巻き込まれ体質な私、転生させられ、記憶も封印され、それでも魔法使い(異種族ハーレム付き)として辺境で生きてます。

秋.水

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第18話 人柱ならぬ天使柱

第18-8話 アンジーさんデレる

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  -アンジー決意する-

 しばらくは、元の家にジャガーさんとフェイさんが暮らすことになって、少しだけ生活が落ち着きだした時に、私はアンジーに呼び出された。
 と言っても一緒に暮らしているので、2人で家を出れば良いのですが、他の人は一緒に来ないように事前に話をつけていたようで、2人で家を出ました。
 しばらくは、黙って歩いていましたが、アンジーの方から手をつないできました。そして、ぎゅっと手を握った後こう言いました。
「今回の件・・・ありがと。」
「ああ、そうですねえ、アンジーさんも大変でしたでしょう。お疲れ様でした。」
「ねえ、あの遊園地の家にいかない?」
 遊園地の家とは、間者よけに罠を配置した森の中の家のことです。
「良いですよ。」
 私がそう言うとアンジーは、また黙ってしまいました。
 家が見えるあたりに到着して、道に入る手前の抜け道に入ります。もう面倒な細工をやめているので、そのまま家に着きました。
 家の中は、メアさんがたまに掃除をしているようで、綺麗になっていて、ここでもしばらく暮らせるようになっています。まあ、お客様用別宅というところです。
「お茶でも入れましょうか?」
 そう言って私は、台所の方に向かおうとしました。
「いいわ、決心が鈍るから」
「え?」
「座りなさい。」
 アンジーの声に強い意志を感じて、食卓用のテーブルと椅子に向かい合って座る。アンジーは、私をじっと見つめて、いや睨むように見ている。
「今回のルミネア様のこと、本当にありがとう。」
 そう言った後、アンジーは、立ち上がって深々と頭を下げる。そして、ずーっと頭を下げ続けている。
「いや、頭を下げられるほどのことを私はしていませんよ。」
 私は立ち上がって、アンジーのそばに近づき、頭を下げ続けるのをやめさせようとしました。
「いいえ、あなたはね、私の姉とも言える存在のルミネア様を救ってくれたの。本当にありがとう。」
 そうしてもう一度、頭を深々と下げる。
「だからやめてください。」
 私は、頭を下げているアンジーをやめさせたくて、つい抱きしめてしまいました。
「あなたは、私と会った時から、私にいろいろなものをあたえてくれたの。2人でいた時もそれからたくさんの家族を作ってくれた時もね。そして、今回の事もよ。」
「どうしたんですか一体、アンジーらしくもない。」
「天使というのはね、気高いが故に本音を見せないし、隠そうとするの。そうしてね、自分自身に嘘をつくの。そしてそれがあたかも本心かのようになるのよ。すりかえね。でもね、心の中では、たまに叫ぶのよ、本心をさらけ出したい、大声で叫びたいとね。
 でもできなかった。今回ルミネア様の件でやっと私の本音が言えたの。ルミネア様を救って欲しいと。いつもならごまかしてあなたに押しつけるのでしょうけど、そうはできなかった。だって、あなたはちゃんと受け止めてくれたのだから。
 そうするとね、今まで隠してきた想いが、心の中から全部飛び出してしまったの。そしてね、それを言わずにはいられなくなったの。」
 そこで、アンジーは、少し間を開けてからこう言った。
「あなたと一緒に暮らせるようになってから、ずっと思っていた。あなたがしてくれたこと、あなたと一緒に何かをしたこと、家族が増え、みんなと一緒に笑い合えるようになったこと。全部、あなたが私にくれたものなのよ。ありがとう。」
 沈黙が2人を包む。私は、何も言えずに戸惑っていた。ただ、その時私には、アンジーを抱きしめて立っていることしか出来なかった。
「これは、みんなとの協定違反になるけど、どうしても言いたいの。」
「大好きよDT。これからもずっと一緒にいて、そばにいて、お願いよ。プリーズ」
 そうして、アンジーは、わたしを強く抱きしめた。そして、大きな声で泣きはじめた。
 私は強く抱きしめることしか出来ず。アンジーが泣き疲れて倒れそうになった時、抱きかかえ、アンジーの顔を見る。
「・・ひどい顔になっているでしょ。ごめん、今は感情が抑えきれない。」
 そう言ってアンジーは、涙を手の甲で交互に拭い始める。
 私は、思わず、彼女の目の横にキスをしてその涙を受け止める。
「なに・・してんのよ・・・ばかあ・・・」
 そう言いながら抵抗しようとするが、腕に力は入っていない。
「私もアンジーのことは大好きですよ。意地っ張りなところも、みんなのことを考えてわざと悪ぶってみることも、あなたの立ち居振る舞いの優雅さも、いつも見とれています。素敵だなあと。大好きと言ってくれてありがとう。アンジー。もちろん私もあなたと一緒にいますよ。ずっとそばにいます。もしアンジーがずーっとそれを許してくれるのなら。」
「あた・りまえ・じゃな・い。かぞ・く・・なん・・だから」
「じゃあもう泣かないで。笑ってください。ね?」
「うれし泣きに決まってるでしょ。もう少し泣かせておきなさいよ。ばかあ」
 アンジーは、今度は私の頭をぽかぽかと力なく叩く。
「まだ抱きしめていても良いですか?」
「椅子に座って抱っこして。」
「はいはい。」
 私は、椅子に座り、アンジーは、その膝の上に座って顔を向け合うような姿勢になった。
「大好き」
 今度は、うれしそうにそう言って、私を抱きしめる。胸に顔をうずめて頬ずりしている。
 私はついつい、あたまをぽんぽんと優しく叩いた後、背中をやさしくなではじめる。
 すると本当にすぐ、アンジーは、私の胸に顔を埋めたまま寝息を立て始めた。
「おやおや、きっと昨日からこの時のことを考えて眠れなかったのでしょうねえ。」
 しばらくそのまま座っていましたが、起きる気配もないのでどうしようかと思い、他の部屋にベッドがあるはずと抱き起こそうとしました。
 アンジーがその動きに気付いて目を覚まし、目をこすりながら、ハッと何かに気付いた。
「見られてる!!」
 そう言って私の膝から飛び起き、窓の方を見る。私もつられて窓を見ました。
 そこには、窓に張り付いた我が家族達とフェイがいました。ジャガーは、なぜかいません。
「あ、あ、あんた達、それって約束違反でしょ。」
 アンジーは、窓の方を指さしながらワナワナと震えて叫んだ。
『いいや、約束は1時間ほどであったろう。もうすでに過ぎておる。おぬしの失態じゃアンジー。』
 脳内会話なので、モーラのニヤついた感情が伝わってきます。
「そ、そんな。」そこに座り込むアンジー。
「みなさんとりあえず家に戻りましょうか。そんなところで窓に張り付いていたら、怪しいですよ。」
 私は、椅子に座ったままそう言いました。ええ、私も椅子にだらしなく座っていました。
「そうじゃのう。まあ、アンジー、落ち着いてから戻ってくるが言い。」
 そう言ってみんなが帰って行きました。
「どんな顔して家に戻れば良いのかしら。」
 そう言って座ったまま顔を真っ赤にして震えているアンジー。ああ、そんな姿も可愛いですねえ。
「あんたは、いらんこと考えないで。」でもうれしそうです。
「だって可愛いのですから。本当にアンジーは、私の天使様ですねえ。」
「素でそういうことを言うんじゃないわよ。恥ずかしいからやめて。」
「でも、さすがにこのまま帰るのは私も恥ずかしいので、少しここでゆっくりしていきましょうか。」
『モーラ、聞いていますか。もう少し落ち着いてから戻りますね。』
『ああ、そうしろ。さすがにすぐに戻ってきたら、わしらも恥ずかしいわ』
「だそうですよ。」
「そうね、もう少しここにいましょう。」
 そう言ったアンジーは、私の服の袖をつかんで、上目遣いで潤んだ瞳でこう言いました。
「さっきすぐ寝てしまったから、椅子にさっきと同じように座っていたいのだけれど、だめ?」
 アンジーさん、その上目づかいの潤んだ瞳は、どんな人でも陥落させますよ。私もノックアウトです。
 私は、窓のカーテンを閉めてから、椅子に座りました。
「ごほん」そう咳払いをしてからアンジーは、私の膝に座りました。

