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第16話 魔族の子
第16-6話 事件の真相3
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「まず、元魔王の居場所を特定しないとだめじゃな。」
「そうね、獣人達のところは後回しにしないとだめね」
「どちらも同じ所のような気がしますけどね~」
「そうなのか?監禁する目的が違いそうじゃが」
「そもそも、元魔王なら殺してしまえば済むところなのに殺さずにいるのは、どうしてでしょう~きっと引っ越し先を知りたいという所じゃないですか~」
「確かにそうじゃな。それなら一緒で済むのじゃが」
「そんなに大げさに里の人達を拉致しても意味は無いような気がしますけど」メアさんが珍しく発言する。
「うむ、むしろ近づかなくなりそうな気もするなあ。」
「命の危機があれば、早急に救いに来ますよね。」
「ああ、でも新しい里の方はそれを知るすべはなかろう。」
「拉致した側も拉致はしてみたものの連絡が取れないとかですかねえ。」
「それなら一度解放して監視を続けた方が良さそうですがねえ。」
「その仲間の方が転居先を知っている。けど、知らない振りをしている。いつかくる連絡を待っている振りをしている。なので、どっちかわからないから解放もできないというところですかね。」
「それだって監視で済みますよ。でも、元魔王が転送魔法を使えるとなれば話は違ってきますが、」
「使えばすぐ逃げられるのに?」
「使えることがばれるのがまずいということでは、ないでしょうか」
「そういえば現魔王が言っていましたね、転送できれば戦況が一気に変わると。」
「確かに、魔族はそれを手に入れたいということですか。」
「現魔王は、転移魔法を知らないのか知っていながら使わないのかですかね。」
「現魔王は、使えると思います。でもこの世界では使わない、使うつもりがないと思います。」アンジーが言った。
「人族、魔族どっちも、転移魔法が存在し、恒常的に使えることを知れば、研究にやっきになりそうじゃ。」
「元魔王は、里から逃げたときには転移魔法を使っていませんよね。」
「どこからか逃げ出したとなっているな。あそこは出る者には干渉しないようになっているはずじゃなあ。」
「はい、入るのは結界が阻み、出る者は干渉されません。それは、身をもって確認しました。」パムが言った。
「誰も見ていないときに転移魔法を使ったかも知れませんねえ」
「それはそうじゃな。誰にも見られていなければ使ってもよかろう。」
「遠隔地まで転移すると、転移魔法を使ったことがばれますよ。」
「また話が飛んだな。」
「ええ、ポイントを絞りましょう。どこにいるかを探す。闇雲に探しても意味がありません。どこかから情報を取らないとなりません。」
「やはり各都市の魔法使いから情報を取ることになるかのう。」
「都市にいるとすれば、異種族が歩き回っても問題ないくらいの大都市となりますね。」
「あとは、ど田舎かな。」
「まさか、うちの周りとかじゃないでしょうね。」
「そんなわけあるか。わしの縄張りにそんな上級魔族が来たらすぐわかるわ。」
「でも、結界を張ったこの家の中にいましたよね。対魔族結界の中にいたらわからないんじゃ・・・」
「!!!まさか。」椅子から立ち上がり、扉を開けて外に出る。すぐに羽ばたく音が聞こえる。
「そんなことありますか?」
「まあ、念のためにね。一番潰しておかなければならない可能性だから。」
「どうしてですか?」ユーリが尋ねる。
「私たちに濡れ衣を着せるには一番じゃない?私たちが拉致していた。私たちなら気配を消すことも可能だった。とね。現に魔族の子はこの家の中にいて周囲からは気配を消しているのだから。」アンジーが諭すように話している。エルフィまでうんうんと頷いている。
「そこまで知っているとなるとまた見方が違ってくるけどね。」つぶやくようにアンジーが言った。
「でも、あの子が来て結界を強化してからもモーラ様は自分の洞窟へ何度も行っていますよ。」メアがそう指摘する。
「そうよね、結界の中から何度も自分の巣に戻っているわ。」
「それは、今の洞窟ですよね。」パムは、確認のため尋ねたようだが、全員の頭の上にはてなマークが浮かび上がる。
「そういえば、昔モーラが住んでいた洞窟がありますね。その洞窟は、魔族や魔獣が寄ってこないようにモーラの匂いやらなんかで結界が張ってあったはずです。」私は思い出して告げた。
「それってもしかして、モーラの結界の中に入れば魔族からは逃れられるということですか。」
「どういう結界かは聞いていませんので、どこまでのものかは知りませんけれど、」
『やられたわ』モーラの叫びが頭に響く。
『どうしました?』
『洞窟を見に行くついでに、今、お主らが話していた前に暮らしていた洞窟を見に行ったら、誰か生活していた跡があったわ』
『それは、今は、逃げられたということですか。』
『ああ、さすがに今のドラゴンの姿では入れなかったのでな、子供の姿になって洞窟の中の様子を見たが、直前まで誰かがいたようじゃ。』
『数日前とかですかねえ』
『いや、火を使った痕跡がまだ熱かったからほんの数分というところかのう。』
『でも、そんな気配はありませんよね。モーラの探知外ってことですか。エルフィどうですか?』
『私もこの結界の中ですから、微細な気配はわかりませんよ~ちょっと外に行ってきますね~』
『お願いします。無理しないでくださいね』
『ラジャー』そうして、エルフィは玄関から外に出て森の中へ消えていったようだ。
「あななたちは、一体何をしているんですか?」奥の部屋から獣人達が出てきて言った。
「ああ、すいません。みんな考え事をしていて。」
「急に扉が開いた音がして、静かになったと思ったらまた扉が開く音がしました。何かあったのかと思って出てきてみれば、皆さん会話もせず黙ったままで座っている。何があったんですか」
「ああ、すみません。話の中で、この周囲に何かが起きている可能性の話になって、不安になってモーラが様子を見に行ったのです。そしたら、気になることがあったので、さらに調査をしにエルフィが・・・」
『発見しました~。かすかですけど数人が草原を移動しています。かなり速いです。』
『わしにまかせろ。エルフィ位置と場所のイメージを送れ。』
『イメージは無理ですよ~場所はこの辺です。』
『わかった。わしにまかせろ』
『モーラ暴走はなしですよ。くれぐれも注意して。』
『ああ、気をつける。は?ドラゴンの匂い?』
「モーラどうしました」モーラの動揺した感情に私は、思わず声に出してしまう。
「何を叫んでいるのですか」
「あ~あ」アンジーが頭を抱えている。
「何でもありません。何でもちょっとぼーっとして夢を見ていたようです。」私の言葉にアンジーがさらに頭を抱えている。顔を上げ諦めたような表情のアンジーが言った。
「出てきたのなら話をしましょうか。私たちはね、元魔王がどこにいるのか考えていたのよ。そしてね、とんでもない想像に行き着いたのよ。どこだと思う」
「この土のドラゴンの縄張り内のどこかにいるのではないかと考えたのですね。」賢そうな方の女獣人がつぶやくように言った。
「そう、ようやくそこに考えが至ってね、慌てて確認に行っている訳よ。ドラゴン自らがね。」
「そうでしたか。」そこで賢こそうな女獣人は、ため息をつく。
「あなた知っていたのね。」ジロリとにらみつけるアンジー。下を向いているその獣人。
「知らされてはいませんでしたが、薄々はそうではないかと思っていました。」
「知らされてはいなかったのね。」
「はい」
「それなら良いわ、あなたも私達と同じ被害者だもの」
「そんな被害者だなんて。」
「あのね、私達がそんなに温厚に見えるのかしら。まあ、細かい噂だから知らないのかも知れないわね。これまで私達は、どんな小悪党でも自分たちの家族のためなら簡単に両腕切り落としているのよ。わかる?」
「・・・・」
「じゃあ、あくまで仮定の話だけどね、貴方たちが私達の家を監視していたときに私達の家族に何かあったら、その件と貴方たちに関係があろうとなかろうと捕まえて、事実関係を確認するわ。その時に貴方たちの手足はすでにないのよ。逃げられないように切り落とす。あなた達は拉致されて、泣き叫んでも、真実が確認できるまで、手足をちぎったりつなげたりを繰り返して、痛みと絶叫の中で意識がなくしても、すぐ意識を取り戻させられ、それでも吐かないのなら、さらにその頭の中をかき回してのぞき込むくらいはやるのよ。そして貴方たちが何も知らないと、この件に関連がないと私達が納得するまで続けられ、納得した頃には、貴方たちの手も足も頭も使い物にならなくなっているのよ。わかる?そこまでの想定が、貴方たちを利用した人たちにあったのかしら。あなた達にその覚悟があったのかしら。」
全員の顔が青ざめている。
「私達はお気楽にドラゴンの庇護下でのほほんと生きているわけではないのよ。私達に害をなそうとすればその数倍の反撃を食らうということを、これまで、その人達の身に教え込んで来ているの。二度と手を出してこないようにね。そして、今回の生け贄はもしかしたら貴方たちだった可能性もあるの。これを聞いても被害者ではなかったと言えるのかしらねえ。」アンジーの話し方は、子供に諭すように淡々と話している。説教と言うよりは、説諭だ。しかし聞いている方は、青い顔をしている。ええ、家族もまた青い顔をしている。その言い方したら効果ありすぎじゃないですか。
