巻き込まれ体質な私、転生させられ、記憶も封印され、それでも魔法使い(異種族ハーレム付き)として辺境で生きてます。

秋.水

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第13話 弧狼族

第13-2話 弧狼族

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「うむ、行ってこい。まあ、攻撃されても殺さないようにな。」
「殺されないようにではなくてですか?」若い魔法使いが驚いている。
「ああ、やりすぎるなよ。一応忠告しておくぞ。獣人達は恨みを忘れん。殺してしまったら一族に一生つきまとわれることになると覚悟せい」
「私のような温厚が服を着て歩いているような人を捕まえてそれはないでしょう。」
「怒らせると恐いじゃろうが」
「それはそうですけど。理不尽に怒ったりはしませんよ。では行ってきます」
「お気をつけて」
 私は、扉を開けて外に出て、すぐに扉を閉めました。そして、その獣人さんに近づいてこう言いました。
「こんにちは、どなたさまですか」
「人間か、この家に魔法使いが来ているだろう、そいつを出せ。」
「いきなりですねえ。挨拶もできない人・・・ああ獣人さんですか。礼儀を知らないのもあたりまえですね。」
「なんだと、いいから出せ、そこにいるんだろう。」
「あの~聞いていますか?ちゃんと挨拶しましょうよ。まずはそこからでしょう。それともそんな簡単な事もできませんか、本当に獣ですね」
「ああ?良いから早くしろ。こっちは長距離を移動してきてイライラしているんだ。ケガするぞ。」
「だから挨拶をしなさいと言っているでしょう。そんな態度をしていたら、怯えてしまって、出てきませんよ。」
「いいか、人間、お前達には憎しみしか無い。だが、今回の件には関係ない。だからこれ以上俺をいらだたせるな。」
「憎しみがあっても礼儀は大事でしょう。お願いする立場なんですから。違いますか。」
「わかった会わせる気がないと言うことだな。」
「違いますよ。あなたがちゃんと礼儀をもって挨拶してくれればいいだけです。それもわかりませんか。」
「その口聞けなくしてやる。」言い終わらないうちに姿が消えた。一瞬の間に私の目の前に現れ、ツメを私の口に当てている。
「本当に獣は野蛮ですね。置かれた状況にも気付かない。」
「くっ」その爪を前に出して頬を少しだけ切るつもりだったはずが、腕がすっぽ抜ける。
「あ?」間抜けな顔で前につんのめる。すでに私は横に移動しています。ごろりと彼の腕が落ちている。痛みをこらえながら傷口に手を当て自分の腕に近づいていく。
「一体何をした。」
「知りませんよ、勝手に近づいて、勝手に手を動かし、勝手に腕が落ちただけでしょう。自業自得でしょう。」
「貴様。」牙をむき出しにしてうなり始める。
「これ以上そのままにすると本当に腕がつかなくなりますよ。獣人さんの再生能力でもさすがに腕は生やせないでしょうから。」その男は腕を拾い傷口に当てる。見る間にくっついていく。
「この野郎」
「そんな口をきいているとまた腕が落ちますよ。」
「なんだと」
「はい、終わり」指を鳴らすと。彼の腕が落ちる。獣人は、驚いてそれを見ている。
「なんだと、ちゃんと再生したはずだが」
「不思議ですねえ。もう一度つくとは思いますが、付き方が甘くなりますから、腕を付け直しても、今度はいつ落ちるかわかりませんよ」
「貴様、何を」
「はい2回目~」つけた腕が落ちる。
「くっどうなっている。」
「丁寧な言葉を使ってください。見下している人族に対して、恨みのある人族に対しても、礼儀を持って接してください。そうしないと本当に二度とつかなくなりますよ」
「お前はどうしたいんだ。」
「はい、だめー」
「いいかげんにしろ・・・してください」
「そうです。人とか獣人とかの区別なく普通に接してくださいと言っているだけです。まあ、私のやり方はちょっと非道ですけどね。」
