巻き込まれ体質な私、転生させられ、記憶も封印され、それでも魔法使い(異種族ハーレム付き)として辺境で生きてます。

秋.水

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第19話 初めてのお使い

第19-1話 ご依頼

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 その日アンジーは、部屋でひとりで過ごしていた。昨日のカードゲームで夜更かしをしてしまい、少し遅めの時間に起き、家族と一緒に朝食を取り、部屋に戻って考え事をしていた。その時に何を考えていたのかは、もう忘れてしまったが、きっとたいした事ではなかったのだろう。
なぜ憶えていないかといえば、それを忘れるくらいのことが起こってしまったから。
はい、自分の部屋の中央に光り輝く何かが現れようとしていたのです。
 アンジーの部屋には、ベッドとタンスが置いてあり、窓の横に机が置いてあります。扉には背中を向ける形で配置されているので、背中越しにその光が見え、椅子に座ったまま振り向いたら、光でできた人型が部屋の中央に現れたのです。
まぶしいそれは、徐々に光がおさまりはじめても、背後から光が刺しています。ぼんやりと見えるその衣装は、自分がよく知っている衣装を着た人でした。
 それは、天使の衣装で、そのなかでも位階序列一桁の方達の衣装でした。そして、アンジーは、今目の前に姿を現した天使が誰か一瞬わからず、自分がそれくらい天界から離れていたことを思い出したのでした。さらに自分が天界の者だということもすっかり忘れていたのです。天界のことはそれぐらい遠い記憶になっていました。
 アンジーは、ついにこの時が来たのかと思った。まあ、あの子の親だったあの豊穣の天使を天界に還した時から、早晩そうなるだろうなあとは思っていた。にしても早すぎませんか、天使長代理じゃなかった。現天使長様。
 私は、形式とはいえ、その方の足下にひざまずき、両手を組んで祈りを捧げる。顔などは恐れおおくて見られない。
「顔をあげなさい。そして、お立ちなさい」
「はい」
 私は、顔を上げ、立ち上がる。確かにこの体勢で顔を上げ続けると、首が痛いのよね。立ってくれと言われて少しうれしかった。もちろん手は組んだままだ。
「お久しぶりですね」そう言って微笑む
「はい、お久しぶりです。」
「さっそくですが、天に還りなさい、天使位階第7位エンジェルG。」
 私は久しぶりに天界での正式な呼び名を思い出した。嫌な思い出と共に。
「いやです、私は堕天したのです。今更天界が私に何の用だというのですか」
「こちらとしては、堕天させた覚えはないのですがね。もっとも僻地には飛ばしましたが。そして、受肉しているとは思いませんでしたよ。」
「なるほど、そう言うごまかしをするのですか。天界もだらしなくなったものですね、天使長様」
「相変わらずまっすぐですねえエンジェルG、今はアンジーだったか。」
「その名で呼ばないでください。その名で呼んでいいのは私の家・・仲間だけです。」
「ふふ、仲間ですか。でも、呼びやすいので勝手にアンジーと呼ばせてもらいます。私としては、あなたはルシフェルに貸していたつもりだったのですが、いつの間にか彼の元を離れてひとりで行動していると豊穣の天使に聞いたので、てっきりルシフェルから離れたのだと思ってここに来たのです。」
「やはり、情報が漏れたのは、彼女の母でしたか。」
「ああ、大変褒めていましたよ。誠実でしかも的確なフォローをすると。」
「そんなことを褒められましても、天使としての本分はそこではないでしょう。」
「相変わらず辛口ですね。天使なのに」
「そんな私だから、愛想尽かされて僻地まで飛ばされて、さらに堕天までしているんですよ。わかっていただけませんか。」
「そうですか、戻りたくないとそう言うのですね。」
「はい、申し訳ありませんが。今の状況では無理です。それに私は離れているとは言え、ルシフェル様の連絡係もまだ継続して行っております。」
「そうなのですか。それならば仕方ありませんねえ。」
「残念ですが天界への復帰はありがたくお断りさせていただきます。」
「どういう言い回しですか。文章になっていませんよ。」
「だからそう言うことです。文章にもしたくないということです。」
「わかりました。それでは、あなたの天使の力を剥奪しても構わないということですね。」
「はい、もちろんそれでかまいません。ただし、この世界では、その力がないと困る事態が度々発生しています。ですから、私としては、制限付きでもいいですから、使えるようにしておいてもらったほうが、天界のためだとだけ進言しておきます。」
「やはり力が欲しいですか。」
