巻き込まれ体質な私、転生させられ、記憶も封印され、それでも魔法使い(異種族ハーレム付き)として辺境で生きてます。

秋.水

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第22章 過去との再会

第22-4話 父の友人と原初の魔女

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 そうして、その錬金術師の家を訪ねる。街の反対側にその家があり、その家だけ少し庭が広かった。
「エリクソンさんこんにちは~」そう言ってエルミラが扉の前に行って声を掛ける
扉から顔を出した初老の男性。顔のしわとふくよかな体型。年齢は不明だ。
「おやどうしたんだいルミ。久しぶり。」
「お客さんを連れてきたの、」
「お客だなんてめずらしい。どなた・・・おお、マダムパープル・・いやそれはない、そうか、メアジストさん・・・なのか。」
「はい、初めましてエリクソン様、メアジスト・アスターテと申します。」
「はは、そうだ、確かに初めましてだ。そうかあいつは、体だけではなく、すべてを完成させていたのだな。見せにも来ないで。まったくあいつらしい。おや、そちらの方は。」
「はい、わたくしがお仕えしている。ご主人様であり。私の家族です。」
「どうも、初めまして。わたくしDTと言います。」
「ああ、魔法使いなのですね。私はエリクソンと言います。よろしく。」
 そう言って握手を求められた。私は思わず手を差し伸べる。
「転生者の方ですね。」そう言って手を出しておきながら握手をしない。
「ああ、ばれてしまいましたか。そうです魔法使いです。あなたもですね。」
「残念ながら私は違います。他の世界から来た人を見分ける簡単な方法が握手だとスタに。失礼、彼女の父アスターテに教えてもらったのです。」
「そうですか。引っかかりましたねえ。でもこちらでも握手はしていましたが、違いましたか。」
「信頼の置ける人としかしませんね。初対面では握手はしません。」
「なるほど。さて、私が他の世界から来たとして、何か話してもらえることは変わりますか。」
「いいえ、単に話が早いだろうと確認しただけです。立ち話も何ですので中へお入りください。」
「ありがとうございます。お邪魔します。」
 中は薄暗く、テーブルの上には乱雑に食器が置かれている。エルミラは、慣れているのかそこを片付けてお茶の用意を始める。
「ミラ、すまないねえ。」
「いつものことだから気にしないで」
 そしてテーブルに向かい合って座った。
「それで、こちらに来た目的はなんでしょうか。まさかメアジストと会わせるために来たというわけでもないでしょう。」
「はい、私と、彼女が出会った時。一緒に暮らしていた魔法使いから彼女をホムンクルスとして紹介され、いろいろあって一緒に暮らすようになりました。最近、彼女が少女時代のことを夢で見ると言われて、ホムンクルスのはずがどうして。と悩んでいて、彼女の体を作ったブリュネーさんの足跡を追ってここまで来ました。」
「なるほど。最初はホムンクルスと思っていたと。」
「ええ、ここでそちらにいるエルミラさんにばったり出会って、記憶を取り戻して、エルミラさんからあなたの事を紹介されました。」
「そうでしたか。ちなみに彼は生きていると思いますか。」
「私がメア・・メアジストさんとお会いした時には、生きているかどうかわからないと言われましたが、探すことはその時に決めていました。メアの失礼メアジストさんの前ではありますが、死んでいる可能性はかなり高いと思います。」
「やはりそうですか。あなたは嘘を言っていないようだ。正直にお話ししますと、私が知っているのは、彼がここで暮らしていたこと、ここを追放されたこと。その後は、たびたびここを訪れていたこと。くらいなのです。そして、メアジストさん。あなたにお渡しするものがあります。」
