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第22章 過去との再会
第22-5話 地下室とホムンクルス
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少しだけしんみりとしている馬車の中。
「おぬしさすがじゃな」
「ええ、名回答だったわ。」
「何のことですか」
「さっきの事件の説明じゃよ」
「受け答え完璧じゃない。」
「それは、お二人に鍛えられましたからねえ。特にアンジーには、」
「なによそれ、」
「「私は、嘘は言わないの。都合の悪いことを黙っているだけ」なんですよね」
「そうね、確かにそうだわ」
そうして、馬車に揺られながら街の外周に沿って馬を進める。管理用の小道はあるが、草に覆われていて、足下をとられ、ゆっくりとしか進めない。
「さて、どのあたりかのう。」
「道を通らず丘にそって走ればありそうですよ。」
「僕、行ってきます。」レイが言った。
レイが馬車を降りて獣化して走り出す。周辺の捜索に行ったようだ。
『聞こえますかレイ』
『はい、大丈夫です。』ああ、街の外同士だと大丈夫なのですねえ。
『何か仕掛けがしてあるかもしれません。注意してください。』
『ラジャー』
しばらくして、
『なんか朽ちた材木に草が生えている場所があります。』
『さすがに埋もれて見えませんよねえ。』
『確かになあ』
『他も探してきます。』
『そこにいてください。違ったら次に行きましょう』
そうして、レイが獣人化して立っている場所に到着する。私は馬を下りて真っ先にレイに近づき頭をなでる。
『こんなところよく見つけましたねえ。』
そこは、広い範囲にわたってほんの少しだけ盛り上がっている。その盛り上がっている部分だけほんの少し植生が違って見える。近づいてみるとツタやら雑草やらが生い茂っていて、その雑草を無理矢理引き剥がすと、焼けたり朽ちたりした材木が折り重なっていた。パムとメアとレイがそのツタの絡んだ材木を次々と引き剥がしていく。
「メアさん私、用事があるので家に戻ります。」
エルミラはそう言ってその場から立ち去った。
「昨日は、用事があるような話はしていなかったのですが。」
「若い方の魔法使いに何か言われたかのう」
「そうみたいですよ~」とエルフィ
そう言いながらもみんなは手を休めない。持ち上げた木材を手渡しで横によけて行く。どうやらここで間違いないようだ。かなり広範囲にわたって家の基礎が見える。山の方に向けて家があったようで、研究室はまだ先のようだ。アンジーとエルフィは、手に持った小刀で周囲の草を刈って家全体の大きさを確認している。
「おぬし、これを何とかできんのか。」
「土まで持ち上げていいのでしょうか。その下に何かありそうですからねえ」
「ああ確かになあ。」そう言ってモーラは地面に手を当てて何かを探っている。
「確かに深そうじゃ。しかも何か仕掛けをしてありそうじゃ。慎重にやらないとまずいなあこれは。」
「あら、これは何かしら。」アンジーがなにかのボタンを発見する。その横には、地下に向かう扉があった。
「よくわかりましたねえ。」
「そこだけ草の成長が変だったのよ。一度刈り取られているわねえ」
「エルフィどうですか」地面に顔を近づけて匂いを嗅いでいる。
「たぶん一度刈り取ってそこを隠すように草をならしています。しかも最近ですよ。」
「誰かが来たのか。そして、中に入ったのか。」
「ええ、その扉に草が噛んでいて、まだ枯れていませんから。たぶん」
確かにその扉には、草が挟まっている。折れているところはまだ枯れていない。
そうこうしているうちに家の全容が見えるほどになった。アンジーが見つけたスイッチと扉は、家の形の一番奥に位置している。手前には、腐った本、本棚、ガラスの容器などが散乱している。
「スイッチのあるこの辺がこの家の研究室だったところですねえ。」
「たぶんそうなのでしょうね。」
「あんたと同じで地下に潜るのが好きだったようね。」
「隠し部屋が一番、研究がはかどりますからねえ。」
「で、このスイッチはどう思うの。」
「まあ、ダミーじゃないですか?普通にこの扉の横にあるハンドルで持ち上がるような気がしますよ。」
「無理矢理開けると何かあるんじゃないの?普通。」
「研究なんてする人は、面倒を嫌うのですよ。ですからこのスイッチを押すかに見せて、ただ、この扉を開くのではありませんかねえ。」
「まあ、そう言うなら開けて見なさいよ。」
「はいはい」私はそう言って、床にある扉に手を掛けて持ち上げるように開いた。
「ほらね何も起きませんよ。」
「じゃあボタン押してみましょうか。」
「押さないでください。たぶん自爆スイッチです。」
「やめてよ。縁起でもない。」
「さて、入りますよ。」
「レイ、すまぬがここを見張っていてくれ。よいか、周囲に警戒をしておけ、匂い気配全部じゃ。見つけ損なうとわしら全員死ぬことになりそうなのでなあ。」
「え。頑張ります。」
「ユーリは階段下でレイを監視じゃ。レイに何かあれば声を出すだけでよい。」
「はい。」
階段を降りるとすぐに扉があり、そこを静かに開ける。さすがに明かりがないので何も見えない。手に持ったたいまつに火をつけるが一瞬で消える。
「ここに入るには、工夫が必要です。」
「火が消えたのと関係があるのか。」
「ええ、酸素がありませんね。地下にあるせいもありますが、たぶん機密性が異常に高くて空気がありません。中が見えれば明るくする方法が何かあるのでしょうけど」
「はいはい、いくわよ。」そう言って手を組むと光り出すアンジー。
「なるほど、それってどういう仕組みなんですかねえ。」私はしげしげと見つめる。
「いいから早く何か見つけなさい。」
私は、階段下で深く息を吸い込んでから中に入る。アンジーの光のおかげで中が見えている。制御盤のようなものが、入り口左にあったので、面倒なので全部スイッチを入れる。明るくなり、コンプレッサーの駆動音のようなものがかすかに聞こえ始める。
一度戻ってからたいまつに火をつけて中に入る。今度は火が揺らいではいるが消えない。
「大丈夫そうですね。アンジーさんありがとうございます。」私はたいまつの火を消した。
「私の魔法をこういう使い方はしたくないわね。」
そうして、みんなで手分けをして部屋の中を探そうとするが、埃の上に足跡を見つける。何かにぶつかった跡もある。
「誰かが入ったのは間違いないな。」埃の状態を見てモーラが言った。
「あの男かしらね。私達全員の素性を暴いて回ったのかしら。悪趣味ねえ」
「それでは、タイミングがあいませんねえ。この旅を始めた時からなのではないでしょうか。」
「確かに埃とか草の状態は、そう言っているわねえ。」
「でも、先に知っていたのよね。その、メアがホムンクルスではないことを。ならば何を調べるというのよ。」
「確かにそうだな。何かわしらに渡したくないものがあったのかのう。」
「さて、とりあえず何かメアさんの出生について、ヒントになるものを探してください。」
「それなら、ここにあります。」メアが机の上に置いてある一冊の本を開いている。
「すでに誰かに見られているようですが、これは日記です。日記というよりは、覚え書きに近いものですが」
メアが読みながら言った。読むスピードが速い。すでにかなりのページを読んでいる。その表情は、冷静そうに見えてもかなり緊張している。
-抜粋-
この世界に来て、自分の能力に気付いてからやっとここまでたどり着いた。魔法使いの里とも利害が一致して、小さなモデル都市を構築した。そして、昔からの夢だった、人類のDNAの解析を行い、魔法による改変ができるようになった。小動物から初めてついに人間のテストに入れる。
今のところ不死には遠いが、老化を進めていく因子がわかった。ただ、因子の排除や、因子の停止は、体細胞を新しくしていく体内プログラムを止めることになるため、出来ないこともわかった。なので滅亡遺伝子の動きを遅くすることに切り替えた。
不死は無理でも、延命は、出来ることになった。人の遺伝子にある細胞の老朽更新を繰り返すサイクルをできるだけ遅延することで長命化を図る。そして、一度老化まで行き着いた細胞は、その再生回数をリセットすることで新しい再生回数を手に入れることができることもわかった。
しかし、次の問題が発生した。成人の細胞をそのままリセットすると子どもの体まで戻ってしまう。たぶん細胞の自己防衛のためで、自己防衛をさせないままリセットすると、今度は、成長しすぎて体が老化して破壊される。今のところそれを打開できていない。