「アンジーさん脅かしすぎじゃないですか。」私はさすがに口に出す。
「あら、本当にあなた切り落としたじゃない。小悪党の両腕を」何その邪悪な微笑み。あなた天使様ですよねえ。というか皆さん私を見ますか。怯えた目をしますか。
「いや、確かに切り落としましたけど、あの時は、事態は切迫していましたし、でもちゃんと元通りにくっつけましたよ。そんな何回も・・・ああ、相手が信じないから1度だけ切ってつなげましたけど、そんな何回も切ったりつないだりしてませんてば。」
「ほらね、この人はこういうことを罪悪感もなくできるところがまずいのよ。」
「だからちゃんと元通りにつけたっていっているじゃないですか。ねえ、メアさんフォローしてくださいよ。笑っていないで。」
「知りませんでした。それはさすがの私でも怖いですね。」あら、なんでパムさんがそれを言いますかね。しかも青い顔で。
「だからね、貴方たちがどんなつもりで引き受けたかわからないけど、私達はそんなに甘いものじゃないのよ。今更聞いても遅いでしょうけどね。」
沈黙は気まずい。そんな時、勢いよく玄関の扉が開きエルフィが入ってくる。その音にみんなびっくりする。
「あれ~お葬式ですか~、もうじきモーラ様が帰ってきますよ~大漁で~す。」
「大漁ってなんですか。何か釣れたのですか」
「はい~釣果は、見てのお楽しみ~」そう言ってエルフィはメアさんに耳打ちするとメアさんは台所に向かった。
『すまぬ、薬を用意してくれぬか。』
『なにがあったのですか、どうしても言うことを聞かない馬鹿がわしに斬りかかりよってな、けがをしたのじゃ。魔族なので、薬草を頼む。多めにな』
『そうですか。ならば、私が先に行きましょう。』ユーリが立ち上がりかける。獣人達が突然動いたユーリを見る。
『いや、馬では遠回りになるからレイが適任じゃ、馬車は迂回して来てくれ。』
『了解しました。』レイが、ぱっとその子の膝から降りて、玄関に向かって駆け出そうとする。立ち上がりかけていたユーリがそのまま玄関に行き扉を開けるために手を掛ける。
「薬を持ちなさい。」メアさんの声が聞こえ、台所から顔を出したメアさんが薬袋を扉に向かって投げる。ユーリが受け止め、レイの胸のポケットに入れ、レイは、外にかけだしていく。その後をエルフィが出て行った。程なく馬の鳴き声と馬車の車輪の音が聞こえ遠ざかっていく。
獣人達がぽかーんと見ているところ、ユーリが扉を閉めて何事もなかったように椅子に座る。再び静まりかえる。
「貴方たちは、頭で会話できていますね。」思案した後に遠慮がちに賢い女獣人はそう告げた。
「まあ、ばれるわよね。」アンジーが深いため息とともに答えを返す。
「どういうことだよ、」けがをしていた獣人が2人を見比べながら尋ねる
「私たちが特別なんだろうけど、隷属したことで、隷属した者達同士で脳内で会話ができるようになったのよ。」
「やはりそうでしたか。先ほど意味不明な雑音が頭の中に響いていましたがそれなのですね。」
「そこまで気付いているのなら話が早いわね。ただし、それは、その魔力量によって、距離が変化するのよ。」
「なるほど、ドラゴン様と隷属しているからかなり距離が離れても可能なのですね。」
「残念ながら違うのよ。あの土のドラゴンはある事情でこの人に隷属しているから、こいつが中心にいるの。だから、こいつの魔力量なのよ。もっとも、ドラゴンの魔力量を安定して受け止めるだけの魔力量を持っていないとだめなんだけどね。もうわかるでしょう。」
「そうでしたか。私はてっきりドラゴン様に隷属してその魔力量を貸していただいているのかと思っていましたが、浅慮でした。」
「まあ、普通そう思うわよねえ。」
『なーんだばれたのか、つまらんのう』
「あんたが馬鹿でかい声出すから、他の人にまで聞こえているのよ」
『そうであったか』
『まあ、他言語で話しているから雑音にしか聞こえていないので助かっているわ。』
『にしても、レイはすごい早さでここまで向かって来ておるぞ。どうなっておるのじゃ。』
『ああ、森の中を通っていますからねえ。』
『それがどうした。』
『レイは、地面から跳躍するのではなく、木の幹を蹴って跳躍しています。ですので、木に跳ね返ったボールのように加速し続けます。』
『走った方が速くないか?』
『森の中では着地すると草が邪魔をして視界が狭いのです。しかし、草の上を跳ぶと視界が広いので、かなり先まで見通せます。』
『そういうことか。』
「おお、到着じゃ速かったのう。とりあえず薬を・・・おう、これを使え。わかったレイ、なでて欲しいのじゃろう褒めて欲しいのじゃろう、よーくやったほれほれ、全身なでまくりじゃ。ほれほれ」
『なんかくやしいです。』
『いや、ユーリ、わしがおまえをなで回したら気持ち悪いだけじゃろう。』
『はい、でもなんかレイのうれしさいっぱいの感情がなんかくやしいです。』
『わかった、そっちで今日の活躍をあやつにいっぱいなでなでしてもらえ。』
『はい』もうね、みなさん感情ダダ漏れですね。
「なにかユーリさんうれしそうですが、何か話していたのですか。」
「まあ、そうね、頭の中の会話は感情まで伝わるのよ。わかるでしょう?」
「ええ?そうなんですか?隠し事はできませんねえ。」
「そうよ、好きとか嫌いとかうれしいとか悲しいとかダダ漏れな訳なのよ。」
「それは、すごいですね。いろいろと」
「そういうことよ。だから家族としての連帯感は他の家族と比べものにならないわね」
「恥ずかしくないですか。そのなんというか」言いよどんでいる
「ああ、好きという感情はね。私とモーラ以外は、こんなやつが好きというところから隷属しているから、そう問題はないのよ。問題は、隠し事ができないのよ。不安とか不満とか悪意とか嫉妬とかね。心を冷静にして会話すれば少しは伝わらないのだけれどね。」
「はあ、そういうものですか。」
「まあ、悪意は幸いないわね。嫉妬もちゃんとお互い解消しているから大丈夫だわ。でもねえ、こいつのエロい気持ちはねえ。ダダ漏れにしているから。」
「よけいなことは言わないでください。だから貴方たちは、年齢とかサイズとかいろいろと私のエロの対象ではないって言っているでしょう。」
「そうね、でもたまにでるじゃない。チラリズムが良いとか。」
「それは、まあそうですけど。」
「わりい、ということは、それらもみんな許容しているということなのか。」
「ええ、そうです。慣れますよ。」パムが言った。そういいながらも意外に照れている。
「だって、尊敬している人のエロの部分なんてあまり知りたくないだろう。普通」
「ええ、でもそういうところもひっくるめて好きになっていますから。」恥ずかしそうにパムが言う。うわ、萌えますねえ。
「あ、今ムラムラしてますね。」
「ええ、ムラムラしています。」
「そんな、私にムラムラするんですか?」頬を染めないでくださいもっと萌えてしまいます。
「いや、可愛いなあと思っていますよ。」
「これは、あなたとは隷属はしないほうが良いですね」
「うちが特殊なんだと思いますよ。なんせ出来損ないの魔法使いですからね。」
「いいんですか、そこまで話して。」
「私は、正式な隷属がわからないので。もしかしたら本当の隷属は、お互いの感情は伝わらないのかもしれませんので。」
「いや、普通の隷属は感情なんて相互通行しないでしょう。」
「そうですよね。安心しました。」
「さて、くだらない話は終わりにしましょう。そろそろ着いたみたいよ。」
扉を開け全員で出迎える。前回の獣人の時と一緒だ。馬車から降りたフードをかぶった2人の姿を見てあの子は一目散に走り出し、小柄な方に抱きついた。
「お母さん」正確に言葉になっていなかったがそう言ったのだろう。その後はお互いに座り込んでしまいただただ泣いていた。もうひとりはその二人を抱きかかえ二人もそれを受け入れ今度は3人で泣き始めた。他に3人の魔族が降りてきて、その様子を見て泣いている。
扉の方にいた獣人3人も同様に泣いている。私達はその様子に涙を流すこともなく、全員が、この場所を見張る小高い丘に人影を見ていた。
「行きますか。」
「いや、泳がせます。」私は手を前に出し風に乗せるように何かを放った。エルフィは、馬車を厩舎にいれ、レイは、私のところに来て命令を待っていた。いや、なでなでを要求していた。
落ち着いたところで全員に声をかける。
「とりあえず中に入ってください。お話があります。」私は怒りのオーラを声に乗せていたようで、全員がビクッとして、なんかすごすごと家の中に入ってきました。まあ、本当に怒っていたのですけど。
各部屋から集められた椅子を居間に持ち込み、全員がテーブルを囲んでいる。全員といってもスペースが限られるため、何人かは椅子のままですけど。
「さて、元魔王様、何か言いたいことがあれば言ってください。」察したのか、テーブルに手をついて深々と頭を下げる。
「このたびは、あなたとその家族を巻き込んで申し訳ありませんでした。知人でも何でもない貴方たちを今回の騒動に巻き込んだのは私の一存によるもので、その責も私にあります。どのようなことでも罰を受けます。ですから、ここにいる他の者達には何の責任もありませんのでご容赦願いたい。」
