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第17話 3千対1
第17-3話 戦闘と終結
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草原に陣取った3千の兵士は、さすがに壮観でした。
私は、声が届くか不安でしたが、意外にも風が私の声を届けてくれるようです。
「聞こえますか、兵士諸君。まず、私は話し合いに来ました。ですので、話の途中で攻撃をしてきた場合、即座に反撃します。指揮官の号令なしにこちらを攻撃しないように。こちらには攻撃の意思は、最初からありません。もっともそちらが何か怪しい動きをしたら、私は、攻撃したくなると思います。その時は、その攻撃をした人にだけ、たぶん何か起こります。よろしいですね。」
もちろん返事はない。
「さて、私の方から兵士の皆さんに話したいのは、ひとつだけです。あなた達は、本当に国のためになると思って進軍していますか?事情も知らずにここに来ていませんか?貴方たちが進軍している先の家に住んでいるのは、たかだか10名に満たない他種族の集まりです。その者達を皆殺しに行こうとしているのですよ。わかっていますか。」
「そこで栽培している薬草はそこでしか取れない薬草で、それが手に入らなければ燃やせと命令されているんですよ聞いていませんか?」
もちろん返事は無い。
「そのような命令を下している王が本当に賢王なのですか。」
「このまま進んでその者達と戦い死んだとして、それは国のために戦っている聖戦と言えるのですか。国のために殉ずるのではなく、単なる国王の私利私欲のために死ぬことになりますよ。よろしいですか。」
「もう一つだけ付け加えるとすれば、ちまたの噂で聞いていませんか?壺の国に現れた天使様一行の話、迷いの森を助けた一行の話、それらに共通する魔法使いの存在を」
ここで兵士達の中にざわつきが感じられる。
「そのことを理解してなお、私の家を攻撃するのであれば、私は断固として反撃させていただきます。そして、容赦なく殺します。それを宣言します。」
やはり返事などあるわけが無い。
「そして、指揮官はどなたですか。」
全員が後ろの馬上の女性に振り向く。やはり王女様でしたか。遠目からでも十分、その存在は輝いていますね。
「これは、王女様、そして勇者様。このような場所で再会してしまうとは、悲しい限りであります。」
私はそこで膝をつき頭を上げる。王女の知り合いだということで、兵士達はさらに動揺している。
「お久しぶりです流浪の賢者殿、このような形であなたと再開することになろうとは夢にも思いませんでした。」
「私もです王女様、お目にかかった時に私はあなたに賢王たれと話しましたよね、その言葉をかみしめてもなお、この私に刃を向けますか。あなたが賢者と呼んでくれたこの私を」
「・・・・」
「そして、従えている勇者の方々、見渡すとあの時の魔法使いさんは、唯一の魔法使いはどうされました。ああ、引き離されてしまったのですね。」
「何を言う、あなたが殺したのであろう。あの子が死に際にあの魔法使いに殺されたと言っていたと聞いたぞ。」
「なるほど、それで私を倒しにこられたと言うことですね。私にそのような覚えはありませんけれど。」
「もしかして私は・・・・」
「その偽証を正して見せましょう。残念ながらこの世界に来て私は人を殺めたことはありませんよ。あの魔法使いとは誰のことでしょうね。少なくとも彼女は私を「あの魔法使い」とは呼びませんよ。賢者様と呼ぶでしょう。そうですか。ならば、私を殺して真実から目を背けなさい。でも、残念ながら私はあなたには殺されるつもりはありませんよ、なぜなら殺していないからです。まあ、こう言っても、もう無理なのでしょうね。」
「・・・・確かに、周りから、彼女の口からあの魔法使いと言っていたと聞いたが、どうしてあなただと思い込んだのだろう。」
「王女、だまされなされるな、その男は虚言使いですぞ。」
不意に王女のそばに現れた、僧侶姿の男がそう言った。
「誰ですかあなたは?」
私は、少しイラついた感じで言いました。
「私はこの国の上級国家魔法士である。お主の虚言などにだまされはしない。」
「あるほど、虚言使いはあなたですね。先ほどから私の周囲に魔法が突き刺さろうとしています。虚言と言うよりは言霊使いですか」
「なぜそれを。おまえ、魔法が見えるのか。」
「なるほど、この魔法たやすく解析できます。そして、このまがい物が!」
私の大きな声に一瞬にしてその場の雰囲気が変わる。
「な、何をした」
その男はなぜかうろたえている。やはり状況が変化したことを感じているようだ。
「何って、あなたの言霊を解除しただけですよ。皆さんを煽動して、ここまで誘導した。そうでしょう?」
「どうしてそれがわかる。」
「私に投げつけてきた言葉の魔方陣に書いてありましたよ?」
「貴様、やはり魔法が見えるのか。」
「はい、ですので解除も簡単でした。あんなゆるい魔方陣なんて見破ればすぐ解除できます。」
「ふふ、しかし、この派兵は国王の勅命だ、いまさら覆すことなどできはしませんよ。そうですよねえ王女様」
「ああ、確かにそうだな。」王女は、しかたなく答えた。
「父だから仕方なく従う。それは違うでしょう。父ではありますが一国の王なのですよ。その王が間違った道を国益とうそぶきながら私利私欲をむさぼってる者であることをあなたはすでに各地を回ってその目で見てきているのでしょう。目を背けるな!!いいかげん目を覚ませ!!その父を、賢王で無くなった父をそのままにしておくことが賢王の名を汚すことになるとなぜわからない。」
「しかし、父はこれまでも我が国をこうやって豊かにしてきているのだ。」
「確かにそうでしょうね。その国は栄えたでしょう。でも、殺された他の国の人たちはうらむでしょうねえ。」
「確かにそうかもしれない、だが、それでは、私がこれまで父の命令でしてきたこともすべて無意味な事になってしまう。それが恐いだけなのだ。父のことなんかもうどうでもいい。私は私がこれまでしてきた罪をどう償うか悩んでさらに罪を重ねていくのだ。」
「では、私の首を取れば、この首を持ってあなたの父君に差し出せば、その愚王に刃を向けてくれますか。どうせそこまでのこともできないのでしょう。所詮は貴族、市井にある貧しい民の言葉なんて耳を塞いで聞かないのでしょう」