概ね、ここでの実験は完成を見た。人間の長命化はほぼ出来たようだ。魔法使いの中には長寿の方法を自分で憶えられる一部の魔法使いだけが魔女になれる。しかし、魔法使いになるような人達は延命化を望む。そして自らを実験体として差し出すのだ。そして一定の成果がでて、あとは検証のみとなった。
娘が出来た。名をメアジスト。妻の中から娘が生まれた。生命の神秘と思ってしまうが、実際には単なる妊娠からの出産だ。でも、生まれてきた子どもは可愛い。これが、庇護欲をそそるということなのか。しばらく研究は中断せざるを得ない。
メア、愛おしい私のメア。立ち上がり、言葉をしゃべり、愛くるしく笑うメア。私の心も研究に対する情熱も全てを奪っていったメア。でも、平行して研究は続けなければならない。
メアが死んだ。なぜだ。私は人の生をも操れるはずなのになぜ娘を死なせてしまったのか。いや、娘はまだ生きている。体が死んだとはいえ脳はまだ生きている。そうだ、すでにこれまでテストに使用してきたホムンクルスの体を使い、魔力による体骨格、筋肉、内臓などを人工筋肉によるボディに入れて、それを魔法により稼働させる。すでに私の中では、魔法によって、血液の酸素交換と栄養の補給。心臓による細胞単位で血液を浄化して循環させる脳と心臓を動かし続けて、魔力による動く体を用意できれば娘は復活する。そして、8歳の体に寄せたボディを作り成長させることとした。
しかし、魔力の流れが上手く動作しない。妻は培養カプセルに入った娘に愛情をなくしていく。これはメアではないと言い張る。なぜ妻はわかってくれないのだろう。
妻が2人目の子どもを産んだ。私がふがいないばかりに妻にも悪いことをしたと思っている。残念ながらメアの妹は、私の子ではない。私と妻とはすでに何年も関係を持っていないのだから。私は、その子を抱き上げようとした時、私の手は動かなかった。ああ、自分の子でないと思っただけで子ども抱き上げることも出来ない。メアは、培養カプセルの中で魔力による急成長を終えて成人の妻と同じくらいの体格になった。妻は、私の研究室に入ることはなく。いつしか別居していて、ついには、私と別れたいと言って次女を連れて出て行った。それは仕方がないことだ。
私の家が焼かれた。この街がこうなったのはお前のせいだと言われた。そうさ、そのとおりなのだ。だが、人類が他の種族と対等に渡り合うためには、長命化は最初のステップなのだ。しかし、魔法使いの里もここに対して関心を失い、私の研究もここまでだった。
家は焼かれても地下の研究施設には気付かないようで。私は近くに住んで大量の食料を持ち込み、研究に没頭し。ついに完成した。魔力により稼働するホムンクルス。しかし、正確にはサイボーグになるのだろう。脳と心臓と若干の血液。血液も足りなくなると生成して、魔力の循環により躯体の維持と栄養への変換を行うことが出来る。人間の体を模しながら魔力でも食事による栄養も摂取可能。ホムンクルスと違って脳への負担を軽減するために、稼働時間に制限をかけている。自己修復機能、脳への負担軽減のための補助脳などを用意している。
しかし、ホムンクルスとしての活動をアシストする補助脳が本来の娘の脳の働きを阻害しているようだ。脳波も感じるし視覚神経などとのリンクも正常になっている。しかし、脳が覚醒していないのかもしれない。脳が眠ったままなのだ。完成が遅すぎたのか。
私の中の何かが壊れたのかもしれない。最初は、娘への愛情でホムンクルスを作ってきたが、最後の方は、ホムンクルスを完成させることが、目的に置き換わっていたようだ。娘への愛情より完成した事への安堵感の方が強い。しかも、変化に富んだ会話を重ねるごとに学習し、行動表現、表情の変化までが自然になっていく。人形ではなく人間の反応に。自分の才能に恐ろしくなると共に、この子の進化がどこまで進むのか興味の方が勝っている。なので、どこまで高見を目指せるのか旅をして経験を積ませてみようと思う。
旅の途中、私は錯覚する。時折みせる悲しげな表情が妻に非常によく似ている。体は成長するわけではないので、妻と同じ成人の体格にしたのが災いしたのか、メアを見るのがつらい。どうしても扱いが雑になる。このままではいけないのだ。私は、メアに娘の感情や記憶を封印した。
この日記とは言えないメモは、かつての研究所に置くことにする。そしてそれを探し出した者がメアを連れて来たならば、きっと私の研究成果を継いでくれるだろう。もし継がなかったとしてもそれは仕方がない。でも、メアを連れて来て、一定の条件をクリアした場合には、私の研究成果を見て欲しい。
そこで日記は終わっていた。
メアは、読み終わったあと、その日記を私に渡してくれた。
「お読みください。やはり私はホムンクルスではなく。魔法で作られたサイボーグでした。」
「やはり人間でした。唯一のホムンクルスではありませんでした。」
「いや、わしは、これはとてつもなくすごい技術なんだと思うぞ。ホムンクルスを作るだけではなく、人間の意志を取り入れることまで可能にしている。」
「ええ、それを制御しているあなたもすごいわよ。」
「そうでしょうか。補助脳に操られているだけにしか思えません。」
私は、パタリとその日記を閉じてメアに渡す。
「私は、あなたのお父さんを尊敬します。すごい錬金術師だったのですね。自分の目標を定めたら途中で投げ出さず。最後までやり遂げ、成果を出しています。例え他の世界から転生してこようと、この時代にある設備装備では到底なしえないことをあなたのお父さんは成し遂げているのですよ。研究者として頭が下がります。」
「はあ」
「私としては、あなたを完成させてくれて、メアさんが私の元に来てくれただけで私は幸せです。どれだけの奇跡的な確率で私の元に来たのでしょうか。とてもうれしいです。」
「さて、上の方が騒がしいぞ。何かやっているな。」
地上では、レイとユーリが剣を抜き、その男と対峙していた。顔は変えてもスリーピースの背広を着ている男は、こいつくらいしかいない。その名は、ジャミロッティ・アクスファイ。先の勇者会議を影で操った男。
「邪魔をしないでくれませんか。私も地下室に用事があるのですよ。」
「通しません。今、地下室は、あるじ様が使用中です。」
「だからですよ。一緒に話がしたいんですよ。」
「あるじ様からは、誰も通すなと言われています。」
「違うでしょ・・・まあいいです。しかたないこの手を使いますか。」その男は、空間魔法を使ってその場からいなくなった。
地下室では、その男が空間魔法を使って部屋の中央に出現する。私は土のクリスタルの樽を用意していて、その中に男が転移してくる。
「やっぱりそうですか。」
「おお、本当じゃ、確かに釣れたなあ。」
「どうして私がここに来ると。いや、どうして転移の位置までわかっているのですか。」
「あなたねえ、埃の中を歩いたら、足跡が残るんですよ。しかも、歩き回った足跡とは別に、途中で消えている足跡があるじゃないですか。ということは、ここから転移魔法で消えたと思いますよねえ。なら、そこに戻ってくるのではと思いましてね。この罠を用意しました。」
「おやおや、そんな簡単な推理に引っかかるとは私もまだまだですね。」
「ああ、なんか上手くごまかして置いてあったポイントマーカーは、私の手の中にありますから、次の転移はできませんよ。」
「そうでしたか、見つかっていましたか。それでは、仕方ありません。そこまでバレているのであれば潔く撤退しましょう。」そう言ってその男は、その樽の中から一瞬にして消えた。
「ほほう、結界の中からでも転移できるのか。」
「それはすごいですねえ。たぶん違うポイントマーカーの所に転移したのでしょうから、さすがに追跡は無理ですねえ。」
「さて、メアさん。この鍵をお使いください。」私は、エリクソンさんから受け取っていた鍵を渡す。
「これをどこに使えば良いのでしょう。」
「私もわかりません。でもきっとこの部屋なのでしょうね。」
そう言われてメアは、部屋の中を見回す。
メアの視界の中に十字のポイントが表示されている。
「ご主人様、目の中に目印が表示されました。」
そう言ってメアは、その場所を指で指して、鍵を私に渡す。するとメアの目から十字のポイントが消える。
「鍵を手放すと消えます。やはりそういうことなのでしょう。」
「こざかしい真似をするのう」
「でもそうしないと秘密は簡単に奪われてしまいます。」
私は、もらった鍵を再びメアに渡す。メアは、その鍵を手に取り、再び現れた十字のポイントのある壁に近づく。