「なんでしょうか。」
「その前に少し昔話をしましょう。記憶の整理ができると思いますので。よろしいですか?」
「かまいません。私も幼少時の記憶があいまいですので」
「そうですか。あなたもよろしいですか。ああ、エルミラは良いのかい?」
「聞きたいです。」
「まず。彼は、この街から少し離れたところに家を建てて暮らしていました。この街が出来て、私が住み始めた頃には、すでにこの街にいたのです。彼は、他の世界から来た転生者で膨大な魔力量をほこる魔法使いでした。私は後から知ったのですが、彼はここである研究をしていました。」
「彼は私のことを知っていて、ここに暮らすようになると、お互い情報交換を始めました、そして、彼が最初から錬金術師を名乗っていたのを私が真似して錬金術師と名乗るようになったのです。」
「彼の研究は、生命の活性化、細胞の変異などでした。光の魔法でも闇の魔法でもなく属性は不明でした。」
「やがて近くに住んでいた、パープルさんと結婚し、子を成しました。それがメアジストさんあなたです。彼は、あなたを溺愛し、手元から離そうとしませんでした。その頃には一時期ですが研究が滞ったくらいです。しかし、あなたは、8歳の時に突然死んでしまうのです。彼は嘆き悲しみ、そして、魔力により体を錬成する研究に没頭し始めます。その頃には、私も彼とは会うこともできず。どうなったのか知りませんでした。私が知ったのは、彼の研究が、生と死をもてあそぶものだとしてこの街から追放になったと言うこと。その時には妻ともうひとりの娘とは疎遠にしていたのでそちらには影響は及ばなかったということですね。」
「もうひとり娘がいたのですか。」
「それが、彼女、エルミラの曾祖母です。」

 馬車を止めた広場である。青い空が広がっている。モーラとパムが珍しそうに噴水の周りを調べている。時々、噴水の縁に座って何か話している。それにも飽きたのかみんなの所に戻って来た。
 そこには、光を浴びて幸せそうにアンジーが座っていた。外の広場に止めてある馬車に乗せていた簡易ベッドを引っ張り出し、みんなでそこに座ってひなたぼっこをしている。近くの店から串肉を買ってきてみんなで頬張っている。周囲には子どもの姿は見られない。大人達も高齢の人がベンチに座ってのんびりしていて、こちらへの関心も薄いようだ。
「おかしくないですか?この街では、子どもが生まれなくなっているのに彼の子孫はちゃんと子を成しているのです。」パムは不思議そうだ。
「まあ、待て。この街が実験場とするなら、何かそういう因子を与えているのかも知れないではないか。」
「なるほど。」
「アンジー、他に教えてもらえる話はないか。というかこの話どこから仕入れたのか?」
「それはねえ、ここに来た時に遠くに教会にあるような立派な鐘楼が見えたのよ。それで、もしかしたらと思って行ってみたら、本当に教会はあったのよ。で、そこにいた神父らしき人に天の声だと思わせて聞いたのよ。だから、細かい話までは聞けなかったのよねえ。」
「なるほどなあ。この街が、教会があるくらい古いという事か」
「神の存在も天使の存在もないけど、精神的な安息には宗教というか、この手の施設は必要だものねえ。神にとっては迷惑な話だけれどね。」
「そういうことか。」
「子どもが生まれなくなったのは、この街にかけられた呪いなのだそうよ。」
「ここの人と話をしてみましたが、やはり魔法使いは忌み嫌われていますねえ。年齢の高い人になればなるほど嫌っているようです。」
「しかし、この街がこうやって整備されたのは、魔法使いの恩恵らしいですよ。どこからかお金を持ってきて上下水道工事、各家の新築、学校を作ったそうです。」
「それが、どうして忌み嫌われることになるのじゃ。」
