巻き込まれ体質な私、転生させられ、記憶も封印され、それでも魔法使い(異種族ハーレム付き)として辺境で生きてます。

秋.水

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第19話 初めてのお使い

第19-4話 それぞれの旅 2

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 エルフィ

 次に到着したのはエルフィである。
「アーちゃん無理しないでー」
 アは、エルフィの意を汲んで頑張っている。どうやらエルフィが最初に「一番早く親書を届けて旦那様から一番にちゅーしてもらうんだ~」と言ってしまったことによるらしい。
 それでも、3頭の中では、年齢的にやや高めであり、体力的にはやや厳しい。その分経験則があり、体力の配分はよくわかっている。給水・給餌の時間も自分である程度理解してエルフィに伝えている。しかし、それは他の2頭に比べての話しである。一般の馬に比べれば、格段に速い。しかも、どう憶えたのかわからないが、自分自身で脚に強化魔法をかけることができるようになっているからだ。もっともここぞと言う時に使っているので、そうそう使わないようにはしているようだが、魔力量を考えながら、野獣や盗賊の気配をエルフィを通じて把握して、遭遇しそうな時に使っているようだ。
「ねえ無理してない?無理してない?」
 エルフィは、アに気を使いながら道を駆け抜けている。休憩になると、アがエルフィに回復魔法をかけるように催促する。
「だーめ、無理はしないの。」
 エルフィは、回復魔法に頼り、休息を十分取らないと次の休憩までの時間が短くなることをよくわかっているからだ。もっともエルフィの体力も長時間の鞍上でかなり厳しいのもある。
 休憩と睡眠と食事は、バランス良く取ればかなり効率よく移動が可能だ。以前に住んでいたビギナギルを越え、壺の国の領地をショートカットし賢王の国の側を通り過ぎてひたすら移動する。それでも到着まで5日かかっている。
「森よ私を通してください。」
 エルフィは、そう祈ってからその森を通る。森を抜けるとそこがエルフの里だ。見慣れた木造の塀と櫓、そして砦が見える。扉の前に立ち、エルフィは、叫ぶ。
「天界の使者アンジーの代理としてエルフィが来ました。この門を開けてください。」
 いつになく緊張してしばらく待った。
 かなりの時間の後、扉は開かれ、案内役と思われるエルフが中へと招き入れる。馬を引いてエルフィは、中に入る。追い立てられるように長老の家に連れて行かれる。
木のやや上の方にある長老の屋敷に入る。
「お久しぶりです。」
 エルフィは、立ったまま軽く頭を下げて、あからさまに嫌そうな顔でそう言った。
「まあ、そう険しい顔をするな。座るがいい」
 何を考えているのかわからない気持ちの悪い笑みだ。用心しながら座った。
「さて、親書をもらおうかの」
 エルフィは、テーブルの上にそれを置き、誰かがそれを長老に渡した。
「こればかりはな、親書をわしが受け取り、封蝋に触らなければ、事は終わらんのでなあ。」
 長老は、手に持った親書の封蝋に触れて、色が赤から白に変わった。
「これで、確かに受け取った。それでは、ここから立ち去るがいい。」
「わかりました。それでは失礼します。」
「家族には会わないのか?」
「血縁の者はいますが、残念ながらここには私の家族はいませんので。」
 エルフィは、椅子から立ち上がり背中を向けながらそう言った。そして、外に出る寸前に立ち止まって。
「そうそう一言だけ言っておきたいことがありました。」
 長老に振り返り、その目を見てエルフィは、言った。
「恩知らず。」
 そして、長老の家から地上に飛び降りた。長老の側近達が何か叫んでいたがよく聞こえなかった。目から涙がこぼれ、感情がぐちゃぐちゃだったから。
 血のつながった家族も当然出てくるわけがない。そういう親や兄弟だ。だから、馬を預けていた場所に走って行く。
「エルフィ!」
 エルフィは、聞き覚えのある声に立ち止まり振り向いた。
「ああ、長老の息子のエルバーンね。何か用?私、用事が済んだから家族の元に早く帰りたいの。」