「でも、ぬし様どうしてメアさんに鍵を渡したのですか。」
「いや、この部屋は私の部屋ではありません。メアさんのお父さんの部屋ですから。鍵を私が持っているのも変でしょう?」
「そんなものか?研究している奴らの思考なのかのう」
メアは壁の所に四角い線があるのを見つけて、そこを押す。はめ込み式になっていた壁の一部が外れる。鍵のかかった引き出しがあった。鍵を回すとその横に数字が並んでいた。
「ご主人様。数字を入力する仕掛けが横についています。」
「数字がイメージできますか。」
「はい、12桁あります。父と母と私の誕生日です。」
「この街には暦があるのですね。」
「はい、この街にはあったのです。父が作りました。何もせず生きる人達に季節を教えるために。」
「数字を入れていってください。」
「はい」そして3回の入力で鍵が開き、そこから分厚い紙の束が入っていた。
私はメアが取り出した紙の束を受け取り、ざっと目を通す。
「おぬし、どうなんじゃ。」
「ああやっと見つかりました。メアさんの体を作る方法を。でもね、これでは、体は作れても頭を作れないのです。だって、頭はすでにあったのですから。」
「この設計図は、無意味なのか」
「メアさんの体のメンテナンスには必要なのです。それでもこの書類の中には、メアさんの脳とホムンクルスの脳を切り替える仕組みがないのですよ、」
「わしらには、それが一番大事なんじゃないのか。」
「メアさん、他に何か入っていませんか。」メアがさらに中をのぞき込み、手を入れて中を探る。
「ありました。センサーを使わないと見えない隙間が作ってありました。」
「それはまた、面倒くさいことをするわねえ。」
「まあ、こんな簡単な鍵と細工なら、盗みに入った者が見つけようと思えば見つけられるからなあ。それを持って、すぐに逃げることまで想定したのかもしれんな。」
メアは、手を入れて取りだしたのは、鍵とペンダントだった。
「また鍵か。そしてペンダント。明滅しているのは何か意味があるのだろうか。」
「なるほどな。メアの生体信号に反応するように仕掛けてあるのか。そうなんじゃなあ。」
「では、メアさんこのペンダントを首から提げてくださいね」
「はい。ああ、そうです。認証開始、意識の統合開始。記憶の封印全解除。補助脳のリミッター解除。正常終了。ご主人様、私の人格と補助脳の人格が統合しました。」一瞬倒れかけたメアを私は抱きとめる。
「大丈夫です。めまいがしただけです。」そう言って顔を赤らめ横を向いて私から離れようとする。
「おや、メアどうしたのじゃ。」
「これまでのことが少し恥ずかしくなりまして。」
「人格統合してもしゃべり方は変わらないのねえ。」
「それは、変わらないと思います。」
「はい、そこでからかわないように。表情が少しだけ明るくなりましたね。」
「ありがとうございます。それでは、鍵の方を」
メアは、階段のある扉から正面にある机を手前に引っ張り出す。そして、首にかけていたペンダントを外して、壁に当てる。どういう仕掛けなのか壁が開いて、その空間に下からメアの体が入った箱がせり上がってくる。
「おや、そのメイド服は、」
「はい、最初に着ていたメイド服ですね。父はわざわざこれを着せたのですね。」
「さすがに裸のまま置くのは忍びなかったのでしょう」パムがフォローしている。
そこには、予備の体とまた紙の束があります。その紙の束を私は手に取る。
「鍵のかかった扉の中には、メアさんの予備の体と予備脳の設計図ですか。」
「慎重な男なのじゃのう」
「さらに鍵が3つ入っていましたよ。これは、かなり大きい。しかも古びた鍵です。どういう意図で作られたのでしょうかねえ。とりあえず、メアさんに必要なものは手に入りました。」
「さすがに何もありそうにないのう。」
「では、メアさん周囲を見回して何も発見できなければ一度、その予備の体を馬車に移しましょう。」
「はい。」メアは周囲を見ている。意識するとセンサーによる解析が見えるようです。
「ああ、手紙がありますね。」メアの目には、そこだけが光って見えていた。予備の体のポケットに入っている。メアがそれを取り出して、その封筒を私に手渡した。
封筒には、「この扉を開けることが出来た方へ」と書いてあった。私が封筒をあけると、中に数枚の手紙が入っていた。メアの横に並びその手紙を読み始める。
「この手紙を読んでいる人は、メアジストを所有物と捉えている人がいるかもしれませんが、彼女は人です。ホムンクルスではありません。その事が理解できる人がこの手紙を読んでいると信じてこれからいくつかのお願いを書いています。
まず、彼女は私の娘です。この部屋に入ってここまでたどり着けたあなたなら彼女の中にある脳と心臓、それを維持するための機関、ホムンクルスとして生体を維持する補助脳があるとわかっているはずです。彼女には人権があります。なので、この研究成果を差し上げますので、どうか彼女を、私の娘を自由にして欲しいのです。もっともメアジストには、一定の好意を持ち、彼女を守れる能力がないと従属しないように術式を組み込んでありました。補助脳がお互いの愛情を数値化し、その判断に基づいてここへ誘導しています。ですから、我が娘もあなたに対し一定以上の好意を持っていることはわかるのですが、この先は、ぜひ彼女の意思を尊重してください。
最後に私の愛しい娘メアジスト。最初に起動した時は、補助脳と本人とのすりあわせが難しくて、補助脳がメインになっていた時があってあせったが、表情などが落ち着いた時はそれはうれしかった。しかし、表情や行動がその表情や声、立ち居振る舞いに妻の影を見てつらく当たったこと。最後の数年、少しは優しくしたものの娘として扱ってやらなかったことを謝らせて欲しい。本当は、抱きしめて愛していると言いたかった。娘であると言いたかった。けれども、もし、お前から「死なせて欲しかった」、「こんな姿にされたくなかった」などと恨まれるのが怖かった。ふがいない私を許さなくてもいい。それでも父親としてできるだけ幸せに生きて欲しいと思っている。絶望して死んだりしないで欲しい。」
メアの目からは、涙が流れる。そして首を左右に振った。
「私をホムンクルスとして生かしてくれてありがとうございます。ご主人様と出会わせてくれて、共に暮らすことが出来て私は幸せです。」
メアは私に抱きつき肩をふるわせて泣いている。私は、その後に続く最後の一行が気になっている。
「最後にメアジストと共にここに来たあなたには、もう一度錬金術師のトミーに会って欲しい。そこであなたの旅は終わります。その後は自由にしてください。」
メアが泣き止むまで、抱きしめていて、メアが離れた時に私は、手紙をたたんで封筒に入れてメアに渡した。
私は、予備の体の入っている箱の周囲を見る。特に何も仕掛けられていません、
「では、申し訳ありませんがこの箱ごと外に出します。パムさんお手伝いお願いできますか。」
私とメアとパムで箱を横に倒して、私が重力制御で持ち上げて、左右が壁にぶつからないように2人に保持してもらっている。
「重力制御はおぬしの本来の魔法であろう。緻密な作業まで自分で出来るはずなのではないのか。」
「今度練習しておきます。」
「あんたは本当にダメねえ。」
「とほほ」
そうして、地上まで運び上げて馬車に乗せようとした時に周囲に人が集まってきた。
「それを渡してもらいましょうか。」さっきの3ピース男が戻って来たようだ。
「しつこいですねえ。」私は、そう言いながら馬車にそれを積み込む。
「だから渡してください。そうしないとこの人達があなたを襲いますよ。この人達は何も知らない人達で私に操られているだけですから。」
『エルフィあれを』
『ラジャー』
そう言ってエルフィは、荷馬車の幌の上に飛び上がり、弓を手に魔法の矢を天に向けて打ち出す。すると光の矢が20本以上の光の矢に分かれて近づいてくる人達に襲いかかる。次々と倒れていく人達。たった一瞬で周囲の人は全員倒れている。
「な・・何をしたのかな」
「ひ・み・つ」そう言ってエルフィは、その男にウィンクをする。ああ、イラッとしてますよねえ、きっと。
「では、私も戦いましょう。大丈夫です、殺しはしませんよ。神の使徒ですから。ただ抵抗するならそれなりの怪我は覚悟してくださいね。」
「では、私が行きましょう」そう言ってメアがその男に近づいて行く。
「おや、あなたが、まがい物のあなたが私に勝てますか。」
「さあ、でも、あの時は、本当に気にしてしまいましたので、あなたを倒してすっきりしたいと思います。」