「まず、その魔法使いのせいで時間の流れが変えられたと思い込んだことです。普通の人の十倍の時間を生きることになってしまったと。そして、子どもができなくなったこと。最後に生活に困らないだけの資金はあるが、それ以上に増えないこと。まあ、簡単に言うともっと欲しいというところですかね。」
「税金はかからない、働いた分だけ貯まると言っていなかったか。」
「働く場所がないのでお金が貯まらない。少しずつ貯めてそのお金を持って出て行っても、結局、違う土地で働いてお金を稼がなければならない。ここで楽して、趣味でお金を少しだけ貯めて生活していた方が楽なのよ。でも大金持ちにはなれない。」
「まあ、それは逆恨みと言ったところか。そもそもその原因が魔法使いの仕業と言ってしまっていいものかどうか」
「はい、その魔法使いが嫌われた直接の原因は、命を弄んだからだそうですよ。」
「弄んだと」
「まあ、墓荒らしですね。死体を蘇らせる実験に死体を掘り起こしたとか、死んで間もない死体を解剖したとかです。」
「なるほどなあ。それで追放されたと。」
「そういう話でした。」
「それがメアの父親なのね。」
「多分そうなのだろうと思います。」
「この街を作るほどの巨額の資金を彼はどうやって手に入れたのですか。」
「そもそもメアの父親がこの件にどの程度まで関わっていたのか。それもあるからな。」
「ああ、ある程度まで研究成果が出て邪魔になって出されたということですか。」
「その線が一番ありそうな気がせんか。」
「そうよねえ。」
 レイとユーリは、フリスビーで遊び始めました。ユーリがフリスビーを投げ、それを獣化したレイがキャッチするというシンプルな遊びです。そこにエルフィが参加し、レイが飛びつく直前でエルフィが魔力の矢をあてて軌道を変更して、それをキャッチするという遊びです。まあ、訓練になって良いのでしょうけど。
「おぬしら、あんまり変なことをして周りの人に迷惑掛けるなよ」
 モーラが声を掛けるもレイの目が血走っていてやめる気配がない。だんだん人が集まってきたので、そこから移動した。移動する時になぜか拍手が起きていた。どうやら大道芸がひとつ増えたようです。
「まだ、潤いが足りないわ。」太陽を見上げながら、アンジーがため息をつく。

「さて、彼の話はこのくらいしかありません。最初にお渡しする物があると話していましたが、彼はこの街に工房を残したままいなくなりました。ここから山の方に行けば、あるはずです。今は朽ち果てて残骸しか残っていないのですが、もしかしたら何か見つかるかも知れません。そしてこれを。」
 エリクソンさんは、後ろの戸棚から鍵を取り出して持ってきた。そして私に渡す。
「鍵ですか。めずらしいですね。」私はその鍵をメアに渡す。
「ああ、メアジストさんにというか。彼のことを尋ねてきた人で、メアジストと共に来るか、メアジストさんの事を知っているというというのが、渡す時の条件でした。それは、その条件さえクリアしていればどんな人でもいいと言っていました。」
「であれば、ご主人様この鍵は、お持ちください。」
「ええと、その工房の鍵ではないのですね。」
「わかりません。たぶん工房の鍵だと思いますが、その時の口ぶりではそうでもないようにも感じられたのですよ。」
「わかりました。この鍵の中身についてお知らせした方が良いですか?」
「まあ、話せる中身だったらで、かまいません。私自身預かっていたことをずーっと忘れていたくらいですから。」
「そうですか。何か関係のあるものであれば、お知らせしますね。」
「ぜひ」
 そうして、そのエリクソンさんの所を出た。
「さて、そろそろ日も暮れますねえ。宿屋に行ってみんなと合流して食事でもしましょうか。かまいませんか?」
「はい。うれしいです。」
「では、参りましょう。」
 そうして歩いている間も、彼女はメアと手をつないで、歩いていた。
 宿屋に近づいた時にすでにみなさん宿から出て待っていてくれました。