「・・・・」
「では、兵士の皆さん、あなた達はどうですか。これだけの会話を聞いてそれでもなお私を討ちますか。いいでしょうお討ちください。でも、王女には首は差し出すつもりはありますが、あなた達には違いますよ。王女と違って残念ですが縁もゆかりもありません。ですから全力で戦います。それで死んでも悔やまないでくださいね。」
「やめてくれ、いや、やめてください。そんなことをしたら兵士達が、ここにいる兵士達がすべて死んでしまう。」
「大丈夫ですよ。私だって最初の詠唱で全ての人を殺すことは出来ないでしょう。次の詠唱に入る前に少しだけ隙が生まれます。その時に殺せるかもしれません。どうですか?3千人対1人ですよ。誰かひとりでも私の心臓を突き刺せばいいのです。ただ、突き刺して殺したからと言ってその人が生きている保証はありません。息がある内にその人だけなら殺せるでしょう。相打ちになることも考えてくださいね。むしろその確率が高いと思います。」
「何を恐れている。我々国家魔法士がこの者を魔法で捕縛する。動きを止めた後、一斉に攻撃すればいい、兵士達は安心して攻撃できる。」
そうして、私の周囲に突然、6人の魔法使いが現れ、詠唱を始める。それぞれの足元に魔方陣が作られ、そしてそれぞれを点として私を中心に大きい魔方陣が作られる。私の体にはそれぞれの魔法使いから光の縄のようなものが発生し、わたしの手足を拘束し始める。
「どうだ、我々が何の準備もなくここに布陣していたわけではない。お主を誘い込みここで拘束し、魔力を吸い取るためだ。しばらくはその拘束のなか魔力を消費していくがいい。どれだけ魔力があろうとも十分吸い取った頃に総攻撃をかけてやる。」
「そうですね、それでは、それまでの間、質問があります。魔法使いさん達、ああ国家魔法士でしたっけ。どれだけ他人の命をもてあそんできたのでしょうか。」
「そうだな、話してやろう。我々にとって隣国の人々など人とは考えていない。我が国の国民だけが上位民なのだ、それ以外の者など奴隷に過ぎない。だから我々の道具として有効に使ってやる。」
「魔族も獣人もそうですか?」
「ああ、それらはもっと下等だ。奴隷にもならん。殺すのみだ。」
「それは国王の考え方ですか。」
「私の考えは国王の考えだ。私はこれまで何万と人を魔族を獣人を殺してきた。それに対して国王は褒美をくれている。それが答えだろう。」
「そして、あなたについてきている魔法士さん達も同じ考えなのですね。」
「当然だ、やりすぎと意見する者もいたが、国王への反逆罪で死罪にしてきたわ。」
「なるほど、あなたは最低ですね。」
「何、たわごとを言っている。これから殺される身で減らず口か。ええいまだ、魔法を吸い取れていないのか。もっと吸い上げろ」
その上級魔法士とやらを覆う光が輝きを増す。すると、他の魔法士の光も輝きを増した。しかし、彼らは苦しそうだ。どうやら彼に魔力ごと操られているらしい。
「あなた達は、ここに陣を置き、魔方陣を構築して私を待ちました。でもね、あなた達が、ここに布陣する前に私がすでに到着して準備をしていたとは考えないんですか?」
「ふふん、はったりか?ここは、事前に斥候役が監視していて誰もいなかったのは確認済みだ、おまえは、町から馬で来たのであろう。間に合うわけがない。さらに、実際お主の体に効果が出ているではないか。強がりはよすんだな。」
「そうですか。私の演技力もまんざらではないですね。」
ぴっと指を鳴らす。体を縛っていた光の縄が綺麗に消える。しかしまだ魔方陣は残っている。
「それぞれの魔法使いさんが立っている魔方陣も見せてもらいました。大変綺麗に描けていますが、若干ほころびがありますよ。ですので」
私は、ひとりの方に向かって指を鳴らす。
その魔法使いの脇腹のあたりに赤い液体が飛び散り、脇腹を押さえて膝をつく。
「ほころびがあるのでそこに振動を起こしました。痛いですか?」
さらにその隣の人に指を向け指を鳴らす。すると、今度は太ももに赤い液体が飛び散り、足を押さえている。次々と魔法使いに向けて指を鳴らし、それぞれが、傷ついて倒れそうになっている。しかし、それでも結界は発動している。
「なるほど、あなたが強制的にこの結界が解除しないようにしていますね。かわいそうに皆さん魔力をこの魔方陣の維持に吸われ続けるのですね。」
「あたりまえだ、この主任国家魔法士の俺がいれば、まだ勝ち残ることができる。」
「人を犠牲にして、技術を向上させるのかと思えば、ただその魔力量にあぐらをかいたままなんですね。」
私はその人に向けて指を鳴らす。体の少し横、胸の下から腰のあたりまで、大きな穴が空く。しかし、血は流れていない。
「あ?」
その瞬間、魔方陣はくずれ、他の魔法使い達はその場に倒れる。
「兵士の中の救護担当の人、いそいで魔法使いさん達に治療を」
あわてて何人かが救護に向かう。
「いったい何をした、私の体に穴があいているのになぜ生きている」
その男は、穴と私を交互に見ている。
「血を止めていますからねえ、臓器の大半はなくなりましたけど、脳にはまだ血が通っていますから死にませんよ。あとほんの少しの時間は意識があるでしょう。」
私は、そう言いましたが、彼は、白目をむきながらゆっくりと地面に倒れていった。もちろん血は流れていない。よく見ると倒れた後の体には穴は空いていない。
「しかし、穴が空いたという意識だけで気を失うとはねえ。根性がなさ過ぎますよ。」
私は、王女に向かってこう言った。
「さて王女、私は、貴方たちより先にこの地に来ていて、事前にこのような策を弄するような、姑息なやり方をしないと勝てないような、卑怯者です。ですが王女、今のところ一人も殺してはいません。そしてたぶんあなた達は、その主任何チャラに術を掛けられて、ここまできました。ですから、今ならなかったことにもできます。どうしますか?」
「貴様あああああ」
久しぶりにこの叫び声を聞いたような気がする。あの女戦士だ。
「王女様を散々愚弄しやがって、このままおめおめと帰られるわけがなかろう、貴様を殺して首を持ち帰らないと王女様の名誉が守られぬわ。そこに跪け。」その女戦士は、兵士の中から飛び出してきたかと思えば、私に手袋を投げつけた。ああ、手袋を投げつけるだけ冷静なのか。これは、ポーズなのでしょうか?
