう一人のレオンが眉を潜める。

「そんなものは二の次だ! 手段などに拘っていてメルが救えるのか!」

 レオンが火の中に踏み入り、叫ぶもう一人のレオンの胸ぐらを掴んだ。

「救える。救ってみせる……だから、お前も協力しろ」

「協力? お前のやり方にか」

「ああ。きっとウルフとはそう遠くないうちに戦うことになる……だから、その時は俺に協力してほしい」

「俺が……お前に協力するメリットは?」

「目的は同じだろ」

「……チッ」

 もう一人のレオンが舌打ちをすると、レオンがゆっくりと体の感覚を取り戻し始める。
 身体の主導権が戻ってきたのだ。

「下手しやがったら、その時はまた俺がその身体をもらう……いいな」

「ああ……絶対にメルは助ける」

 光に包まれる視界の中、レオンが最後に見たもう一人の自分は小さく笑っていた。
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