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第一章「『魔法少女☆マジカラ』編」
第5話(Aパート)
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…唐突ではあるが、魔法少女や怪人のはびこるこの町には知る人ぞ知る隠れた名店と言える喫茶店がひっそりと潜んでいた
この街の裏路地にひっそりとそれは建っている
外見は古ぼけた喫茶店そのもので人が言っちゃ悪いがとても人が立ち入りそうな雰囲気ではない、如何にも怪しい一風変わった店であった
そんな喫茶店の中に居るのはたった一人のみ、見覚えのある女の子だ
「……ふむ…」
彼女の名前は【緑野のぞみ】、この喫茶店の常連である
何でもこの店の店長とは開店した時からの古い付き合いの馴染みであるとか何とか
そんな少女ことのぞみは、一人店内で静かに本を読んでいた
片手には本を持ち、もう片方には紅茶の入ったティーカップとお洒落な姿
夢中で好きな本をじっと読み耽っては茶を飲んでまた本に没頭する、本人からすればこれ程までに充実した時間は無いのではないだろうか
「…ふぅっ、この本も面白かったです」
のぞみは本を読み終えるとはっと息を吐いて、紅茶を置いてから本を閉じる
いかにも満足気な表情で、それはもう幸せそうに
「見た事の無い作者の人だと思えば、読んでみれば結構奥が深かったです
この店は面白い本もあって…いつ何度来ても飽きないですっ」
本を思いっきり抱きしめながらそう満面の笑みで言うのぞみ
のぞみ以外に人は居ないとはいえ、余程この店が気に入っているのだろう
「さて、今日は休日ですしこの際たっぷりと満喫しましょう…」
「はははっ…そう言って貰えるとは、私も店長明利に尽きるね」
「あ、店長っ!!」
のぞみが店の隅にある大きな本棚に手を差し掛けると、後ろから真っ白な髭を生やした如何にもダンディーなおじさんが立っていた
どうやらこの人が、この店のオーナーの様だ
「最近此処に行けなくてすいません、少し忙しくてて…」
「構わないさ、どうせ寂れた店だし学校の方を優先すれば良いよ」
頭を下げるのぞみに店長はにこやかな笑顔でそっと宥める
「そんな事無いですよ…私にとってはこの喫茶店が一番ですっ!!」
「それはそれは、ありがとう」
確かにこの喫茶店は寂れている
と言っても流石に年中ずっと客が来ない訳では無い、実は常連客もそれなりに居る上に珍しい本が置いてあるとコアなファンも意外と居るのである
つまり言ってしまえば隠れた名店、人気もそれなりにあるのだ
「もっと自信を持ってくださいよ、この店は良い店なんですから!!
いっそ宣伝でもすれば客も増えますよ…そうだ私も手伝います!!」
少し空回り気味にのぞみが店長に詰め寄ってかかる、が何やら店長は頬を軽く掻きながら気不味そうにしていた
「のぞみちゃん、悪いんだけど…私はひっそりと店をやっていきたいんだ
子供の頃からこうやってのんびりとやっていってってね…悪いんだけどその提案ばかりは少しやめておくよ」
「うぅ…残念です」
わざとらしくしょんぼりするのぞみ、それに対して何か無いかなと店長が考えハッと思い出し口にする
「そうだ、丁度この前新メニューを考えて試作にと作っ見たんだ、これなら宣伝までとはいかないけど口コミにはなるかもしれないね
良かったら食べて、感想を聞かせてくれないかい?」
「ッよ、喜んで!!」
のぞみはすぐ様、まるで子供の様に勢い良くそれに食いついていく
「それは良かった、それじゃあ持ってくるから少し待っていてね」
そう言って店長はのぞみに背を向けてゆっくりとキッチンへと歩いて行った
「…本当に、この店が一番好きなんですけどね」
その一方でのぞみはほんの一瞬だけ悲しそうな表情を浮かべた後、気を取り直して自分が座っていた場所へと戻っていく
「まぁ今日は折角の休日ですし悲しむのはやめましょうっ!!