「食堂がありましたので、そちらにしますか。それとも居酒屋に行きましょうか。」
「それではエルミラさん、どちらが良いですか?」
「そうですね、どちらもあまり行ったことがないので、どちらでも良いです。あ、でも食堂の方でお願いします。」
『メアがその子に懐かれているわねえ。』
『きっとひとりで暮らしていて寂しいのでしょう。』
『年齢の割に幼いかもしれぬなあ。ここでしか暮らしてないと言っておったし。』
『どうやらそうらしいわねえ。』
『まるで母親にまとわりつく子どものようじゃなあ』
「さて、食堂につきました。」
 おや食堂というよりは、高級レストランっぽいですねえ。エルミラさんがすでに緊張してメアの腕にしがみついている。
「かなり高級な店ではないか。」
「こういう街には、おしゃれな店があるのですね。」
「ドレスコードはあるのかしら。」
「どうやらないみたいです。しかし、奥の部屋を用意してもらいましたよ。」
「高そうな部屋ですよね」
「よそ者は隔離という意味合いではないのか。」
 メニューは見慣れたものが並んでいました。まあ、値段も相当お高い設定になっています。
 マナーについても、問題なさそうです。手づかみはしないで欲しいと言われました。レイは大丈夫ですかね。メアの両隣にレイとエルミラが座り、ナイフとフォークの使い方を教えながら食べている。他の人達は、テーブルマナーをメイド喫茶の時に習っていたので、こちらも見よう見まねだ。私とアンジーは、そつなく食べている。
「おぬし達は、他の世界でこういう食べ方をしたことがあるのじゃな。」
 モーラがナイフとフォークをおっかなびっくり使っている。
「そうね、私は見ていただけなのだけれど憶えているわ。」
「まあ、私も大人になってから何度かは連れ回されましたし。」
「ほほう、アキさんとやらにか。」
「ええ、まあ」
「そそそそれってデートなの?」
 アンジーさんナイフとフォークをカチャカチャいわせないでください。マナー違反です。
「いや、違いますよ。姉弟でデートとは言いませんよ。」
 私は少し思い出して照れている。すると全員から不穏な意識が流れてくる。いや、だから姉弟ですって。
 この世界では初めて、フルコースを堪能する。前菜からスープ、そして一品目、メインディッシュ、デザートとつつがなく終了する。
「この味はすごいわねえ。調味料を何種類使っているのかしら。しかもそれをどこから仕入れているのかしらねえ。」
 とアンジーが驚いている。
「あとで聞いてみましょうか。」
「たぶん全て魔法使いの里ですね。」メアがさらっと言った。
「わしらの舌では複雑すぎてよくわからんかった。慣れればわかるようになるのか。」
「とりあえずおいしかったですか?」
「ああ、ナイフとフォークの使い方が気になって味わっていられなかったが、それでもおいしかったぞ。」
「他の皆さんはどうでしたか?」
「おいしすぎてつらいです。」とパム
「き、緊張しすぎて~味がわかりませんでした~」
「ぼ、僕もそうです。ナイフとフォークに集中しすぎてとても味どころではありません。」
「私は、なぜか匂いは、食べ慣れたもののように感じました。」とユーリ
「ああ、両親が食べていたのであろうなあ」
「エルミラさんはどうですか。」
「き、緊張して喉を通りません。たぶんおいしかったと思います。」
「メアさん」
「この味は、記憶しました。家に帰ったらぜひ作りたいです。」
「調味料の調達からになりますね。」
「確かにそうですね。」
 そうして、食事は終わり、宿屋に向かう。
「エルミラさん、一緒に宿屋に泊まりませんか?」
「そうしたいのですが、やはり家に帰って寝ます。」
「メアさん?」
「ルミさん、私がルミさんのところにお邪魔してもよろしいですか?」
「いいんですか?本当に?」
「ええ、お話ししたいことが一杯ありそうですから。」
「でもベッドが・・」