思わず吹き出しかけて、アンジーに足を踏まれ、反対側のモーラからは、肘でどつかれました。
スペースに余裕がなく立っているパムとメアさんに笑われていました。
「私の謝罪がなにか不興を買いましたか。」怪訝そうに元魔王は私を見る。
「いえ、まるでだれかにそう言えとそそのかされたくらいに想定した謝罪でしたので、つい」
「ああ、おおかたドラゴンの里か魔法使いの里からの入れ知恵じゃろうなあ。」その言葉に喉を詰まらせる元魔王。隣の妻は青ざめている。
「どこまでお知りになられているのですか。」
「普通そこは「ご存じなのですか」、じゃろう?」
「私達は何も知らないわよ。私達のあくまで推測よ。まったくあいつらろくでもない連中だわ」アンジーが付け加える。
「まあまあ、で、私が貴方たち夫婦とその子が死んだら勘弁してやると言ったらどうするんですか。」私は真顔でそう答える。
「え?」予想外の反応に戸惑っている。
「そんな答えが返ってくるとは思っていなかったと言う顔ですが、本気なんですよ。実は。」
「・・・・」
「さて、もうお二方、やっと到着しましたので、その方を招き入れてから話を続けましょう。」
「おう、やっと来たか。遅かったのう」扉を開いてボロボロになった2人が入ってくる。
「何なのよあの結界は。」エリスさんの登場です。
「どうして僕までこんな目に」ミカさんの登場です。
「どうしてそんなにボロボロなのですか、私の家の結界なんて簡単に解除できるのではありませんでしたか?」
「はいはい、そうですよ。前回もかなりかかりました。トラップも散々です。しかもなに、今回のはひどすぎない?何もない空間からたらいは降ってくるし、熱湯はかけられる。しまいには、冷気と氷とか。遊びすぎなんじゃ。」
「それは、あなた専用のトラップですから他の人にはありません。そうですか。もっと生死をかけたものが良かったですか?次からは、そうしますね。」
「ちょっとそれどういうこと」
「あなただから、それで済んでいるということです。わかりませんか?突然の来訪は、死に直結していると言っているんですよ。それとミカさん。」
「はい。」
「ドラゴンとして人となれすぎです。これは、私が水のドラゴンの方には話していて伝わっていると思っていたんですが、残念です。ちゃんとしたスタンスを持ってください。その結果がこれですよ。人に甘えるのもいい加減にしてください。本当に人に殺されますよ。」
「そんな。」笑っているミカさんに怒りを覚えた私は、ならない指を動かし、お二人にそれぞれ縄状の物でぐるぐる巻きにした。
「何をするんですか。」
「あなたは、人に気を許しすぎていると言っているんです。その縄は少しずつしまっていきます。そこから逃げるなり巨大化するなりして脱出してください。」
「巨大化したら皆さんが」
「気にしなくて良いです。実際、脱出できませんから。」
「ならば、・・・そんな巨大化できない」
「だから人に気を許してはいけないと言っているんです。」
「でも、モーラ様は。」
「モーラは、私の家族です。私に何かあったら必ず動くでしょう。私も同じです。ですがあなたは違います。いつからかは知りませんがドラゴンの里の側についた時から私にとっては敵です。ですから今は敵です。エリスさん、これまでいろいろありがとうございました。ギブアンドテイクと思っていましたが、あなたが魔法使いの里についていますから、敵です。2人とも敵です。ここで死んでください。」
「そ、そんな」
「お主もう許してやれ、相変わらず過激な事を言う。」
「モーラがそう言うのでしたら。どうです、その縄はずれますか?なんならこのまま締め上げながら話を続けますか。死ぬ寸前まで。」
「わ、わかりました。許してください。」
「私も、許してね、じゃない許してください。」
「わかりました。」指を鳴らす真似で縄を解除する。2人とも座り込む。
「メアさん申し訳ありません。お二人に冷たい水をさしあげてください。」
「わかりました。」2人の水を飲む音が聞こえるくらいの沈黙が部屋を包む。
「相変わらず、突然ドSが発動するのう」
「これまでの傾向で言うと、ためてきた怒りが敵を発見できた時に発動しているようね。」
「ああ、そうかそうじゃな」
「なるほど、そうですね」
「そうか~」
「うんうん」
「なんでみんな頷いているんですか。まあ、確かにそうですけど。」
「じゃが、使いの者に当たってもなあ」
「直接乗り込んだら戦争ですよ。だから使いの者に私の怒りの信憑性を伝えて欲しくてですねえ。」
「しかし、これだけ付き合いの長い者にまで躊躇なく発動するとなると人としてどうなんじゃ。」
「まあ、そうなんですけど、信じていたのにだまされたってのが大きいですねえ」
「全員今の聞いたじゃろう。こやつは裏切られるのが一番嫌いなんじゃ。見ていてようわかったな。なに、こやつは、先に正直に話してくれれば、何もしないし協力さえしてくれる。順番を違えぬ事じゃ。」みんなうんうんと頷いている。
「さて、これで全員らしいのでなあ、話を聞こうか。とりあえず、こやつが元魔王様に言った「死んでくれ」は、保留じゃ。わしらが誤解していたら困るのでな。わかっているとは思うが、話す内容に嘘やねつ造や隠すという行為があった場合、どんなことが起きるか、たった今わかったろう。素直にすべて話せ。」
全員が言い出せずに戸惑っている。
「話しづらそうね、なら、元魔王様、あの里を出るところから話して欲しいのですけど。」アンジーが元魔王様を見ながら言った。
「はい、それでは、私から話します。」
「その日は、朝に第1陣が到着し、私夫婦と子供の3体の死体が届く予定でした。しかし、届くことはなく、私達のエクソダス計画がそこで破綻しました。しかし、想定もしていたので、次案である家を焼いて私達が失踪したことにする。という案に変更せざるを得ませんでした。」
「第3陣が来た時にまたしても想定外のことが起きました。当初の計画では、間者を殺すこととしていて、私が反対してそれをしないこととしたのですが、第3陣の馬車に乗ってきた者達が、間者とその家族を殺し、私達夫婦をも殺そうとしたのです。」
「家族もですか?それは間違いではありませんか、家族は皆、生きていましたが。」パムが、あわてて確認する。
「残念ですが、殺されていたのは皆男だと聞きました。間者には女もいたのです。」
「なるほど、殺された家族とは間者が妻で間違って夫の方を殺したと、里に残っていた家族のうち、間者がまだいたということですか。」
「その辺は、私も知りません。間者の情報は何一つ私には知らされていなかったのです。ただ、この里に住み始めた頃、間者には男も女もいるので注意してくださいと言われていましたので。」
「何度も話の腰を折ってすいませんが、里に住み始めた頃から間者がいることを知っていたと言うことですか。」現地に行ってきたパムが驚いた表情で再び発言する。
「少なくとも私は知らされていました。さすがに住んでいる者すべてに話すわけにもいかず、会話する時などに用心していただけですが。」
「すいません、話を続けてください。
「はい、そして、襲われた時、妻をかばい傷を受けました。妻は、あわててこの子の部屋に駆け込み転移の玉を渡し発動させました。」妻が頷いている。
「妻がこの子を転移させたのを見て、襲ってきた者達は、それ以上攻撃せず逃げていきました。その時には、何が何だかわからなくなり、第3陣の馬車に乗って移動して、領地を出た後、馬車から逃げ出しました。」
「それはなぜですか。」
「この子を探すためです。」
「どうやって探すつもりだったのですか。そもそもその転移の玉はどこから手に入れたのですか。」
「まず、この子のいる場所は、この子の服に縫い付けた小さな水晶をたどればわかるようになっています。しかし、水晶の反応が消えてしまったのです。」
「なるほどこの結界か。」
「私達は慌てました。近づけば近づくほど手元の水晶が輝くようになっているはずなのに消えてしまった。もしかして、何か良くないことが起きたのかと。それで、この転移の玉をくれた人たちに連絡を取りました。」
「なるほど、その転移の玉がなければ元魔王様も転移できないと。転移の魔法を持っていないということなんですね。」
「はい、転移の魔法を持っていたなら、その手の者から3人で逃げることもできたでしょう。しかもその玉は転移発動までの時間も速いものでした。相当高価な物だと思われます。」
「そうそうもらえる物ではないわよね。」
「はい、私が魔王に就任した時にもらった物ですから。」
「なるほど、でも、直前に誰かに渡しませんでしたか?」
「よくおわかりですね。里を移すにあたって、根回しのためにドラゴンの里と魔法使いの里に行きました。その時に持ってくるよう言われていまして、お渡したところすぐ返してくれました。」
「なるほどな、ようやくわかったわ。そういう仕切りか。」
「さすがにずる賢いですね。どちらかわからないように両方に持ってこいと。」
「何かお気に障るようなことを言いましたか。」何をびくついているのか、元魔王なのに。
「いいえ、あなたにではありませんよ。続けてください。」
「それで、使いの者を双方に送りまして、何か情報が欲しいと言ったところ、その方角で唯一確認できない場所があるので、その付近ではないのかと聞かされました。それが、こちらでした。」