それにしても…あの二人が居ないとなると思っていた以上に静かですね、いやまぁコッチの方が私的には落ち着いて良いんですけども」
そうぶつくさと言いながらのぞみは残ったお茶を口に含み飲み干す
「…それにしても本当にこんなゆっくりした時間も久々ですねぇ、いつもはあの二人が居るので静かだなんて縁の遠いものと思ってましたが」
流石に二人に失礼なんじゃないかと思えば良いのか明らかに残当であるとでも言えば良いのか、この場合どちらが正しいんだろうか
まぁそれは一先ず置いておいて、そんな静かな時間は続いていく
いつものと違ってそう…落ち着いた時間だった
「はぁ、いっそもうずっとこのまま…
このままこんな静かな時間が延々と続いてくれれば、それでも良いんですけどねぇ…」
「おいーっす、のぞみちゃん知らね…ってやっぱり居たぁッ!!」
「ゴメンのぞみ…私だけじゃこの馬鹿止めらんなかった」
「失礼、します」
馬鹿トリオが頭数揃えて此処に来るまでは
「…でしょうね分かってましたよはい、分かってましたよ」
この時点でのぞみがもう半泣きにすらなってる、だが残念現実は非情である
ー【第5話『休日?喫茶店とアドバイス』】ー
「というかそもそも何で此処が分かったんですか、私今の今までずっとこの喫茶店の事なんて一言も言ってない筈なんですけど」
というのもそもそものぞみは雰囲気ブレイカーを防ぐ為にも三人はおろかほかの誰にも、この店の事は言っていなかったのである
ならば何故この場所にのぞみが居るとバレたのか?その答えは明白である
「いや、アイリスに魔力探知だとかがどうので探して貰って、そのままゆめみちゃんとかさみちゃん誘って直行しただけだけど」
(…今度アイリスさんにはキッチリ話をつけておきましょうかね)
さらばアイリス、最近酷い扱いで悪いけど君の雄姿は一週間位は忘れない
「それで…結局何しに来たんですか?」
「いやただ暇だから来ただけだけども」
「…あぁうん、そうですか」
「あぁッ!!のぞみが遂に死んだ魚の様な目に!?」
四面楚歌の状況に遂にかんねんしたのか、もうのぞみの目の光は消滅寸前
「何があるかなーっと…ってどしたんのぞみちゃん?」
そうとも知らずに、かないはただ空気読まないまま店内を物色していた
「かない…アンタそういうとこよ?」
「何がッ!?」
どうやら反応からするに本当に欠片の悪気すら無くやっていた様である
皆さん、コレがヒーローの素の姿なのです
「おやおや随分騒がしいと思ったら、随分と可愛らしい嬢さんですね
のぞみちゃんの友達かい?」
と、そんな所に奥から店長がひょっこりと顔を出す
手には一口サイズのパンやら菓子やらが乗ったお盆が乗っかっており、店長はそれを軽々と器用に運んで来ている
「このじーちゃん誰よ、のぞみちゃんの知り合い?」
「つくづく初対面で失礼ねアンタ…」
「この喫茶店の店長ですよ、昔からお世話になってる人ですっ!!」
余りにも目に余るかないの態度にのぞみが半ば激昴しながらも口にする、が当の本人はさっきの通り悪びれも全くと言ってしない
「どうもご来店有難う御座います」
すると横からお盆を持った店長が近づいてきて、かない達に声をかけた
「おっと失礼、私とした事がてっきり紹介を忘れていました
私はこの喫茶店の店長を務める者です、そこに居るのぞみさんとはそれなりに長い付き合いをさせて貰っているんですよ」
「あ、どうも…私は青川ゆめみです」
「…わたしあ、かない」
二回り以上に小さい少女にも礼儀正しい姿勢にゆめみは少し腰を低くしながらも名前を告げ、それに続いてかさみもボソリと口にする
が、肝心のかない自身は相も変わらず
「おっすオラ赤井かない、おっさんダンディっすね!!」
「オッサンていい加減にしろよお前…!!」
のぞみに続きゆめみの堪忍袋も遂に限界を迎えようとしたその時
店長が、二人の横で口角ほんの少し上げて笑いだした
「ははは、お美しいお嬢さん方にそう言って貰えるとは、こんな老いぼれになっても店を続けたかいがあるものです…
はて、お嬢さんがたはのぞみちゃんのお友達かな?」
そして小説に出てくるかの様なダンディーなセリフ、普通ならドン引きなのだがこの老人に至っては何故かめっちゃマッチしてる、凄くイケメンな感じ
「お、おおぅ…お嬢さんって初めて言われた、ロマンティック…」
「あのかないが頬を赤らめた…!?スゲェ!!」
(店長、結構誑しというかこういう事言う癖が昔からあるんですよねー…)
それを言われたかないの表情はさっきの悪ガキムーヴとは打って変わって、まるで恋をした思春期の美少女乙女そのもの
ゆめみはその姿に驚きながらも、かないの気持ち悪さにドン引きしている
「ゴホンッ!!店長、それよりも何か持ってきた物があるんじゃないんですか?」
一方ののぞみは、そんな店長に何とも言えない視線を投げかけていた
「あぁゴメン悪いね、そっちのけで話に夢中になるだったよ」
「そういえばその手に持ってる物…もしかしてお菓子!?」
菓子の匂いに飛びつきかかるかの様に顔を突きつけるかない、そしてそれに対ししつこい位に何度も謝り倒すゆめみ
「すいません、この馬鹿が本当に失礼で…」
「はっはっはいやいやこれ位元気な方が私も見ていて楽しいですよ
コレは試作のお菓子とパンですよ、そうだ皆さん良かったら食べて感想を教えて頂けませんか?出来れば商品の名前も考えて欲しいのですが」
