巻き込まれ体質な私、転生させられ、記憶も封印され、それでも魔法使い(異種族ハーレム付き)として辺境で生きてます。

秋.水

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第22章 過去との再会

第22-6話 父の手紙

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 馬車に乗ろうとしていた時に地響きが伝わってくる。
「ああ、始めよったか。」モーラはそう言って私を見る。
「本当にやるとは思いませんでしたよ。」
 そこにこちらにまっすぐ飛んでくる黒い物体があった
「あ、賢者様~」私を呼びながら、ほうきに乗った女の子が飛んできた。
「どうしましたか。」
「お師匠様が町の中央の噴水の所に来て欲しいと。」
「そうですか。急ぎましょう。レイ、パム、エルフィ、ユーリは、先に行ってください。アンジーは、馬車をお願いします。」
 モーラは、すでにいなかった。
 アンジーに馬車を任せて、私達は先を急ぐ。人々は混乱し、街から出ようと動き出していた。
 しかし、人々の動きは緩慢で、誰かに指示して欲しそうにさまよっているだけだ。私達はその人達をかわすように街の中心にある噴水に向かっている。
 噴水を背にしてあの男が立ち、魔女さんがそれに対峙するように公園の端に立っている。
「おや、みなさんお揃いで到着しましたか。ここは間もなく破壊されますから逃げたほうが良いですよ。」
「何をする気ですか、魔法使いの里からは、1ヶ月の猶予をもらったはずですよ。」
「それはいつの話ですか?私には直ちにこの町を破壊するようにと連絡がありましたよ。」
「そんなバカな話はない。少なくとも人は、保護して良いと納得してくれていたはずです。」
「残念ですが、そうはならなかったみたいですよ。」
「とりあえずこの破壊を止めなさい。というかどうやってこの街を破壊する装置の起動が出来たのですか。あれは、私と彼が持つ3つの鍵で管理することにしていたはずなのに。もしかして、彼の家から手に入れたのですか。」
「ああ、この鍵ですか」その男は、手に3つの鍵を持っている。
「やはり彼の家から手に入れたのですか。」
「残念ながら見つけられませんでした。でもね、この鍵は魔法使いの里から借り受けたものですよ。」
「魔法使いの里が持っていたのですか。」
「ええ、あなたや彼がこうやって阻止することを想定していたのでしょうねえ。」
「あのー、お話の途中で申し訳ありませんが、この鍵のことですよねえ。」
「あなたが・・・それは彼の鍵ね。」
「はい、研究室で見つけました。」
「あそこの地下にはまだ何かあったのですか。おやおや、うかつでした。」
「お願いです。急いでこの振動を止めないと、街が崩壊します。」
「どうすれば良いのですか」
「噴水の外側の壁に3カ所の扉があります。そこに鍵穴があって、北の鍵穴にまず差し込んで反時計回りに回して、そこから残り2カ所の鍵穴を反時計回りに回って同じ事を繰り返します。」
「ああ、そういう仕組みなんですね。」
「困りましたね、あなたには干渉して欲しくないのですよ。だってここは、魔法使いの里のもので、住んでいる人も研究に同意の上、暮らしているのですから。そしてあなたは魔法使いの里のことに干渉するのですか?それは止められていますよねえ。」
「住民の同意の上なのですか?」
「ええ、ここで長生きの研究のモルモットになる。生活も保障する。出て行きたければもちろん自由、ただし、研究で死ぬこともあるし、研究が終了すれば生活の保障はもうしない。今まさに研究が終了したのです。だから施設も壊すことになりましたよ。まあ、生活の保障をされて、急に保障がなくなれば働いてこなかった人達は、路頭に迷いそうですけどねえ。」
「なるほど、生活の保障をすることで、骨抜きにしましたか。」
「別に働くなと言っていたわけではないですよ。単に住民達が働かなかっただけで。」
「だからといって、殺していいわけではないでしょう。」
「ここでこのまま餓死して死ぬのはつらいでしょう。だからいっそのこと死んでもらった方がお互い幸せでいられるでしょう。」