「いい加減にしないか、誠に申し訳ありません。手袋を投げつけるなど、私から謝らせていただきたい。そして、居間の行為の撤回をお願いしたい。」
「これは、一対一の決闘の所作とお見受けしますが、そうなのでしょうか?この地方に手袋を投げつけて決闘を申し込む風習があるとは思いませんでした、それならば、受けないわけにはいけませんねえ。」
「やめてください実力差がありすぎます。」
「大丈夫、魔法は使いません。この方にも傷をつけません。」
「王女様だけではなく、私さえも愚弄するか。殺してやる。」そう言ったその女剣士は、すでに剣を抜き、怒りで件をカタカタと震わせている。
「王女様、この狂犬飼っておく必要がありますか?ああ、それは置いておいて、とりあえず、あなたとの決闘をお受けします。私は素手で、攻撃魔法は使いません。」
「死んでから後悔しろ」
「死んだら後悔できませんよ」
「じゃあ死にながら後悔しろ」
「それならできそうですね。王女様これは、エキシビションマッチです。勝敗の結果がお互いの関係に一切影響が出ないと言う事でいいですね。」
「ああ、好きにしてくれ。」
王女は頭を抱えている。
「王女様、お手数ですが合図をお願いします。」
「では、始め」
雑な合図ですねえ。
「きぇぇぇぇぇぇぇぇ」
その女剣士は、剣を振りかぶってバカのように突進してくる。そして真上から剣を振り下ろす。私は、ふっと左手だけを頭の方に持ち上げ、眉間のあたりにVサインを作りその剣を受ける。
ごっ
鈍い音がして指の間に剣が止まっている。しかも挟まれた剣はまったく動かない。その女剣士が押そうと引こうと微動だにしない。
私が少し持ち上げてみたけれど、足をバタバタさせるだけで私を蹴ろうともしないので、面倒くさくなって下に降ろす。そういえば試したことがないけど、この剣は、鉄製みたいだから。と、
「えい」
指を横にひねるとパキリという音がして剣が折れた。力を込めていた女戦士はたたらを踏んだあと、ぺたりと腰を落として、放心している。私は、その女戦士に一礼をして、さらに王女にも一礼をする。
「賢者様の勝ちです」
「ありがとうございます。」
背を向けた瞬間、放心していたはずの女戦士が急に立ち上がり、悔しそうに折れた剣を投げつけてきた。私はくるりと振り向き手のひらを前に出して、吸い付けて受け止める。一瞬止まったあと磁石の効果が切れるようにポトリと剣は足元に落ちた。私は、あきれた顔で一瞥すると再び背を向けて歩き出す。
「全軍帰還せよ」
王女の一声に兵士は帰ろうとする。ひとりの魔法使いが女戦士を立たせその後を追う。
そしてその平原には、私ひとり残された。
「さて帰りますか。」
私は独り言を言うとそこから消えた。
その平原の周囲の茂みの中には、複数の人影があった。
「おい、あの魔法使い、あそこから消えたぞ。」
「やはり空間魔法を使うという噂は本当だったんだ。すぐ国に戻って報告だ。」
「なんとしてもあの男を我が国に迎えなくては。」
「でも、どうやって探せばいいのか」
「すべての国をしらみつぶしにさがすのだ。他の国に先を越されてはまずい。」
周囲にいた者達が全員姿を消した。
「やはりこうなりましたか。」
気配を殺していたパムは、念のため周囲を見回った後、そこから立ち去った。
私は、不可視化の魔法でその場から見えなくなった後、草原から早足で森の中に移動して、そこに待っていた馬車に近づき、馬たちの頭をなでてから、馬車に乗り込む。
しばらくしてパムが戻ってきた。
私はパムに尋ねる。「どうでしたか?」
「予想どおりですね、各国の間者があの光景を見ていたようです。」
「そうですか。まあ、仕方が無いことですが、エルフィ出発しましょう。」
御者台にいるエルフィに声をかけます。
「おまちください、モーラ様にお願いしましょう。街道は見張りだらけです。」
「そうでしたか。モーラお願いできますか?」
「そうじゃな。」
モーラは、馬車から飛び降りるとドラゴンの姿になり一瞬で消え、シールドを張った馬車を見えない手で持ち上げる。すると馬車自体も消えた。羽ばたく音と木のざわめきだけが聞こえている。
「モーラ、不可視化の魔法を完全に使えるようになったのですか?」
「前回はちょっと不安定じゃったが、一部修正したらわしの体でも完全に見えなくなったわ」
「分析して体得するドラゴンですか。他の属性の魔法も憶えていきそうですねえ。」
「そんなことをしたら、他のドラゴンから、さらに避けられてしまうわ。」
「皆さんそんなに狭量ですか?」
「逆にヒメツキあたりにわしの土壁作られたらちょっといやじゃ」
「ああ、確かにそうですねえ。」
「それにしても派手にやったわね」
アンジーが歯に衣を着せず言いました。
「あれくらいのデモンストレーションは、やらせてくださいよ。誰も殺さず、戦争にもならず、我々の評価もあがらずですよ。」
「確かに口で黙らせましたからねえ。あの主任国家魔法士とかいうのが出しゃばってこなければ完璧だったのですが。」
メアさんは不満げだ。
「あれは、あの魔法士がやりたかったのでしょう?自陣に魔方陣を作っておくなんて、やる気としかいいようがないですよ。」
ユーリは、改めて尊敬の目で私を見ている。あれは自滅ですよと私は言いたいですが。
「それに対して、こちら側は、弱い魔法しか使っていませんし、しかもあらかじめ仕込んでおくとか姑息な事をして、なおかつ口八丁で丸め込みました。成果としてはほぼ完璧ではありませんか。」
「確かに、これまでもこうして生き延びてきたと、周囲に認めさせたと思いますが、人としての評価は爆下がりですね。」
パムが冷静にかぶせてくる。
「たったひとりで3千人と戦争ですからね~」
エルフィが馬車の中に入ってくる。私の背中に抱きついている。だから胸をおしつけないでください。ってレイもあぐらをかいている足のところで丸くならないで。
「あの時兵士から攻撃されたらどうしたのですか?」
ユーリがさりげなく左腕にくっついている。ああ、みんな不安だったのですね。
「一斉にこられたらいつものシールド張って籠城でしょう。その後雷撃魔法で気絶してもらいます。」
「さすがにそれをやったらまずかったわね。」
アンジーさん、レイをなでる振りして寄ってこないように。
「殺意というか戦闘意欲がまったく伝わってきませんでしたよ。それ以前から私の噂が流れていましたから。信憑性も増していましたねえ。」