店長は良かったらと誘う様にそう言いながらもさり気無く試作の菓子とパンを四人分の皿にそれぞれ平等に分けながら、テーブルに紅茶を注いで慣れた手つきで手際良く準備していく、これは色んな意味で卑怯だ
「お菓子、パン!!」
「OKかない一旦ステイ、しかし結構色々あるわね…」
ゆめみはかないを制止したままゆっくりと顔を覗かせ、試作品を見てみる
試作品はゆめみの言う通り数多く取り揃えてありお菓子は五種類程で、パンに至っては菓子パン含めてと言えど十種類近くもの数のパンがある
「店長…これ本当に全部新作なんですか?」
「いやぁこう歳をとってしまうとどうも暇な時間が多くなってしまってね、実はかなり前から考えて作っていたんだよ」
とは言え合計で十五種類もの新作、しかもどれも美味しそうなものばかり
これだけあれば宣伝になるには充分過ぎるだろう
それにしたって全部新商品にするにはまぁ、どう考えても多過ぎるのだが
「しかしなにぶん作りすぎて量が多くなってしまってね、流石に全部商品にするのにはは少し無理があったんですよ」
「成程、それで宣伝ですか…」
「そこでのぞみちゃんに選別って意味も込めて、味見ってワケね!!」
「キメ顔してるとこ悪いけどかない、ヨダレ垂れてるから」
かないは真剣な表情しながらも、涎を口からだらしなく垂れ流しながらじっと皿の上のお菓子から目を離さず釘付けになっている
「という訳で皆さんも、試食してくれると有難いのですが」
「承った」
息つく暇すら無く即答、お菓子への執着心が物凄い
「…何でも良いわよもう、ツッコむ気力も無いし」
「ま、まぁまぁ…折角ですし楽しみましょう!!」
「そうそう、もう準備されてるし勿体無いしねッ!!」
「「…………」」
迷惑をかけられた筈ののぞみがなんかもう宥めている方へと回り逆に迷惑をかけている筈のかないが図々しいままって、もうコレ訳分かんねえな
「…いただきます」
「あっ、かさみちゃん!?」
と、そんな事やってる間にもかさみが勝手にパンを一つ口にした
「ちょっ勝手に食べちゃ駄目だよ!?」
「お前が言うな」
現在最もかないには絶対に言われたくない言葉だ、まぁだがどの道かさみにそれを言うのは遅過ぎるのだが
かさみの頬は既に手に持ったパンでいっぱいの様だ
「………おいしい」
「よっしゃ私も食べる!!」
何がよっしゃなのかは正直何一つ分からないが、かさみが食べたのを再確認した途端にタガが外れた様に同じ種類のパンを手に取って頬張った
いや、タガは最初から外れてるっぽいけども
「皆さんもどうぞ、遠慮せずに召し上がって下さい」
かないが食べた後に店長がゆめみとのぞみに腰を低くしながら言う
「はぁ、本当に全く…まぁ折角だし私達も頂きましょう」
「そうですね、食べましょう!!」
そして二人もそれに続いてそれぞれパンや菓子を口に運び始めた
「おおマジで結構美味いよコレぇ!!」
「はむ…はむっ……」
そしてとっく食べている呑気な二人も、味の感想なんかとうに忘れたまま美味しそうに菓子とパンと紅茶にがっついてる
それを後ろで幸せに眺めている店長もご満悦のご様子
そんなこんなで、今日も街は平和です
「はいストーップまだ終わらないよー、半分も終わってないよー」
まぁ、まだ終わらないんだけどね
「…どしたのかない、遂に頭が逝かれた?」
「違うわい!!そうじゃなくてその…第三の壁というか?」
「かないさん今すぐ病院行きましょう、先ずは頭の検査を」
「だから違うっつってんだろーが!!」
とそんなメッタメタな言葉をコチラ側に放ちつつ、結局また親友達とやらにボロクソに言われまくっているかないなのであった
まぁ、それは兎も角本来の目的に戻ろう
「…っとと、危うくすっかり忘れるところでした…それで、そういう訳で皆さんそのパンや菓子の感想を聞きたいんですが宜しいでしょうか?」
「あぁうん良いわよ、というかそういう約束だったしね」
「確か名前も考えるんだったっけ?」
「うん、なまえとかんそう…のはず」
そう、そもそもこのパンと菓子は試食として感想を伝え、商品出来るのであれば商品名も一応考えて欲しいとの話だった筈
まぁつまるところを言えば、このままではただ営業の邪魔をした挙句に勝手にタダ食いしてしまったって事になってしまうのだ
「しかし全部美味しかったですし、選ぶとなると…」
顎に手を当てて深く悩み始めるのぞみ
「うーん、それじゃあこうしよう」
お嬢さん達が特に気に入ったものを一つだけ選んでいって、それの感想ついでに皆で名前を考えるというのはどうだい?」
「あ、それ良いかも!!」
「まぁ確かに標品化するのを絞り込むなら、そっちのが良いかもね」
「そうですね、でも…どれを選べば良いんでしょうか」
という事で感想の出し方が決まったのだが…しかし結局迷ってしまうのは変わりが無く、またものぞみは深く黙りこんでしまった
「はいはいはーい、私最初っ!!」
と、ここでかないが大きく手を上げて名乗りを挙げる
「そんな、ゲームやレクリエーションじゃないんだから…ちゃんとした食べ物の味についての感想を言うのよ?」
「小学生じゃないんだからそれ位分かるわい!!で、私が選ぶのはコレよっ!!」
かないが選んだのは意外にも、お洒落な感じの黄色い蒸しパンだった
「意外ね、アンタはもうちょっとガッツリ系かと思ったわ」
「いつもはそうなんだけどね、この甘さが癖になってさぁ~…」
「分かります、私もこういう甘さとか好きです!!」
「むぐ、むぐ…」
他の三人からもかなりの高評価な様子のパン、人気の秘密はその甘さの様だ