「実験の結果死ぬのと、殺されるのとでは、大きく違いますよ。それは契約違反じゃないですか。」
「確かにそうかもしれませんねえ。でも、死んだ方が幸せと感じる人のほうがきっと多いと思いますよ。」
「まったく、何を言いますか。」
「それに建物は壊しますよ。それによって死人が出てもそれはあきらめてください。」
「では、それは止めさせてもらいます。」
「あなたとは戦いたくないのですがねえ。神にも止められていますし。それにあなたは、ホムンクルスのスピードについてこられますか。」
「さあ、でもやってみないとなりませんねえ。」私はそう言うと、一応両手をボクシングスタイルに構える。その瞬間、周囲の空気が固まる。ユーリやみんなは武器に手をかけている。魔女さんは弟子の女の子を、メアはアンジーをその男からかばうように立った。
沈黙の中、地面はまだ細かく揺れている。ふっとその男が消える。消えると同時に私の前に現れて、右手を手刀にして、私の顔を突き刺そうとする。しかし、そこにはシールドがあり彼の手は私の目の前で止まる。
「ああ、シールドを張っていたのですね。」そう言うと彼はバックステップして間合いを取る。
「では、こちらから」私は指を使って彼に雷撃を放つ。しかし、雷が届く頃には彼はそこにはいない。
「魔法を打っても無理ですよ。届く前にかわせます。」
「では、これを」私は両腕をだらりと下に下げ、指の先から細い糸を繰り出し、手首を前後に振ってその糸を波立たせる。徐々に私から彼に向かって糸の波は近づいて行く。
「そんな遅い糸に引っかかるわけがない、かわせますよ。それにその技はすでに見ています。」そう言ってギリギリまで近づいた糸をかわす。
「あなたには初めて見せたはずですが。」
「ああ、あの場所に私もいましたからねえ。」そう言って笑う。
「では、こうしましょう。」私は両腕を大きく振って大きな糸の波を作り彼に襲いかからせる。
「だから無理ですよ。」そう言って彼は簡単にその糸をかわす。しかし、かわした先に見えない網があり、絡め取られて逃げられなくなって、地面に倒れる。
「そんな、これはあなたの糸ではない。」
 そう、糸の先は私の手ではなかった。パムがその糸を操っていた。
「なに、別な人ですか。相変わらず汚いですねえ。1対1ではなかったのですか。」
「最初からそんなこと言っていませんよ。早いところあなたを動けなくしないと作業の邪魔ですから。ユーリ、レイ、エルフィこれを」私は彼らが走り出したそれぞれに向かって鍵を投げる。それぞれが鍵を受け取り、噴水に走って近づき、まずレイが鍵穴に鍵を入れて回し、次にユーリが、最後にエルフィが鍵を回した。しかし、一向に振動は止まらない。むしろ少しだけ振動が大きくなった気がする。
「止まらない?」
「あはは。そうですよ。すでに鍵では止まらないのですよ。鍵で停止できるタイムリミットを超えていたんです。残念でしたねえ。」地面に倒されているのに笑い転げるその男。
「あなたわざと会話を長引かせましたね。やりますねえ。」
「こんな簡単なことに引っかかる。やはり人間はおろかですねえ。」
「そうでしたか。パム、彼の拘束を解いてください」私は、パムに言った。男は立ち上がり。
「どういうことだ。」
「あなたを拘束していても意味がないですから。できるだけ多くの人を避難させるほうに考えを切り替えるしかないでしょう」
「殺さないのですか。」
「そんなことをしても意味がないですから。消えてもらえませんか。」
「ああ、ありがとう。爆発に巻き込まれずにすむ。せいぜい頑張ってください。できればまた会いましょう。」
「会いたくないですけど。」そう私が言うと彼はそこから消えた。
「しばらくは戻ってこないじゃろうなあ。」
「避難はどうするのですか。」パムが戻って来た。
「あ?ああ、今のは、お芝居ですよ。」
「お芝居?」
「もう良いのか?」モーラが私に尋ねる。
「さすがに周辺には、いないでしょう。良いのではありませんか。」
「様子を見に戻ってくるじゃろう。」
「でしょうけど、その前に起爆装置の撤去が最優先です。」
「何を言っているの?」
「この街に来て、この噴水前で休憩していた時に気になっていたのです。水がどうやって供給されているのか。それで、この噴水を調べたのですよ。そしたら、すごい仕掛けを見つけましてねえ。この街を崩壊させる術式が組んであるんですよ。どう見ても私達に危害を加えそうな装置だったので、あらかじめ細工をしておきました。」