「一緒に寝るのはどうでしょうか。少し狭いですけど構わなければ。」
「いいのですか。ぜひ」
「では、ご主人様、私はエルミラ様の所にお邪魔します。それと明日はお弁当を持って魔法使いさんのところにお伺いしたいと思います。食材を買って帰ることの許可をお願いします。」
「メアさんさすがですね。お願いします。朝にお手伝いは必要ですか?」
「今日のうちに下ごしらえをしておきますので。ああ、ルミさん台所をお借りしてもよろしいですか。」
「一緒に料理!一緒に料理!」うかれていますが大丈夫でしょうか。
「さて、それではまた明日。魔法使いさんの家には、そちらが近いので、宿を出て迎えに行きます。荷物持ちとして頑張りますからよろしく。」
「わかりました。おやすみなさい」
「おやすみ」
「おやすみ。無理するんじゃないぞ」
「おやすみ、何かあったら呼んでください。」
「またあした~」

 そうして、2人と別れた。
「風呂はどうする。」モーラさん。早速風呂ですか。
「ここは公衆浴場があるそうですので、そちらを使いましょう。」パムが言った。
「さすがにここでは、男湯侵入はしないでくださいね。」
「そうするわ」浮かない顔のアンジーです。
 宿屋に一度戻ってから、公衆浴場を目指す。
「アンジー様、浮かない顔ですが。もしかして、エルミラさんのことを気にしておりますか。」
「まあねえ、家族が増えるのは嫌ではないけど、減るのは寂しいでしょう。」
「ああ、その可能性もありますか。」
「それはないであろう。まあ、今後の成り行きでは、ないとも言えんが。」
「でもね~ミラちゃんは、この街を離れられるかな~」
「私達の本当の姿を知ったら、なかなか一緒にはいられないでしょうしねえ。」と私
「多分、一緒にいると一番自分が重荷とか負担になるとか、考えるかもしれません。」とユーリ
「ユーリ、おぬしも一時期そうなりかけたものなあ。でもちゃんと打ち明けたであろう。」
「はい、自分は必要だと言ってもらえて安心しました。でも、」
「ああ、まあ、一般人からみると違うとはいえ、長命であること以外は普通の人だからなあ。」
「ファーンならそれでも暮らせそうですが、私達と同じように何か特殊な力を持っていると思われてしまいがちですよね。」
「考えても仕方ありません。本人の意思次第ですから」
「そうだな」
 そして、お風呂に入り、宿に戻ってそれぞれの部屋で眠った。まあ、到着した時に気になっていたものを調べに夜中にこっそり抜け出したりもしましたが。

 翌日、馬車に乗って朝早くから魔法使いの家を訪ねました。メアさんとエルミラさんが一緒に作ったお弁当を持参しています。
 その草原に馬車から持ってきた大きなテーブルを二つ置いてそれぞれに椅子を用意する。
 エルミラさんのお相手は、サフィーネさんがしてくれていて、その膝にはレイが座って、撫でられていて大満足の様子だ。
「初めまして、メアジストさん。私はこの街の魔法使いヘリオトロープといいます。本当に似ているわね、あなたの母親に。」
「初めまして、メアジスト・アスターテです。やはり母親に似ているのですね。」
「たぶん、いや間違いなく似ていますよ。さて、解析の魔法使いさん。まず対価をもらいましょうか。あなたたちの話を聞かせてちょうだい。話して欲しいのは、黒い霧の事件と元魔王家族を助けた話と天使を天界に還した話ね。ああ、そうそう族長会議とそのあとの穴の話もできたらお願いね」
「ほほう、元魔王様家族を「助けた」話とな。それから族長会議のあとの穴の話とはなんじゃ。」
「あら、聞いていたでしょう?魔法使いの里に大穴を空けた話。カマをかけたのかしら?」
「いや、エリスから聞きはしたが、早耳じゃなあと思ってなあ。まだそんなに経っていないのにここにまで聞こえているのか。」
「噂話の好きな魔法使いがいるのでね、そういう話しか入ってこないのよ。しかも徐々に話が大きくなっていくからどこまでが本当なのか判別できないのよ。」