「噂?」
アンジーが顔をあげる。おお、やっぱり可愛いですね。
「得体の知れない天使様の下僕、壺を消した魔法使い、街の魔獣襲撃のレールガン、迷いの森の闇騒動、孤狼族の件などですねえ。噂が噂を呼ぶというのは本当のことですね。」
「誰かに頼んだの?」
アンジーが心配そうな顔になる。
「行商人達ですよ。ああいう人達は、いろいろなところに行っているので、実際に森の様子とか魔獣襲撃とかを見聞きしている人もいますから信憑性があるのでしょうねえ。そんな話を聞いている兵士としては、ああ、噂の魔法使いか、なんでそんなやつと戦うのかと、最初から戦意喪失していたんじゃないですかねえ。」
「ふうん、最初から情報戦だったのね」
「今回は、魔王様から無理難題突きつけられましたからねえ、はったりがきいてよかったですよ。」
「あの国どうなるのでしょうか。」
「さあ、王女のあのへっぴり腰では、改革はままならないと思いますが。」
「あの国は、今後の動きを見守るだけで良いと思います。今回の件でプライドを折られたからと、こちらにまた出兵してくるようなら、他国が侵略戦争をしかけると思いますよ。それがわからないようなら、国としても終わりですね。」
パムが冷静に分析している。
『兵士の士気がだだ下がりじゃからなあ』
「でも、他国がぬし様を探し始めますがそちらは大丈夫ですか?」
「このまま家に戻れば、距離が遠すぎて無理と思わせられますね。ですので、帰ったらすぐあの町に行って居酒屋で祝杯でも挙げようかと思います。」
「でも、草原から瞬間移動したようにも見せたでしょ。あれはいいの?」
「その知らない魔法使いは、魔法のローブでも着たのでは?と答えるつもりですよ。もちろん私にも瞬間移動なんて使えませんよ。」
「ご主人様、できないことの証明はできません。」
メアさん厳しいです。
「それはそうですけれどね。私の世界の読み物である推理小説では、最初に疑いが晴れた者は、最後まで疑われないんですよ。」
「それを言うなら最初に疑いが晴れた容疑者が、一番怪しいでしょ?」
「アンジーさんそれそれ」
「それじゃあ結局犯人だってばれるじゃない。」
『お主ら、言語は理解できても知らない事象で例えてもわしらにはさっぱりじゃ。』
『ああ、帰ったらその話もしますね。』
『もうじき着くぞ。エルフィ』
「は~い」
御者台に移動するエルフィ。馬たちに話しかけた後、御者台に座り手綱を握る。
無事着地して馬車を降ろしたモーラは、そのまま洞窟に入っていく。
『ちょっと待っていてくれ、居酒屋に行くなら持っていって欲しい物がある。』
「は~い」
幼女になったモーラが大きな樽をひょいっと片手で持ち上げて馬車に積み込む。
どさっという音と共に馬車が少し弾んだ。かなり重い樽のようです。
「なんですか~それ~」
エルフィが尋ねる。
「お主、匂いでわかっておるじゃろう。」
「えへへ、わかりますよ~お酒ですよね~」
「ああ、居酒屋に持って行ってみんなで飲もうじゃないか。」
「モ、モーラが作ったんですか?」アンジーが顎を落としながら言った。
「あ、ああ、へんじゃったか?」
「ドラゴンがお酒を造るんですか?」メアさんも驚いている。
「そうか、お主らと一緒になってからはバタバタしていて作ってなかったからなあ。」
「今回、ドリュアスと話をしたときに山で果実が落ちたらとっておいてくれと話しておいたのじゃ。おかげですごい量の果実が置いてあってなあ。土で樽を作って保存しておいたのじゃ。土臭くはあるがいけると思うぞ。」
「飲まずに我慢していたの?」アンジーが驚いている。
「まだ酒になっていないときは酸っぱいだけじゃぞ。飲めるかそんなもの。ほら、エルフィ出発せい。日が暮れてしまうぞ」
「はーい」
「味見してもいい?」アンジーが恐る恐る聞く。
「ああ、一口だけな」
モーラは自分で栓を開けて、土の杯を作ってそれに入れて、まず自分で一口飲み、アンジーにそれを渡す。パムとメアにもその杯は回っていく。
「まだ酸っぱいようだからちょっと細工してもいい?」アンジーが尋ねる。
「ああ、どうするつもりじゃ、飲めなくするなよ。」
心配そうにモーラが言う。アンジーは樽に両手を掛けて何かつぶやいている。するとアンジーと樽がほのかに光りだす。少しして、光は収まった。
「味見してみて、」うれしそうにアンジーが言った。
「どれ、」もう一度樽から少量杯に入れて味見してみる。
「なるほど、まろやかになったのう。」その杯を先ほどと同じようにアンジー、パム、メアの順に回した。
「これはすごいですね。全然とんがっていない。そして甘みも増えています。」
「はい、食事の時に一緒に出せますね。」
「どうやったんじゃ?」
「へっへー。ひ・み・つ。これくらいは役に立たないとね。」
「みなさんずるいですー。私も飲みたいー」
「お主は、居酒屋に着いてから存分に飲めば良い。わしらはそんなに飲まないから大丈夫じゃ。」
「やったー。」
そうして、その日は、町の居酒屋に酒を持ち込み、何でもない日の何でも無い記念日を祝った。
翌日
「おい、あの酒、二日酔いがひどいぞ。」
「頭に響くからやめて、そんなに飲んでいないのにこの二日酔いはなに?私の魔法では、あんなふうにはならないわよ。」
アルコールをとらない私、レイ、ユーリは、その姿を見て驚いている。
「そんなに悪酔いする酒なのですか?」飲まなかったレイが首をかしげる。
「でも、エルフィはなんともなさそう・・・でもないですねえ」
ユーリが驚いている。テーブルの上にへたばったエルフィ、そしてモーラ、アンジー、パム全員がスライムのようになっている。
「メアさんは大丈夫なんですか」メアさんは顔色が少し悪い程度でなんとか頑張っている。
「実は、あのお酒は、アルコール度数が以上に高かったのです。私もセーブして飲んでいてこの状態ですので、皆さんは通常のペースで飲まれていましたから、当然かと」メアさんがそう言った。
「メアやそういうときは、先に教えておいてくれ。」
「そうよ、教えておいてよ。」
「わかりました、次からはそうします。でも、お二人とも一度、元の姿に戻られたらよろしいのではないでしょうか。」
「「あ」」
結局、モーラとアンジーは、一度姿を元に戻して、パムは、外に出て代謝をあげて元の姿に戻ったところ2日酔いから復活した。