「ああ、やっと自分が人間であることを知ったのですね。良かったじゃないですか。私のようにホムンクルスとして作られたわけではなかったのですから。」
「確かに、でもせっかくですから。ホムンクルスより強いことを証明したいのです。」
「へえ、例え人が体を強化しても、反応速度は人のままですからねえ、勝てないと思いますよ。」
「ですから、証明したいのです。人とホムンクルスとが統合された時により一層強くなることを。」
「あきらめないんですね。」
「はい、きっとそれが、父が私に求め、託したことですから。」
「では、決定的な違いをあなたの体で味わってくださいね。」
「どうぞ」メアがその男との間合いで止まった。風が起きたと思ったら、その男の姿が消えて、メアの右腕が何かを防いだ。
「ユーリ見えますか。」私はユーリに尋ねた。
「はい、左足の跳び蹴りを右腕で受け止めました。」
「レイやパムもわかりましたか。」
「はい、わかりました。」
「僕も見えています。本当にすごい人がいっぱいいますね。」レイが感心しながら言っています。
「エルフィ」
「見えてませんよ、でも聞こえています。」
「モーラ、アンジー」
「わしは見えているがなあ」
「私は無理よ。あんたはどうなの。」
「さすがに見えませんねえ。おっと」こちらに石つぶてが飛んできました。
「なんだ見えているんじゃない。」
「いや、飛んでくる石は見えますよ。」
「確かに横で見ている時は、そんなものか。」
「ええ、そんなものですよ。」
メアは動かず防御に徹している。
「どうしました、動けませんか。それにしても私の反応速度についてくるので精一杯みたいですね。」
「いえ、今確認しているところです。」
メアは、殴りつつ走り抜けようとするその男の後ろ姿に蹴りを入れる。そしてその男は勢い余って動きが止まる。
「なるほど、では、」男はそう言って私の方に石を蹴り、瞬時にメアに向かって走り込む。
「卑怯な手を使いますね。まあ、ご主人様はあれくらいはかわせます。」
「なるほど、ご主人様の安全が最優先ではなくなったのですね」
「いいえ、選択できるようになっただけですよ。でも、感情はそうはいきません。」
メアは、その男に自分から近づき顔と顔を近づけて男の頬を叩く。男は呆然とそこに立ちすくんだ。しかし、頬を抑えた手が震えだして顔が怒りで満ちあふれる。
「よくも俺の顔を殴りやがったな。貴様、殺す。神は殺すなと言っているが殺す。」
そう言って速度を上げた。メアは、さすがに防戦一方になり、顔から余裕が消えた。
「ほらほらどうした。所詮人間のスピードでは俺のスピードにはついてこられないだろう。このまま押しつぶしてやる。」数秒間攻防が続く。それでも攻めきれない。
「おかしい、防がれている。なぜだ」それでも男は攻撃をやめない。しかし、決定打に至っていない。
「なぜだ、なぜまだこの速度についてくる。」男の顔にあせりが見え始める。
「ああ、メアさん、あの男で調整していましたね。」
「そうですね。戦いが始まったときには、どうみても体の動きがぎこちなかったのですが、脳と補助脳とが連携して体を動かせるようにうまく練習していたみたいです」
「あ~、メアさん動きますよ~」エルフィがそう言った途端、メアが攻勢に出る。
相手の男の先手を取るように攻撃をさせず、動こうとする方向を限定して、彼に二の足を踏ませている。まるでステップを踏むように。そしてメア自身も軽いステップで彼の周りをメイド服のスカートをヒラヒラさせながら、あたかも舞い踊っているように動いている。
「メアさん綺麗です。」とユーリ
「いつにも増して優雅ですねえ。」と私
「そうね、これは綺麗だわ」とアンジー
そして、双方動きを止める。メアは優雅にスカートの裾を持ってお辞儀をし、相手は、なぜか息が上がっている。
「どういうことだこれは、魔力が吸い取られている。」
「はい、その仕組みはご主人様から解説していただいた方がよろしいかと。」おや補助脳に切り替わっていますか?それともつい?
『つい習慣でこの口調になりました。』あら、脳内会話状態でしたか。
「そこの魔法使い。どういうことだこれは、ここの場所に何か仕掛けでもしてあったのか。」
「まあ、そう思いたくなりますよねえ。いつもそうしてきていましたから。でも、ずーっと見ていたんでしょ?仕掛けていませんよ」
「ならなぜ私の魔力が・・・そのメイド服」
「ご明察です。」とメア
「ええ、このメイド服はメアさんに作ったワンオフなのですよ。そして、メアさんが放出した魔力を回帰吸収するように作ってあります。もちろん、近くにある魔力も取り込むことが出来ますよ。」
「つまり近接戦闘時に魔力を使って戦っている者は魔力を吸収されていくということか。」
「そのとおりです。私はあなたの魔力を吸って魔力がリチャージされていくのです。」またメアさんがスカートの裾を持って丁寧にお辞儀をする。
「勝てるわけないじゃないか。いや、近接戦では勝てないと言うだけだが。」その男はつぶやきながら、左右の手それぞれに光の球体を作り出す。ひとつは青くひとつは赤い。
「やめなさい。そんなことをしてもなんの意味もありませんよ。」
「いいやある。私はおまえに負ける訳にはいかないんだ。」両手の光の球体は、どんどん膨らんでいく。
「そうでしょうか。これは、装備の差です。裸で戦えばあなたの勝ちでしたよきっと。」
「それでは意味がないんだよ。しかも相手にその技の正体まで明かされて。プライドはズタズタだ。」
「ホムンクルスはそもそもプライドなどありませんよ。人形なんですから。それとその球体を投げつけると絶対後悔しますよ。」
「ああ、そうだな後天的に感情が芽生えたからな。だが、これで終わりにするよ。この攻撃には耐えられまい。」そう言って男はメアに両手の光の球体を右手からと左手から時間差で投げつける。
メアはそれを受け止め、吸収し、そして打ち出す。男が後から投げた球体にぶつかり爆散して、男は、目の前の爆発によろけて座り込む。
「なんだと。何が起きた」
「だからやめなさい。と言ったではありませんか」メアは、男の体をスキャンしている。
「一体何をした!!」座り込みながら下を向いて地面に向かって叫んでいる。
「吸収して放出しただけですよ。ねえレイ」
「はい、僕のつなぎも同じ事が出来ます。」
「なるほど、確かにそれは以前見たな。」そう言ってその男は、座り込んだままそこから消えた。
「まあしばらくは戻ってこられんじゃろうなあ。」
「はい、あの攻撃に魔力をかなりつぎ込んでいましたから。」
その箱を馬車に積んだ後、私は
「メアさん申し訳ありませんが、私と一緒にもう一度だけ中を確認しに行っていただけませんか。」
「はい、わかりました。」
そして2人で地下に入って行きました。メアは部屋を再度スキャンしているようです。
「大丈夫です、この下に地下室も横に隠し部屋も変な隠し扉も何もありません。」
「ありがとうございます。でもそのために2人になったわけではありませんよ。」
「そうですね。」隣に立っていたメアは私の手を握る。
「これで、私は、本当の意味での自分になったのですね。」
「情報交換を常に続けていたのですねえ。」
「私に付加価値の装備をつけてくれて、大事にしてくれていると判断した際に記憶は開かれるのだそうです。そして、メンテナンスマニュアルを手に入れられる。ダメな時は、自分の中の自動修復装置のみで回復しなければならないみたいです。つまりそのままだと致命的な損傷時に壊れてしまって修復できない」
「使い捨てられると」
「どうやらそのようです。ありがとうございました。私を愛してくれて」
「メアさんあなたが最初に私を好きになってくれたからですよ。そこから始まっています。私を好きになってくれてありがとうございます。」
「私は、メアジスト・アスターテは、生涯あなたとともに生き続けます。これからずっと。」
そう言ってメアは私を抱きしめる。私もそれに答えて抱きしめメアは私を見る。潤んだ瞳が目をつぶり私も目をつぶってキスをする。
『暖かいですねえ。』
『はい』
そうして、私達は唇を離してちょっと照れて笑ってしまう。
「行きましょうか。まだ、旅は終わっていません。」
「はい」
そうして地下室を出る。扉の両隣にはモーラとアンジーが隠れていた。私が冷たい目で見ると。
「あんた達が遅いから何かあったんじゃないかと思って様子を見に来たら・・・ねえ。」
「ああ、そうじゃな。入れなくなっただけじゃ。」
「はいはいそういうことにしますね。」と私は言った。メアはすでに真っ赤になって階段を駆け上がって消えていた。