「わかった・・・わかりました。こちらにいらっしゃる・・・魔法使いに会いたい・・・お会いしたいのです、お願いできますか。」
「最初からそう言ってくれればこんな事にならなかったんですよ。ごめんなさいね。ひどいことをして。でも、注意してくださいね。腕については、何回も繰り返しましたから、無理をするといつか落ちるかもしれません。あと、私が死んだらその腕おちるかもしれませんので気をつけてくださいね。」
「・・・」
「さて、お会いしたいという事ですが、どういうご用件でしょうか。」
「ここで言わなきゃダメか・・・ですか、本人に直接話したいんだ・・・ですが」
「わかりました。本人を呼びますね。」
「ああ、たの・・・お願いします。」
「まったく弱い者いじめしてどうするんじゃ。」モーラが出てくる。
「この匂いドラゴン・・・様ですか」
「ああ、もう丁寧語はいいじゃろう。なあ。」
「でも、本当にこんなことしていたら、あなたいつか殺されますよ。」
「ああ、肝に銘じる・・・銘じます。」
「すいません。もうその口調はいいです。普通にしゃべってください。」
「ということは、ここは、噂のドラゴンを使役している」
「おや、そんな辺境の種族にまで噂が伝わっているのですか。困りましたねえ。」
「あれは噂じゃ、話は10分の1くらいに考えろよ、な」
「いや、それでも魔族の大半を屠ったと聞いているが。」
「誇張されすぎです。」
「まあよい。お主が孤狼族の族長か」
「恥ずかしながら。」膝をついて話をしている。
「あの魔法使いを追っていた理由はなんじゃ」
「それは、」
「わしの前じゃ話してみい」
「はい、魔法使いの方に手伝っていただこうかと思いまして」
「何を手伝って欲しいのか」
「それは、」
「話は中でしましょうか。」
「ああエリス様。そうでしたか。わかりました中で全部話させていただきます。」

居間のでかいテーブルに座っている。お茶が出されみんな沈黙していた。
怯えつつも、業炎の魔法使いが口火を切る。
「先日は、その、お孫さんを焼いてしまいましてすいませんでした。きっと怒っていらっしゃいますよね」
「違うんだ。それをお願いしたいんだ。」
「え?どういうことですか」
「孫を、あの子を焼き殺して欲しいんだ。」
「無理です、私の最大級の火炎魔法でさえ死なずに復活したんですよ。できるわけ無いじゃ無いですか」
「何回も焼き尽くすことはできないのか。」
「あの時火炎魔法を打ってあの速度で復活しています。あの時もし反撃されていたら、さすがに2度目の詠唱を行っても間に合わなかったと思います。」
「そうか、エリス様お願いです、なんとかできないのか。」
「そういわれてもねえ。この子の爆炎魔法をしのいでいるなら、私にできることはないわねえ。」
「そうだ、こんな無礼を働いておいて、言える筋合いでは無いとはわかっている。我が孫を頼む。殺してくれ。」
「殺す方向しかないのでしょうかねえ。」
「魔法を見られる魔法使いには断られたと言っていたし、他に手はない。」
一同、静かになる。そして下を向いてから少しだけ私を見ている。まあ、そうですよね。
「もう一度頼んでみたら?」冷たい風が玄関の扉の方からながれてくる。
「おや、氷の来たのか。気配がなかったが。」
「気温が下がると匂いは伝わらないそうよね。」
「はい、おっしゃるとおりです。」私はすかさず答える。
「まあ、高高度を氷の雲をまとってきたから見つからなかったわよ」
「なるほどその手があるのか。」
「あなたは無理でしょ、モーラ。そもそもが地上の者なのだから。できるのは、土に縛られないものだけよ。」
「確かにそうじゃな。」
「あら、あっさりとしているわねえ。さて、話はついたのかしら。」
「ドラゴンは不干渉では無いのか。」
「自然災害とかで回避できないものならあきらめますけれどね。私の所に住んでいる数少ない獣人一族の存亡ですからね、縄張りを管理する者としては看過できないのよね。もっとも、直接干渉はできないからあくまで助力だけですけどね。」
「ふむ参考になる。」
「氷のドラゴン様、残念ながら直せるかも知れない魔法使いからは断られ、殺すことも叶わぬようです。」