「わたしだけ~」エルフィは、そういうのがないのでさすがに無理だった。
「お主は、しばらく反省しておれ、酔っ払って余計な事言いかけるからフォローが大変じゃったわ」
「ええええ」
余計な事を言いかけるのを気にしないで騒げたら、もっと楽しい時間だったのですけどねえ。
続く
私は、声が届くか不安でしたが、意外にも風が私の声を届けてくれるようです。
「聞こえますか、兵士諸君。まず、私は話し合いに来ました。ですので、話の途中で攻撃をしてきた場合、即座に反撃します。指揮官の号令なしにこちらを攻撃しないように。こちらには攻撃の意思は、最初からありません。もっともそちらが何か怪しい動きをしたら、私は、攻撃したくなると思います。その時は、その攻撃をした人にだけ、たぶん何か起こります。よろしいですね。」
もちろん返事はない。
「さて、私の方から兵士の皆さんに話したいのは、ひとつだけです。あなた達は、本当に国のためになると思って進軍していますか?事情も知らずにここに来ていませんか?貴方たちが進軍している先の家に住んでいるのは、たかだか10名に満たない他種族の集まりです。その者達を皆殺しに行こうとしているのですよ。わかっていますか。」
「そこで栽培している薬草はそこでしか取れない薬草で、それが手に入らなければ燃やせと命令されているんですよ聞いていませんか?」
もちろん返事は無い。
「そのような命令を下している王が本当に賢王なのですか。」
「このまま進んでその者達と戦い死んだとして、それは国のために戦っている聖戦と言えるのですか。国のために殉ずるのではなく、単なる国王の私利私欲のために死ぬことになりますよ。よろしいですか。」
「もう一つだけ付け加えるとすれば、ちまたの噂で聞いていませんか?壺の国に現れた天使様一行の話、迷いの森を助けた一行の話、それらに共通する魔法使いの存在を」
ここで兵士達の中にざわつきが感じられる。
「そのことを理解してなお、私の家を攻撃するのであれば、私は断固として反撃させていただきます。そして、容赦なく殺します。それを宣言します。」
やはり返事などあるわけが無い。
「そして、指揮官はどなたですか。」
全員が後ろの馬上の女性に振り向く。やはり王女様でしたか。遠目からでも十分、その存在は輝いていますね。
「これは、王女様、そして勇者様。このような場所で再会してしまうとは、悲しい限りであります。」
私はそこで膝をつき頭を上げる。王女の知り合いだということで、兵士達はさらに動揺している。
「お久しぶりです流浪の賢者殿、このような形であなたと再開することになろうとは夢にも思いませんでした。」
「私もです王女様、お目にかかった時に私はあなたに賢王たれと話しましたよね、その言葉をかみしめてもなお、この私に刃を向けますか。あなたが賢者と呼んでくれたこの私を」
「・・・・」
「そして、従えている勇者の方々、見渡すとあの時の魔法使いさんは、唯一の魔法使いはどうされました。ああ、引き離されてしまったのですね。」
「何を言う、あなたが殺したのであろう。あの子が死に際にあの魔法使いに殺されたと言っていたと聞いたぞ。」
「なるほど、それで私を倒しにこられたと言うことですね。私にそのような覚えはありませんけれど。」
「もしかして私は・・・・」
「その偽証を正して見せましょう。残念ながらこの世界に来て私は人を殺めたことはありませんよ。あの魔法使いとは誰のことでしょうね。少なくとも彼女は私を「あの魔法使い」とは呼びませんよ。賢者様と呼ぶでしょう。そうですか。ならば、私を殺して真実から目を背けなさい。でも、残念ながら私はあなたには殺されるつもりはありませんよ、なぜなら殺していないからです。まあ、こう言っても、もう無理なのでしょうね。」
「・・・・確かに、周りから、彼女の口からあの魔法使いと言っていたと聞いたが、どうしてあなただと思い込んだのだろう。」
「王女、だまされなされるな、その男は虚言使いですぞ。」
不意に王女のそばに現れた、僧侶姿の男がそう言った。
「誰ですかあなたは?」
私は、少しイラついた感じで言いました。
「私はこの国の上級国家魔法士である。お主の虚言などにだまされはしない。」
「あるほど、虚言使いはあなたですね。先ほどから私の周囲に魔法が突き刺さろうとしています。虚言と言うよりは言霊使いですか」
「なぜそれを。おまえ、魔法が見えるのか。」
「なるほど、この魔法たやすく解析できます。そして、このまがい物が!」
私の大きな声に一瞬にしてその場の雰囲気が変わる。
「な、何をした」
その男はなぜかうろたえている。やはり状況が変化したことを感じているようだ。
「何って、あなたの言霊を解除しただけですよ。皆さんを煽動して、ここまで誘導した。そうでしょう?」
「どうしてそれがわかる。」
「私に投げつけてきた言葉の魔方陣に書いてありましたよ?」
「貴様、やはり魔法が見えるのか。」
「はい、ですので解除も簡単でした。あんなゆるい魔方陣なんて見破ればすぐ解除できます。」
「ふふ、しかし、この派兵は国王の勅命だ、いまさら覆すことなどできはしませんよ。そうですよねえ王女様」
「ああ、確かにそうだな。」王女は、しかたなく答えた。
「父だから仕方なく従う。それは違うでしょう。父ではありますが一国の王なのですよ。その王が間違った道を国益とうそぶきながら私利私欲をむさぼってる者であることをあなたはすでに各地を回ってその目で見てきているのでしょう。目を背けるな!!いいかげん目を覚ませ!!その父を、賢王で無くなった父をそのままにしておくことが賢王の名を汚すことになるとなぜわからない。」
「しかし、父はこれまでも我が国をこうやって豊かにしてきているのだ。」
「確かにそうでしょうね。その国は栄えたでしょう。でも、殺された他の国の人たちはうらむでしょうねえ。」
「確かにそうかもしれない、だが、それでは、私がこれまで父の命令でしてきたこともすべて無意味な事になってしまう。それが恐いだけなのだ。父のことなんかもうどうでもいい。私は私がこれまでしてきた罪をどう償うか悩んでさらに罪を重ねていくのだ。」
「では、私の首を取れば、この首を持ってあなたの父君に差し出せば、その愚王に刃を向けてくれますか。どうせそこまでのこともできないのでしょう。所詮は貴族、市井にある貧しい民の言葉なんて耳を塞いで聞かないのでしょう」
