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第三章「力というモノ」
反撃3
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闘いが始まって数秒。
最初に起こったのは、「硬直」であった。
アルとクリス。
両者、手を突き出したまま動かなかった。
そして、片方が動いた。
次の瞬間、クリスの顔が屈辱に歪む。
「グッ…!な…ぜだ……この…俺が…ア…ルに…遅れを…取るなど……!」
動いたのはアルであった。
周りの生徒も驚きを隠せないでいる。
それもそうだろう。
クリスは嫌な性格をしているが、魔術師としてはそれなりに優秀であった。
それ故、底辺であるアルが一瞬でやられると生徒達は予想していた。
なのにアルが勝ってしまった。
それも「一瞬」で。
「僕でストレス発散するんじゃなかったのかい?」
アルはクリスに話しかける。
「グッ…………!」
クリスはこの状況を抜け出そうと必死だ。
「いつも僕のことを底辺と馬鹿にしてた結果がこれかい?」
「お前…一晩のうちに何をした…!」
クリスは問いかけた。当然の疑問である。
アルは少し迷う素振りを見せる。
(蛇影。どうする?)
『ふむ。我輩に任せろ。
あの小童の頭に手を置け。』
アルはクリスに近づき、その頭に手を置いた。
蛇影がクリスに話しかける。
『おい。』
「な…なんだ?!頭に声が‼︎」
クリスは叫ぶ。
構わず蛇影は続ける。
『我輩の名は蛇影。
アルの中に住むモノ。』
クリスは驚愕に眼を見開く。
クリスには心当たりがあったらしい。
「な…なんでお前が…ここに…?」
『そんなことはどうでもいい。
今大事なのは、お前が我輩の怒りを買ったことだ。』
「俺が…一体何をしたと言うんだ!」
クリスは目に見えて焦っている。
アルは見ていられなくなった。
(蛇影。それくらいでいいだろう。)
『いいのか?』
「な…なんでお前が平静と…あいつと話せてるんだ!」
『お前は少し黙っていろ。』
クリスの口は蛇影の力によって塞がれた。
「ムグッ…!」
クリスはもがいたがびくともしない。
『それで、アル。
お前はそれでいいのか?』
(ああ。これで充分だ。
ありがとう。蛇影。)
『礼は不要だ。対価は必要だよ。』
(対価?)
『ああ。時期に分かる。それまで待て。』
蛇影は笑みを含めてアルに言葉を返した。
蛇影の声は消えていった。
「クリス。」
アルはクリスに向き直る。
クリスは喋れるようになっていた。
「これで、僕の強さの理由を解ってくれたかな?」
クリスはまともに口を開けない。
他の生徒も全く喋りだす気配を見せない。
…
…
…
やっとゴドリスク先生が口を開いた。
「これにて試合を終了とする。
クリス。後で話がある。授業終わりに私の元へ来るように。」
クリスは口をパクパクさせたまま動かない。
それを見てゴドリスク先生は呆れたようだ。
「まあいい。
決闘の実演はこれにて終了とする。
それぞれ、ペアをつくりやってみるがいい。」
ゴドリスク先生のその声に我に返ったのか、生徒達は一斉に動き出す。
再びいつもの授業の風景へと戻っていく。
残されたのはアルと呆然としたクリスのみであった。
最初に起こったのは、「硬直」であった。
アルとクリス。
両者、手を突き出したまま動かなかった。
そして、片方が動いた。
次の瞬間、クリスの顔が屈辱に歪む。
「グッ…!な…ぜだ……この…俺が…ア…ルに…遅れを…取るなど……!」
動いたのはアルであった。
周りの生徒も驚きを隠せないでいる。
それもそうだろう。
クリスは嫌な性格をしているが、魔術師としてはそれなりに優秀であった。
それ故、底辺であるアルが一瞬でやられると生徒達は予想していた。
なのにアルが勝ってしまった。
それも「一瞬」で。
「僕でストレス発散するんじゃなかったのかい?」
アルはクリスに話しかける。
「グッ…………!」
クリスはこの状況を抜け出そうと必死だ。
「いつも僕のことを底辺と馬鹿にしてた結果がこれかい?」
「お前…一晩のうちに何をした…!」
クリスは問いかけた。当然の疑問である。
アルは少し迷う素振りを見せる。
(蛇影。どうする?)
『ふむ。我輩に任せろ。
あの小童の頭に手を置け。』
アルはクリスに近づき、その頭に手を置いた。
蛇影がクリスに話しかける。
『おい。』
「な…なんだ?!頭に声が‼︎」
クリスは叫ぶ。
構わず蛇影は続ける。
『我輩の名は蛇影。
アルの中に住むモノ。』
クリスは驚愕に眼を見開く。
クリスには心当たりがあったらしい。
「な…なんでお前が…ここに…?」
『そんなことはどうでもいい。
今大事なのは、お前が我輩の怒りを買ったことだ。』
「俺が…一体何をしたと言うんだ!」
クリスは目に見えて焦っている。
アルは見ていられなくなった。
(蛇影。それくらいでいいだろう。)
『いいのか?』
「な…なんでお前が平静と…あいつと話せてるんだ!」
『お前は少し黙っていろ。』
クリスの口は蛇影の力によって塞がれた。
「ムグッ…!」
クリスはもがいたがびくともしない。
『それで、アル。
お前はそれでいいのか?』
(ああ。これで充分だ。
ありがとう。蛇影。)
『礼は不要だ。対価は必要だよ。』
(対価?)
『ああ。時期に分かる。それまで待て。』
蛇影は笑みを含めてアルに言葉を返した。
蛇影の声は消えていった。
「クリス。」
アルはクリスに向き直る。
クリスは喋れるようになっていた。
「これで、僕の強さの理由を解ってくれたかな?」
クリスはまともに口を開けない。
他の生徒も全く喋りだす気配を見せない。
…
…
…
やっとゴドリスク先生が口を開いた。
「これにて試合を終了とする。
クリス。後で話がある。授業終わりに私の元へ来るように。」
クリスは口をパクパクさせたまま動かない。
それを見てゴドリスク先生は呆れたようだ。
「まあいい。
決闘の実演はこれにて終了とする。
それぞれ、ペアをつくりやってみるがいい。」
ゴドリスク先生のその声に我に返ったのか、生徒達は一斉に動き出す。
再びいつもの授業の風景へと戻っていく。
残されたのはアルと呆然としたクリスのみであった。
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