「断られたのね。」
「もっとも、人づてですし、私もその、ある魔法使い様を除き人自体を信用していませんので。それはしかたがないと思っております。」
「そうだったわね、それでも孫を助けたいのでしょう?」
「はい、できるならば、助けたいです。族長としてではなく、あの子の祖父として」
「それが、一族に対しての裏切りになるとしても?」
「人に対する恨みは一族の気持ちです。まだ癒えてはいません。説得できるのであればそうしたいですが、もし可能であるならば里を抜けてでも。」
「ねえ、あなた。できるなら助けてあげたいのね。私からもお願いするわ。その子の状態を見てあげて欲しいのね。それでどうしても無理ならそれでもいいのよね。」
「この男が、そうなのですか。」
「ええ、私が言った魔法使いとはこの男よ。」
「お主。どうする。」
「この世界の頂点たるドラゴンさんに頭を下げてお願いされて断れるものでしょうか。」
「やっぱりあなたらそう言うわよね。」アンジーが頭を抱えています。ええ、そうですそう言います。
「はい、微力ながら手伝わ・・・」そこで、パムが私の言葉を制止する。
「お待ちください、その前に私からお尋ねしたいことがあります。」
「なんでしょうかね」
「事が収まった後にぬし様を殺させないと確約してもらえませんか。」
「そこに目をつけるとはね、さすがドワーフ族ね。」
「孤狼族に限らず獣人の里は、お互いの縄張りは不干渉としていて、どんな理由があろうと許可無く足を踏み入れた場合、殺されてもかまわないとなっているはずです。ぬし様を例外として認めてくれるということでいいのですね。」
「そ、それは。」
「その後は殺すつもりだったという事か?さすが獣人やることがえげつないな。それを容認する氷のやつもたいがいじゃが。」
「里の場所を知られては困りますので、殺すことになります。一族全員をもって。」
「これは、こやつの魔法をみたじゃろう、孫を生かしてもらったとしても、一族全員死ぬことになりかねんぞ。それでもよいのじゃな。」
「・・・・」
「それは、私としては困るわね。本末転倒ですものね。」
「その前にちょっと良いですか。まず、この業炎の魔女さんを追ってきたのは、殺すためでは無かったのですね。」
「ああ、そうだ。殺すつもりでは無かった」
「でも、里で孫を殺した後は殺すつもりだったと」
「そうだ、里を知られることになるから」
「じゃあその子を焼いた場所は、戦っていたのは、里では無いと。」
「縄張りから少し外れていた。だから正確な里の位置はしられてはいない。」
「私もそのあたりの森で満月の夜に戦っているとうわさを聞いてそこにいただけなので、里の位置までは知りません。」
「いつもは縄張り内で戦っているのですか?」
「ああ、開始は里からだが、もうエリアを気にして戦っていられる状況ではないのだ。」
「わかりました。私の身の安全が保証されるのであれば、お手伝いしましょう。ただし、実際に見てみないと成功するとは限りませんよ。」
「それはわかっているつもりだ。失敗したなら殺してくれてかまわない。」
「それは、とりあえず置いておきましょうか。」
「はい」
そこでモーラのオーラが急に圧力を上げる。全員がモーラを見る。
「さきに言っておくが、わしらを人質にしてこやつを殺そうとするなよ。こやつはなあ、そんなことを言う奴は、自分が殺された後にわしらが絶対殺されると信じこんでいてな、そういう脅迫をされたら、その者らに躊躇なく襲いかかる。当然、人質の危険など顧みずにな。その結果人質が死んでしまったら、自分の至らなさを呪いながら敵に復讐し続ける。もちろん自分か相手が死ぬまでじゃ。わかるか?」
「・・・・・」
「お主、そう言うたよな」
「ええ、人質を取るような卑劣な奴が約束など守るわけがないでしょう。ならば、ほとんど可能性が無くても敵に一矢報いますよ。」
「そして、こやつは一度それを実行している。そうだな」
「ええ、みんなには失望されましたけど。」