「あの森のことは、すまなかった。あれから他の地域に住む者達から聞いた。大変なことが起きていたんだな。本当にすまなかった。そして、ありがとう。こうやって我々は森に住んでいられる。本当にありがとう。」
「あれを止めてくれたのは、私の家族よ。私だけじゃ止められなかった。」
「そうだったな。家族ということは、」
「ここには私の家族はもう一人もいないのよ。」
「両親も兄弟もいるじゃないか。」
「私達があの時、体力も魔力も尽きてここに戻った時、あの人たちは何一つしてくれなかったのよ。ねぎらいの言葉も長老からかばうこともね。まあ、やっぱりって感じでね。私を家族だなんて思っていないのよ。昔からね。」
「・・・・そうか」
「今の言葉は、ご主人様に伝えておくわ。きっと喜ぶから。じゃあ。」
「エルフィ。ここには、もう戻ってこられないのか?」
「自分から来る気にはならないわ。この、事なかれな体質が変わらない限りはね。もっとも変わらないからこそエルフ族なんでしょうけど。」
「変わったら戻ってくるのか。」
「あの長老がいる限りは無理でしょう。そして、長生きしそうだから500年は無理でしょう?変わったからといっていい方向に変わるかもわからないしね」
「・・・・」
「じゃあ行くわ」
「気をつけて行って欲しい。本当に気をつけて帰って欲しい。お願いだから。」
「それは、元同級生で学級委員長としての責任感からなのかな?」
「いや、君がうらやましいからかな。というより憧れだからなのか。失いたくないから。」
「なるほど。私は、これから死ぬような目に遭うのね。」
「それは言えない。ただ帰り道に気をつけて欲しいということしか言えないんだ。」
「結局、あなたもそこまでなのね。ありがとう。忠告感謝するわ。」
「すまない。ふがいない僕を許してくれ。」
「許すも許さないもないの。私にとってこの里はその価値もないから。」
「・・・・・」彼は、そこにひざまずいてうなだれている。
 エルフィは、アのところに到着して、優しく頭を背中をなでる。
「ごめん。昨日休んだ分これから厳しい走りになるかも。」
「ヒン」悲しそうなエルフィの言葉に悲しそうに応えるア。
エルフィがアを連れて、門のところまで行くと、見計らったかのように門が開かれた。
エルフィは、馬に乗り門を出る。すかさず門が閉められた。
「じゃあ行くよ~」エルフィはそう言って、手綱を一振りして、アのおなかをやさしく蹴る。待ってましたとばかりに全力ダッシュを始めるア。
 森の中は道があるようでない。とにかく道になっている方向に向かってひた走る。途中、弓矢や、魔法が体をかすめる。幸い馬には当てるつもりが無いようで狙いも甘くなっている。
「どうせ、私は里から縁を切られたとか聞かされて攻撃してきているんだろうな~」
 エルフィは、なぜか楽しくなってきて弓や魔法をかわしつつ、あぶみに脚を掛けたまま立ち上がり、1本だけ矢をつがい弓を構える。ああ、これを作ってくれた旦那様ならきっとこう戦うんだろうな~。そう思いながらエルフィは、目を閉じ、周囲の気配を感じながら弓を上に向け1本の矢を打ち放った。1本の矢のはずが6本の軌跡を作ってそれぞれの方向へ飛んでいく。今度は、目をつぶったまま、矢をつがえず弓の弦だけを引き絞り弓を上に向けて弦を弾く。今度は光の矢が8本、それぞれの軌跡を描いて飛びさっていった。
「これを森がどう判定するのかな~ちょっと楽しみ~」
静かになったその森をエルフィは、無事に駆け抜けた。
 森の中では、その矢に打たれた者達が不思議な顔をしてたたずんでいる。
「確かに魔法の矢で打たれた。しかし一瞬の痛みと共に何も起きなかった。どういうことだ。」
「里から出る時に足にけがを負っていた者は、その傷が治ったらしいぞ。」
「回復魔法を矢にして打ったということなのか?」
「それはすごすぎないか。そばにいない味方がけがをしてもこの魔法の矢で打てば、治せるという事じゃ無いか。そもそもそんなことが可能なのか」
「エルフィだから出来たのかもしれないな。」
「すごすぎないか。」
「昔から彼女は我々の数段上をゆく弓の技術と魔法技術、そしてすごい魔力量を持っていたからできるのかもしれないな」