全員揃って、馬車に乗ろうとしていた時に地響きが伝わってくる。
続く
「おぬしさすがじゃな」
「ええ、名回答だったわ。」
「何のことですか」
「さっきの事件の説明じゃよ」
「受け答え完璧じゃない。」
「それは、お二人に鍛えられましたからねえ。特にアンジーには、」
「なによそれ、」
「「私は、嘘は言わないの。都合の悪いことを黙っているだけ」なんですよね」
「そうね、確かにそうだわ」
そうして、馬車に揺られながら街の外周に沿って馬を進める。管理用の小道はあるが、草に覆われていて、足下をとられ、ゆっくりとしか進めない。
「さて、どのあたりかのう。」
「道を通らず丘にそって走ればありそうですよ。」
「僕、行ってきます。」レイが言った。
レイが馬車を降りて獣化して走り出す。周辺の捜索に行ったようだ。
『聞こえますかレイ』
『はい、大丈夫です。』ああ、街の外同士だと大丈夫なのですねえ。
『何か仕掛けがしてあるかもしれません。注意してください。』
『ラジャー』
しばらくして、
『なんか朽ちた材木に草が生えている場所があります。』
『さすがに埋もれて見えませんよねえ。』
『確かになあ』
『他も探してきます。』
『そこにいてください。違ったら次に行きましょう』
そうして、レイが獣人化して立っている場所に到着する。私は馬を下りて真っ先にレイに近づき頭をなでる。
『こんなところよく見つけましたねえ。』
そこは、広い範囲にわたってほんの少しだけ盛り上がっている。その盛り上がっている部分だけほんの少し植生が違って見える。近づいてみるとツタやら雑草やらが生い茂っていて、その雑草を無理矢理引き剥がすと、焼けたり朽ちたりした材木が折り重なっていた。パムとメアとレイがそのツタの絡んだ材木を次々と引き剥がしていく。
「メアさん私、用事があるので家に戻ります。」
エルミラはそう言ってその場から立ち去った。
「昨日は、用事があるような話はしていなかったのですが。」
「若い方の魔法使いに何か言われたかのう」
「そうみたいですよ~」とエルフィ
そう言いながらもみんなは手を休めない。持ち上げた木材を手渡しで横によけて行く。どうやらここで間違いないようだ。かなり広範囲にわたって家の基礎が見える。山の方に向けて家があったようで、研究室はまだ先のようだ。アンジーとエルフィは、手に持った小刀で周囲の草を刈って家全体の大きさを確認している。
「おぬし、これを何とかできんのか。」
「土まで持ち上げていいのでしょうか。その下に何かありそうですからねえ」
「ああ確かになあ。」そう言ってモーラは地面に手を当てて何かを探っている。
「確かに深そうじゃ。しかも何か仕掛けをしてありそうじゃ。慎重にやらないとまずいなあこれは。」
「あら、これは何かしら。」アンジーがなにかのボタンを発見する。その横には、地下に向かう扉があった。
「よくわかりましたねえ。」
「そこだけ草の成長が変だったのよ。一度刈り取られているわねえ」
「エルフィどうですか」地面に顔を近づけて匂いを嗅いでいる。
「たぶん一度刈り取ってそこを隠すように草をならしています。しかも最近ですよ。」
「誰かが来たのか。そして、中に入ったのか。」
「ええ、その扉に草が噛んでいて、まだ枯れていませんから。たぶん」
確かにその扉には、草が挟まっている。折れているところはまだ枯れていない。
そうこうしているうちに家の全容が見えるほどになった。アンジーが見つけたスイッチと扉は、家の形の一番奥に位置している。手前には、腐った本、本棚、ガラスの容器などが散乱している。
「スイッチのあるこの辺がこの家の研究室だったところですねえ。」
「たぶんそうなのでしょうね。」
「あんたと同じで地下に潜るのが好きだったようね。」
「隠し部屋が一番、研究がはかどりますからねえ。」
「で、このスイッチはどう思うの。」
「まあ、ダミーじゃないですか?普通にこの扉の横にあるハンドルで持ち上がるような気がしますよ。」
「無理矢理開けると何かあるんじゃないの?普通。」
「研究なんてする人は、面倒を嫌うのですよ。ですからこのスイッチを押すかに見せて、ただ、この扉を開くのではありませんかねえ。」
「まあ、そう言うなら開けて見なさいよ。」
「はいはい」私はそう言って、床にある扉に手を掛けて持ち上げるように開いた。
「ほらね何も起きませんよ。」
「じゃあボタン押してみましょうか。」
「押さないでください。たぶん自爆スイッチです。」
「やめてよ。縁起でもない。」
「さて、入りますよ。」
「レイ、すまぬがここを見張っていてくれ。よいか、周囲に警戒をしておけ、匂い気配全部じゃ。見つけ損なうとわしら全員死ぬことになりそうなのでなあ。」
「え。頑張ります。」
「ユーリは階段下でレイを監視じゃ。レイに何かあれば声を出すだけでよい。」
「はい。」
階段を降りるとすぐに扉があり、そこを静かに開ける。さすがに明かりがないので何も見えない。手に持ったたいまつに火をつけるが一瞬で消える。
「ここに入るには、工夫が必要です。」
「火が消えたのと関係があるのか。」
「ええ、酸素がありませんね。地下にあるせいもありますが、たぶん機密性が異常に高くて空気がありません。中が見えれば明るくする方法が何かあるのでしょうけど」
「はいはい、いくわよ。」そう言って手を組むと光り出すアンジー。
「なるほど、それってどういう仕組みなんですかねえ。」私はしげしげと見つめる。
「いいから早く何か見つけなさい。」
私は、階段下で深く息を吸い込んでから中に入る。アンジーの光のおかげで中が見えている。制御盤のようなものが、入り口左にあったので、面倒なので全部スイッチを入れる。明るくなり、コンプレッサーの駆動音のようなものがかすかに聞こえ始める。
一度戻ってからたいまつに火をつけて中に入る。今度は火が揺らいではいるが消えない。
「大丈夫そうですね。アンジーさんありがとうございます。」私はたいまつの火を消した。
「私の魔法をこういう使い方はしたくないわね。」
そうして、みんなで手分けをして部屋の中を探そうとするが、埃の上に足跡を見つける。何かにぶつかった跡もある。
「誰かが入ったのは間違いないな。」埃の状態を見てモーラが言った。
「あの男かしらね。私達全員の素性を暴いて回ったのかしら。悪趣味ねえ」
「それでは、タイミングがあいませんねえ。この旅を始めた時からなのではないでしょうか。」
「確かに埃とか草の状態は、そう言っているわねえ。」
「でも、先に知っていたのよね。その、メアがホムンクルスではないことを。ならば何を調べるというのよ。」
「確かにそうだな。何かわしらに渡したくないものがあったのかのう。」
「さて、とりあえず何かメアさんの出生について、ヒントになるものを探してください。」
「それなら、ここにあります。」メアが机の上に置いてある一冊の本を開いている。
「すでに誰かに見られているようですが、これは日記です。日記というよりは、覚え書きに近いものですが」
メアが読みながら言った。読むスピードが速い。すでにかなりのページを読んでいる。その表情は、冷静そうに見えてもかなり緊張している。
-抜粋-
この世界に来て、自分の能力に気付いてからやっとここまでたどり着いた。魔法使いの里とも利害が一致して、小さなモデル都市を構築した。そして、昔からの夢だった、人類のDNAの解析を行い、魔法による改変ができるようになった。小動物から初めてついに人間のテストに入れる。
今のところ不死には遠いが、老化を進めていく因子がわかった。ただ、因子の排除や、因子の停止は、体細胞を新しくしていく体内プログラムを止めることになるため、出来ないこともわかった。なので滅亡遺伝子の動きを遅くすることに切り替えた。
不死は無理でも、延命は、出来ることになった。人の遺伝子にある細胞の老朽更新を繰り返すサイクルをできるだけ遅延することで長命化を図る。そして、一度老化まで行き着いた細胞は、その再生回数をリセットすることで新しい再生回数を手に入れることができることもわかった。
しかし、次の問題が発生した。成人の細胞をそのままリセットすると子どもの体まで戻ってしまう。たぶん細胞の自己防衛のためで、自己防衛をさせないままリセットすると、今度は、成長しすぎて体が老化して破壊される。今のところそれを打開できていない。
概ね、ここでの実験は完成を見た。人間の長命化はほぼ出来たようだ。魔法使いの中には長寿の方法を自分で憶えられる一部の魔法使いだけが魔女になれる。しかし、魔法使いになるような人達は延命化を望む。そして自らを実験体として差し出すのだ。そして一定の成果がでて、あとは検証のみとなった。