「結果的にこの世界は壊れずに済んでいる。聞いているお主らわかるな。あとで殺すつもりなら覚悟しておけよ。」
「その範囲はどこまでなの。」氷
「一緒に住んでいる我々じゃ」
「モーラも入っているの」
「あやつの定義ではそうなっておる。」
「ドラゴン同士の戦いでも」
「わしが何か相手に対して悪意を持って何か仕掛けた場合は、理由によるじゃろうが、それ以外はわしを守るじゃろう」
「モーラあなたはこの男が殺されそうになったらどうするの」
「そうじゃな、ドラゴンは原則不干渉じゃが、こやつとは、家族なのでな。家族は守るものであろう?」
「そこにいるのは天使よね、あなたはどうなの?」
「わたしですか?まあ成り行きとはいえ、この男に隷属していますし、モーラを含めてここにいる全員この人と隷属の関係にありますので、こいつに命令されれば戦いますよ。もっとも命令されなくても命令されたことにして全力で守りますよ。みんな、そうよね。」全員がうなずく。
「なるほどね、これはさすがに無理ね」
「のう、氷の、そうやってこの族長に言い含めるのをやめんか?」
「あら、わかっちゃった?」
「ああ、氷の、お主とは里でその話をしていたじゃろう。今更ここでもう一度聞きたかったわけではあるまい?」
「そうね、あなたの変わりようにびっくりしていたのね」
「孤狼族の長よ、氷の奴は、お主に直接言えんからわしが言ってやろう。わしは質問するがよいか。」
「何をですか」
「おぬしは、さきほど族長としてではなく、祖父として、子どもとを助けたいと言ったであろう。助けるためには掟を破ることになるがよいか。それとこれまで掟として何人殺している。よく考えるのじゃ。それと、掟というものをそもそも考え直す時なのだと考えてみると良い、時代は変わっていくものだ。」
「しかし、いまさら掟を変えるというのは都合が良すぎませんか。」
「お主があの子に対して頑張ってきたことは一族のみんなが見知っていることであろう。時間はないが説得してみてはどうだ。」
「選択肢はひとつしかないのよ。この男に頼り、孫を助けてもらい、この男を殺さずに帰す。もちろん孫が助けられなくてもこの男を殺さずかえす。あなたがその子を殺す。同族殺しとしてね。」
「まあ、他の方法としては、里からその子を連れ出す。もっとも里を出たら二度と戻れないのでしょうけど。あとは、満月の夜に戦闘をしながら誘導するというのもありですが、その場合、孫の死ぬ確率が格段にあがりそうですので、やめたほうが良いですけど。」
「わかりました。でももう時間がありません。」
「氷の、連れ帰ってやれ。そして説得の時間とこちらに連絡する時間を作ってやれ。」
「わかったわ、ちょっと干渉しすぎだけどね。あなたの話を聞いたらそうしたほうが良さそうな気がしてきたわね。」
「あたりまえじゃ。時間切れで孤狼族が滅亡しても良いならそうすればいい。」
「はいはい、あなたに説得される日が来るとは、成長したものね。」
「まだまだ成長中じゃ」
「じゃあ、またくるわね」
「おう、結論が出て、このことにケリがついたら食事にでも来い。」
そうして2人は帰って行った。
「にしても良く知っていましたねパムさん」
「はい、すごいです。」
「はったりもありましたけど、どうも氷のドラゴンの悪意やら殺意やら憎悪がぬし様に向けられているような気がしまして、もしやと。」
「にしてもモーラ。あなたも氷とやる気だったのかしら」エリスさんが真剣な顔で言った。
「いや、相性が悪すぎるのでなあ。それに殺したり殺されたりは、わしの性に合わん。それにしても、孤狼族の掟が理不尽でなあ。どうころんでも死人が出る。それは一族として正さなければならない事じゃろう。」
「今日はこれからどうなされますか。」すでに夕暮れ近くになっている。
「夕食と宿泊していきませんか。」メアさんに伺うとうなずいている。
「あら、こんなに急でもいいのかしら。」
「ええ、前回すっぽかされましたしね。お二人ともどうぞ。」
「き、着替えが・・・」確かに逃げてきたからなのか汚れている。
「たぶん、どなたかの衣類が合うでしょう。」