「あんな化物どうやって倒せば良いのか。」
「無理に決まっているだろう。我々の弓矢は一切あたらなかったんだから。」
「それは、昔から出来ていたからな。よく聞こえる耳で相手の位置をすぐ把握して反撃していたじゃないか。」
「本当にすごい人なんですね。でもどうしてそんな人が」
「それは、人の血が混じっているのと度が過ぎる能力で長老達は嫌っていたからな。」
「そうなんですか。もったいない。」
「我々も彼女をいじめていたから責められてもしかたがないんだ。」
「でも、長老の息子は見て無ぬフリをしていたんだよ。かばっても良かったのに。」
「立場もあったんだろうが、あいつは、エルフィのこと好きだったらしいからなあ」
「そうだったのですか。」
「そういえば、最初に1本だけ本当の矢が放たれていたようだが。」
「ああ、これだ。何か紙がつけてあるぞ」
そこには、「こんなに弱いなら強い敵が攻めてきた時すぐやられちゃいますね~どうするんですか~ちゃんと戦闘訓練しないと死にますよ~」
 そう書かれていた。

 エルフィは、追っ手が無いことを確認して、アの速度を抑えた。
「アーちゃんもういいよ~。逃げ切ったみたいだから~。さ~帰ろ~」
「ヒン」
 そうしてエルフィは、エルフの里を後にした。
「でもやっぱり一番最初に戻りたいよね~」
「ヒン」アは、その言葉に反応してさらに加速した。
 帰りは、距離も大体つかめているので、ペース配分もでき、効率的に帰ることができた。もちろん魔獣の出現や盗賊の待ち伏せもあったけれど、すべて足に矢を打ち込み動けなくしてその場を駆け抜けていった。もちろん回復魔法付きなので、矢が消えた後は、傷も残らない。
「やったー一番乗り~」
よく知っている道に入り、町が近いことを知る。周囲の反応を見ても魔獣も盗賊もいない。たぶんこのペースで帰ってこられたのは、私だけだろう。もっともモーラとアンジーは除いて・・・
ドンツツツツツツ
 空気を震わす強い振動が、エルフィとアが進むのを阻んだ。横倒しにならなかったのが奇跡だ。道の中央に立ち止まり、地面がしばらく振動しているのを肌に感じながら立ちすくむ。
「ヒン」何かを感じたのか、アが空を見上げる。
「なに・・・あれ・・・」
 エルフィの目には、きっと何か見えているのだろう。細く長く光の柱がそこには見えた。
 光の柱が消え振動が収まった時、エルフィははっとして、アに叫ぶ。
「アーちゃん急ごう。」
 そうして、疲れた脚に魔法をかけアは加速していった。
「旦那様・・・大丈夫だよね」
 エルフィは、心細げにつぶやいた。

 次に到着したのは、多分ユーリである。
これまで、ひとり旅というのをユーリは経験していなかった。傭兵団なり、あるじ様なり、パムなりと複数人で旅をしてきたので、どうもペースがつかめずにいた。
 クウとは、一緒によく走っているので、長距離も苦ではないが、いつ休ませて、いつ水や飼い葉を与え、いつ野宿の用意をするのかわかっていなかった。クウも同じように単独走が初めてなので、お互い相談しながら数日走り、やっとわかってきた。
 クウは、走るのが好きでつい速度を上げようとするので、その日は良いが、翌日にその分疲れていたりする。1日の中でも休憩はこまめに取り、その都度給水しないとダメみたいだ。
 ペースがつかめるとまさに人馬一体。風を切りながら道を疾走している。しかし、魔獣やら獣が出没するため。それをかわしつつ走ることになる。
 もっとも魔族については、これまでの魔族との戦いの武勇伝に尾ひれがついて伝わっていて、魔族の領地を走っている時も、気配を感じたりするがすぐに感じなくなる。複数でもかかってこないのは、やはり魔王の側近との戦闘の話しが大きいようだ。
 しかし、女性のひとり旅である。魔獣はかわせても盗賊が執拗に襲ってくる。
 突然、クウが足を止める。
「あ、気付いたんだね。」
 ユーリは、この先にある木立の中に数人の気配を感じていた。
「クウを傷つけられたくはないなあ。」
 人は何をしてくるかわからない。走り抜けるのは無理そうだ。
「ゆっくり走って行こうか。」