「いいえ、私は別に必要ありません。でも、この前の黒い霧の事件の時のように、天使の力がなかったらあの一帯はどうなっていたかわからなかったのです。昨今、魔族や人族やドラゴンがらみでありえないことが頻発しています。まさかあのような事態に力を剥奪されたとはいえその場に天使がいて、天界が何もしなかったとしたら、さぞや神もお怒りになるのではありませんか。」
「いつもながら弁がたちますね。」
「本当に、天使には不必要な能力ですよね。残念ながら私はそれを持たされてしまっていますが。」
「さて、交渉上手のアンジーさん。天使の能力を剥奪しない代わりにして欲しいことがあるのですが。」
「お断りします。どうせそんなことだろうと思いました。大体、今まで何の連絡も取ってこなかったのにいきなり呼ばれたら、なにかやっかいごとを言いつけられると思うに決まっているじゃないですか。」
「それは違いないですね。で、どうしますか受けますか。」
「内容によります。」
「聞いてから判断したいというのですか。」
「はい、何より私の家族に迷惑を掛けたくありません。」
「へえ、家族ですか。」
「あ、間違いました。家族では無くて仲間です。」
「あなた、わざと間違えましたね。」
「いや、違います。」
「違わないでしょう」
「だから無駄に会話で遊ばないでください。」
「相変わらずクールビューティーですね。」
「だから話を戻してください。あーもう、あいつと話しているみたいだわ。ちょーイラつく」
「あいつとは例の魔法使いのことですか」
「ええ、現在は、勇者候補番付の筆頭株主ですよ。」
「よくわからない言い回しですね」
「失礼しました。さて、押し付けたい用事って何ですか。」
「うやむやにして逃げる気だったのでは無いのですか。」
「いや、単に言葉遊びに飽きただけです。」
「なるほど。まあ、簡単なことです。私の手紙をそれぞれの族長に届けてくること。それだけですよ。」
「それでは、魔法使いの里にもいくことになりますか。」
「ああ、そうなりますね。」
「やめた方が良いと思いますよ」
「どうして?」
「私が魔法使いの里に行くと知ったら一緒に行くと騒ぎ出す奴をひとり知っています。そして、そいつがついて行くと、あの里をめちゃくちゃにしてしまうと思います。」
「そうなのですか?」
「ええ、間違いなく。」
「じゃあそれ以外はどうなのですか。行ってくれますか?」
「いや、話がおか・・・」そこでアンジーは考え込みました。少し考えてからこう言いました。
「これって、私を天界に戻すための策略ですね。」
「さすがですねえ。よくわかりましたね」
「いや、子どもでもわかるでしょう。」
「では、そこに至った経過を私に説明してみてください。」
「私が天使長様の手紙を持って配って歩き、それぞれの族長と面識を作る。そのあとは、次の手紙を持って行かせて、ついでに天界との外交問題を片付けさせる。そうして、渉外担当としての実績を作り、私を天に戻す。なるほど、よくできた作戦ですね。」
「完璧です。実はね、今の天界には、そこまでをすぐ理解できるような人材がいないのですよ。」
「いや、誰かいるでしょう。」
「一応、品行方正、成績優良な天使達数名にこの話を持ちかけたのですが、決まって、うれしそうに拝命しますと答えるのですよ。でも、少し経ってから辞退してくるんですよ。この用事の裏に隠れていることを理解するまでにけっこう時間をかけてしまいます。ですが、この仕事の先にある自分に待ち受ける未来を瞬時に理解できないような者には、外交特使、渉外担当には使えないのです。その点君は、」
「だから、天界にいなくても僻地で仕事をしている天使達の中になら必ずいますよ。」
「確かに、思慮深い者もいるにはいるのですけれど、ひねくれていて、他の部族との交渉とかで関係を悪化させる者も出てきました。そっちの方がもっと問題なのです。交渉ができないより悪化させる者のほうがやばいですよね。」急に下品な言い回しをしています。
「私は、やばくないとでも思いますか。」
「少なくともあなたの常識的な考えや正義感は、そこまで落ちぶれていないでしょう?さらには、天界や天使が一番偉いなんて考え方もしていないでしょう。今までの天使達は、常に自分が偉いと思って相手と交渉しようとするのですよ。交渉が成立するわけがない。」
「わかりました、具体的な内容を聞かせてください。親書は全員に渡すのですか?ドリュアスとかスノーク族、ホビット族なども含まれますか?」
「お渡しして欲しいのは、まず、ドラゴンの里、魔族の現魔王ルシフェル、魔法使いの里、エルフ族、ドワーフ族、獣人族の代表の孤狼族、そして、元魔王様のところにお願いしたいのですけれど。」
「期限がいつまでですか?さすがに天界のように直接現地には行けませんよ」