「なるほど、この強固な結界は、何もないように見えて調査不可能な地点と認識されましたか。うまい言い逃れですね。」
「理屈が通っているところが悔しいですねえ」
「続けてもよろしいですか。」
「すいません、お願いします。」
「その方角に向かいましたが、さすがに馬が使えず、歩きとなりましたのでかなり時間がかかりましたが、やっとの思いで到着しました。しかし、水晶の反応もなく落胆していると様子を探っていた獣人の子達から連絡が入り、そこに暮らす魔法使いが保護しているという噂があると言いまして、様子をうかがっていたのです。ただ、あそこの住人にはうかつに近づいてはならない。現魔王と対立していると聞かされ、実際、家の周囲には人族以外の対魔族、対獣人の結界が張り巡らされ、近づける状態ではなく。しかたなく周囲から見守るしかありませんでした。」
「あー、確かにねえ魔族からの襲撃よけにかなり多重の結界を敷いていたわねえ。」
「確かに、今までの経験上、魔法使いやら魔族やら獣人が襲ってきていましたからねえ。すべてに対して対策を取っていましたから。そりゃあ近づけないですねえ。」
「笑えない話じゃなあ」
「でも、私たちは定期的に町に買い物には行っていましたよね。」
「はい、しかし、我々魔族には近寄りがたい方が乗っておられました。」
「あー、そうか、今回は必ず天使様が乗っていましたねえ。」
「はい、我々が近づいて行っても逃げられるだけだと。逆にそこにこの子がいることが確信できました。ですので、近くに見張りを置かせていただき、あの子がいることを確認できたら接触しようと。思っていました。」
「場所はあの洞窟じゃな。」
「はい、土のドラゴンの恩恵の残っているあの場所は魔族が身を隠すにはちょうど良かったのです。」
「しかし、逃げ出したではないか。」
「はい、当初から見張りを交代でつけていましたが、その子達が捕まった段階で、一度この場所から逃げることに決めておりました。ですので、あの洞窟からすぐ逃げ出しました。」
「どうやって、捕まったことがわかったのかな」
「それは・・・」
「私達は、元魔王様に隷属しているからです。」
「ああそういうことね。」
「あの変な球体に閉じ込められた時につながっていたものが切れた感じになりました。たぶんそれでしょう」
「はい、絆が切れた段階で逃げる算段をしてすぐそこから逃げました。」
「むしろ逃げない方が見つからなかったのではありませんか。」
「ですが、一刻も早く逃げた方が良いと言われていました。」
「誰にとか一応聞くけど、答えないわよね」
「はい、聞かれても話すなと言われています。残念ながらお話しできません。」
「なるほど、我々に、見つけさせる気が満々ですよね、それ。」
「あと、この者達は、元魔王が拉致されているとしかも他の獣人達も捕まっていると話していましたけど、話が食い違っているんですが。」
「それについては、私たち家族と共にいた私の元親衛隊の者達が、あえて身内にその情報を流していました。我々を狙っている者達を攪乱する目的で。もう一つは、あなた達が元魔王夫婦とその獣人達を絶対探すであろうと、そうすれば接触する機会もできるのではないか。その上で説得して、その子をお渡しいただけるのでは、と思っておりました。」
「なるほど、実際に獣人の方々は拉致されてはいないと言うことですか。」
「最初の段階で、連絡のつかない者はいなかったと思います。」
「なるほどね、どんどん悪い方に動いていたわね。この後に及んで嘘をついているとか。」
「ああ、元魔王、お主も乗せられていた口じゃな。」
「そうなんでしょうか。」
「正直、あなた魔王には向いていないわよ。そんなふぬけでよく魔王をやってこられたわね。」
「はい、この子が生まれてから毒が抜けたというか、なんというか」
「まあよい、さて、だいたいわかったわ。まあ、本当の黒幕までたどり着けぬが。ミカ、わしの名付け子たるミカよ。それと、魔法使いたるエリス、いやエリス嬢ちゃん。何か良い足りないことはないか。」
「今回の・・・」エリスがなにか言いかける。
「おおっと、言い訳は聞かんぞ。謝罪もじゃ。今回の件の元魔王が話した内容に相違点があれば聞きたい。付け加えることができれば聞きたいそれだけじゃが。何かあるか。」
「ありません。」ミカは、ただそれだけを言った。それを見ておどろくエリス。
「私の立場を理解してくれるのかしら、土のドラゴン。今はモーラと呼べば良いかしら。」
「そんな話は聞いてはおらん。元魔王の話に相違はないのか、付け加えて話せることがないのかと聞いている。あれば話すがいい。」
「ないわ。」歯がみしながら下を向いてつぶやくエリス。
「だそうじゃが、おぬしどうする。」私を見て言わないでくださいよ。わかっているくせに。
「やはり一家心中でしょうねえ。」元魔王一家と獣人達が驚く。エリスもミカも。私達は動揺していない。
「それはないだろう、この子を保護していたんだよな」獣人の男が言った。
「ええ、町の人がどうして良いかわからず、困っていて、町の人がかわいそうでしたから」
「え?」
「この子のためではありませんよ。預かった手前ちゃんと世話をしないと世間の風評が悪いですし。」
「なんだと」立ち上がりかけるのを隣の獣人が抑える。
「だから、私達に事前の相談もなく勝手に騒ぎに巻き込んでおいて、その尻拭いをさせようと言うんです。その結果、誰かが責任をとる。当然のことでしょう。」
「・・・・」
「良いですか、貴方たちは、領主に不満があり勝手に里を出て都合良く死んだふりをして新しい里を作って、そこに移動して幸せに暮らそうとした。しかし、途中で邪魔が入り、断念して逃げ出した。そして、何かしらないけど便利な玉で子供はどこかへ逃がし、自分たちも逃げた。その子を探すことまで人にたより、その結果その子を保護した私達は迷惑をかけられている。迷惑をかけたことに謝罪はしているけど、子供を保護したことに感謝もせずにね。」
「あ・・・」
「あじゃないんだわ、子どものことをないがしろにしすぎではないのですか?正直ちょっとひきますよ。しかも、町に着いたら盗みをさせて私達に助けさせて、もしかしたらあの時にその子は知らないから勝手に殺して良いですよと私が言わない保証があったんですか。
それと、ここまで大がかりな話だと知っていたら、あの子のことを知らぬ存ぜぬで放逐していましたよ。人の善意をなんだと思っているんですかね!聞いていますか魔法使いさん、ドラゴンさん」
ミカとエリスがびくっとしている。
「今日は2回目じゃなあ切れるの。しかし、ものすごいオーラじゃな。」
「まあ、怒りのぶつける先が違うのにイライラしているんですけどね。」そう言ってならない指をパチリと鳴らす。手から糸が垂れていてその糸を炎が伝って玄関の外に出て行く、しばらくして扉の外からギャアアアアアと人の叫び声がする。扉を開けて炎の続いている先に行くと火だるまになった人がいた。
「意外に近くにいましたねえ。久しぶりですネクロマンサーさん。あなたですよね。」
「ああ、そうじゃ。どうしてわしがいると思ったのじゃ。」
「いや、あの見張っていた獣人さんをさらに見張っていたじゃないですか。近づいた時にこの糸を絡ませておいたのですよ。どこかに報告に行くのかと思ったらずーっとこちらの様子をうかがっていましたよねえ。」
「それが任務じゃからなあ。」燃えながら話をしている。
「さて、そろそろ本体に逢いたいですねえ。」パチリと指を鳴らす真似をすると。
「は?」というゾンビの声の後「うぎゃあ」と言う声が近くの木からして、小さい炎が見えたあとドサリと音がして何かが落ちた。
「パムさん、メアさん連れてきてください。」
「はい」全員で扉の前で待っていると、小男が連れてこられた。左目を手で押さえている。
「初めましてネクロマンサーさん、なんか新鮮ですねえ、こうしてお顔を拝見できるなんて。」
「わしをどうする気なのか。」
「どうするもこうするも、殺すしかないじゃないですか。あなたをここに送り込んだ黒幕のことも話す気はないんでしょう?」
「だったら早く殺せ。」
「取引しましょうよ。私は殺さない、代わりにあなたは魔族の遺体を3体見たことにする。どうです?いい取引でしょう。」
「そういうことか。いいだろう約束しよう。」
「じゃあ契約の儀でもしますか。契約書なら用意しますよ」
「いいぞ、契約成立だ。見せてみろ。ああ、いいぞ、契約終了後もわしを殺さない。間違いないな。」
「では、ちょっと頭に触りますね。」
「あ?何をする。あ、ああ、確かに死体を見た。黒焦げの死体じゃ。近くで見たから間違いない。」
「いいですか?思い出しましたか。では、報告に行ってください。」
「そうする。ではな。」契約書をもたずにいなくなってしまった。
「これで証人はできましたね。」
「催眠か。」
「まあ、そのものまねみたいなものですよ。効果は不明です。」
「さて、中に入って続きを話しましょう。」
「いや、怖いです。」ミカが怯えている。あなたドラゴンですよね。
「帰りたいですか?別に帰っても良いですけど。」
「いや残ります。何か責任取らされそうなので。」震えながら踏みとどまるミカさん。
「残念ですね、帰ったら全部ドラゴンの里のせいにできたのに。」