「わかりました。では、お答えできる範囲でお答えしますね。黒い霧の事件は、発端は、闇のドラゴンさんの魔法を誰かが盗んで、その森で練習して、私達が来るのを待っていたのです。そして、大きい魔法を発動して、その修復を土のドラゴンが行うだろうと魔族に教えた者がいて、土のドラゴンを倒すチャンスだと思った魔族が襲いに来たという話です。」
「ふんふん」
「元魔王家族については、自殺しましたよ。そして遺体を運ぶのを手伝いました。」
「でも魔族が動かなかったわね。」
「はい、自殺でしたから。もちろん証人は族長会議に出席しようとした族長代理達です。」
「そういうことになっているのね。」
「はいそういうことになっています。そして、魔法使いの里に穴って何ですか?」
「あら、あなたが里に穴を空けたってもっぱらの噂なのですけど。」
「残念ですが、私は魔法使いの里に行ったことがありませんので、場所を知りませんし、行ったこともないところに穴を空けることは出来ませんよ。」
「普通はそうよねえ。」
「実際にその穴を見たのですか?」
「確かに穴が空いたと聞いたけど実際に見てはいないわ。」
「信頼している人からの言葉か、自分の目で確かめないことには、真偽は見分けられないと思うのです。」
「今度行ってこようかしら。ああ、もう一つ良いかしら。あなたの家が天界に壊されたというのは本当なの?」
「それは、天界が私の家を攻撃したのは本当らしいです。私は実際に見てはいませんが、家族が見ています。まあ、壊さなかったみたいですけど。」
「天界が手加減したの?」
「でなければ家は壊れていたと思いますね。」
「良いお答えね。ありがとう。」
「いいえ、私が知っているのはこのくらいです。こんな話でよろしいのでしょうか。」
「では、対価を。メアジストさん。話をしてあげましょう。あなたの父親は、この世界に転生してきた人だったのですよ。年代を超えてね。」
「やはりそうでしたか。」
「ええ、彼は、解析の魔法使いさん、あなたと同じくらいの未来からここに飛ばされてきたのよ。200年ほど前にね。」
「あなたは、どちらかというと機械工学に知識が偏っていたのでしょうけど、彼の知識も偏っていたの。彼が得意とした分野は生物学だったのよ、主に繁殖や遺伝子、ハイブリッドなどに精通した人だったわ。」
「神は、そのような人が必要で呼んだのでしょうか。」
「たぶん人間の生存期間を延ばして、他の種族に対抗させるつもりだったのかもしれないわね。そして、私達魔法使いも永遠の命には興味があった。そこで、この地に街を作ったのよ。」
「やはり魔法使いの里が関わっているのか。」
「それはね、しょうがないのよ。魔族や天界ドラゴンの里には、記録という概念はなくて、つねに記憶がすり替わっていく。この世界の記録者としても他の種族並みの長命は必要だったのよ。」
「彼には、基本的な魔法を教えて、その基礎知識を高めてもらい、自分の能力をさらに鍛えていったのよ。その一方でこの土地に人が暮らしていく上で快適な環境を作って人を増やしていったのよ。そして、定住者が増えたところで、人類の延命計画は始まったの。50年ほどの実証実験を経て、安全性を確認した後、自ら延命の魔法を構築した者を除いた多くの魔女もこの街に住み始めた。」
「彼もこの実験結果に満足して、この街で暮らし始めて彼女と出会ったの。ミスパープルとね。そして子を為した。あなたをね、メアジストさん。」
「その幸せも長くは続かなかった。あなたが8歳の時に原因不明の死があなたを襲った。」
「あなたを溺愛していた彼は、嘆き悲しみ、ついには、人が変わったようにある研究に没頭したの。まず最初にあなたの死を止めたのよ。彼は言ったわ、脳は生きている。このまま生かして新しい体を作ると。」