「あなたそれを見抜いたのかしら。さすが解析の魔法使いさんね。もしかして、その術式を無効化したのかしら。」魔女が驚いて声をかける。
「そこまでは出来なかったのです。とりあえず、鍵を回した時に微弱な地震が起きるようにだけしておいたのです。鍵はもとからあまり意味がなかったのですよ。」
「わしが真っ先に駆けつけたのは、この仕掛けを使った者を見つけて、その目の前で地震を継続させて壊れるように見せかけるつもりでいたのじゃ。」
「このことは、モーラと私しか知っていませんでしたからねえ。」
「いや、合流したら普通話すでしょうそんな重要なこと。」
「皆さんを不安がらせたくなかったですし、どこかで聞かれていたら違う手で来るかもしれなかったので。もっとも些細なことだったので言い忘れていただけですけどね。」
「そういうことでしたか。」
「では、本格的な解体作業に入りたいと思います。ユーリ、先ほどの鍵穴のそばに水を止めるバルブがありますから反時計回りに回してください。噴水の水が止まるはずです。」
 ユーリが言われたとおり、バルブを閉めると勢いよく吹き出していた水が止まり、池の中の水がゆっくりと引いていくのがわかる。
「パム、レイ、メアさん。申し訳ありませんが、それぞれの鍵穴のところに手を入れて待っていてください。私が魔法で持ち上げますので、申し訳ありませんが、それを持ち上げたままでいてください。」
 そうして出来た空間に私は滑り込む。中には、この街を制御するために術式を組み込まれた魔鉱石が水の管を中心にして円周上に敷き詰められている。
「なるほどねえ、ウンウン」私は、一つ一つの魔法陣を見ながら感動していた。
「あんた、あいつが戻ってきたわよ。急いで。」
「おや、意外に早かったですねえ。まだ解除できていませんが戻りましょうか。」
 私は、そこから這い出した。
「なるほど、良くもだましてくれましたね。」
「帰ったのではなかったのですか。」
「少し離れたところに飛んで、様子を見ていましたが、振動が止んで倒壊も始まらないので様子を見に来たのですよ。そしたら、噴水を持ち上げて、なにやらやっているではありませんか。あの振動はフェイクだったのですねえ。」そう言って彼はモーラを見る。
「でもまだ解体は終わってないようですねえ。」
「どうしてそう思いますか。」
「だって、あれからすぐに手をかけたにしてもこんな短時間で解析して解除できるような簡単な魔法陣ではないでしょう。」
「あたりです。」
「では、再度起動しましょう。」
「ダメです。させません。」
「私は、あなたにだまされて、不思議な感情に出会いました。悔しいとか恥ずかしいとかね、そして、怒りです。これが怒りですか。それ故に、神の意志ではなく私の意志であなたを殺したくなってきました。」
「いいのですか?神のお使いなんでしょう?」
「これが感情というものなのだとすれば、そして、それが育ってきているのなら。この行いもまた神の意志なのでしょう。もっともあなたを殺してしまって、神から何らかの罰が下されるかもしれませんが、かまいません。今度は1対1で戦いませんか。」
「そうですねえ、先ほどは失礼しました。作業を急ぐあまり、あなたを過大評価して接したのです。もちろん1対1をお受けしましょう。」
「はっ、なめられたものです。では・・・」
「できれば、ここの建物を壊したくないのですが、いかがですか。」
「いいかげんにしろ!・・失礼、いい加減にしてもらえませんか。これまであなたがノラリクラリと逃げを打ってきているのは、十分承知していますよ。でもね、私の怒りは、今すぐにでもあなたを殺したくてしようがないのですよ。」
「おや、そうでしたか。紳士的にありがとうございます。では、いつでもいいですよ。」私はそう言って手を上げて、挑発的にこっちにくるように手を招いてみせる。
「くっ」その言葉と共に彼は消えて私に襲いかかる。手刀が私の左頬をかすめ、右の脇腹をかすめる。私は最小限の動きでそれをかわす。
「どうしてだ。なぜかわせる。」
「私から問いかけます。どうしてど真ん中を狙ってこないのですか?殺せないのですか。」