「ああ、できれば10日以内にお願いします。ドラゴンさんにお願いすれば余裕ですよね。」
「届かなかった場合はどうなりますか。」
「一番最後に届けた手紙が開封されるとその他の手紙が開くような仕掛けをしておきます。」
「なるほど。モーラが、もとい土のドラゴンが飛ぶことを容認するということですか。はあ、わかりました。今回の件はお受けします。」
「行ってくれますか。」
「条件があります。」
「聞ける話ならですけれどね」
「一つは、今回の件は、どんな形であれ、親書が届けば良いのですね。」
「はい、今回は、親書が届けば良いです。」
「わかりました。」
「もう一つは、こんな仕事は、できれば二度とさせないでくださいね。」
「これもあなた達天使の大事な仕事でしょう」
「実際、今回の用事を達成したとしても、しばらくしたらまた、剥奪の件を持ち出して、用事を言いつけるつもりでしょう。魂胆が見え見えですよ。」
「ねえ、天界の者なら天界の用事を言いつけられたらちゃんとこなしてくれませんか。」
「残念ながら。堕天していますので、今のあるじはルシフェル様なので。」
「えー頼むよー」
「急になれなれしく媚びたって無理なものは無理です。」
「わかった、わかった。今回の件が片付いたらまた考えよう。」
「わかりました。その辺で手を打たないとそろそろ神罰が下りそうですから。」
「わかるのかい?」
「カンです。」
「そうかー、やっぱり君はすごいねえ」
「そんなの天使の本分ではありません。褒められても困ります。」
「でもすごいよね。ああ、親書はこれから作成するので、明日の朝届けますよ。」
「わかりました。お待ちしています。」
「よろしく頼むよ」
 そう言うと輝きだして一瞬で消えてしまう。
 アンジーは、ため息を一つついて、部屋を出る。
『誠にすいませんが、もしよろしければ、居間に全員集まってもらえませんか。お願いがあります。』と脳内通信で会話をする。
『なんじゃ急に。それも改まって。わしは、居間におる。今すぐにでも大丈夫じゃ』
『今、厩舎にいますけど、すぐ戻れますよ~』
『私も倉庫で新しい武器を製作していましたが、時間が空きました。』
『私も家事が一段落しましたので大丈夫です。』
『訓練をしていましたが、ちょうど休憩に入ったところですので、レイとユーリとこれから戻ります。』パムが代表して答える。戦闘訓練中だったらしい。
『急ぐ必要はありません。なんでしたら戻ってシャワー浴びてからでも構いませんので。』
『いや、どうしたのじゃその物言い、何があった。』
『皆さんが揃ってからお話しします。』
 しばらくして、居間には、すでにモーラと私、そしてアンジーが座っています。アンジーは、壁に黒板らしきものを設置して、いつも見ている大きい地図を貼り出しています。
「本格的ですねえ。」
「なんか物々しいのう」
「あ、なんか面白そ~」
 エルフィが入ってくる。そのタイミングでメアさんがお茶を運んできました。
「そういえば~アとウンとクウが人を乗せて走りたいと言っていましたよ~」
「彼らは、人を乗せるのが嫌いだったんじゃないですか?」
「それが、急に必要性に目覚めたらしくって~」
「それは、予言か何かですか?」
「わかんないけど~」
「確かに良い判断ね。」とアンジーが言った。
「どういうことじゃ」
「これから話すことに関係してくるのよ。にしても、すごい勘ね。予知能力でもあるのかしら。」
「なるほどのう。でも、おぬし、そんなに急では鞍が用意できないのではないか?」
「これがですねえ、すでに馬たちに作らされているのですよ。」と私は言いました。
「ほう、どうして作った」
「まあ、最初は、ユーリがクウに乗るようになって鞍を作ったのですが、当然他の馬達が、ユーリを乗せたがりまして、その時にユーリが、クウの鞍をそのまま使おうとしたら、馬同士、お互いに嫌がるのです。」
「まあ、自分の体に合った鞍が欲しいと思うのは、わからんでもないな。」
「ですから、すでにそれぞれの馬の専用の鞍をご用意しております。」
「なによその深夜通販番組的なしゃべりは、みんなに通じないでしょう。」アンジーがつっこむ。
「つい、そうなってしまいました。」
「まあいいわ。」
 そんなくだらない話をしていると。3人が帰ってきて、シャワーを浴びにいって戻ってくる。全員タオルを肩から掛けている。おや手には牛乳が。
「それでは、揃ったようですので、お話しをさせてもらってもよろしいでしょうか。」
 そう言ってアンジーが立ち上がり、先ほど壁に貼った地図の前に立つ。おや、何か棒を持っていますねえ。そして、その棒で地図をなぞると地図の山のあたりに四角く白いイメージが投影されました。あれ?そんなことまでできるんですか?