「ヒン」クウは啼いた。ゆっくりと進んで、その場所まで来ると。
「そこの奴止まれ。」
 その言葉と共に囲むように人影が現れる。ユーリは、馬を降りる。
「何の用ですか。」
「その馬と持っている物を差し出せ。」
「そうしたら、旅が続けられなくなるじゃないですか。」
「死ぬよりはましだろう。」
「親分、こいつ女ですぜ、捕まえて・・」
「馬鹿野郎。確かに盗賊に成り下がっちゃいるが、そこまで落ちぶれていないわ」
「ですが、ここでこの女を放り出したところで、誰かに犯られちまうのが、おちですぜ。」
「おまえ、馬に載せているあの大剣を見て何か思わないのか。」
「ああ、そんな物が・・・でも、今は獲物を持っていませんぜ。」
「俺の背中には冷や汗が流れているんだよ。わかるか。」
 言われた男はポカンとしている。しかし、数人は、親分と呼ばれた男の言葉にうなずいている。
「女の子をこんなところに捨てて行くのは感心しませんが、それでも犯さないだけ、まだ性根は腐っていませんね。盗賊をしている理由が何かありそうですけど。聞かせてもらえませんか。」
 ユーリは、後ろ手にしていた右手を前に出す。そこには、あるじ様から作ってもらった脇差しを握りしめていた。日本刀独特の刃のひらめきがきらきらと陽の光を反射している。
「あんたは、あの時の3人のうちの一人か。」
「いつの時かは知りませんが、いつの事でしょう。」
 ユーリは、あるじ様の真似をちょっとしてみた。
「ある村の領主の不正をあばいて、領主を追放した話しを憶えているか。」
「ごめんなさい。そんな事は、何回もあったので、どれか憶えていないのです。」
「まあ、しかたがない。俺たちも領主にだまされていたからな。しばらくは、その時の金でなんとかしていたが、どこにも行く当てが無くて、このままどこかに行こうとしていたところだ。まだ、なにもしちゃあいねえ。」
「それは、領主が悪いせいなのに割を食いましたねえ。」
「いや、それについちゃあ薄々感づいていたんだが、見て見ぬ振りをしていたのも事実だからなあ。」
「では、まだ、盗賊をしていないのですね。」
「ああ、今回が初めてだ。悪いことは出来ないものだ」
「そうですか。では、信用しましょう。少ないですが、このお金を差し上げます。そして、この反対の方にファーンという小さい町がありますので、そこの傭兵団を訪ねてください。」
「え?」
「仕事が欲しいのでしょう?」
「あ、ああそうだが。会ったばかりでしかも盗賊しようとしていた俺たちを信用するのか。」
「あるじ様がいつも言っています。まずこちらから信用しなければ信頼は生まれないと。あと礼節は大事だと。さらには、袖振り合うも何かの縁ということばをよく使います。」
「はあ、そうなのか。」
「ただ、私は、あるじ様ほどお人好しではないので、もし嘘をついたらどんな目に遭うのか教えておきます。」
「どんな目に遭わせるのか。」
「私は目をつぶっていますので、全員で切りかかってください。」
ユーリは、馬から離れて道の真ん中に立つ。
「いいのか?」
「私が死んだらこのお金は全て貴方たちの物ですよ。私は傷つけられても絶対貴方たちを殺しませんから。さあどうぞ。」そう言ってユーリは、目をつぶる。持っているのは脇差しだけだ。
「いいんですかねえ。」
「お前にはわからないだろうが、誰かが前に出ようとすると、気配を察知してそちらの方に意識を向け、足先の向きが少し変わっている。わからないか。」
「確かに、でも一斉にかかったら逃げられねえでしょう。」
「剣というのはな、全員で斬りかかったって間合いが決まっているのさ。この人数で一斉に切りつけられはしない。できても5~6人なのさ。さらに相手が立っている位置を決めて一斉に上から切りつけることになる。そうすると逃げられたら逆にこっちが危ない。なので、3人がせいぜいで、その位置は3方向しかないんだ。ただ横に薙いでくることがあるからそれを気にしているのだろう。だとしても、この余裕は何だ。」
 用心しているのか、周囲の男達はじりじりと間合いを詰めてはいるが、誰が一番最初に行くのか決めかねている。
「来ないのならこちらから行きますよ。」
 ユーリは、一番近づいていた男の方に向いて一瞬屈んでダッシュする。