「おっと…それは栗を使った菓子パンでね、自然な甘さに仕上げつつ蒸しパンの味を殺さない様に工夫した自信作なんですよ」
店長が丁寧に四人に説明する、聞く限り女子受けしそうな商品だ
「栗かー、これなら女子とかに人気そうじゃね?」
「そうねぇ…見た目も良いしイ○スタとかにも良いかも」
コラ青の子、ガチの実名をいきなり出すんじゃあない
「と、なるとこれは商品化に…」
「決定だね!!」
「私も良いと思いますっ」
「…良いと、思う」
てなワケで結局この栗を使った蒸しパンは四人全員の満場一致で、商品化にするうちの一つに早速決まったのであった
だがしかしまだ決めていない事もある
「となると名称をどうするかですけども…」
「客を呼び込むとなると、キャッチーかつ気に入られる名前よね」
(別に呼び込まなくても今のままで充分なんだけどなぁ)
という店長の心の声もとい主張を何ら理解する事も無く、四バカは決まった菓子パンの名称に頭を悩ませているのだった
と、その時にかないが一人立ち上がった
「ふっふーん、それなんだけど…実は良い名前があるんだよねー」
「あ?何、どうせ碌な名前じゃ無いんでしょ?アンタの事だから商品にする気にもならなくなる程のひっどいネーミングなんでしょうね」
「貴様は一体私を何だと思っているのか」
少なくともこの場で一番ふざけそうな名前にする奴ではある
「ちゃんと考えたっつーの、ほれ」
「どっから出したんですかちっちゃいボード」
いかにも最近割とスーパーで売ってる様な安っぽい子供用のお絵描きボードを、かないは全員に見える様に堂々と懐から机に立てて出した
何故そんなものを持ってきたのかは不明だが
さて、では一体どんな悪ふざけの篭ったネーミングにしたのか
だが、どうせいつも通りニチアサはとても流せないレベルで下品かもっと酷い名前なんだろうな…と思ってみれば意外や意外
ボードに書いてあった名前は『マロン風味、やわらか~いしっとりパン』と、案外まともかつ割とコンビニにありそうで良さそうな名前であった
そんなネーミングを見てゆめみは一言
「…頭でも打った?」
「喧嘩売ってんのかテメェ」
日頃の行いからすれば、そりゃそうである
「いや結構良い名称ですよ?普通にありそうですし、分かりやすいし…
でもその何というか…意外?」
「もっと、ふざけないの?」
「コレでも割と真面目に考えたんですがまた集中砲火ですかそうですか」
第二話の序盤のアレを引き摺りつつ愕然とするかない
「アンタの事だからもっとアレなのかと…その、屁だとか何だのとか」
「食べ物に何て名前付けてんだお前」
「ドン引くな!!普段のアンタならこれ位言うでしょうが!!」
「少なくとも今ソレ考えて発言したのは間違いなくお前だよ!!」
まぁ、ゆめみの発言とかは兎も角割とそこそこのネーミングではあり、普通に商品として並べるのであれば充分なものではあるのだが
「ま、まぁでも名前は良いですし…コレで良いですよね、ねっ?」
のぞみは何とか場の収集つけようと取り敢えず名称をかないのに決めた
「…うーんでも、ちょっと長いかな…短くは出来ないかい?」
と、そこで店長から横から話を挟み頼み込む
まぁコンビニなら良いのだが普通の喫茶店で売るには少し長い名称ではある、もう少し呼びやすくした方が客も恥ずかしがらずに頼めるだろう
「ふっふーん、そこは問題ナッシング!!そう言うと思って一応前もって呼びやすい略称も決めてあるのだっ!!」
抜かりなし、と言わんばかりにボード手に取って何かを書き足すかない
「うーん、何か腑に落ちないわね…」
「真面目にやってるのは良い事ですし…」
「かない、まじめ?」
そしてかないのに案外真面目な様子に動揺し続ける面々
「っしゃ出来た、これよっ!!」
かないが見せたボードに書き足されたものとは
『マロいしり』だった
「やっぱりじゃねぇかァァアアアアーーーーッッ!!!!」
「ダゴバッッ!!!?」
念の為に解説しとくと「マロン風味、やわらか~いしっとりパン」である
かないは店の奥まで蹴っ飛ばされ数多くの本が並ぶ本棚へと激突、そのままドサドサと雪崩れ落ちた数冊の本の下敷きになってしまった
「あいったたた…何も蹴飛ばさなくても、あーあぁ本が…」
かないは本を掻き分けながら起き上がった
「ち、ちょっとゆめみさん!!流石に蹴るのは…!!」
「あっやば…ついカッとなってやり過ぎたわね」
「店の中でだと本が落ちたりするので、せめて店の外とかで」
「あ、そっちの心配なのね…」
流石ド天然真っ黒少女ことのぞみ、ゆめみの事こそ止めようとするもあくまで本の事が心配と念押しさえしてしまう始末
放置されるかないには堪らないのである、残当だけど
「はっはっは…まぁ、流石に私もそれはちょっと店的に…ね?」
「ないと…思う」
これには大人しい筈の店長とかさみも、当然ではあるが少し引いている
「にしても全く、今日は珍しくと思ってみれば結局コイツ本当に碌な事しないわね…いっそここで懲らしめとこうかしら?」
(不味い…このままだとマジで殺られる!!いやまぁこれは流石に私の自業自得っちゃあ自業自得なんだけども…)
まーこれには悪いと思っていたのかかないにも自覚があったようである、もっとも既にやってしまた後ではもう遅いのだが
「さーて、じゃあちょっと痛い目を見て貰うわよ…」
もう見てるとは思っても敢えてこの場の全員は誰も口を出さぬまま、つか誰も止めないままかないへと向かうゆめみを素通りさせてる
(どうすれば…っとそうだ、さっき落ちてきたあの本が!!)