娘が出来た。名をメアジスト。妻の中から娘が生まれた。生命の神秘と思ってしまうが、実際には単なる妊娠からの出産だ。でも、生まれてきた子どもは可愛い。これが、庇護欲をそそるということなのか。しばらく研究は中断せざるを得ない。
メア、愛おしい私のメア。立ち上がり、言葉をしゃべり、愛くるしく笑うメア。私の心も研究に対する情熱も全てを奪っていったメア。でも、平行して研究は続けなければならない。
メアが死んだ。なぜだ。私は人の生をも操れるはずなのになぜ娘を死なせてしまったのか。いや、娘はまだ生きている。体が死んだとはいえ脳はまだ生きている。そうだ、すでにこれまでテストに使用してきたホムンクルスの体を使い、魔力による体骨格、筋肉、内臓などを人工筋肉によるボディに入れて、それを魔法により稼働させる。すでに私の中では、魔法によって、血液の酸素交換と栄養の補給。心臓による細胞単位で血液を浄化して循環させる脳と心臓を動かし続けて、魔力による動く体を用意できれば娘は復活する。そして、8歳の体に寄せたボディを作り成長させることとした。
しかし、魔力の流れが上手く動作しない。妻は培養カプセルに入った娘に愛情をなくしていく。これはメアではないと言い張る。なぜ妻はわかってくれないのだろう。
妻が2人目の子どもを産んだ。私がふがいないばかりに妻にも悪いことをしたと思っている。残念ながらメアの妹は、私の子ではない。私と妻とはすでに何年も関係を持っていないのだから。私は、その子を抱き上げようとした時、私の手は動かなかった。ああ、自分の子でないと思っただけで子ども抱き上げることも出来ない。メアは、培養カプセルの中で魔力による急成長を終えて成人の妻と同じくらいの体格になった。妻は、私の研究室に入ることはなく。いつしか別居していて、ついには、私と別れたいと言って次女を連れて出て行った。それは仕方がないことだ。
私の家が焼かれた。この街がこうなったのはお前のせいだと言われた。そうさ、そのとおりなのだ。だが、人類が他の種族と対等に渡り合うためには、長命化は最初のステップなのだ。しかし、魔法使いの里もここに対して関心を失い、私の研究もここまでだった。
家は焼かれても地下の研究施設には気付かないようで。私は近くに住んで大量の食料を持ち込み、研究に没頭し。ついに完成した。魔力により稼働するホムンクルス。しかし、正確にはサイボーグになるのだろう。脳と心臓と若干の血液。血液も足りなくなると生成して、魔力の循環により躯体の維持と栄養への変換を行うことが出来る。人間の体を模しながら魔力でも食事による栄養も摂取可能。ホムンクルスと違って脳への負担を軽減するために、稼働時間に制限をかけている。自己修復機能、脳への負担軽減のための補助脳などを用意している。
しかし、ホムンクルスとしての活動をアシストする補助脳が本来の娘の脳の働きを阻害しているようだ。脳波も感じるし視覚神経などとのリンクも正常になっている。しかし、脳が覚醒していないのかもしれない。脳が眠ったままなのだ。完成が遅すぎたのか。
私の中の何かが壊れたのかもしれない。最初は、娘への愛情でホムンクルスを作ってきたが、最後の方は、ホムンクルスを完成させることが、目的に置き換わっていたようだ。娘への愛情より完成した事への安堵感の方が強い。しかも、変化に富んだ会話を重ねるごとに学習し、行動表現、表情の変化までが自然になっていく。人形ではなく人間の反応に。自分の才能に恐ろしくなると共に、この子の進化がどこまで進むのか興味の方が勝っている。なので、どこまで高見を目指せるのか旅をして経験を積ませてみようと思う。
旅の途中、私は錯覚する。時折みせる悲しげな表情が妻に非常によく似ている。体は成長するわけではないので、妻と同じ成人の体格にしたのが災いしたのか、メアを見るのがつらい。どうしても扱いが雑になる。このままではいけないのだ。私は、メアに娘の感情や記憶を封印した。
この日記とは言えないメモは、かつての研究所に置くことにする。そしてそれを探し出した者がメアを連れて来たならば、きっと私の研究成果を継いでくれるだろう。もし継がなかったとしてもそれは仕方がない。でも、メアを連れて来て、一定の条件をクリアした場合には、私の研究成果を見て欲しい。
そこで日記は終わっていた。
メアは、読み終わったあと、その日記を私に渡してくれた。
「お読みください。やはり私はホムンクルスではなく。魔法で作られたサイボーグでした。」
「やはり人間でした。唯一のホムンクルスではありませんでした。」
「いや、わしは、これはとてつもなくすごい技術なんだと思うぞ。ホムンクルスを作るだけではなく、人間の意志を取り入れることまで可能にしている。」
「ええ、それを制御しているあなたもすごいわよ。」
「そうでしょうか。補助脳に操られているだけにしか思えません。」
私は、パタリとその日記を閉じてメアに渡す。
「私は、あなたのお父さんを尊敬します。すごい錬金術師だったのですね。自分の目標を定めたら途中で投げ出さず。最後までやり遂げ、成果を出しています。例え他の世界から転生してこようと、この時代にある設備装備では到底なしえないことをあなたのお父さんは成し遂げているのですよ。研究者として頭が下がります。」
「はあ」
「私としては、あなたを完成させてくれて、メアさんが私の元に来てくれただけで私は幸せです。どれだけの奇跡的な確率で私の元に来たのでしょうか。とてもうれしいです。」
「さて、上の方が騒がしいぞ。何かやっているな。」
地上では、レイとユーリが剣を抜き、その男と対峙していた。顔は変えてもスリーピースの背広を着ている男は、こいつくらいしかいない。その名は、ジャミロッティ・アクスファイ。先の勇者会議を影で操った男。
「邪魔をしないでくれませんか。私も地下室に用事があるのですよ。」
「通しません。今、地下室は、あるじ様が使用中です。」
「だからですよ。一緒に話がしたいんですよ。」
「あるじ様からは、誰も通すなと言われています。」
「違うでしょ・・・まあいいです。しかたないこの手を使いますか。」その男は、空間魔法を使ってその場からいなくなった。
地下室では、その男が空間魔法を使って部屋の中央に出現する。私は土のクリスタルの樽を用意していて、その中に男が転移してくる。
「やっぱりそうですか。」
「おお、本当じゃ、確かに釣れたなあ。」
「どうして私がここに来ると。いや、どうして転移の位置までわかっているのですか。」
「あなたねえ、埃の中を歩いたら、足跡が残るんですよ。しかも、歩き回った足跡とは別に、途中で消えている足跡があるじゃないですか。ということは、ここから転移魔法で消えたと思いますよねえ。なら、そこに戻ってくるのではと思いましてね。この罠を用意しました。」
「おやおや、そんな簡単な推理に引っかかるとは私もまだまだですね。」
「ああ、なんか上手くごまかして置いてあったポイントマーカーは、私の手の中にありますから、次の転移はできませんよ。」
「そうでしたか、見つかっていましたか。それでは、仕方ありません。そこまでバレているのであれば潔く撤退しましょう。」そう言ってその男は、その樽の中から一瞬にして消えた。
「ほほう、結界の中からでも転移できるのか。」
「それはすごいですねえ。たぶん違うポイントマーカーの所に転移したのでしょうから、さすがに追跡は無理ですねえ。」
「さて、メアさん。この鍵をお使いください。」私は、エリクソンさんから受け取っていた鍵を渡す。
「これをどこに使えば良いのでしょう。」
「私もわかりません。でもきっとこの部屋なのでしょうね。」
そう言われてメアは、部屋の中を見回す。
メアの視界の中に十字のポイントが表示されている。
「ご主人様、目の中に目印が表示されました。」
そう言ってメアは、その場所を指で指して、鍵を私に渡す。するとメアの目から十字のポイントが消える。
「鍵を手放すと消えます。やはりそういうことなのでしょう。」
「こざかしい真似をするのう」
「でもそうしないと秘密は簡単に奪われてしまいます。」
私は、もらった鍵を再びメアに渡す。メアは、その鍵を手に取り、再び現れた十字のポイントのある壁に近づく。
「でも、ぬし様どうしてメアさんに鍵を渡したのですか。」
「いや、この部屋は私の部屋ではありません。メアさんのお父さんの部屋ですから。鍵を私が持っているのも変でしょう?」