「速い!」
 ユーリが一瞬屈んだ時をのがさず、他の男達が間合いを詰めたが、すでにそこにはユーリはいない。すでに正面の男の首に脇差しの切っ先を当て、すぐ首から刃を離して、背中に回り込み、その男を盾にして、間合いを詰めてきた男達の中に突っ込む。思わずさがる男達を尻目に、右側の少し離れていた男に一瞬で近づき、背中に回り込み、やはり首に刃を当て、先ほど背中を押した男と切りつけようと集まっていた男達の中に飛び込み、お互いが傷つけないよう剣を動かせずにいるところを背中に回り込んで次々と首筋に刃を当ててそこから離れる。
「もういいわかった。やめてくれ。」
 親分と呼ばれた男が叫ぶ。目を開いたユーリが首をかしげる。
「どうわかったのですか?」
「今後悪事を働いたら、あんたが制裁に来ると言うことがよくわかった。どんなに人数を集めたってあんたにはかなわないだろう。全員殺されてしまいだ。」
「そうでしょうか。私には、あるじ様のように3千人の兵隊相手にするだけの度胸はありませんが。」
「あ、あるじがあの話しの」
「あ、違います。いまのはたとえです。本気にしないでください。」
「ああ、そうしておく。事実を知った者達は、皆消されると言われているからな。」
「そんな話になっているのですか?」
「ああ、その魔法使いの居場所を探しに行った者は、ほぼ全員行方不明になっているそうだ。」
「話が変な方に歪んで伝わっていますね。まあ、その人とは関係ありませんが、私の訓練に付き合わせたことは謝ります。」
「今のが訓練ですか。」
「不殺こそが、私の到るべき高みですので。」
 その親分がいきなり土下座をする。それを見て十数人が全員土下座をする。
「感服いたしました。ぜひ部下にしてください。」
「皆さん立ってください。というか立って!」
 全員立ち上がる。
「訓練に付き合わせたことは謝ります。ですが、部下には出来ません。でも、もし、盗賊になるのを諦めて何か職に就きたいのなら、貴方たちは、私の住んでいる町の傭兵になって欲しいのです。」
「はあ」
「えっとですね。えー私の・・・ところはー田舎の町・・・なのですが、最近・・・活気が出てきまして、えーと、それを妬む国とかに狙うじゃない狙われそう・・そう狙われそうなんです。あ、まだ先のことですけど。なので、信頼でき?ああ、できそうな人を傭兵として雇い・・・雇いたいのです。そうそう。で、出会って・・えーと、出会って、良さそうな人がいたら勧誘してくれと・・・言われていたのです。(棒読み)あ、やっと全部言えた」
「はあ」
「ですから、その町へ、ファーンへ行ってみてください。」
「わかりました。どなたを尋ねて行けば良いですか。」
「ああ、ユーリが紹介していたと言ってくれれば誰でもわかります。まあ、マッケインさんがいればすぐですが、いなければ出会った人に話せば、村長のところに連れて行ってくれますから。」
「わかりました。盗賊に手をそめないままでいられたことを感謝します。」
「それはよかったです。でも、うちの天使様ならそれでも懺悔してくれて改心してくれれば、大丈夫だと思いますよ。」
「その町には、天使様がいらっしゃいますか。」
「ええ、辛口で辛辣なことを言う人ですが間違いなく天使様です。でも、普通の人は天使様って何ですかって言いますよね。」
「いえ、私は信じていませんが、私の家には伝わっております。もっとも聞かされただけですので誰も信じないでしょうが」
「では、忠告します。その町では天使様のことを悪く言ったりしてはいけませんよ。」
「わかりました。」
 その時に人の匂いに誘われたのか森から魔獣が叫びながら走り出してきた。かなり大柄な魔獣だ。まるでシロクマのような体躯。見た目以上に足も速い。
「魔獣だ!!」魔獣の叫び声に反応してその姿を見た者が叫び、その視線の方向に振り向いた者も怯えている。
「でかいぞ、これは厳しいな。」
 全員、一応剣を構えるものの、皆、緊張しているようだ。
「皆さん、けがをしますので、離れてください。」
 ユーリは、馬の鞍に付けていた大剣のベルトを外して、背中に背負う。
「その大剣。やっぱりあなたでしたか。」