かないは藁にも縋る思いで、掻き分けた本のうちの一冊を拾いあげる
「おーっとと、そういえばさ!!ついさっき本棚から落ちた本の中にカバーが付いたえらくうっすい本を見つけたんだけどさぁ!!」
が、肝心なその本は異様に薄くペラッペラかつ表面積がかなり広い、漫画や絵本というにも明らかにおかしいものであった
「…ってアレ、本当に一体何の本だコレ?」
拾った本に、何故かかない自身がいの一番に動揺した
「!?」
かないの一言に、店長がほんの少しだけピクリと反応する
「だっからアンタ店の物をコソ泥みたく弄り回すんじゃないの!!」
「まぁまぁちょっと聞いてよ、それがこの本なんだけどさぁ」
「何勝手に持ってきてんの!?」
ここまで来るといよいよ余裕で店側が追い出しても良い位には失礼な行動、だが肝心の店長は何故か冷や汗を垂らし動かないままずっと黙っている
ひょっとするとコレは何か不味いものなのだろうか?
「何でしょう?絵本よりも薄いですし…私も見た事が無いです」
「常連ののぞみちゃんすら見た事無いって、何かきな臭いなぁ…」
不思議そうに見てみるのぞみとそれを取り巻く様に除く少女達、そして自分だけちょっと置いてけぼりで混ざりそうにするゆめみ
「…中身は見たの?」
「いんやまだ読んでないよ、てかなーんだゆめみちゃん何だかんだ私に言ってきて結局この本の事気になるんじゃーん!!」
「ち…違っ、ただ私はその本の内容が気になっただけで…」
慌てふためくゆめみにそれに付け込んでからかい始めるゆめみ
「…でも、どうしましょうコレ」
しかしながら子の得体の知れない本、正体が一体どんなものなのかが分からない以上迂闊に読むのも躊躇ってしまう事だろう
「誰か読んでみる…とか?」
「正体不明の怪しい本なんて、誰も読みたくないわよ」
何せ魔法少女や怪人が世の中に蔓延る世界なのだ、ネクロノ何とかみたいな危険な本等があっても十分におかしくないのである
下手をしたらこれが怪人だという事だってありえる
「でも、読まなきゃ…わからない」
「おーっとかさみちゃんその怪しい本絶対に読むなよ、絶対だぞ?」
「読むのはかさみ以外ね、安全性を考えて」
だが魔法少女ならばもしかしたらある程度なら何とかあるかも知れない
うん多分、きっと、メイビー
「よしかない、逝きなさい」
「何で!?」
ここで突如かないに向けられた殺人キラーパス
「アンタなら多分大丈夫でしょ、店に迷惑をかけた分頑張りなさいよ」
「その言葉に何処も安心するところが無いよねそれ」
「…かないさん、宜しく」
「相変わらず私を四面楚歌にすんのいい加減やめよう!?」
満面に笑みでグッと親指を突き出すゆめみと申し訳無い顔しながらさり気なくかないから離れるのぞみ、そして本を持って絶望するかない
「かない、がんばれ」
「ぐぬぬぬぬぅッ……!!
だぁーっやりゃあ良いんだろこの野郎、そいやぁ!!」
(チョロい)
そしてかさみによるトドメで遂にその本の中身を開いた
かない以外には見えない角度で開かれたその本には、一体何が隠されているのだろうか
「…………ッ!!