「・・・・」
「では、兵士の皆さん、あなた達はどうですか。これだけの会話を聞いてそれでもなお私を討ちますか。いいでしょうお討ちください。でも、王女には首は差し出すつもりはありますが、あなた達には違いますよ。王女と違って残念ですが縁もゆかりもありません。ですから全力で戦います。それで死んでも悔やまないでくださいね。」
「やめてくれ、いや、やめてください。そんなことをしたら兵士達が、ここにいる兵士達がすべて死んでしまう。」
「大丈夫ですよ。私だって最初の詠唱で全ての人を殺すことは出来ないでしょう。次の詠唱に入る前に少しだけ隙が生まれます。その時に殺せるかもしれません。どうですか?3千人対1人ですよ。誰かひとりでも私の心臓を突き刺せばいいのです。ただ、突き刺して殺したからと言ってその人が生きている保証はありません。息がある内にその人だけなら殺せるでしょう。相打ちになることも考えてくださいね。むしろその確率が高いと思います。」
「何を恐れている。我々国家魔法士がこの者を魔法で捕縛する。動きを止めた後、一斉に攻撃すればいい、兵士達は安心して攻撃できる。」
そうして、私の周囲に突然、6人の魔法使いが現れ、詠唱を始める。それぞれの足元に魔方陣が作られ、そしてそれぞれを点として私を中心に大きい魔方陣が作られる。私の体にはそれぞれの魔法使いから光の縄のようなものが発生し、わたしの手足を拘束し始める。
「どうだ、我々が何の準備もなくここに布陣していたわけではない。お主を誘い込みここで拘束し、魔力を吸い取るためだ。しばらくはその拘束のなか魔力を消費していくがいい。どれだけ魔力があろうとも十分吸い取った頃に総攻撃をかけてやる。」
「そうですね、それでは、それまでの間、質問があります。魔法使いさん達、ああ国家魔法士でしたっけ。どれだけ他人の命をもてあそんできたのでしょうか。」
「そうだな、話してやろう。我々にとって隣国の人々など人とは考えていない。我が国の国民だけが上位民なのだ、それ以外の者など奴隷に過ぎない。だから我々の道具として有効に使ってやる。」
「魔族も獣人もそうですか?」
「ああ、それらはもっと下等だ。奴隷にもならん。殺すのみだ。」
「それは国王の考え方ですか。」
「私の考えは国王の考えだ。私はこれまで何万と人を魔族を獣人を殺してきた。それに対して国王は褒美をくれている。それが答えだろう。」
「そして、あなたについてきている魔法士さん達も同じ考えなのですね。」
「当然だ、やりすぎと意見する者もいたが、国王への反逆罪で死罪にしてきたわ。」
「なるほど、あなたは最低ですね。」
「何、たわごとを言っている。これから殺される身で減らず口か。ええいまだ、魔法を吸い取れていないのか。もっと吸い上げろ」
その上級魔法士とやらを覆う光が輝きを増す。すると、他の魔法士の光も輝きを増した。しかし、彼らは苦しそうだ。どうやら彼に魔力ごと操られているらしい。
「あなた達は、ここに陣を置き、魔方陣を構築して私を待ちました。でもね、あなた達が、ここに布陣する前に私がすでに到着して準備をしていたとは考えないんですか?」
「ふふん、はったりか?ここは、事前に斥候役が監視していて誰もいなかったのは確認済みだ、おまえは、町から馬で来たのであろう。間に合うわけがない。さらに、実際お主の体に効果が出ているではないか。強がりはよすんだな。」
「そうですか。私の演技力もまんざらではないですね。」
ぴっと指を鳴らす。体を縛っていた光の縄が綺麗に消える。しかしまだ魔方陣は残っている。
「それぞれの魔法使いさんが立っている魔方陣も見せてもらいました。大変綺麗に描けていますが、若干ほころびがありますよ。ですので」
私は、ひとりの方に向かって指を鳴らす。
その魔法使いの脇腹のあたりに赤い液体が飛び散り、脇腹を押さえて膝をつく。
「ほころびがあるのでそこに振動を起こしました。痛いですか?」
さらにその隣の人に指を向け指を鳴らす。すると、今度は太ももに赤い液体が飛び散り、足を押さえている。次々と魔法使いに向けて指を鳴らし、それぞれが、傷ついて倒れそうになっている。しかし、それでも結界は発動している。
「なるほど、あなたが強制的にこの結界が解除しないようにしていますね。かわいそうに皆さん魔力をこの魔方陣の維持に吸われ続けるのですね。」
「あたりまえだ、この主任国家魔法士の俺がいれば、まだ勝ち残ることができる。」
「人を犠牲にして、技術を向上させるのかと思えば、ただその魔力量にあぐらをかいたままなんですね。」
私はその人に向けて指を鳴らす。体の少し横、胸の下から腰のあたりまで、大きな穴が空く。しかし、血は流れていない。
「あ?」
その瞬間、魔方陣はくずれ、他の魔法使い達はその場に倒れる。
「兵士の中の救護担当の人、いそいで魔法使いさん達に治療を」
あわてて何人かが救護に向かう。
「いったい何をした、私の体に穴があいているのになぜ生きている」
その男は、穴と私を交互に見ている。
「血を止めていますからねえ、臓器の大半はなくなりましたけど、脳にはまだ血が通っていますから死にませんよ。あとほんの少しの時間は意識があるでしょう。」
私は、そう言いましたが、彼は、白目をむきながらゆっくりと地面に倒れていった。もちろん血は流れていない。よく見ると倒れた後の体には穴は空いていない。
「しかし、穴が空いたという意識だけで気を失うとはねえ。根性がなさ過ぎますよ。」
私は、王女に向かってこう言った。
「さて王女、私は、貴方たちより先にこの地に来ていて、事前にこのような策を弄するような、姑息なやり方をしないと勝てないような、卑怯者です。ですが王女、今のところ一人も殺してはいません。そしてたぶんあなた達は、その主任何チャラに術を掛けられて、ここまできました。ですから、今ならなかったことにもできます。どうしますか?」
「貴様あああああ」
久しぶりにこの叫び声を聞いたような気がする。あの女戦士だ。
「王女様を散々愚弄しやがって、このままおめおめと帰られるわけがなかろう、貴様を殺して首を持ち帰らないと王女様の名誉が守られぬわ。そこに跪け。」その女戦士は、兵士の中から飛び出してきたかと思えば、私に手袋を投げつけた。ああ、手袋を投げつけるだけ冷静なのか。これは、ポーズなのでしょうか?