「近づかないでください。」
 ユーリは、近づいてくる魔獣に向かって一直線に走って行く。魔獣は向かっていくるユーリに対してスピードを落とし、止まって、両前足をあげて迎え撃とうとする。ユーリが、大剣の柄に手を掛けると背中のベルトが勝手に外れる。走りながらその剣を両手で水平に構えるとさらに加速して魔獣に突っ込んでいく。魔獣は、自分の間合いに入ったのか右前足を横に薙いだ。しかし、ユーリの姿は消え、前足は空を切る。ユーリは左脇腹を抜けて背中に回る。気配に感づいた魔獣が左足を軸にして回った時に腹に剣を刺し、腰から顎、頭まで一直線に切り上げる。大剣は、背中の皮まで届かないように、頸椎までで止めている。その魔獣は、何が起きたかわからないうちに両前足は、だらんと下がり、ほどなく倒れ込む。
「ごめんね。ついいつもの癖でこういう切り方をして、毛皮としてできるだけ使える面積を増やすために傷つけたくないんだよね。」
 そう言いながら、ユーリは、魔獣の死体に手を合わせる。なぜか、あるじ様がいつもこうしているから真似をしているのだ。
「一撃ですか。」
 近づいてきた親分がつぶやいた。
「これでしばらくは肉に困りませんね」
 そう言ってユーリはにっこり微笑んだ。
「あ、ああ、そうですね。」
「では、先を急ぎますので、ファーンという町を訪ねてくださいね。あーもちろんその前にどこかで仕事に就ければそれでも構いませんので。」
「いえ、ぜひ、その町に行ってみたくなりました。そうだな」
 全員うなずいている。空気を読んでクウが近づいてくる。大剣の血糊や脂を拭き取り、鞍の鞘にしまい、ユーリは馬に乗った。
「それでは失礼します。」
 その場の全員は、ただ呆然と見送った。
「すげえ人ですねえ。」先ほど親分と呼んだ男が言った。
「たぶん、噂の魔法使いと7人の仲間の一人だろう。その中に一人だけ人族の魔法剣士がいると聞いた。亡国の姫だという話だが。」
「マ、マジシャンズセブンですか。それなら納得です。でも、そいつらに会うと死ぬという噂もありますぜ。」
「いや死んでも構わない。ぜひともその町に行って、傭兵団に入って、あの人に稽古をつけてもらいたい。」
「そ、そうですね。」
「さあ、みんな、行くぞ・・・とりあえず、肉を解体して、食べて、あとは、持てる分だけ持つぞ。魔獣よけの餌になりそうなでかい奴だからな。まあ、これを襲う魔獣に会ったらこの肉置いて逃げるぞ。」
 一方ユーリは、
「良かったのかなあ。とりあえず、ついでの方の目的を果たせたから良かった。」
 でもね、アンジーからは、帰り道でと言われていたと思いますが。あと、そのセリフ棒読みは練習しましょうね。
 その後に現れる盗賊は、いきなり襲ってくるので、一度は、剣をおさめるように説得して、それでも聞かないので、全員の剣をたたき壊して去り際に、「その剣で魔獣と戦ってくださいね。」と言い残したそうだ。一応、あるじ様の助言をひたすらに守っているユーリだった。
 そして、ユーリは、指定された町に到着して、すでに夕方だったので、宿屋に部屋を取り、その夜に宿屋の裏手で静かに人を待った。この時すでに6日が経過していた。
 暗闇の中ひときわ黒いマントを着た人が現れる。人の気配にユーリは、背中の大剣の柄に手を掛ける。左手は、脇差しに手を掛けている。
「物騒だね。大丈夫、私だよ。」マントのフードを外して顔を見せてきた。確かに元魔王様の顔だ。
「確かに元魔王様のようですが、息子さんはどうしました?一緒に来るのでは無かったですか?」
「え?息子?娘じゃ?」
 動揺する元魔王の顔をした誰か。ユーリの笑みに試されたのを知って、開き直る。
「親書をよこせ。」
 そう言って手を伸ばしてくる。
「ここにある訳ないですよ。」
 ユーリの両手はそれぞれの剣を握っている。左手の脇差しを抜きしなに相手に投げる。
「そうか到着した時にすでに誰かに」
 そう言いながらその男は、後ろに飛び退こうとする。しかし、何も無いところにぶつかり、逃げられない。
「それは、どうでしょうか。」
 ユーリもそう言いながら、大剣を大上段に振りかぶり相手に切りつける。その男共々透明な壁も切った。透明な壁は2つに割れ、切り口が光りながら崩れ落ちていったが、その男は黒い霧になって消えた。