…………あ、あぁ…うん、まぁその…うん」
その本を見たかないの表情は、何とも言えないものだった
苦笑いなのか引いてるのかドンマイという顔なのかというとても微妙な顔だ、いやかないがここまでの反応をする程の内容なのは分かるが
それがどのようなものなのかは読んでみないと分からないだろう
「ど、どうしたのかない!?まさか怪人か何かの洗脳とか…」
「いや違う違う!!そうじゃなくて、えーとその…」
何故か歯切れの悪いかない、目が物凄く泳いでいる
「…何か、かくしてる?」
と、ここでかさみが妙に鋭くかないの変な様子を指摘する
「それに何かあるのね?見せなさい!!」
「わぁあダメダメ、こればっかりは流石に駄目だってマジで!!」
ゆめみが強引に奪って中身を見ようとするがかないがそれを必死で阻止
そしてその揉みくちゃで遂に本が手から零れ落ち、のぞみの目の前に転がっていった
「のぞみ、それ拾って!!」
「ちょっ駄目だってば、のぞみちゃん返して!!」
「…………」
かないの必死の抵抗も虚しくのぞみは目前に落ちた本を手に取り物凄く読みたそうな目でソレを見つめる、具体的にはこの前の暴走の時みたいな
「のぞみ、読むの?」
そして、かさみの言葉と同時に一大決心し本を開いた
「……ッ!!」
その本の内容とは…
ぶっちゃけると、【ピンクの薄い本】でした
「」
中身をほんの1ページだけ適当に開いて見ただけなのにのぞみは一瞬にして言葉を失い、今さっきまで猛獣の様だった目から光を無くす
「あーあ…」
「へ?何、どうしたののぞみ!?」
あらかじめ内容を知っていたかないは手で顔を覆い現実逃避、一方のゆめみは何が何だかサッパリちんぷんかんぷんなのであった
「ななななななっ何ですかコレ、なんなんですかコレェッ!!!?」
「落ち着いてのぞみちゃん、今君バイブレーションみたいになってるよ」
勿論のことのぞみは動揺を隠せないどころかもんの凄い顔してる、多分挿絵にしちゃ絶対にいけないレベルどぎついヤツです
「何でこんなのあるんですか!!何でこんなのあるんですか!!」
「ちょっそんな本振り回さないで中身見えちゃう見えちゃうって!?」
「一体どんな本だったのよ…」
もう発言一つ一つのボキャブラリーが皆無な位には混乱しまくってる
やめて、もうのぞみのHPはゼロよ
「…………」
ところで余談なのだが、実はこの喫茶店の本は全て店長が管理している
来て下さったお客様に出来る限り面白いと思って貰える本をと店長が一から仕入れ、また一から整理や管理を誠心誠意毎日毎日しているのである
そう、毎日欠かさず整理整頓をしているのである
つまるところ…この本はうっかり掃除中に店長が落としてしまった秘蔵の本という事なのだ、これならさっき挙動不審だったのも頷ける!!
…いや正直、店でそんなの持って何してたんだって話だけども
「にしても本当に何でこんな本がこんなとこに…」
「ちょっとどうしたのよ、私にも見させなさ」
後ろから本を見ようと覗こうとするゆめみに対しかないは
「必殺かないちゃん目潰しっ!!」
「エンッ!!!?」
「あっやべ、つい反射で…ゴメン」
「目が、目がぁああああああッ!!」
振り向きざまに思いっきり容赦無く両目二つ共にに目潰しと指を一気に突っ込んだ、一応容赦無いといってもほとんど反射であるが
ところで、だが
この喫茶店はのぞみが常連客としてずっと通っていた店である上に、そののぞみ自身もこの店のに限らずだが本を異常な程にまで好んでいる
何が言いたいんですかって?それはつまり…
「…………」
「店長、ちょっと此方へ」
「ッ!?」
本の出処も一応ではあるが、把握済みだという事だ
「充分に納得のいく説明を、お願いしますね?」
「……はい」
脅し気味にのぞみはそう真っ黒な感情を込めた様な笑顔をしながら言い放ち、店長を連こ…いや店の裏に連れて行った
目そのものは全く笑っていなかった、怖い
「…えぇ、あーうん…どうしよコレ」
「帰ってくるのを待つしかないわね」
「むぐむぐっ…」
そして取り残された後の三人は完全に置いてけぼりのまま店に放置
かないは本を再び持ったまま棒立ちでゆめみは何が何だか分らぬまま首を傾げ、かさみに至っては無視したまま菓子をまた頬張り始めている
「「…………」」
そして、放置された三人はというと
「…取り敢えず、食べながら待とうか」
「そうね…」
「んぐ、んぐっ」
戸惑わせるつもりが結局自分達がのぞみと店長に戸惑い、また置いてあるパンと菓子を食いながら茶を飲んでは待ちぼうけたのであったとさ
《【Bパート】へ続く》
この街の裏路地にひっそりとそれは建っている
外見は古ぼけた喫茶店そのもので人が言っちゃ悪いがとても人が立ち入りそうな雰囲気ではない、如何にも怪しい一風変わった店であった
そんな喫茶店の中に居るのはたった一人のみ、見覚えのある女の子だ
「……ふむ…」