「いい加減にしないか、誠に申し訳ありません。手袋を投げつけるなど、私から謝らせていただきたい。そして、居間の行為の撤回をお願いしたい。」
「これは、一対一の決闘の所作とお見受けしますが、そうなのでしょうか?この地方に手袋を投げつけて決闘を申し込む風習があるとは思いませんでした、それならば、受けないわけにはいけませんねえ。」
「やめてください実力差がありすぎます。」
「大丈夫、魔法は使いません。この方にも傷をつけません。」
「王女様だけではなく、私さえも愚弄するか。殺してやる。」そう言ったその女剣士は、すでに剣を抜き、怒りで件をカタカタと震わせている。
「王女様、この狂犬飼っておく必要がありますか?ああ、それは置いておいて、とりあえず、あなたとの決闘をお受けします。私は素手で、攻撃魔法は使いません。」
「死んでから後悔しろ」
「死んだら後悔できませんよ」
「じゃあ死にながら後悔しろ」
「それならできそうですね。王女様これは、エキシビションマッチです。勝敗の結果がお互いの関係に一切影響が出ないと言う事でいいですね。」
「ああ、好きにしてくれ。」
王女は頭を抱えている。
「王女様、お手数ですが合図をお願いします。」
「では、始め」
雑な合図ですねえ。
「きぇぇぇぇぇぇぇぇ」
その女剣士は、剣を振りかぶってバカのように突進してくる。そして真上から剣を振り下ろす。私は、ふっと左手だけを頭の方に持ち上げ、眉間のあたりにVサインを作りその剣を受ける。
ごっ
鈍い音がして指の間に剣が止まっている。しかも挟まれた剣はまったく動かない。その女剣士が押そうと引こうと微動だにしない。
私が少し持ち上げてみたけれど、足をバタバタさせるだけで私を蹴ろうともしないので、面倒くさくなって下に降ろす。そういえば試したことがないけど、この剣は、鉄製みたいだから。と、
「えい」
指を横にひねるとパキリという音がして剣が折れた。力を込めていた女戦士はたたらを踏んだあと、ぺたりと腰を落として、放心している。私は、その女戦士に一礼をして、さらに王女にも一礼をする。
「賢者様の勝ちです」
「ありがとうございます。」
背を向けた瞬間、放心していたはずの女戦士が急に立ち上がり、悔しそうに折れた剣を投げつけてきた。私はくるりと振り向き手のひらを前に出して、吸い付けて受け止める。一瞬止まったあと磁石の効果が切れるようにポトリと剣は足元に落ちた。私は、あきれた顔で一瞥すると再び背を向けて歩き出す。
「全軍帰還せよ」
王女の一声に兵士は帰ろうとする。ひとりの魔法使いが女戦士を立たせその後を追う。
そしてその平原には、私ひとり残された。
「さて帰りますか。」
私は独り言を言うとそこから消えた。
その平原の周囲の茂みの中には、複数の人影があった。
「おい、あの魔法使い、あそこから消えたぞ。」
「やはり空間魔法を使うという噂は本当だったんだ。すぐ国に戻って報告だ。」
「なんとしてもあの男を我が国に迎えなくては。」
「でも、どうやって探せばいいのか」
「すべての国をしらみつぶしにさがすのだ。他の国に先を越されてはまずい。」
周囲にいた者達が全員姿を消した。
「やはりこうなりましたか。」
気配を殺していたパムは、念のため周囲を見回った後、そこから立ち去った。
私は、不可視化の魔法でその場から見えなくなった後、草原から早足で森の中に移動して、そこに待っていた馬車に近づき、馬たちの頭をなでてから、馬車に乗り込む。
しばらくしてパムが戻ってきた。
私はパムに尋ねる。「どうでしたか?」
「予想どおりですね、各国の間者があの光景を見ていたようです。」
「そうですか。まあ、仕方が無いことですが、エルフィ出発しましょう。」
御者台にいるエルフィに声をかけます。
「おまちください、モーラ様にお願いしましょう。街道は見張りだらけです。」
「そうでしたか。モーラお願いできますか?」
「そうじゃな。」
モーラは、馬車から飛び降りるとドラゴンの姿になり一瞬で消え、シールドを張った馬車を見えない手で持ち上げる。すると馬車自体も消えた。羽ばたく音と木のざわめきだけが聞こえている。
「モーラ、不可視化の魔法を完全に使えるようになったのですか?」
「前回はちょっと不安定じゃったが、一部修正したらわしの体でも完全に見えなくなったわ」
「分析して体得するドラゴンですか。他の属性の魔法も憶えていきそうですねえ。」
「そんなことをしたら、他のドラゴンから、さらに避けられてしまうわ。」
「皆さんそんなに狭量ですか?」
「逆にヒメツキあたりにわしの土壁作られたらちょっといやじゃ」
「ああ、確かにそうですねえ。」
「それにしても派手にやったわね」
アンジーが歯に衣を着せず言いました。
「あれくらいのデモンストレーションは、やらせてくださいよ。誰も殺さず、戦争にもならず、我々の評価もあがらずですよ。」
「確かに口で黙らせましたからねえ。あの主任国家魔法士とかいうのが出しゃばってこなければ完璧だったのですが。」
メアさんは不満げだ。
「あれは、あの魔法士がやりたかったのでしょう?自陣に魔方陣を作っておくなんて、やる気としかいいようがないですよ。」
ユーリは、改めて尊敬の目で私を見ている。あれは自滅ですよと私は言いたいですが。
「それに対して、こちら側は、弱い魔法しか使っていませんし、しかもあらかじめ仕込んでおくとか姑息な事をして、なおかつ口八丁で丸め込みました。成果としてはほぼ完璧ではありませんか。」
「確かに、これまでもこうして生き延びてきたと、周囲に認めさせたと思いますが、人としての評価は爆下がりですね。」
パムが冷静にかぶせてくる。
「たったひとりで3千人と戦争ですからね~」
エルフィが馬車の中に入ってくる。私の背中に抱きついている。だから胸をおしつけないでください。ってレイもあぐらをかいている足のところで丸くならないで。
「あの時兵士から攻撃されたらどうしたのですか?」
ユーリがさりげなく左腕にくっついている。ああ、みんな不安だったのですね。
「一斉にこられたらいつものシールド張って籠城でしょう。その後雷撃魔法で気絶してもらいます。」
「さすがにそれをやったらまずかったわね。」
アンジーさん、レイをなでる振りして寄ってこないように。
「殺意というか戦闘意欲がまったく伝わってきませんでしたよ。それ以前から私の噂が流れていましたから。信憑性も増していましたねえ。」
「噂?」
アンジーが顔をあげる。おお、やっぱり可愛いですね。