「まず、集まっていただきありがとうございます。実は、私からお願いしたいことがあります。」
 アンジーが一礼して、みんなを見た。みんながちょっと緊張して身構えています。
「今回、私の上司からある依頼がありました。」
 そう言って、アンジーは、地図の貼られたその黒板に四角く白い部分に封書のイメージを映し出す。
「すごいです。」
 それを見てユーリが驚いている。さらにその手紙は拡大表示され、中心にある赤い封蝋を大きく表示する。
「それで、依頼内容は、私の上司の書いた親書を届けるということです。なお、これはあくまでイメージ図ですが、こんな感じの封蝋を施した親書を届けることになります。」
 そして、投影されたイメージは消えて、今度は、地図に複数の点が輝いています。
「そして、その届け先ですが・・・」
「アンジー、その説明にイメージ図を使ったり、地図に地点を表示したりするの、やめませんか。なぜか胃がキリキリ痛むのですよ。」
 私はおなかを押さえながらつらそうに訴える。
「何だ、わかりやすいでは無いか、どうして胃が痛む。」
「あんた、元の世界でこういう仕事もしていたのねえ。そうか、あんたがシステムの開発担当者で、詳しく説明できない営業マンに無理矢理引っ張り出されて、営業の奴が説明しきれなくなったら、代わりにやりたくもないプレゼンをさせられた口なのね。」
「妙にリアリティのある詳細な説明ありがとうございます。まあ、そういうことです。」
「なおのこと我慢しなさい」
「そんな、ひどい」
「今回あんたに仕事は無いからよ。」
「あ、胃痛がとまった。」
「ストレスなんてそんなものよねえ。」
「茶番はいいから説明を続けろ。」
「はい、今回、天界が私に依頼というか取引を持ちかけてきたのですが、天使の能力を剥奪しない代わりに親書を届けてこいと言われまして。」
「ルシフェル様ではなくて天界の上司からですか。どこなのか言わないで隠し続けているあたりやばいところに届けるのでしょうか。」とパム
「さすがねえ、パム。そうよ、各種族の族長のところに現天使長の親書を届けろというのが依頼の内容ね。」
「なるほどな。それは、大役過ぎてアンジーが大変じゃ」
「手紙を届けるのが大変なのですか?」ユーリが言い、レイも首をかしげている。
「まあ、アンジーは、交渉ごとに長けておるからなあ。おぬしの上司としては、これを機会に天界の外交特使に仕立て上げて、天界に戻したいのじゃろうなあ。」
「さすが最果ての賢者ね。そこまでをすぐに理解できるような人材が天界にはいないそうなのよ。それで私に順番が回ってきたと言う事なの。」
「じゃが、その手紙配りをおぬしがやったら天界に戻されるのではないか」
「そこはね、誰が配ってもいいと言質を取ったのよ。」
 無い胸を張るアンジー、いや、チョーク投げないでください。どこから出したんですか。
「なるほどな、親書を預けるのは信頼の置ける者、天使長はアンジーをアンジーは家族を信頼しているとそういうことか。」なぜかモーラうんうんと頷いている。
「それで相手側が信頼してくれるかは微妙ですけどねえ。まあ、私をお使いにしようとするのですから、内容もたいした話では無いと思うのよ。」
「だからといって、公式に親書をお持ちするならばそれなりの礼装が必要になりませんか。公式行事ですから。」
 メアさん、何で急に衣装の話を持ち出しますか。意味不明です。
「それは、置いておいてね、メア」やんわりスルーするアンジー。
「はい」がっかりするメア。礼服を作るつもりだったのですね。フリルフリフリのやつを
「それでねえ、獣人をまとめている弧狼族の所にはレイに、パムには、申し訳ないけどドワーフの村、エルフィは、エルフの里、モーラにはドラゴンの里に行って欲しいの。魔族は、私が連絡員を使って届ける。魔法使いの里は・・・」
「はい」私は元気よく手を上げる。もちろんアンジーは、私をスルーだ。
「魔法使いの里は、メアとエリスさんに頼もうと思うの。」
「ええーっ」私は指名されると思っていたのにと肩を落とす。
「おぬしが行ったらどうなるかわかっているのであろう。」
「ショボーン」一応口だけガッカリした風を装う。
「あるじ様、僕がいます」
「ユーリ、君だけだよ、僕の側にいてくれるのは」
「ああ、ユーリ、申し訳ないけど、元魔王様のところに届けてくれないかしら。」
「僕ですか?元魔王様の居場所を知りませんけれど。」
「以前出向いたあの街に行って、連絡員と接触してそこで受け渡して。」