「いるも地獄、帰るも地獄ですか。」ミカの尻をモーラがポンポンとたたいた。
再びぎゅうぎゅう詰めの居間にそろっている。
続く
「そうね、獣人達のところは後回しにしないとだめね」
「どちらも同じ所のような気がしますけどね~」
「そうなのか?監禁する目的が違いそうじゃが」
「そもそも、元魔王なら殺してしまえば済むところなのに殺さずにいるのは、どうしてでしょう~きっと引っ越し先を知りたいという所じゃないですか~」
「確かにそうじゃな。それなら一緒で済むのじゃが」
「そんなに大げさに里の人達を拉致しても意味は無いような気がしますけど」メアさんが珍しく発言する。
「うむ、むしろ近づかなくなりそうな気もするなあ。」
「命の危機があれば、早急に救いに来ますよね。」
「ああ、でも新しい里の方はそれを知るすべはなかろう。」
「拉致した側も拉致はしてみたものの連絡が取れないとかですかねえ。」
「それなら一度解放して監視を続けた方が良さそうですがねえ。」
「その仲間の方が転居先を知っている。けど、知らない振りをしている。いつかくる連絡を待っている振りをしている。なので、どっちかわからないから解放もできないというところですかね。」
「それだって監視で済みますよ。でも、元魔王が転送魔法を使えるとなれば話は違ってきますが、」
「使えばすぐ逃げられるのに?」
「使えることがばれるのがまずいということでは、ないでしょうか」
「そういえば現魔王が言っていましたね、転送できれば戦況が一気に変わると。」
「確かに、魔族はそれを手に入れたいということですか。」
「現魔王は、転移魔法を知らないのか知っていながら使わないのかですかね。」
「現魔王は、使えると思います。でもこの世界では使わない、使うつもりがないと思います。」アンジーが言った。
「人族、魔族どっちも、転移魔法が存在し、恒常的に使えることを知れば、研究にやっきになりそうじゃ。」
「元魔王は、里から逃げたときには転移魔法を使っていませんよね。」
「どこからか逃げ出したとなっているな。あそこは出る者には干渉しないようになっているはずじゃなあ。」
「はい、入るのは結界が阻み、出る者は干渉されません。それは、身をもって確認しました。」パムが言った。
「誰も見ていないときに転移魔法を使ったかも知れませんねえ」
「それはそうじゃな。誰にも見られていなければ使ってもよかろう。」
「遠隔地まで転移すると、転移魔法を使ったことがばれますよ。」
「また話が飛んだな。」
「ええ、ポイントを絞りましょう。どこにいるかを探す。闇雲に探しても意味がありません。どこかから情報を取らないとなりません。」
「やはり各都市の魔法使いから情報を取ることになるかのう。」
「都市にいるとすれば、異種族が歩き回っても問題ないくらいの大都市となりますね。」
「あとは、ど田舎かな。」
「まさか、うちの周りとかじゃないでしょうね。」
「そんなわけあるか。わしの縄張りにそんな上級魔族が来たらすぐわかるわ。」
「でも、結界を張ったこの家の中にいましたよね。対魔族結界の中にいたらわからないんじゃ・・・」
「!!!まさか。」椅子から立ち上がり、扉を開けて外に出る。すぐに羽ばたく音が聞こえる。
「そんなことありますか?」
「まあ、念のためにね。一番潰しておかなければならない可能性だから。」
「どうしてですか?」ユーリが尋ねる。
「私たちに濡れ衣を着せるには一番じゃない?私たちが拉致していた。私たちなら気配を消すことも可能だった。とね。現に魔族の子はこの家の中にいて周囲からは気配を消しているのだから。」アンジーが諭すように話している。エルフィまでうんうんと頷いている。
「そこまで知っているとなるとまた見方が違ってくるけどね。」つぶやくようにアンジーが言った。
「でも、あの子が来て結界を強化してからもモーラ様は自分の洞窟へ何度も行っていますよ。」メアがそう指摘する。
「そうよね、結界の中から何度も自分の巣に戻っているわ。」
「それは、今の洞窟ですよね。」パムは、確認のため尋ねたようだが、全員の頭の上にはてなマークが浮かび上がる。
「そういえば、昔モーラが住んでいた洞窟がありますね。その洞窟は、魔族や魔獣が寄ってこないようにモーラの匂いやらなんかで結界が張ってあったはずです。」私は思い出して告げた。
「それってもしかして、モーラの結界の中に入れば魔族からは逃れられるということですか。」
「どういう結界かは聞いていませんので、どこまでのものかは知りませんけれど、」
『やられたわ』モーラの叫びが頭に響く。
『どうしました?』
『洞窟を見に行くついでに、今、お主らが話していた前に暮らしていた洞窟を見に行ったら、誰か生活していた跡があったわ』
『それは、今は、逃げられたということですか。』
『ああ、さすがに今のドラゴンの姿では入れなかったのでな、子供の姿になって洞窟の中の様子を見たが、直前まで誰かがいたようじゃ。』
『数日前とかですかねえ』
『いや、火を使った痕跡がまだ熱かったからほんの数分というところかのう。』
『でも、そんな気配はありませんよね。モーラの探知外ってことですか。エルフィどうですか?』
『私もこの結界の中ですから、微細な気配はわかりませんよ~ちょっと外に行ってきますね~』
『お願いします。無理しないでくださいね』
『ラジャー』そうして、エルフィは玄関から外に出て森の中へ消えていったようだ。
「あななたちは、一体何をしているんですか?」奥の部屋から獣人達が出てきて言った。
「ああ、すいません。みんな考え事をしていて。」
「急に扉が開いた音がして、静かになったと思ったらまた扉が開く音がしました。何かあったのかと思って出てきてみれば、皆さん会話もせず黙ったままで座っている。何があったんですか」
「ああ、すみません。話の中で、この周囲に何かが起きている可能性の話になって、不安になってモーラが様子を見に行ったのです。そしたら、気になることがあったので、さらに調査をしにエルフィが・・・」
『発見しました~。かすかですけど数人が草原を移動しています。かなり速いです。』
『わしにまかせろ。エルフィ位置と場所のイメージを送れ。』
『イメージは無理ですよ~場所はこの辺です。』
『わかった。わしにまかせろ』
『モーラ暴走はなしですよ。くれぐれも注意して。』
『ああ、気をつける。は?ドラゴンの匂い?』
「モーラどうしました」モーラの動揺した感情に私は、思わず声に出してしまう。
「何を叫んでいるのですか」
「あ~あ」アンジーが頭を抱えている。
「何でもありません。何でもちょっとぼーっとして夢を見ていたようです。」私の言葉にアンジーがさらに頭を抱えている。顔を上げ諦めたような表情のアンジーが言った。
「出てきたのなら話をしましょうか。私たちはね、元魔王がどこにいるのか考えていたのよ。そしてね、とんでもない想像に行き着いたのよ。どこだと思う」
「この土のドラゴンの縄張り内のどこかにいるのではないかと考えたのですね。」賢そうな方の女獣人がつぶやくように言った。
「そう、ようやくそこに考えが至ってね、慌てて確認に行っている訳よ。ドラゴン自らがね。」
「そうでしたか。」そこで賢こそうな女獣人は、ため息をつく。
「あなた知っていたのね。」ジロリとにらみつけるアンジー。下を向いているその獣人。
「知らされてはいませんでしたが、薄々はそうではないかと思っていました。」
「知らされてはいなかったのね。」
「はい」
「それなら良いわ、あなたも私達と同じ被害者だもの」
「そんな被害者だなんて。」
「あのね、私達がそんなに温厚に見えるのかしら。まあ、細かい噂だから知らないのかも知れないわね。これまで私達は、どんな小悪党でも自分たちの家族のためなら簡単に両腕切り落としているのよ。わかる?」
「・・・・」
「じゃあ、あくまで仮定の話だけどね、貴方たちが私達の家を監視していたときに私達の家族に何かあったら、その件と貴方たちに関係があろうとなかろうと捕まえて、事実関係を確認するわ。その時に貴方たちの手足はすでにないのよ。逃げられないように切り落とす。あなた達は拉致されて、泣き叫んでも、真実が確認できるまで、手足をちぎったりつなげたりを繰り返して、痛みと絶叫の中で意識がなくしても、すぐ意識を取り戻させられ、それでも吐かないのなら、さらにその頭の中をかき回してのぞき込むくらいはやるのよ。そして貴方たちが何も知らないと、この件に関連がないと私達が納得するまで続けられ、納得した頃には、貴方たちの手も足も頭も使い物にならなくなっているのよ。わかる?そこまでの想定が、貴方たちを利用した人たちにあったのかしら。あなた達にその覚悟があったのかしら。」
全員の顔が青ざめている。
「私達はお気楽にドラゴンの庇護下でのほほんと生きているわけではないのよ。私達に害をなそうとすればその数倍の反撃を食らうということを、これまで、その人達の身に教え込んで来ているの。二度と手を出してこないようにね。そして、今回の生け贄はもしかしたら貴方たちだった可能性もあるの。これを聞いても被害者ではなかったと言えるのかしらねえ。」アンジーの話し方は、子供に諭すように淡々と話している。説教と言うよりは、説諭だ。しかし聞いている方は、青い顔をしている。ええ、家族もまた青い顔をしている。その言い方したら効果ありすぎじゃないですか。