「そんなものか?研究している奴らの思考なのかのう」
メアは壁の所に四角い線があるのを見つけて、そこを押す。はめ込み式になっていた壁の一部が外れる。鍵のかかった引き出しがあった。鍵を回すとその横に数字が並んでいた。
「ご主人様。数字を入力する仕掛けが横についています。」
「数字がイメージできますか。」
「はい、12桁あります。父と母と私の誕生日です。」
「この街には暦があるのですね。」
「はい、この街にはあったのです。父が作りました。何もせず生きる人達に季節を教えるために。」
「数字を入れていってください。」
「はい」そして3回の入力で鍵が開き、そこから分厚い紙の束が入っていた。
私はメアが取り出した紙の束を受け取り、ざっと目を通す。
「おぬし、どうなんじゃ。」
「ああやっと見つかりました。メアさんの体を作る方法を。でもね、これでは、体は作れても頭を作れないのです。だって、頭はすでにあったのですから。」
「この設計図は、無意味なのか」
「メアさんの体のメンテナンスには必要なのです。それでもこの書類の中には、メアさんの脳とホムンクルスの脳を切り替える仕組みがないのですよ、」
「わしらには、それが一番大事なんじゃないのか。」
「メアさん、他に何か入っていませんか。」メアがさらに中をのぞき込み、手を入れて中を探る。
「ありました。センサーを使わないと見えない隙間が作ってありました。」
「それはまた、面倒くさいことをするわねえ。」
「まあ、こんな簡単な鍵と細工なら、盗みに入った者が見つけようと思えば見つけられるからなあ。それを持って、すぐに逃げることまで想定したのかもしれんな。」
メアは、手を入れて取りだしたのは、鍵とペンダントだった。
「また鍵か。そしてペンダント。明滅しているのは何か意味があるのだろうか。」
「なるほどな。メアの生体信号に反応するように仕掛けてあるのか。そうなんじゃなあ。」
「では、メアさんこのペンダントを首から提げてくださいね」
「はい。ああ、そうです。認証開始、意識の統合開始。記憶の封印全解除。補助脳のリミッター解除。正常終了。ご主人様、私の人格と補助脳の人格が統合しました。」一瞬倒れかけたメアを私は抱きとめる。
「大丈夫です。めまいがしただけです。」そう言って顔を赤らめ横を向いて私から離れようとする。
「おや、メアどうしたのじゃ。」
「これまでのことが少し恥ずかしくなりまして。」
「人格統合してもしゃべり方は変わらないのねえ。」
「それは、変わらないと思います。」
「はい、そこでからかわないように。表情が少しだけ明るくなりましたね。」
「ありがとうございます。それでは、鍵の方を」
メアは、階段のある扉から正面にある机を手前に引っ張り出す。そして、首にかけていたペンダントを外して、壁に当てる。どういう仕掛けなのか壁が開いて、その空間に下からメアの体が入った箱がせり上がってくる。
「おや、そのメイド服は、」
「はい、最初に着ていたメイド服ですね。父はわざわざこれを着せたのですね。」
「さすがに裸のまま置くのは忍びなかったのでしょう」パムがフォローしている。
そこには、予備の体とまた紙の束があります。その紙の束を私は手に取る。
「鍵のかかった扉の中には、メアさんの予備の体と予備脳の設計図ですか。」
「慎重な男なのじゃのう」
「さらに鍵が3つ入っていましたよ。これは、かなり大きい。しかも古びた鍵です。どういう意図で作られたのでしょうかねえ。とりあえず、メアさんに必要なものは手に入りました。」
「さすがに何もありそうにないのう。」
「では、メアさん周囲を見回して何も発見できなければ一度、その予備の体を馬車に移しましょう。」
「はい。」メアは周囲を見ている。意識するとセンサーによる解析が見えるようです。
「ああ、手紙がありますね。」メアの目には、そこだけが光って見えていた。予備の体のポケットに入っている。メアがそれを取り出して、その封筒を私に手渡した。
封筒には、「この扉を開けることが出来た方へ」と書いてあった。私が封筒をあけると、中に数枚の手紙が入っていた。メアの横に並びその手紙を読み始める。
「この手紙を読んでいる人は、メアジストを所有物と捉えている人がいるかもしれませんが、彼女は人です。ホムンクルスではありません。その事が理解できる人がこの手紙を読んでいると信じてこれからいくつかのお願いを書いています。
まず、彼女は私の娘です。この部屋に入ってここまでたどり着けたあなたなら彼女の中にある脳と心臓、それを維持するための機関、ホムンクルスとして生体を維持する補助脳があるとわかっているはずです。彼女には人権があります。なので、この研究成果を差し上げますので、どうか彼女を、私の娘を自由にして欲しいのです。もっともメアジストには、一定の好意を持ち、彼女を守れる能力がないと従属しないように術式を組み込んでありました。補助脳がお互いの愛情を数値化し、その判断に基づいてここへ誘導しています。ですから、我が娘もあなたに対し一定以上の好意を持っていることはわかるのですが、この先は、ぜひ彼女の意思を尊重してください。
最後に私の愛しい娘メアジスト。最初に起動した時は、補助脳と本人とのすりあわせが難しくて、補助脳がメインになっていた時があってあせったが、表情などが落ち着いた時はそれはうれしかった。しかし、表情や行動がその表情や声、立ち居振る舞いに妻の影を見てつらく当たったこと。最後の数年、少しは優しくしたものの娘として扱ってやらなかったことを謝らせて欲しい。本当は、抱きしめて愛していると言いたかった。娘であると言いたかった。けれども、もし、お前から「死なせて欲しかった」、「こんな姿にされたくなかった」などと恨まれるのが怖かった。ふがいない私を許さなくてもいい。それでも父親としてできるだけ幸せに生きて欲しいと思っている。絶望して死んだりしないで欲しい。」
メアの目からは、涙が流れる。そして首を左右に振った。
「私をホムンクルスとして生かしてくれてありがとうございます。ご主人様と出会わせてくれて、共に暮らすことが出来て私は幸せです。」
メアは私に抱きつき肩をふるわせて泣いている。私は、その後に続く最後の一行が気になっている。
「最後にメアジストと共にここに来たあなたには、もう一度錬金術師のトミーに会って欲しい。そこであなたの旅は終わります。その後は自由にしてください。」
メアが泣き止むまで、抱きしめていて、メアが離れた時に私は、手紙をたたんで封筒に入れてメアに渡した。
私は、予備の体の入っている箱の周囲を見る。特に何も仕掛けられていません、
「では、申し訳ありませんがこの箱ごと外に出します。パムさんお手伝いお願いできますか。」
私とメアとパムで箱を横に倒して、私が重力制御で持ち上げて、左右が壁にぶつからないように2人に保持してもらっている。
「重力制御はおぬしの本来の魔法であろう。緻密な作業まで自分で出来るはずなのではないのか。」
「今度練習しておきます。」
「あんたは本当にダメねえ。」
「とほほ」
そうして、地上まで運び上げて馬車に乗せようとした時に周囲に人が集まってきた。
「それを渡してもらいましょうか。」さっきの3ピース男が戻って来たようだ。
「しつこいですねえ。」私は、そう言いながら馬車にそれを積み込む。
「だから渡してください。そうしないとこの人達があなたを襲いますよ。この人達は何も知らない人達で私に操られているだけですから。」
『エルフィあれを』
『ラジャー』
そう言ってエルフィは、荷馬車の幌の上に飛び上がり、弓を手に魔法の矢を天に向けて打ち出す。すると光の矢が20本以上の光の矢に分かれて近づいてくる人達に襲いかかる。次々と倒れていく人達。たった一瞬で周囲の人は全員倒れている。
「な・・何をしたのかな」
「ひ・み・つ」そう言ってエルフィは、その男にウィンクをする。ああ、イラッとしてますよねえ、きっと。
「では、私も戦いましょう。大丈夫です、殺しはしませんよ。神の使徒ですから。ただ抵抗するならそれなりの怪我は覚悟してくださいね。」
「では、私が行きましょう」そう言ってメアがその男に近づいて行く。
「おや、あなたが、まがい物のあなたが私に勝てますか。」
「さあ、でも、あの時は、本当に気にしてしまいましたので、あなたを倒してすっきりしたいと思います。」
「ああ、やっと自分が人間であることを知ったのですね。良かったじゃないですか。私のようにホムンクルスとして作られたわけではなかったのですから。」
「確かに、でもせっかくですから。ホムンクルスより強いことを証明したいのです。」