「元魔王は、族長ではないが、親書を届けるのか。」
「それが今回の依頼なので。」
「でも本当にいいのか?アンジー、おぬしが一緒に行かんでも。」
「一応、私に与えられた用件は親書を10日以内に届けるであって、私が親書を届けるではありません。それは確認しました。」
「念のため確認するが、なんて言ったのじゃ」
「モーラ、あえてそれを聞きますか。その時に私は、「親書が届けば良いんですね。」と確認しましたよ。」
「さすがじゃのう。おぬしの交渉術にはいつも驚かされるわ」
「そんなところ褒められてもうれしくありませんよ。私は天使なんですから。本分で褒めてください。」
「今のところみじんも発揮しておらんよなあ、ここでお菓子食ってゴロゴロしているだけじゃろう。」
「そんなわけ無いでしょう。ルシフェル様への定時連絡、町に建設したの孤児院の運営費のための寄付集めとか、町に行ったときにはいろいろやっているのよ。」
「そうか、それはすまんかった。大活躍じゃ」
「もう、馬鹿にしていませんか。でもねえ、最近ちょっと疲れてきているのも事実なのよ。」
「どうしたのですか?」メアが気にしている。
「心にうるおいが、体に光が欲しいの。」
「は?」
「最近、忙しすぎてねえ、それに曇りが多くて太陽の光が欲しいのよ。」
「光合成ですか」とユーリが突っ込む。いや、確かにその言葉以前使ったことがありますけど、よく覚えていましたね。
「まあ、植物じゃ無いけど。ゆっくりと暖かな太陽の光を浴びたいなあと思っているのよね。」
「ちょうど良いじゃ無いか。旅行してたっぷり陽の光をあびればよい。」
「でもねえ、うちの上司が今更私を指名してこんな簡単な仕事をさせようなんて、何か裏があるに決まっているのよ。」
「アンジー様が自分で行かないことにしたので、相手の思惑をうまくかわしたのではありませんか?」パムがそう言った。
「あの人はねえ。天使長になる前からいわくがあって、彼が求めることを誰かが為せば、それ以上の成果が返ってくるような仕組みになっている。とまで噂されていてね。実際、そうなっているのよ。その功績で今回、天使長になれたといっても過言では無いの。まあ、ミカエル様不在の中、自然淘汰的に天使長になったとも、とれるのだけれど。」
「上司が天使長なのですか?そういえば名前は、なんとおっしゃるのですか。」
「ああ、名前ね、天使長ガブリエル様。愛称はガブ様よ。ガブやんでもいいらしいわ。」
「愛称ってなんじゃ。」
「まあ、そう呼んで欲しいと本人は言うの。でもね、天使である私達がそう呼ぶと、間を置かず神罰が下るので呼びたくないのよ。でもそう呼ばないとあの人が悲しそうな顔をするからよけいイライラするのよねえ。」
「おぬしは嫌いなようじゃな。」
「いい人過ぎてねえ。腹の内が読めないのよ。まあ、そんなことはどうでもいいのよ。」
「何か裏にあると?」
「あの方の意図しないことかもしれないけれど、何か起きそうな気がしているのよねえ」
「まあ、お使いを頼まれたのなら行くしかあるまい。」
「了解していただけるのなら、お手数とは思うのだけれど、旅の準備をしていただけませんか。明日、親書が届くそうなのでそれまでにお願いします。」
「なんじゃ他人行儀じゃのう。」
「いや、お願いをし慣れていないので。」アンジーが照れくさそうです。
「家族なんですからいつも通りで良いんですよ。」と私。
「でもねえ」
「では、準備をしましょう。」メアがパンパンと手を鳴らして皆に準備をするよう促す。
「あ、メアは私と一緒にエリスさんのところに行って欲しいの。この件を頼みに行きたいので、いいかしら。」
「かまいません、旅の準備の買い出しもありますので。」
「お願いね。あと、そこでしょぼくれている男。みんながいない間、家の守りをよろしくね。」
「よ、用無しですか。」
「そうよ。私がみんなと一緒に行動できずにのけ者にされていた時の気分を今回は味わいなさい。」
「えぇぇぇぇぇ。」
「でも、エリスさんのところには一緒に行っても良いわよ。特別に許す。」
「ありがとうございます。アンジー様~」
「まったく情けないのう」
「親方様ってやっぱり家庭内ヒエラルヒーの最下層ですよね。」
 レイが首をかしげながら私の肩をぽんぽんとたたきました。そのとおりです。



 続く
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