「アンジーさん脅かしすぎじゃないですか。」私はさすがに口に出す。
「あら、本当にあなた切り落としたじゃない。小悪党の両腕を」何その邪悪な微笑み。あなた天使様ですよねえ。というか皆さん私を見ますか。怯えた目をしますか。
「いや、確かに切り落としましたけど、あの時は、事態は切迫していましたし、でもちゃんと元通りにくっつけましたよ。そんな何回も・・・ああ、相手が信じないから1度だけ切ってつなげましたけど、そんな何回も切ったりつないだりしてませんてば。」
「ほらね、この人はこういうことを罪悪感もなくできるところがまずいのよ。」
「だからちゃんと元通りにつけたっていっているじゃないですか。ねえ、メアさんフォローしてくださいよ。笑っていないで。」
「知りませんでした。それはさすがの私でも怖いですね。」あら、なんでパムさんがそれを言いますかね。しかも青い顔で。
「だからね、貴方たちがどんなつもりで引き受けたかわからないけど、私達はそんなに甘いものじゃないのよ。今更聞いても遅いでしょうけどね。」
沈黙は気まずい。そんな時、勢いよく玄関の扉が開きエルフィが入ってくる。その音にみんなびっくりする。
「あれ~お葬式ですか~、もうじきモーラ様が帰ってきますよ~大漁で~す。」
「大漁ってなんですか。何か釣れたのですか」
「はい~釣果は、見てのお楽しみ~」そう言ってエルフィはメアさんに耳打ちするとメアさんは台所に向かった。
『すまぬ、薬を用意してくれぬか。』
『なにがあったのですか、どうしても言うことを聞かない馬鹿がわしに斬りかかりよってな、けがをしたのじゃ。魔族なので、薬草を頼む。多めにな』
『そうですか。ならば、私が先に行きましょう。』ユーリが立ち上がりかける。獣人達が突然動いたユーリを見る。
『いや、馬では遠回りになるからレイが適任じゃ、馬車は迂回して来てくれ。』
『了解しました。』レイが、ぱっとその子の膝から降りて、玄関に向かって駆け出そうとする。立ち上がりかけていたユーリがそのまま玄関に行き扉を開けるために手を掛ける。
「薬を持ちなさい。」メアさんの声が聞こえ、台所から顔を出したメアさんが薬袋を扉に向かって投げる。ユーリが受け止め、レイの胸のポケットに入れ、レイは、外にかけだしていく。その後をエルフィが出て行った。程なく馬の鳴き声と馬車の車輪の音が聞こえ遠ざかっていく。
獣人達がぽかーんと見ているところ、ユーリが扉を閉めて何事もなかったように椅子に座る。再び静まりかえる。
「貴方たちは、頭で会話できていますね。」思案した後に遠慮がちに賢い女獣人はそう告げた。
「まあ、ばれるわよね。」アンジーが深いため息とともに答えを返す。
「どういうことだよ、」けがをしていた獣人が2人を見比べながら尋ねる
「私たちが特別なんだろうけど、隷属したことで、隷属した者達同士で脳内で会話ができるようになったのよ。」
「やはりそうでしたか。先ほど意味不明な雑音が頭の中に響いていましたがそれなのですね。」
「そこまで気付いているのなら話が早いわね。ただし、それは、その魔力量によって、距離が変化するのよ。」
「なるほど、ドラゴン様と隷属しているからかなり距離が離れても可能なのですね。」
「残念ながら違うのよ。あの土のドラゴンはある事情でこの人に隷属しているから、こいつが中心にいるの。だから、こいつの魔力量なのよ。もっとも、ドラゴンの魔力量を安定して受け止めるだけの魔力量を持っていないとだめなんだけどね。もうわかるでしょう。」
「そうでしたか。私はてっきりドラゴン様に隷属してその魔力量を貸していただいているのかと思っていましたが、浅慮でした。」
「まあ、普通そう思うわよねえ。」
『なーんだばれたのか、つまらんのう』
「あんたが馬鹿でかい声出すから、他の人にまで聞こえているのよ」
『そうであったか』
『まあ、他言語で話しているから雑音にしか聞こえていないので助かっているわ。』
『にしても、レイはすごい早さでここまで向かって来ておるぞ。どうなっておるのじゃ。』
『ああ、森の中を通っていますからねえ。』
『それがどうした。』
『レイは、地面から跳躍するのではなく、木の幹を蹴って跳躍しています。ですので、木に跳ね返ったボールのように加速し続けます。』
『走った方が速くないか?』
『森の中では着地すると草が邪魔をして視界が狭いのです。しかし、草の上を跳ぶと視界が広いので、かなり先まで見通せます。』
『そういうことか。』
「おお、到着じゃ速かったのう。とりあえず薬を・・・おう、これを使え。わかったレイ、なでて欲しいのじゃろう褒めて欲しいのじゃろう、よーくやったほれほれ、全身なでまくりじゃ。ほれほれ」
『なんかくやしいです。』
『いや、ユーリ、わしがおまえをなで回したら気持ち悪いだけじゃろう。』
『はい、でもなんかレイのうれしさいっぱいの感情がなんかくやしいです。』
『わかった、そっちで今日の活躍をあやつにいっぱいなでなでしてもらえ。』
『はい』もうね、みなさん感情ダダ漏れですね。
「なにかユーリさんうれしそうですが、何か話していたのですか。」
「まあ、そうね、頭の中の会話は感情まで伝わるのよ。わかるでしょう?」
「ええ?そうなんですか?隠し事はできませんねえ。」
「そうよ、好きとか嫌いとかうれしいとか悲しいとかダダ漏れな訳なのよ。」
「それは、すごいですね。いろいろと」
「そういうことよ。だから家族としての連帯感は他の家族と比べものにならないわね」
「恥ずかしくないですか。そのなんというか」言いよどんでいる
「ああ、好きという感情はね。私とモーラ以外は、こんなやつが好きというところから隷属しているから、そう問題はないのよ。問題は、隠し事ができないのよ。不安とか不満とか悪意とか嫉妬とかね。心を冷静にして会話すれば少しは伝わらないのだけれどね。」
「はあ、そういうものですか。」
「まあ、悪意は幸いないわね。嫉妬もちゃんとお互い解消しているから大丈夫だわ。でもねえ、こいつのエロい気持ちはねえ。ダダ漏れにしているから。」
「よけいなことは言わないでください。だから貴方たちは、年齢とかサイズとかいろいろと私のエロの対象ではないって言っているでしょう。」
「そうね、でもたまにでるじゃない。チラリズムが良いとか。」
「それは、まあそうですけど。」
「わりい、ということは、それらもみんな許容しているということなのか。」
「ええ、そうです。慣れますよ。」パムが言った。そういいながらも意外に照れている。
「だって、尊敬している人のエロの部分なんてあまり知りたくないだろう。普通」
「ええ、でもそういうところもひっくるめて好きになっていますから。」恥ずかしそうにパムが言う。うわ、萌えますねえ。
「あ、今ムラムラしてますね。」
「ええ、ムラムラしています。」
「そんな、私にムラムラするんですか?」頬を染めないでくださいもっと萌えてしまいます。
「いや、可愛いなあと思っていますよ。」
「これは、あなたとは隷属はしないほうが良いですね」
「うちが特殊なんだと思いますよ。なんせ出来損ないの魔法使いですからね。」
「いいんですか、そこまで話して。」
「私は、正式な隷属がわからないので。もしかしたら本当の隷属は、お互いの感情は伝わらないのかもしれませんので。」
「いや、普通の隷属は感情なんて相互通行しないでしょう。」
「そうですよね。安心しました。」
「さて、くだらない話は終わりにしましょう。そろそろ着いたみたいよ。」
扉を開け全員で出迎える。前回の獣人の時と一緒だ。馬車から降りたフードをかぶった2人の姿を見てあの子は一目散に走り出し、小柄な方に抱きついた。
「お母さん」正確に言葉になっていなかったがそう言ったのだろう。その後はお互いに座り込んでしまいただただ泣いていた。もうひとりはその二人を抱きかかえ二人もそれを受け入れ今度は3人で泣き始めた。他に3人の魔族が降りてきて、その様子を見て泣いている。
扉の方にいた獣人3人も同様に泣いている。私達はその様子に涙を流すこともなく、全員が、この場所を見張る小高い丘に人影を見ていた。
「行きますか。」
「いや、泳がせます。」私は手を前に出し風に乗せるように何かを放った。エルフィは、馬車を厩舎にいれ、レイは、私のところに来て命令を待っていた。いや、なでなでを要求していた。
落ち着いたところで全員に声をかける。
「とりあえず中に入ってください。お話があります。」私は怒りのオーラを声に乗せていたようで、全員がビクッとして、なんかすごすごと家の中に入ってきました。まあ、本当に怒っていたのですけど。
各部屋から集められた椅子を居間に持ち込み、全員がテーブルを囲んでいる。全員といってもスペースが限られるため、何人かは椅子のままですけど。
「さて、元魔王様、何か言いたいことがあれば言ってください。」察したのか、テーブルに手をついて深々と頭を下げる。
「このたびは、あなたとその家族を巻き込んで申し訳ありませんでした。知人でも何でもない貴方たちを今回の騒動に巻き込んだのは私の一存によるもので、その責も私にあります。どのようなことでも罰を受けます。ですから、ここにいる他の者達には何の責任もありませんのでご容赦願いたい。」
思わず吹き出しかけて、アンジーに足を踏まれ、反対側のモーラからは、肘でどつかれました。
スペースに余裕がなく立っているパムとメアさんに笑われていました。