「おいおい、逃げられたか。正体はわからずじまいだな。」
 そう言って影から出てきたのは、獣人の男だ。
「ああ、獣人さんでしたか。確かディガートさんと言いましたか」
「ああ、そういえばおまえらには、名前呼ばれたこと無い気がする。そうだ、ディガートだよ。」
「元魔王様は、どこにいらっしゃいますか?」
「一緒に行こう。」
「何があるかわかりませんから別々に行動しましょう。念のため場所を教えてください。」
「ああ、いいぜ」
 ユーリは、彼を信用していなかった。ユーリは、馬を連れずにそこまで歩いて行く。
 その町の外れにある広場というか、建物か何かが焼け落ちてそのままになっているところのようだ。そこには、数人の人の気配がした。
「あんたユーリかい」
 いたのは、人間だった。4人いた。
「そうですが、どちら様ですか。」
「あんたが来たらここで殺して手紙を奪えと金をもらった者さ。」
 そう言って全員が剣を抜く。
「残念ですが、持っていませんよ。」
「じゃあ殺さないで、ありかを聞き出すだけさ。」
「こんなことは、やめましょう。無意味なことです。」
「はあ、俺たちには金が入るんだよ。」
 そうして剣で切りつけてくる。ユーリは、相手のあまりにも遅い攻撃にちょっとあわせられずに動きがぎこちなくなる。それを技量が無いと判断したのか一気に攻めてくる。
「そうですか、そんなにお金が欲しいですか?」ユーリはいなしながらさらに話している。
「ああ、欲しいさ。すでに半金もらっているしな」そう言いながらもその男は攻めきれず次第に焦ってくる。
「そうですか。ここで死んだらそのお金さえ手に入らないですよ」
「そうだな。それでも請け負った仕事だからなあ。」
「ここであるじ様ならどう対応するのでしょうか。やはり、力を見せるしかないのですね。」
 そしてユーリは、かわす一方だったのをやめて、向かってくる剣をたたき落とす方を選んだ。3回大剣を振っただけで4本の剣は宙に舞い全員座り込んだ。
「なんて重い剣だ。まだ手がしびれている。」全員が腕がしびれて動けないでいる。
「誰に頼まれたのでしょうか。」大剣を手にしたまま。ユーリは言った。
「それは言えねえ。」
「そうですか。では、」そう言ってユーリは、大剣を背中に戻して、しゃべっている男に近づき、脇差しを抜いて、その男の左肩に刺す。
「な?」
「命あっての物種ですよ。痛いですか?」
「や、やめてくれ話すから。」
「最初から言ってくださいよ。」これは、あるじ様の真似をしてみました。
「フードをかぶった男からここに現れるユーリという女の子を脅せと言われたんだ。顔は見ていない。本当だ。」
「いつものやり口ですねえ。ディガートさんがこの茶番を仕組んだのですか?」
 ユーリは、男達とは違う方に視線を向けて言った。
「そいつは、ここにはいない。別な用事でどこかに行っているよ。もっとも用事は、どこにも無いけどな。」
 そう言って先ほどのフードをかぶった男が元魔王の顔でまた現れる。
「それなら、今度はあなたに聞くしか無いようですねえ。」
「いや、達成されたよ。おまえは、人を傷つけた。」
「なるほど、私を人族の敵にしたかったんですね。アンジーさんの言ったとおりになりました。」
「なんだと」
「その人は、傷ついていませんよ。」刺した脇差しは、手から消える。腰の鞘には脇差しは刺さったままだ。
「あ、本当だ。痛みが無い。」
「なるほど、幻術ですか。あなたも成長しましたねえ。」
「不得意科目は克服すると達成感が倍になるとあるじ様から言われていましてね。さて、くだらない話はおしまいにして、行きますよ。」
「失敗したら即撤退が信条でね。また会いましょう。」そう言ってその男?は、かき消えてしまった。
「魔法使いのようですね。ああ、貴方たちは、ここからいなくなった方が良いですよ、単に利用されただけですが、口封じに襲いに来るかもしれませんから。」
 その言葉にあわてて4人組はそこから走り去った。しばらくの後、気配が近づいてくる。
 月明かりで顔が見え、元魔王様の顔の男が現れる。
「やっとお見えになりましたね、元魔王様。」