「おまえなんか、怪我をさせれば十分だろう。」
「それが甘いのです。だからかわされる」
「なに」
「そんな甘い攻撃では何も倒せませんよ。殺すつもりであてにいったってなかなか倒れるものではないのですから。そんな甘い攻撃ばかりしていたら、魔族だって倒せませんよ。もちろん私もね」
「なんだと。」
「ほらそうやってすぐ怒りにまかせる。そうすると大振りになって隙が出来るんですよ。」
私は、手に握った空気玉を相手のそばに放つ。
「そんなもの」そう言ってそれをかわす。しかし、その周囲に放っておいた無数の空気玉に触れて腕が焦げる。
「なるほど、冷静にならなければならないか。」
「本当に弱い者としか戦ってこなかったんですねえ。」私は、彼の攻撃をかわしながら、今度は雷を指先にためて、その指で彼の攻撃を受ける。
「う」電撃により体がけいれんしている。
「あなた、痛覚を遮断していますね。」
「それがどうした。当然だろう。」
「逆ですよ。痛みを知らずに戦っては、恐怖は克服できないのです。単なる無謀な攻撃になるのですよ。だから先を読まないで無茶な攻撃ばかりするんですねえ。」
「はあ、意味がわからない。」
「攻撃されて当たったら痛いでしょう?腕が折れたら次の攻撃が出来ないでしょう?だから当たらないように避けて相手に自分の攻撃を当てようとする。次の相手の攻撃を読んでそれを逆手に取る。そういうことが出来るようになる。あなたはそれをしていない。だから単純な攻撃をかわされて反撃されるのですよ。こんな風にね。」私は、その男の懐に入り、手のひらを胸に当てて魔法を打つ。
「がっ」彼は、弾き飛ばされ、起き上がったところを私の魔法で焼かれる。しかし、彼は、それでも攻撃の手を休めようとしない。次々と襲いかかってくる。どうやら魔力量も尽きかけているのか魔法攻撃をしてこない。私も仕方なくかわして脇に攻撃を当ててその男を吹き飛ばした。
「私はまだやれますよ。」その男は立ち上がる。
体はケロイド、服はボロボロ。その状態でもなお立ち上がり戦う姿勢をみせるその男。
「私はもうやりたくないですね。これ以上は私が一方的になぶって遊んでいるようにしか見えません。エルフィ申し訳ないですが彼に回復魔法を」
 エルフィは、近づいて彼に魔法をかける。彼はその姿が見る間に直っていく。服はボロボロのままだが。
「わかりました。確かにあなたは、この世界の脅威だ。神が扱いかねるほどのね。私は、ここで降参します。死ぬつもりでいましたけど、残念だけれど、まだ死ねないようです。ああ、私はホムンクルスだから「壊れる」ですか。だが、壊れるわけには、いかないようです。神はまだ必要としてくれているようです。残念ですがここまでです。さようならまた会いましょう。」
 そうして、彼は消えた。私は、再び噴水を持ち上げ、3人に持っていてもらい、先ほどやっていた装置の解除を続行する。先ほどは中の魔法陣に興味津々だったが、今度は淡々とその魔法陣の解除をしていく。無言でそこから這い出して、元に戻し、ユーリがバルブを開くと噴水には勢いよく水が吹き出し始めた。
「この街をどうしますかねえ。」私は、魔女さんとその弟子の女の子に声をかける。
「私は一度里に行ってくるわ。魔法使いの里の考えをちゃんと聞いて、1ヶ月の猶予の間に何をすべきか考えることにする。たとえ、この街が壊されなかったとしても、魔法使いの里が援助をやめると言うのであれば何かしなければならないから。」
 そう言って、魔女さんは出かけていった。
「ひとつ忘れていることがあります。」
 まるで、目の中にスケジューラでもあるのか。タスクを確認するようにメアが言った。
「手紙にはもう一度エリクソンさんに会うようにと書かれていました。」
 私はメアと共にエリクソンさんのところに再び会いに行った。
「ああ、あんたか。地震は大丈夫だったのかい?」少し顔色が悪そうだった。
「ええ、大丈夫でしたよ。実は、あの後工房を見つけました。そして、手紙に・・・」
「私にもう一度会えと書いてあったのだろう。」
「そうです。」
「入ってくれ。手紙を渡そう。」
「わかりました。」
 エリクソンさんの居間のテーブルに私達は座った。
 エリクソンさんはため息をついて椅子に座った。