「私の謝罪がなにか不興を買いましたか。」怪訝そうに元魔王は私を見る。
「いえ、まるでだれかにそう言えとそそのかされたくらいに想定した謝罪でしたので、つい」
「ああ、おおかたドラゴンの里か魔法使いの里からの入れ知恵じゃろうなあ。」その言葉に喉を詰まらせる元魔王。隣の妻は青ざめている。
「どこまでお知りになられているのですか。」
「普通そこは「ご存じなのですか」、じゃろう?」
「私達は何も知らないわよ。私達のあくまで推測よ。まったくあいつらろくでもない連中だわ」アンジーが付け加える。
「まあまあ、で、私が貴方たち夫婦とその子が死んだら勘弁してやると言ったらどうするんですか。」私は真顔でそう答える。
「え?」予想外の反応に戸惑っている。
「そんな答えが返ってくるとは思っていなかったと言う顔ですが、本気なんですよ。実は。」
「・・・・」
「さて、もうお二方、やっと到着しましたので、その方を招き入れてから話を続けましょう。」
「おう、やっと来たか。遅かったのう」扉を開いてボロボロになった2人が入ってくる。
「何なのよあの結界は。」エリスさんの登場です。
「どうして僕までこんな目に」ミカさんの登場です。
「どうしてそんなにボロボロなのですか、私の家の結界なんて簡単に解除できるのではありませんでしたか?」
「はいはい、そうですよ。前回もかなりかかりました。トラップも散々です。しかもなに、今回のはひどすぎない?何もない空間からたらいは降ってくるし、熱湯はかけられる。しまいには、冷気と氷とか。遊びすぎなんじゃ。」
「それは、あなた専用のトラップですから他の人にはありません。そうですか。もっと生死をかけたものが良かったですか?次からは、そうしますね。」
「ちょっとそれどういうこと」
「あなただから、それで済んでいるということです。わかりませんか?突然の来訪は、死に直結していると言っているんですよ。それとミカさん。」
「はい。」
「ドラゴンとして人となれすぎです。これは、私が水のドラゴンの方には話していて伝わっていると思っていたんですが、残念です。ちゃんとしたスタンスを持ってください。その結果がこれですよ。人に甘えるのもいい加減にしてください。本当に人に殺されますよ。」
「そんな。」笑っているミカさんに怒りを覚えた私は、ならない指を動かし、お二人にそれぞれ縄状の物でぐるぐる巻きにした。
「何をするんですか。」
「あなたは、人に気を許しすぎていると言っているんです。その縄は少しずつしまっていきます。そこから逃げるなり巨大化するなりして脱出してください。」
「巨大化したら皆さんが」
「気にしなくて良いです。実際、脱出できませんから。」
「ならば、・・・そんな巨大化できない」
「だから人に気を許してはいけないと言っているんです。」
「でも、モーラ様は。」
「モーラは、私の家族です。私に何かあったら必ず動くでしょう。私も同じです。ですがあなたは違います。いつからかは知りませんがドラゴンの里の側についた時から私にとっては敵です。ですから今は敵です。エリスさん、これまでいろいろありがとうございました。ギブアンドテイクと思っていましたが、あなたが魔法使いの里についていますから、敵です。2人とも敵です。ここで死んでください。」
「そ、そんな」
「お主もう許してやれ、相変わらず過激な事を言う。」
「モーラがそう言うのでしたら。どうです、その縄はずれますか?なんならこのまま締め上げながら話を続けますか。死ぬ寸前まで。」
「わ、わかりました。許してください。」
「私も、許してね、じゃない許してください。」
「わかりました。」指を鳴らす真似で縄を解除する。2人とも座り込む。
「メアさん申し訳ありません。お二人に冷たい水をさしあげてください。」
「わかりました。」2人の水を飲む音が聞こえるくらいの沈黙が部屋を包む。
「相変わらず、突然ドSが発動するのう」
「これまでの傾向で言うと、ためてきた怒りが敵を発見できた時に発動しているようね。」
「ああ、そうかそうじゃな」
「なるほど、そうですね」
「そうか~」
「うんうん」
「なんでみんな頷いているんですか。まあ、確かにそうですけど。」
「じゃが、使いの者に当たってもなあ」
「直接乗り込んだら戦争ですよ。だから使いの者に私の怒りの信憑性を伝えて欲しくてですねえ。」
「しかし、これだけ付き合いの長い者にまで躊躇なく発動するとなると人としてどうなんじゃ。」
「まあ、そうなんですけど、信じていたのにだまされたってのが大きいですねえ」
「全員今の聞いたじゃろう。こやつは裏切られるのが一番嫌いなんじゃ。見ていてようわかったな。なに、こやつは、先に正直に話してくれれば、何もしないし協力さえしてくれる。順番を違えぬ事じゃ。」みんなうんうんと頷いている。
「さて、これで全員らしいのでなあ、話を聞こうか。とりあえず、こやつが元魔王様に言った「死んでくれ」は、保留じゃ。わしらが誤解していたら困るのでな。わかっているとは思うが、話す内容に嘘やねつ造や隠すという行為があった場合、どんなことが起きるか、たった今わかったろう。素直にすべて話せ。」
全員が言い出せずに戸惑っている。
「話しづらそうね、なら、元魔王様、あの里を出るところから話して欲しいのですけど。」アンジーが元魔王様を見ながら言った。
「はい、それでは、私から話します。」
「その日は、朝に第1陣が到着し、私夫婦と子供の3体の死体が届く予定でした。しかし、届くことはなく、私達のエクソダス計画がそこで破綻しました。しかし、想定もしていたので、次案である家を焼いて私達が失踪したことにする。という案に変更せざるを得ませんでした。」
「第3陣が来た時にまたしても想定外のことが起きました。当初の計画では、間者を殺すこととしていて、私が反対してそれをしないこととしたのですが、第3陣の馬車に乗ってきた者達が、間者とその家族を殺し、私達夫婦をも殺そうとしたのです。」
「家族もですか?それは間違いではありませんか、家族は皆、生きていましたが。」パムが、あわてて確認する。
「残念ですが、殺されていたのは皆男だと聞きました。間者には女もいたのです。」
「なるほど、殺された家族とは間者が妻で間違って夫の方を殺したと、里に残っていた家族のうち、間者がまだいたということですか。」
「その辺は、私も知りません。間者の情報は何一つ私には知らされていなかったのです。ただ、この里に住み始めた頃、間者には男も女もいるので注意してくださいと言われていましたので。」
「何度も話の腰を折ってすいませんが、里に住み始めた頃から間者がいることを知っていたと言うことですか。」現地に行ってきたパムが驚いた表情で再び発言する。
「少なくとも私は知らされていました。さすがに住んでいる者すべてに話すわけにもいかず、会話する時などに用心していただけですが。」
「すいません、話を続けてください。
「はい、そして、襲われた時、妻をかばい傷を受けました。妻は、あわててこの子の部屋に駆け込み転移の玉を渡し発動させました。」妻が頷いている。
「妻がこの子を転移させたのを見て、襲ってきた者達は、それ以上攻撃せず逃げていきました。その時には、何が何だかわからなくなり、第3陣の馬車に乗って移動して、領地を出た後、馬車から逃げ出しました。」
「それはなぜですか。」
「この子を探すためです。」
「どうやって探すつもりだったのですか。そもそもその転移の玉はどこから手に入れたのですか。」
「まず、この子のいる場所は、この子の服に縫い付けた小さな水晶をたどればわかるようになっています。しかし、水晶の反応が消えてしまったのです。」
「なるほどこの結界か。」
「私達は慌てました。近づけば近づくほど手元の水晶が輝くようになっているはずなのに消えてしまった。もしかして、何か良くないことが起きたのかと。それで、この転移の玉をくれた人たちに連絡を取りました。」
「なるほど、その転移の玉がなければ元魔王様も転移できないと。転移の魔法を持っていないということなんですね。」
「はい、転移の魔法を持っていたなら、その手の者から3人で逃げることもできたでしょう。しかもその玉は転移発動までの時間も速いものでした。相当高価な物だと思われます。」
「そうそうもらえる物ではないわよね。」
「はい、私が魔王に就任した時にもらった物ですから。」
「なるほど、でも、直前に誰かに渡しませんでしたか?」
「よくおわかりですね。里を移すにあたって、根回しのためにドラゴンの里と魔法使いの里に行きました。その時に持ってくるよう言われていまして、お渡したところすぐ返してくれました。」
「なるほどな、ようやくわかったわ。そういう仕切りか。」
「さすがにずる賢いですね。どちらかわからないように両方に持ってこいと。」
「何かお気に障るようなことを言いましたか。」何をびくついているのか、元魔王なのに。
「いいえ、あなたにではありませんよ。続けてください。」
「それで、使いの者を双方に送りまして、何か情報が欲しいと言ったところ、その方角で唯一確認できない場所があるので、その付近ではないのかと聞かされました。それが、こちらでした。」
「なるほど、この強固な結界は、何もないように見えて調査不可能な地点と認識されましたか。うまい言い逃れですね。」
「理屈が通っているところが悔しいですねえ」