「へえ、例え人が体を強化しても、反応速度は人のままですからねえ、勝てないと思いますよ。」
「ですから、証明したいのです。人とホムンクルスとが統合された時により一層強くなることを。」
「あきらめないんですね。」
「はい、きっとそれが、父が私に求め、託したことですから。」
「では、決定的な違いをあなたの体で味わってくださいね。」
「どうぞ」メアがその男との間合いで止まった。風が起きたと思ったら、その男の姿が消えて、メアの右腕が何かを防いだ。
「ユーリ見えますか。」私はユーリに尋ねた。
「はい、左足の跳び蹴りを右腕で受け止めました。」
「レイやパムもわかりましたか。」
「はい、わかりました。」
「僕も見えています。本当にすごい人がいっぱいいますね。」レイが感心しながら言っています。
「エルフィ」
「見えてませんよ、でも聞こえています。」
「モーラ、アンジー」
「わしは見えているがなあ」
「私は無理よ。あんたはどうなの。」
「さすがに見えませんねえ。おっと」こちらに石つぶてが飛んできました。
「なんだ見えているんじゃない。」
「いや、飛んでくる石は見えますよ。」
「確かに横で見ている時は、そんなものか。」
「ええ、そんなものですよ。」
メアは動かず防御に徹している。
「どうしました、動けませんか。それにしても私の反応速度についてくるので精一杯みたいですね。」
「いえ、今確認しているところです。」
メアは、殴りつつ走り抜けようとするその男の後ろ姿に蹴りを入れる。そしてその男は勢い余って動きが止まる。
「なるほど、では、」男はそう言って私の方に石を蹴り、瞬時にメアに向かって走り込む。
「卑怯な手を使いますね。まあ、ご主人様はあれくらいはかわせます。」
「なるほど、ご主人様の安全が最優先ではなくなったのですね」
「いいえ、選択できるようになっただけですよ。でも、感情はそうはいきません。」
メアは、その男に自分から近づき顔と顔を近づけて男の頬を叩く。男は呆然とそこに立ちすくんだ。しかし、頬を抑えた手が震えだして顔が怒りで満ちあふれる。
「よくも俺の顔を殴りやがったな。貴様、殺す。神は殺すなと言っているが殺す。」
そう言って速度を上げた。メアは、さすがに防戦一方になり、顔から余裕が消えた。
「ほらほらどうした。所詮人間のスピードでは俺のスピードにはついてこられないだろう。このまま押しつぶしてやる。」数秒間攻防が続く。それでも攻めきれない。
「おかしい、防がれている。なぜだ」それでも男は攻撃をやめない。しかし、決定打に至っていない。
「なぜだ、なぜまだこの速度についてくる。」男の顔にあせりが見え始める。
「ああ、メアさん、あの男で調整していましたね。」
「そうですね。戦いが始まったときには、どうみても体の動きがぎこちなかったのですが、脳と補助脳とが連携して体を動かせるようにうまく練習していたみたいです」
「あ~、メアさん動きますよ~」エルフィがそう言った途端、メアが攻勢に出る。
相手の男の先手を取るように攻撃をさせず、動こうとする方向を限定して、彼に二の足を踏ませている。まるでステップを踏むように。そしてメア自身も軽いステップで彼の周りをメイド服のスカートをヒラヒラさせながら、あたかも舞い踊っているように動いている。
「メアさん綺麗です。」とユーリ
「いつにも増して優雅ですねえ。」と私
「そうね、これは綺麗だわ」とアンジー
そして、双方動きを止める。メアは優雅にスカートの裾を持ってお辞儀をし、相手は、なぜか息が上がっている。
「どういうことだこれは、魔力が吸い取られている。」
「はい、その仕組みはご主人様から解説していただいた方がよろしいかと。」おや補助脳に切り替わっていますか?それともつい?
『つい習慣でこの口調になりました。』あら、脳内会話状態でしたか。
「そこの魔法使い。どういうことだこれは、ここの場所に何か仕掛けでもしてあったのか。」
「まあ、そう思いたくなりますよねえ。いつもそうしてきていましたから。でも、ずーっと見ていたんでしょ?仕掛けていませんよ」
「ならなぜ私の魔力が・・・そのメイド服」
「ご明察です。」とメア
「ええ、このメイド服はメアさんに作ったワンオフなのですよ。そして、メアさんが放出した魔力を回帰吸収するように作ってあります。もちろん、近くにある魔力も取り込むことが出来ますよ。」
「つまり近接戦闘時に魔力を使って戦っている者は魔力を吸収されていくということか。」
「そのとおりです。私はあなたの魔力を吸って魔力がリチャージされていくのです。」またメアさんがスカートの裾を持って丁寧にお辞儀をする。
「勝てるわけないじゃないか。いや、近接戦では勝てないと言うだけだが。」その男はつぶやきながら、左右の手それぞれに光の球体を作り出す。ひとつは青くひとつは赤い。
「やめなさい。そんなことをしてもなんの意味もありませんよ。」
「いいやある。私はおまえに負ける訳にはいかないんだ。」両手の光の球体は、どんどん膨らんでいく。
「そうでしょうか。これは、装備の差です。裸で戦えばあなたの勝ちでしたよきっと。」
「それでは意味がないんだよ。しかも相手にその技の正体まで明かされて。プライドはズタズタだ。」
「ホムンクルスはそもそもプライドなどありませんよ。人形なんですから。それとその球体を投げつけると絶対後悔しますよ。」
「ああ、そうだな後天的に感情が芽生えたからな。だが、これで終わりにするよ。この攻撃には耐えられまい。」そう言って男はメアに両手の光の球体を右手からと左手から時間差で投げつける。
メアはそれを受け止め、吸収し、そして打ち出す。男が後から投げた球体にぶつかり爆散して、男は、目の前の爆発によろけて座り込む。
「なんだと。何が起きた」
「だからやめなさい。と言ったではありませんか」メアは、男の体をスキャンしている。
「一体何をした!!」座り込みながら下を向いて地面に向かって叫んでいる。
「吸収して放出しただけですよ。ねえレイ」
「はい、僕のつなぎも同じ事が出来ます。」
「なるほど、確かにそれは以前見たな。」そう言ってその男は、座り込んだままそこから消えた。
「まあしばらくは戻ってこられんじゃろうなあ。」
「はい、あの攻撃に魔力をかなりつぎ込んでいましたから。」
その箱を馬車に積んだ後、私は
「メアさん申し訳ありませんが、私と一緒にもう一度だけ中を確認しに行っていただけませんか。」
「はい、わかりました。」
そして2人で地下に入って行きました。メアは部屋を再度スキャンしているようです。
「大丈夫です、この下に地下室も横に隠し部屋も変な隠し扉も何もありません。」
「ありがとうございます。でもそのために2人になったわけではありませんよ。」
「そうですね。」隣に立っていたメアは私の手を握る。
「これで、私は、本当の意味での自分になったのですね。」
「情報交換を常に続けていたのですねえ。」
「私に付加価値の装備をつけてくれて、大事にしてくれていると判断した際に記憶は開かれるのだそうです。そして、メンテナンスマニュアルを手に入れられる。ダメな時は、自分の中の自動修復装置のみで回復しなければならないみたいです。つまりそのままだと致命的な損傷時に壊れてしまって修復できない」
「使い捨てられると」
「どうやらそのようです。ありがとうございました。私を愛してくれて」
「メアさんあなたが最初に私を好きになってくれたからですよ。そこから始まっています。私を好きになってくれてありがとうございます。」
「私は、メアジスト・アスターテは、生涯あなたとともに生き続けます。これからずっと。」
そう言ってメアは私を抱きしめる。私もそれに答えて抱きしめメアは私を見る。潤んだ瞳が目をつぶり私も目をつぶってキスをする。
『暖かいですねえ。』
『はい』
そうして、私達は唇を離してちょっと照れて笑ってしまう。
「行きましょうか。まだ、旅は終わっていません。」
「はい」
そうして地下室を出る。扉の両隣にはモーラとアンジーが隠れていた。私が冷たい目で見ると。
「あんた達が遅いから何かあったんじゃないかと思って様子を見に来たら・・・ねえ。」
「ああ、そうじゃな。入れなくなっただけじゃ。」
「はいはいそういうことにしますね。」と私は言った。メアはすでに真っ赤になって階段を駆け上がって消えていた。
全員揃って、馬車に乗ろうとしていた時に地響きが伝わってくる。
続く
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