 おしまい

 家では、みんなが居間のテーブルでお茶を飲んでいます。
「アンジーお姉様~」
 なぜか、フェイが服の裾をかみしめながら泣いています。みんな彼女をスルーです。
「しかし、あやつも思い切ったのう。」
「そうですね。意外でした。アンジー様の新たな一面が見られました。」パムが言った。
「僕の時は、必ずカーテンをします。」とユーリが拳を握りしめて言った。
「でも~それって~旦那様に警戒されそうですね~」
「いいえ、それ位の覚悟がなくてはいけません。」とメアも拳を握りしめて言った。
「おぬしはそうであろうなあ。」とモーラがため息交じりに言った。
「まあ、協定違反を犯してまで抜け駆けしようとは、思いませんし、今回のアンジーさんのように周囲にそのことを伝えるなんて、覚悟を決めないとなかなかできませんよ。」
「その前に意識遮断を憶えないと会話がダダ漏れじゃぞ。特に興奮して感情が高ぶると制御できなくなるものじゃからなあ、今回のようにダダ漏れになるからな。」
「はい、皆さんからできるだけ離れなければいけませんね。」
「みんなアンジーには黙っておくのじゃぞ。決して気取られるな。」
「もちろんです。」
「ムググググ」縄で縛られ猿ぐつわをされたジャガーさんが床に転がっている。
「おお、ジャガー、すまぬな。おぬしがあれを見たら、絶対邪魔をしに窓を突き破って侵入するじゃろうから、あらかじめ縛ってしまったわ。すまぬ。」
 モーラの言葉に、パムがジャガーの縄を解いた。
「一体あの家で何があったのですか。」縄跡をさすりながら、ジャガーが言った。
「いや、何もなかったのじゃ。そういう約束じゃ」モーラの言葉に家族全員が頷いた。

 本当のおしまい
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