「得体の知れない天使様の下僕、壺を消した魔法使い、街の魔獣襲撃のレールガン、迷いの森の闇騒動、孤狼族の件などですねえ。噂が噂を呼ぶというのは本当のことですね。」
「誰かに頼んだの?」
アンジーが心配そうな顔になる。
「行商人達ですよ。ああいう人達は、いろいろなところに行っているので、実際に森の様子とか魔獣襲撃とかを見聞きしている人もいますから信憑性があるのでしょうねえ。そんな話を聞いている兵士としては、ああ、噂の魔法使いか、なんでそんなやつと戦うのかと、最初から戦意喪失していたんじゃないですかねえ。」
「ふうん、最初から情報戦だったのね」
「今回は、魔王様から無理難題突きつけられましたからねえ、はったりがきいてよかったですよ。」
「あの国どうなるのでしょうか。」
「さあ、王女のあのへっぴり腰では、改革はままならないと思いますが。」
「あの国は、今後の動きを見守るだけで良いと思います。今回の件でプライドを折られたからと、こちらにまた出兵してくるようなら、他国が侵略戦争をしかけると思いますよ。それがわからないようなら、国としても終わりですね。」
パムが冷静に分析している。
『兵士の士気がだだ下がりじゃからなあ』
「でも、他国がぬし様を探し始めますがそちらは大丈夫ですか?」
「このまま家に戻れば、距離が遠すぎて無理と思わせられますね。ですので、帰ったらすぐあの町に行って居酒屋で祝杯でも挙げようかと思います。」
「でも、草原から瞬間移動したようにも見せたでしょ。あれはいいの?」
「その知らない魔法使いは、魔法のローブでも着たのでは?と答えるつもりですよ。もちろん私にも瞬間移動なんて使えませんよ。」
「ご主人様、できないことの証明はできません。」
メアさん厳しいです。
「それはそうですけれどね。私の世界の読み物である推理小説では、最初に疑いが晴れた者は、最後まで疑われないんですよ。」
「それを言うなら最初に疑いが晴れた容疑者が、一番怪しいでしょ?」
「アンジーさんそれそれ」
「それじゃあ結局犯人だってばれるじゃない。」
『お主ら、言語は理解できても知らない事象で例えてもわしらにはさっぱりじゃ。』
『ああ、帰ったらその話もしますね。』
『もうじき着くぞ。エルフィ』
「は~い」
御者台に移動するエルフィ。馬たちに話しかけた後、御者台に座り手綱を握る。
無事着地して馬車を降ろしたモーラは、そのまま洞窟に入っていく。
『ちょっと待っていてくれ、居酒屋に行くなら持っていって欲しい物がある。』
「は~い」
幼女になったモーラが大きな樽をひょいっと片手で持ち上げて馬車に積み込む。
どさっという音と共に馬車が少し弾んだ。かなり重い樽のようです。
「なんですか~それ~」
エルフィが尋ねる。
「お主、匂いでわかっておるじゃろう。」
「えへへ、わかりますよ~お酒ですよね~」
「ああ、居酒屋に持って行ってみんなで飲もうじゃないか。」
「モ、モーラが作ったんですか?」アンジーが顎を落としながら言った。
「あ、ああ、へんじゃったか?」
「ドラゴンがお酒を造るんですか?」メアさんも驚いている。
「そうか、お主らと一緒になってからはバタバタしていて作ってなかったからなあ。」
「今回、ドリュアスと話をしたときに山で果実が落ちたらとっておいてくれと話しておいたのじゃ。おかげですごい量の果実が置いてあってなあ。土で樽を作って保存しておいたのじゃ。土臭くはあるがいけると思うぞ。」
「飲まずに我慢していたの?」アンジーが驚いている。
「まだ酒になっていないときは酸っぱいだけじゃぞ。飲めるかそんなもの。ほら、エルフィ出発せい。日が暮れてしまうぞ」
「はーい」
「味見してもいい?」アンジーが恐る恐る聞く。
「ああ、一口だけな」
モーラは自分で栓を開けて、土の杯を作ってそれに入れて、まず自分で一口飲み、アンジーにそれを渡す。パムとメアにもその杯は回っていく。
「まだ酸っぱいようだからちょっと細工してもいい?」アンジーが尋ねる。
「ああ、どうするつもりじゃ、飲めなくするなよ。」
心配そうにモーラが言う。アンジーは樽に両手を掛けて何かつぶやいている。するとアンジーと樽がほのかに光りだす。少しして、光は収まった。
「味見してみて、」うれしそうにアンジーが言った。
「どれ、」もう一度樽から少量杯に入れて味見してみる。
「なるほど、まろやかになったのう。」その杯を先ほどと同じようにアンジー、パム、メアの順に回した。
「これはすごいですね。全然とんがっていない。そして甘みも増えています。」
「はい、食事の時に一緒に出せますね。」
「どうやったんじゃ?」
「へっへー。ひ・み・つ。これくらいは役に立たないとね。」
「みなさんずるいですー。私も飲みたいー」
「お主は、居酒屋に着いてから存分に飲めば良い。わしらはそんなに飲まないから大丈夫じゃ。」
「やったー。」
そうして、その日は、町の居酒屋に酒を持ち込み、何でもない日の何でも無い記念日を祝った。
翌日
「おい、あの酒、二日酔いがひどいぞ。」
「頭に響くからやめて、そんなに飲んでいないのにこの二日酔いはなに?私の魔法では、あんなふうにはならないわよ。」
アルコールをとらない私、レイ、ユーリは、その姿を見て驚いている。
「そんなに悪酔いする酒なのですか?」飲まなかったレイが首をかしげる。
「でも、エルフィはなんともなさそう・・・でもないですねえ」
ユーリが驚いている。テーブルの上にへたばったエルフィ、そしてモーラ、アンジー、パム全員がスライムのようになっている。
「メアさんは大丈夫なんですか」メアさんは顔色が少し悪い程度でなんとか頑張っている。
「実は、あのお酒は、アルコール度数が以上に高かったのです。私もセーブして飲んでいてこの状態ですので、皆さんは通常のペースで飲まれていましたから、当然かと」メアさんがそう言った。
「メアやそういうときは、先に教えておいてくれ。」
「そうよ、教えておいてよ。」
「わかりました、次からはそうします。でも、お二人とも一度、元の姿に戻られたらよろしいのではないでしょうか。」
「「あ」」
結局、モーラとアンジーは、一度姿を元に戻して、パムは、外に出て代謝をあげて元の姿に戻ったところ2日酔いから復活した。
「わたしだけ~」エルフィは、そういうのがないのでさすがに無理だった。
「お主は、しばらく反省しておれ、酔っ払って余計な事言いかけるからフォローが大変じゃったわ」
「ええええ」
余計な事を言いかけるのを気にしないで騒げたら、もっと楽しい時間だったのですけどねえ。
続く
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