「手紙を渡す前にひとつ聞きたい。」
「なんでしょうか。」
「あなたは、メアジストをどうするつもりですか。」
「どうするつもりと言われましても、これからも家族として一緒に生活していきます。メアさんもそのつもりですよね。」
「はい、そのつもりです。私はこの方と生涯を共にするつもりです。」
「それは、どちらかが死ぬまではということですか。」
「もちろん、どちらかが死ぬまでは、ずっと一緒にいたいと思います。」
「はい。」
「そうですか。彼は奥さんと離婚しています。どちらが悪いわけでもなく。いや、事実だけを見れば奥さんの方が悪いのだが、そもそもあいつがパープルさんを理解しなかったから。いや、そういうことはどうでも良いのです。言いたいのは、家族でさえ絶対はないと。それでもなお死ぬまでと言い切れますか。」
「残念ながらそれは言えないと思います。ですが気持ちがすれ違ったならそれを止めるすべはありません。ですからその時までは、愛し続けたいと思います。」
「私も同じです。なぜなら私の周りには魅力的な人達が一杯いますので。でも、一生そばにいたいと今は思っています。」
「そうですか。お父様については、死んだと思われますか。」
「「いいえ、」」二人同時にそう言った。
「はは、仲がよろしいですねえ。わかりました。お預かりしているものをお渡ししましょう。」
 そう言ってエリクソンは、手紙を持ってくる。そしてメアに渡した。
「さっきの質問は私個人の質問でして、彼の意図ではありませんよ。」
 メアは、読み終わった後私に手渡した。私も読み始める。

 拝啓
 この手紙を読んでいるということは、メアジストの予備のパーツも予備脳も手に入っているのだと思います。ここまで探求する意志のある方なら、これから私が書いていることについて、少しばかり思い至っているのではないかと思います。
 私は、娘を連れて旅をした時に、この世界に初めて来た時の違和感をさらに感じることになりました。そして、その違和感についてある仮説を立てました。そして、検証しに行こうと考えるようになりました。しかし、この旅に娘は連れてはいけない。私に対して従順なメアは、感情豊かになりかけていて、私は娘に抱く感情を再び思い出してしまったのです。実際、娘の脳と心臓は確実に彼女の中にあるのです。だから、危険なことにメアを巻き込んで、娘を殺してはいけない、たぶんいつか娘が表に現れるのだろう。その時までは、壊れないで欲しい。そう願うようになってきてしまったのです。
 そして、私はメアをビギナギルの魔法使いの所に預けて、この世界の違和感を検証するために旅立ちました。時々は、この街に戻って来ていたのですが、やっと真実にたどり着きそうな所までこぎつけたのです。
 この手紙は、メアとそのあるじに私が死んでいないことを伝えるためとこの世界は虚構の中にあるということをこの世界を信じてはいけないことを知っていて欲しいと思ったからです。メアジストのことよろしくお願いいたします。
                                          敬具
ブリュネー・アスターテ


私とメアは、手紙を読み終えました。
「この手紙確かに受け取りました。」
 見せて欲しそうなエリクソンさんにその手紙を見せる。
「預かっていてくれて、ありがとうございます。」メアも礼を言った。
「しかし、この手紙では、死んでいないと証明できる訳はないですよね。」
 エリクソンは首をかしげる
「この手紙がある術式なのでしょう。死んだら文面が変わるような。」
「そんな術式が付与されているのですか。」
「たぶんそうなのだと思います。」私は、その手紙のサインの部分を示す。
「確かに何かありますが、彼は生体認証に造詣が深かったですが、そうは、言ってもどこにいるかもしれないあいつの生死などわかるものでもないですよ。ああ、遠隔地の生体反応を探る実験をしていたからもしかしたらそれの改変なのかもしれないですね。」
「そんなことを研究していたのですか」
「街にいる人達を監視するためだったような気がしますね。よく憶えていませんけど。とりあえず、私と彼の約束はこれでもうおしまいです。肩の荷が下りました。」