彼女の名前は【緑野のぞみ】、この喫茶店の常連である
何でもこの店の店長とは開店した時からの古い付き合いの馴染みであるとか何とか
そんな少女ことのぞみは、一人店内で静かに本を読んでいた
片手には本を持ち、もう片方には紅茶の入ったティーカップとお洒落な姿
夢中で好きな本をじっと読み耽っては茶を飲んでまた本に没頭する、本人からすればこれ程までに充実した時間は無いのではないだろうか
「…ふぅっ、この本も面白かったです」
のぞみは本を読み終えるとはっと息を吐いて、紅茶を置いてから本を閉じる
いかにも満足気な表情で、それはもう幸せそうに
「見た事の無い作者の人だと思えば、読んでみれば結構奥が深かったです
この店は面白い本もあって…いつ何度来ても飽きないですっ」
本を思いっきり抱きしめながらそう満面の笑みで言うのぞみ
のぞみ以外に人は居ないとはいえ、余程この店が気に入っているのだろう
「さて、今日は休日ですしこの際たっぷりと満喫しましょう…」
「はははっ…そう言って貰えるとは、私も店長明利に尽きるね」
「あ、店長っ!!」
のぞみが店の隅にある大きな本棚に手を差し掛けると、後ろから真っ白な髭を生やした如何にもダンディーなおじさんが立っていた
どうやらこの人が、この店のオーナーの様だ
「最近此処に行けなくてすいません、少し忙しくてて…」
「構わないさ、どうせ寂れた店だし学校の方を優先すれば良いよ」
頭を下げるのぞみに店長はにこやかな笑顔でそっと宥める
「そんな事無いですよ…私にとってはこの喫茶店が一番ですっ!!」
「それはそれは、ありがとう」
確かにこの喫茶店は寂れている
と言っても流石に年中ずっと客が来ない訳では無い、実は常連客もそれなりに居る上に珍しい本が置いてあるとコアなファンも意外と居るのである
つまり言ってしまえば隠れた名店、人気もそれなりにあるのだ
「もっと自信を持ってくださいよ、この店は良い店なんですから!!
いっそ宣伝でもすれば客も増えますよ…そうだ私も手伝います!!」
少し空回り気味にのぞみが店長に詰め寄ってかかる、が何やら店長は頬を軽く掻きながら気不味そうにしていた
「のぞみちゃん、悪いんだけど…私はひっそりと店をやっていきたいんだ
子供の頃からこうやってのんびりとやっていってってね…悪いんだけどその提案ばかりは少しやめておくよ」
「うぅ…残念です」
わざとらしくしょんぼりするのぞみ、それに対して何か無いかなと店長が考えハッと思い出し口にする
「そうだ、丁度この前新メニューを考えて試作にと作っ見たんだ、これなら宣伝までとはいかないけど口コミにはなるかもしれないね
良かったら食べて、感想を聞かせてくれないかい?」
「ッよ、喜んで!!」
のぞみはすぐ様、まるで子供の様に勢い良くそれに食いついていく
「それは良かった、それじゃあ持ってくるから少し待っていてね」
そう言って店長はのぞみに背を向けてゆっくりとキッチンへと歩いて行った
「…本当に、この店が一番好きなんですけどね」
その一方でのぞみはほんの一瞬だけ悲しそうな表情を浮かべた後、気を取り直して自分が座っていた場所へと戻っていく
「まぁ今日は折角の休日ですし悲しむのはやめましょうっ!!
それにしても…あの二人が居ないとなると思っていた以上に静かですね、いやまぁコッチの方が私的には落ち着いて良いんですけども」
そうぶつくさと言いながらのぞみは残ったお茶を口に含み飲み干す
「…それにしても本当にこんなゆっくりした時間も久々ですねぇ、いつもはあの二人が居るので静かだなんて縁の遠いものと思ってましたが」
流石に二人に失礼なんじゃないかと思えば良いのか明らかに残当であるとでも言えば良いのか、この場合どちらが正しいんだろうか
まぁそれは一先ず置いておいて、そんな静かな時間は続いていく
いつものと違ってそう…落ち着いた時間だった
「はぁ、いっそもうずっとこのまま…
このままこんな静かな時間が延々と続いてくれれば、それでも良いんですけどねぇ…」
「おいーっす、のぞみちゃん知らね…ってやっぱり居たぁッ!!」
「ゴメンのぞみ…私だけじゃこの馬鹿止めらんなかった」
「失礼、します」
馬鹿トリオが頭数揃えて此処に来るまでは
「…でしょうね分かってましたよはい、分かってましたよ」
この時点でのぞみがもう半泣きにすらなってる、だが残念現実は非情である
ー【第5話『休日?喫茶店とアドバイス』】ー
「というかそもそも何で此処が分かったんですか、私今の今までずっとこの喫茶店の事なんて一言も言ってない筈なんですけど」
というのもそもそものぞみは雰囲気ブレイカーを防ぐ為にも三人はおろかほかの誰にも、この店の事は言っていなかったのである
ならば何故この場所にのぞみが居るとバレたのか?その答えは明白である
「いや、アイリスに魔力探知だとかがどうので探して貰って、そのままゆめみちゃんとかさみちゃん誘って直行しただけだけど」