「続けてもよろしいですか。」
「すいません、お願いします。」
「その方角に向かいましたが、さすがに馬が使えず、歩きとなりましたのでかなり時間がかかりましたが、やっとの思いで到着しました。しかし、水晶の反応もなく落胆していると様子を探っていた獣人の子達から連絡が入り、そこに暮らす魔法使いが保護しているという噂があると言いまして、様子をうかがっていたのです。ただ、あそこの住人にはうかつに近づいてはならない。現魔王と対立していると聞かされ、実際、家の周囲には人族以外の対魔族、対獣人の結界が張り巡らされ、近づける状態ではなく。しかたなく周囲から見守るしかありませんでした。」
「あー、確かにねえ魔族からの襲撃よけにかなり多重の結界を敷いていたわねえ。」
「確かに、今までの経験上、魔法使いやら魔族やら獣人が襲ってきていましたからねえ。すべてに対して対策を取っていましたから。そりゃあ近づけないですねえ。」
「笑えない話じゃなあ」
「でも、私たちは定期的に町に買い物には行っていましたよね。」
「はい、しかし、我々魔族には近寄りがたい方が乗っておられました。」
「あー、そうか、今回は必ず天使様が乗っていましたねえ。」
「はい、我々が近づいて行っても逃げられるだけだと。逆にそこにこの子がいることが確信できました。ですので、近くに見張りを置かせていただき、あの子がいることを確認できたら接触しようと。思っていました。」
「場所はあの洞窟じゃな。」
「はい、土のドラゴンの恩恵の残っているあの場所は魔族が身を隠すにはちょうど良かったのです。」
「しかし、逃げ出したではないか。」
「はい、当初から見張りを交代でつけていましたが、その子達が捕まった段階で、一度この場所から逃げることに決めておりました。ですので、あの洞窟からすぐ逃げ出しました。」
「どうやって、捕まったことがわかったのかな」
「それは・・・」
「私達は、元魔王様に隷属しているからです。」
「ああそういうことね。」
「あの変な球体に閉じ込められた時につながっていたものが切れた感じになりました。たぶんそれでしょう」
「はい、絆が切れた段階で逃げる算段をしてすぐそこから逃げました。」
「むしろ逃げない方が見つからなかったのではありませんか。」
「ですが、一刻も早く逃げた方が良いと言われていました。」
「誰にとか一応聞くけど、答えないわよね」
「はい、聞かれても話すなと言われています。残念ながらお話しできません。」
「なるほど、我々に、見つけさせる気が満々ですよね、それ。」
「あと、この者達は、元魔王が拉致されているとしかも他の獣人達も捕まっていると話していましたけど、話が食い違っているんですが。」
「それについては、私たち家族と共にいた私の元親衛隊の者達が、あえて身内にその情報を流していました。我々を狙っている者達を攪乱する目的で。もう一つは、あなた達が元魔王夫婦とその獣人達を絶対探すであろうと、そうすれば接触する機会もできるのではないか。その上で説得して、その子をお渡しいただけるのでは、と思っておりました。」
「なるほど、実際に獣人の方々は拉致されてはいないと言うことですか。」
「最初の段階で、連絡のつかない者はいなかったと思います。」
「なるほどね、どんどん悪い方に動いていたわね。この後に及んで嘘をついているとか。」
「ああ、元魔王、お主も乗せられていた口じゃな。」
「そうなんでしょうか。」
「正直、あなた魔王には向いていないわよ。そんなふぬけでよく魔王をやってこられたわね。」
「はい、この子が生まれてから毒が抜けたというか、なんというか」
「まあよい、さて、だいたいわかったわ。まあ、本当の黒幕までたどり着けぬが。ミカ、わしの名付け子たるミカよ。それと、魔法使いたるエリス、いやエリス嬢ちゃん。何か良い足りないことはないか。」
「今回の・・・」エリスがなにか言いかける。
「おおっと、言い訳は聞かんぞ。謝罪もじゃ。今回の件の元魔王が話した内容に相違点があれば聞きたい。付け加えることができれば聞きたいそれだけじゃが。何かあるか。」
「ありません。」ミカは、ただそれだけを言った。それを見ておどろくエリス。
「私の立場を理解してくれるのかしら、土のドラゴン。今はモーラと呼べば良いかしら。」
「そんな話は聞いてはおらん。元魔王の話に相違はないのか、付け加えて話せることがないのかと聞いている。あれば話すがいい。」
「ないわ。」歯がみしながら下を向いてつぶやくエリス。
「だそうじゃが、おぬしどうする。」私を見て言わないでくださいよ。わかっているくせに。
「やはり一家心中でしょうねえ。」元魔王一家と獣人達が驚く。エリスもミカも。私達は動揺していない。
「それはないだろう、この子を保護していたんだよな」獣人の男が言った。
「ええ、町の人がどうして良いかわからず、困っていて、町の人がかわいそうでしたから」
「え?」
「この子のためではありませんよ。預かった手前ちゃんと世話をしないと世間の風評が悪いですし。」
「なんだと」立ち上がりかけるのを隣の獣人が抑える。
「だから、私達に事前の相談もなく勝手に騒ぎに巻き込んでおいて、その尻拭いをさせようと言うんです。その結果、誰かが責任をとる。当然のことでしょう。」
「・・・・」
「良いですか、貴方たちは、領主に不満があり勝手に里を出て都合良く死んだふりをして新しい里を作って、そこに移動して幸せに暮らそうとした。しかし、途中で邪魔が入り、断念して逃げ出した。そして、何かしらないけど便利な玉で子供はどこかへ逃がし、自分たちも逃げた。その子を探すことまで人にたより、その結果その子を保護した私達は迷惑をかけられている。迷惑をかけたことに謝罪はしているけど、子供を保護したことに感謝もせずにね。」
「あ・・・」
「あじゃないんだわ、子どものことをないがしろにしすぎではないのですか?正直ちょっとひきますよ。しかも、町に着いたら盗みをさせて私達に助けさせて、もしかしたらあの時にその子は知らないから勝手に殺して良いですよと私が言わない保証があったんですか。
それと、ここまで大がかりな話だと知っていたら、あの子のことを知らぬ存ぜぬで放逐していましたよ。人の善意をなんだと思っているんですかね!聞いていますか魔法使いさん、ドラゴンさん」
ミカとエリスがびくっとしている。
「今日は2回目じゃなあ切れるの。しかし、ものすごいオーラじゃな。」
「まあ、怒りのぶつける先が違うのにイライラしているんですけどね。」そう言ってならない指をパチリと鳴らす。手から糸が垂れていてその糸を炎が伝って玄関の外に出て行く、しばらくして扉の外からギャアアアアアと人の叫び声がする。扉を開けて炎の続いている先に行くと火だるまになった人がいた。
「意外に近くにいましたねえ。久しぶりですネクロマンサーさん。あなたですよね。」
「ああ、そうじゃ。どうしてわしがいると思ったのじゃ。」
「いや、あの見張っていた獣人さんをさらに見張っていたじゃないですか。近づいた時にこの糸を絡ませておいたのですよ。どこかに報告に行くのかと思ったらずーっとこちらの様子をうかがっていましたよねえ。」
「それが任務じゃからなあ。」燃えながら話をしている。
「さて、そろそろ本体に逢いたいですねえ。」パチリと指を鳴らす真似をすると。
「は?」というゾンビの声の後「うぎゃあ」と言う声が近くの木からして、小さい炎が見えたあとドサリと音がして何かが落ちた。
「パムさん、メアさん連れてきてください。」
「はい」全員で扉の前で待っていると、小男が連れてこられた。左目を手で押さえている。
「初めましてネクロマンサーさん、なんか新鮮ですねえ、こうしてお顔を拝見できるなんて。」
「わしをどうする気なのか。」
「どうするもこうするも、殺すしかないじゃないですか。あなたをここに送り込んだ黒幕のことも話す気はないんでしょう?」
「だったら早く殺せ。」
「取引しましょうよ。私は殺さない、代わりにあなたは魔族の遺体を3体見たことにする。どうです?いい取引でしょう。」
「そういうことか。いいだろう約束しよう。」
「じゃあ契約の儀でもしますか。契約書なら用意しますよ」
「いいぞ、契約成立だ。見せてみろ。ああ、いいぞ、契約終了後もわしを殺さない。間違いないな。」
「では、ちょっと頭に触りますね。」
「あ?何をする。あ、ああ、確かに死体を見た。黒焦げの死体じゃ。近くで見たから間違いない。」
「いいですか?思い出しましたか。では、報告に行ってください。」
「そうする。ではな。」契約書をもたずにいなくなってしまった。
「これで証人はできましたね。」
「催眠か。」
「まあ、そのものまねみたいなものですよ。効果は不明です。」
「さて、中に入って続きを話しましょう。」
「いや、怖いです。」ミカが怯えている。あなたドラゴンですよね。
「帰りたいですか?別に帰っても良いですけど。」
「いや残ります。何か責任取らされそうなので。」震えながら踏みとどまるミカさん。
「残念ですね、帰ったら全部ドラゴンの里のせいにできたのに。」
「いるも地獄、帰るも地獄ですか。」ミカの尻をモーラがポンポンとたたいた。
再びぎゅうぎゅう詰めの居間にそろっている。
続く
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