「この街にはまだあなたを必要とされている人達がいます。まだまだ頑張らなければいけないのではありませんか?」
「そうなんですよねえ。これから用事もありますのでこの辺でお帰りいただけませんか?」
「ああ失礼しました。それではまた。」
 そうして私とメアは、エリクソンさんの家を出て、宿に戻った。
「食事はどうしますか。」メアが私に尋ねる。
「エルミラさんとサフィーネさんを誘って食事にしましょうか。」
 しかし、サフィーネは、すでに食事を用意していて断られ、エルミラは、地震が怖くて家から出てこなくなってしまった。
「あの子大丈夫でしょうか。」メアさんが心配している。
「ついていてあげますか?」
「いいえ、どうも私も怖がられているようなので、落ち着くまで少し離れておきます。」
 少し寂しそうにメアさんが言った。
 私達は、違う居酒屋に行き、食事を取り風呂に入りに行き、そして寝た。会話が進まなかったのは、モーラとアンジーが上の空だったからと思いたいです。

 翌日、里から戻ってきた魔女さんは、私達にこう言った。
「1ヶ月の猶予はもらいましたが、食料や物資の供給は必要最低限になったのよ。それを住人に説明しなければならないし、これからどうするのか聞かなければならないわ。」
 そしてさらに続けました。
「今回のこの地震に不安を持って避難したい人達も出てくるかもしれませんね。しかし、働けないかもしれない。」
「こればかりは、どうにもなりませんよ。この街から出たくないのはまだしも、働く意欲の無い者などは、餓死してもらうしかありません。」と、私が冷たく言った。
「そんな。」
「いや、契約なのでしょう。緩慢なる死を迎えていただくしかありませんねえ。」
「働く意欲がある者はどうしたらよいのでしょう。」若い魔法使いが不安そうだ。
「この街に居続けるのなら難しいでしょうが、好奇の目を向けられても頑張れるならどこでもよさそうじゃないですか。」
「確かにそうではあるが。」
「とりあえず話をしてみないことにはどうにもなりません。」
「残念ですがここから先はこの街と魔法使いの里との話し合いになるのでしょう。私としては、あなたたちを除けば、この街に住む2人の人を除いて興味がありませんね。」
「そうなのですか。その2人とは、エルミラとトミーですか」
「はい、彼にはお世話になりましたし、彼女はメアの遠い孫です。力になってやりたいとは思います。でも、この街を離れたくないならその意志は尊重したいですね。」
「わかりました。しばらくはこちらにいらっしゃるのでしょうか。」
「エルミラが落ち着ついて話が出来るようになるまでは、いるつもりですよ。」
 そうして、私達はその場を去った。まあ、宿に戻っただけなんですが。
「さて、わしとしては、おぬしがどうするつもりか聞きたいが。」
「そうね、あんたの気持ちを聞きたいわ」
「この街の人については、その意志に応じて手助けをしたいです。まあ、働く意志があるなら働き場所を探しましょう。ファーンやベリアルやビギナギルに相談する必要がありますけれど。もっとも、うちの地方のような辺境での仕事になじむのかは別ですが。あと、心のケアとかは魔女さんとそのお弟子さんにお願いするしかないでしょう。」
「街の人も一部は連れて行くことになるのかのう。」
「それについてはなんとも、他の街の生活経験があるUターン組なら可能性はありますが、街から出たことのない人達は難しいでしょう。」
 私は、メアを見る。悲しそうにうなずく。
「おぬしの考えはわかった。ファーンに連れて帰ったとして上手く生きていけるかのう」
「どうですかアンジー」
「そうね、エルフや獣人が共存できているし、長命な人であっても仲良くしようとしていく意志があればあの町ならいけそうだけど。」
「あの町は不思議です。最初は僕達のようなよそ者を最初は受け入れがたく思っていたのですが、簡単に受け入れてくれました。」
「そのあとも~私やレイの仲間も~すぐ受け入れてくれました~。だから大丈夫かと思いますよ~」
「前回は、なし崩しだったので、今度は、事前に相談に乗ってもらいましょう。」
「ああそうじゃな。」

 続く


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