「その後に妹も出来たのにも関わらず、長女の死を拒み、あなたの体を作り生き返らせようとした。妹の方も自分の娘であるはずなのに、抱いてもくれない。マダムパープルは、泣きながら、別れると言って家を出たの。そして、彼は、工房に籠もるようになった。食事とかの世話は、使用人を使ったようだけれどね。」
「もう一方で、この街に暮らす人達にも異変が起きた。元々この街に住んでいるだけなら長命も問題ないのだけれど、一度外の世界に出て行くと当然時間の流れが違いすぎて、ほとんどの人が帰ってくることになった。これは、誰のせいか、あの錬金術師を名乗る男のせいだとね。」
「そして彼は追放された。工房は焼き討ちに遭い、今はその残骸が残っているだけなのよ。」
「では、彼はどこでどうやってメアの体を作ったのでしょうか。」
「それは私も聞きたいくらいだわ。そんな設備どこにも作ってなかったはずだし。ホムンクルスを作ったと噂では聞いていたから、それはメアジストさんだろうと思ったけど、ここには連れてこなかったし。」
「なるほど、そういうことでしたか。」
「さて、私が話せることはこのくらいかしらね。」
「すまんが、この街を作ったのは、アメジストの父親じゃ。さて、ここを管理しているのは誰じゃ。まさか知らんとは言わんであろう。」
「はいはい私よ。ここを管理しているのは私。まあ、すでにここはほとんど放置状態だから、管理というより見守りね。」
「この街の周囲を囲むように敷き詰めている石畳に魔鉱石を混ぜているな。」
「わかっているなら聞かないでよ。そのとおりよ。それで外敵からこの街を守っているの。おもに魔族や魔獣からね。獣人とかは匂いでここには立ち寄らないわ。」
「してお前の色は何色じゃ、魔女。ヘリオトロープと名乗っておったが。なあ」
「なぜ私を魔女と呼ぶの?私は魔法使いだって言ったでしょう。」
「魔女は7色の色でお互いを呼んでいると、さる男から聞いたぞ。なあ、ヘリオトロープちゃん、わしがちゃん付けで呼ぶ意味もわかっておるじゃろう。」
「そういう時だけドラゴンになるのね。そうよ、私は7色の魔女の一色。紫。紫の魔女と呼ばれているわ。コードネームはヘリオトロープなのよ。」
「ああ、聞けてうれしいよ。原初の魔女」
「残念だけどその名前は返上するわ、私は今、里から追放された身なのです。原初の魔女は、名乗れないのよ。原初の魔女は、今は違う人なの。」
「はあ、紫色は、原初の魔女と同義であるとわしは聞いたぞ。」
「いつの話かしら。この街が朽ち始めた時から原初の魔女は入れ替わったのよ。赤にね。」
「この件の責任を取らされたのか。」
「いろいろあるけどそれに近いわね。ここにいる人達が死に絶えるまで管理するのが役目よ。」
「それで、里は合議制が保たれているのか。」
「さあ、あなたたちを襲ったのも今の長が遊びで仕掛けたみたいだしね。それはしらないわ。」
「享楽主義派が今の主流という訳か。」
「それも知らないわ。内部抗争に興味はないの。」
「おぬしが紫を剥奪されないのも変じゃないか。」
「それは、何かあった時に私を生け贄にするつもりなんじゃない。そんな言い訳は通用しないと思うのだけれど。もっとも自分からこの名前を捨てる気もないけどね。」
「すまんな、これだけこじれてしまうとどうにも敵味方の区別が付かないのでなあ。」
「そうね、それはお互い様だわ。」
「先ほど「ちゃん」呼びをしたことを許して欲しい。すまぬ」
「私が怒るようなことですか?気にしていませんよ。土のドラゴンさん。昔の噂ではもっと、「とがって」いたようだけれど、本当に丸くなったのね。あなたのおかげね。」
「わかった、わかった、わしの黒歴史など今更ほじくり返さないでくれ。」
「良くも悪くも人は変わっていくわ。ああ、意思のある者は変わっていくの間違いね。」
「そうだな。」
「私から最後にひとつだけお尋ねしたいのですが。」私は、ふいにそう言った。