「あなたも大丈夫なの?」
「はい、姉さまがよければ。」
「では、お願いするわ」
「では、メアさんよろしくお願いします。」
「はい」
「やっぱりあなたに預けて正解だったわね。私じゃああんなに生き生きとしていないもの」
「ありがとうございます。」
そして、食事は始まった。その魔女さんは、以外にもエルフィと話が合ったようで結構楽しく話をしている。
食事後のお茶を飲んでいると、もじもじと業炎の魔女さんが私に話しかける。
「見ていただきたい物があります。」
「なんでしょうか」
「前に見せたあの炎、あれから改良してみました。」
「それでは、この後にでもみせてください」
「はい」そう言ってからエルフィやユーリの所に戻っていった。
「良い子になったでしょう。」
「見違えましたねえ」
「あれもあなたのおかげよ。」
「業炎の魔女とか言われて天狗になっていた鼻をあなたにへし折られて、そこからやる気を出したのよ。あなたのおかげよ」
「立ち直ったのは彼女が優秀だからですよ。」
「そうね、そう思うことにするわ」
 そして、彼女に促されみんなは、外に出ました。
「さて、何を見せてくれますか。」
「では、これを」そう言って彼女は、前回と同じように空に花火を打ち上げました。でも、前回のような単純なものでは無く、360度に広がっていき、さらにその落ちていく火花がさらに変化していく花火に変わっていた。
「おや、私の元いた世界の花火ですね。」
「はい、姉さまに教えてもらいました。これを花火というのですね。」
「ええ、これが本来の花火です。」
「ではこれを」そう言って彼女は、下を向いて、こよりの先に火をつける。そして、空に打ち上げた花火と同じものを今度は小さくして、線香花火にしました。
「すぐに小さい火花に変えられるようになったのですね。」
「はい、でも真似になってしまいますが。」
「エリスさんも言っていましたよ。見せてもらっただけで憶えられたのなら教えてもらったのと同じだと。」
「ありがとうございます。」
「今度は私がひとつ教えましょう。」
「なんでしょうか」
「威力を変えられるわけではありませんが、色を変えられます。」
「そうなんですか?ぜひ、」
「これをこうして」
「すごい、どうやったのですか」
「魔法で火花の魔法の編成をですねこう」
「ああ、こうですね。すごいすごい色が変わる」
「まあ、それだけの話ですよ。たいしたことではありません。」
「でも、すごいですよ。」

「エリスよあいつはいい男じゃろう?」
「え?ああ、そうね。教え方も上手だし。良い師匠になれるわね」
「じゃが、危険すぎるとは思わんか」
「一緒にいるあなたがそれを言うの。」
「不安なのじゃ、わしがそばで見ているとはいえ、世界の存亡を握るかもしれん男がここでこうして生きていてよいのかとなあ。あやつが暴走した時、果たしてわしは止められるのかなあと思ってなあ。」
「おや、弱気ねえ。どうしたのよ」
「玄関の前で孤狼族の族長と対峙した時にみせたあの冷酷さを見せられるとのう。どうしても不安になる。」
「あの、礼儀とかに異常にこだわるあたり、何が彼にあったのかしら。」
「わからんが、あの時だけは、わしでさえ震えが来るくらい恐いと思ってしまう。これまで何度かあれを見せられていてな。あいつの人間性を完全に信用し切れていないのじゃ。もっとも、やつとつながっておるからやつの気持ちがある程度わかるのじゃが、それだけにあの時の冷酷さは本当に肝が冷える。」
「そうね。私の国のことわざに寝ている虎の尾を踏むというのがあってね、何もしなくても良いのにわざわざ虎という恐ろしく凶暴な獣を起こすなというのがあるのよ。当然、虎が暴れて災いが起きるというね。」
「そういうことか。この虎は、寝ていてくれるかのう」
「たぶん。」
「そうか」
そうして、その日は、終わり、2人とも入浴して、翌朝2人は楽しそうに帰って行った。

 続く
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