「気付いていたのかい」
「いえ、あの魔法使いがいなくなったら気配を感じることが出来ました。では、手をお出しください。」
「あ、ああ」元魔王様は、その場に立って手を出している。ユーリは、その手に近づき親書を取り出し、指に封蝋を押し当てる。蝋の色が赤から白に変わる。
 ほっとした顔をしたユーリだったが、顔を引き締めてこう言った。
「そういえば、息子さんは元気にしていますか。」
「ええ、息子も会いたがっていたんだけどね。」
 そう言って、手紙を受け取ろうとする。ユーリは、手紙を渡さない。
「渡してください。」
元魔王の顔が引きつっている。
「残念ですが、お渡しできません。どうやってその封蝋の魔法をクリアしたんですか。もしかして本人の腕を切ったのですか。」
「気付いてしまいましたか、惜しかった、とても惜しかった。この手も通じないのかい。本当にあなたのところの軍師は、完璧です。はいはい、今度こそ本当に退散しますよ。」
 そして、元魔王の顔をした男は、通算3度目の退場をした。すぐさま、右腕を押さえて走ってくる元魔王が走ってきて、一緒にさきほどの獣人も到着する。
「親書は?」
「大丈夫ですよ。」
「腕を切られた時にはどうなるかと思ったよ。」獣人が言った。
「はい、ユーリさんの顔をした方が、手を見せてくださいと言って手を出したら、腕を切って持って逃げ出したんですよ。本物ですよねえ?」そう言って元魔王様は、ユーリの顔をしげしげと見る。
「そこに腕が残っています。捨てていったんでしょうか。」
「まあ、持って逃げたら、追跡できますので。居場所までばれますからねえ。」元魔王様は、その腕を拾って右腕の肘のあたりにつけた。
「しかし、大変だったな。」
「では、今度こそ本当に、確かにお渡ししました。」
 ユーリはその手に手紙を渡し包み込むように手を握らせてから、手を離した。
「そうですか。」
「息子さんによろしく。」
「ああ、もう対外的に娘だということを公表していますから問題ないですよ。」
「そうですよねえ。まだ一般には伝わっていないみたいですね。そのおかげで偽物を見分けることが出来ました。まあ、片腕持ってこられて娘の話が理解できていれば、渡していたかもしれません。」
「一体何をさせたいんでしょうか。」
「さあ。難しいことは僕にはわかりません。」
 そして、ユーリは宿に戻って一泊して帰路についた。

 帰路のことだ。もう数日でファーンの町に到着するという距離で、道の先に数十人の人が歩いているのが見えた。その中に見覚えのある姿があった。ああ、途中であった盗賊さん達だ。
「こんにちは」馬を下りて手綱を持ちながら横に並んであるく。
「ああっあなたは、ユーリ様、もう用事は済んだのですか」
「ええ、そうですが。そんなに大勢になってどうしたのですか?」
「実は、あの後、一番近い街に行きまして、旅の準備をしようとしたのですが、こいつが調子に乗って傭兵の話をしましてねえ、我も我もと集まってきまして、まあ、これからの道は魔獣も結構出る道ですので、人数が多い方がいいだろうと連れて町に向かっていました。」
「そうですか、そんなに大勢は、迎えられませんが、他の地方でもよければ紹介できると思います。ですが、結構大変ですよ?これまでのように粗野には、生きられませんし、生活も質素になります。町の人のために真面目に生きないとなりません。まあ、だめなら追い出されることになります。いいですね。」
「はい。」
 そうしてぞろぞろとうさんくさい男達を従えて町に戻ろうとしていた。
ドンと空気を震わせる音がして、その後地響きが続いている。
「ユーリさんあれを。」
 男が指し示す空。はるか遠く町の方向に光の柱が見える。この距離で見えるくらいの光の柱。
「ごめんなさい。先に行きます。」
クウに乗りクウのおなかを蹴り、クウも何かを感じ飛ぶように駆け始める。
「なんだいあの速さ。馬の走りじゃないぞ」
「にしても、俺たちも急ごう。何かあったなら手伝いが必要だろう。」
 その男達も先を急いだ。


 続く

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