「何かしら、対価にはないと思いますが良いですよ。」
「あなたの本当の姿と名前は別にあるのですね。」
「それは2つの質問よねえ。そうね、どちらも違うわ。」彼女は微笑んでそう言った。
「ありがとうございました。」
「あんた達、そろそろおいとまするわよ。支度なさい。」アンジーが遊んでいた人達に叫んだ。
「は~い」
 帰り際にメアがヘリオトロープさんの前に立ち、手を差し伸べる
「おや珍しい。握手ですか?初対面の私に。」
「私にとっては、父に縁のある方でございます。是非、握手をお願いします。」
「あ、ああ、そうね。頑張ってね、メアジストさんお元気で。また会いましょう。」
「またお伺いさせていただきます。よろしいでしょうか。」
「ええ、もちろんよ。」
 そうして2人は握手を交わし、メアは手を握ったままもう片方の手で彼女を抱きしめた。しばらくそのままでいて、ゆっくりと離れた。どちらの目も真っ赤だった。
 片付けも終わり、みんなが乗り込む。エルミラもおっかなびっくり乗り込んだ。
「では、紫の魔法使い。また会おう。息災で。」モーラが言った。
「あなた達もね。」光の加減で顔が見えなかったが涙が光ったように見えた。
 馬車は去って行く。振っていた手を下げてサフィーネは言った。
「お師匠様、彼女に本当のことを告げなくても良かったのですか。そして名乗りを上げて抱きしめても良かったのではありませんか。」
「あいにく私はあの子と彼を捨てて他の男に走ったのよ。そしてルミの曾祖母を産んだ。それについては、悲しかったけど後悔はないのよ、残念なことにね。だからあの子の母親はいないの。そうでなければ、あの人が浮かばれないのよ。でも、抱きしめてくれた。きっとわかったのね。」
 泣き崩れるヘリオトロープを優しく抱き留めたサフィーネだった。

  続く

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☆感想の受付開始しました。 【あらすじ】   異世界に転生したルイは、5歳の高熱を境に、記憶を取り戻す。一度は言ってみたい「ステータス・オープン」で、ステータスを見れることに気付いた。スキル「生活魔法∞(無限大)」を発見。その意味を知るルイは、仄かに期待を抱いた。  それと同時に、今世の出自である農家の四男は、長男大事な両親の態度に、未来はないと確信。  家族に隠れて、ステータスにあったスキルの一つ「鑑定」を使い、村のお婆(薬師)相手に、金策を開始。  十歳の時に行われたスキル鑑定の結果を父に伝えたが、農家向きのスキルではなかったルイは「家の役には立たない」と判断され、早々に家を追い出される。   だが、追放ありがとう!とばかりに、生活魔法を知るべく、図書館がある街を目指すことにしたルイ。  最初に訪れた街・ゼントで、冒険者登録を済ませる。だがそのギルドの資料室で、前世の文字である漢字が、この世界の魔法文字だという事実を知ることになる。  この世界の魔法文字を試したルイは、魔法文字の奥深さに気づいてしまった。バレないように慎重に……と行動しているつもりのルイだが、そんな彼に奇妙な称号が増えて行く。  そして、冒険者ギルドのギルドマスターや、魔法具師のバレンと共に過ごすうちに、バレンのお師匠様の危機を知る。  そして彼に会いにいくことになったが、その目的地が、図書館がある魔法都市アルティメットだった。  旅の道中もさることながら、魔法都市についても、色々な人に巻き込まれる運命にあるルイだったが……それを知るのは、まだ先である。 ☆見切り発車のため、後日変更・追記する場合があります。体調が不安定のため、かける時に書くスタイルです。不定期更新。 ☆カクヨム様(吉野 ひな)でも先行投稿しております。

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