(…今度アイリスさんにはキッチリ話をつけておきましょうかね)
さらばアイリス、最近酷い扱いで悪いけど君の雄姿は一週間位は忘れない
「それで…結局何しに来たんですか?」
「いやただ暇だから来ただけだけども」
「…あぁうん、そうですか」
「あぁッ!!のぞみが遂に死んだ魚の様な目に!?」
四面楚歌の状況に遂にかんねんしたのか、もうのぞみの目の光は消滅寸前
「何があるかなーっと…ってどしたんのぞみちゃん?」
そうとも知らずに、かないはただ空気読まないまま店内を物色していた
「かない…アンタそういうとこよ?」
「何がッ!?」
どうやら反応からするに本当に欠片の悪気すら無くやっていた様である
皆さん、コレがヒーローの素の姿なのです
「おやおや随分騒がしいと思ったら、随分と可愛らしい嬢さんですね
のぞみちゃんの友達かい?」
と、そんな所に奥から店長がひょっこりと顔を出す
手には一口サイズのパンやら菓子やらが乗ったお盆が乗っかっており、店長はそれを軽々と器用に運んで来ている
「このじーちゃん誰よ、のぞみちゃんの知り合い?」
「つくづく初対面で失礼ねアンタ…」
「この喫茶店の店長ですよ、昔からお世話になってる人ですっ!!」
余りにも目に余るかないの態度にのぞみが半ば激昴しながらも口にする、が当の本人はさっきの通り悪びれも全くと言ってしない
「どうもご来店有難う御座います」
すると横からお盆を持った店長が近づいてきて、かない達に声をかけた
「おっと失礼、私とした事がてっきり紹介を忘れていました
私はこの喫茶店の店長を務める者です、そこに居るのぞみさんとはそれなりに長い付き合いをさせて貰っているんですよ」
「あ、どうも…私は青川ゆめみです」
「…わたしあ、かない」
二回り以上に小さい少女にも礼儀正しい姿勢にゆめみは少し腰を低くしながらも名前を告げ、それに続いてかさみもボソリと口にする
が、肝心のかない自身は相も変わらず
「おっすオラ赤井かない、おっさんダンディっすね!!」
「オッサンていい加減にしろよお前…!!」
のぞみに続きゆめみの堪忍袋も遂に限界を迎えようとしたその時
店長が、二人の横で口角ほんの少し上げて笑いだした
「ははは、お美しいお嬢さん方にそう言って貰えるとは、こんな老いぼれになっても店を続けたかいがあるものです…
はて、お嬢さんがたはのぞみちゃんのお友達かな?」
そして小説に出てくるかの様なダンディーなセリフ、普通ならドン引きなのだがこの老人に至っては何故かめっちゃマッチしてる、凄くイケメンな感じ
「お、おおぅ…お嬢さんって初めて言われた、ロマンティック…」
「あのかないが頬を赤らめた…!?スゲェ!!」
(店長、結構誑しというかこういう事言う癖が昔からあるんですよねー…)
それを言われたかないの表情はさっきの悪ガキムーヴとは打って変わって、まるで恋をした思春期の美少女乙女そのもの
ゆめみはその姿に驚きながらも、かないの気持ち悪さにドン引きしている
「ゴホンッ!!店長、それよりも何か持ってきた物があるんじゃないんですか?」
一方ののぞみは、そんな店長に何とも言えない視線を投げかけていた
「あぁゴメン悪いね、そっちのけで話に夢中になるだったよ」
「そういえばその手に持ってる物…もしかしてお菓子!?」
菓子の匂いに飛びつきかかるかの様に顔を突きつけるかない、そしてそれに対ししつこい位に何度も謝り倒すゆめみ
「すいません、この馬鹿が本当に失礼で…」
「はっはっはいやいやこれ位元気な方が私も見ていて楽しいですよ
コレは試作のお菓子とパンですよ、そうだ皆さん良かったら食べて感想を教えて頂けませんか?出来れば商品の名前も考えて欲しいのですが」
店長は良かったらと誘う様にそう言いながらもさり気無く試作の菓子とパンを四人分の皿にそれぞれ平等に分けながら、テーブルに紅茶を注いで慣れた手つきで手際良く準備していく、これは色んな意味で卑怯だ
「お菓子、パン!!」
「OKかない一旦ステイ、しかし結構色々あるわね…」
ゆめみはかないを制止したままゆっくりと顔を覗かせ、試作品を見てみる
試作品はゆめみの言う通り数多く取り揃えてありお菓子は五種類程で、パンに至っては菓子パン含めてと言えど十種類近くもの数のパンがある
「店長…これ本当に全部新作なんですか?」
「いやぁこう歳をとってしまうとどうも暇な時間が多くなってしまってね、実はかなり前から考えて作っていたんだよ」
とは言え合計で十五種類もの新作、しかもどれも美味しそうなものばかり
これだけあれば宣伝になるには充分過ぎるだろう
それにしたって全部新商品にするにはまぁ、どう考えても多過ぎるのだが
「しかしなにぶん作りすぎて量が多くなってしまってね、流石に全部商品にするのにはは少し無理があったんですよ」
「成程、それで宣伝ですか…」
「そこでのぞみちゃんに選別って意味も込めて、味見ってワケね!!」
「キメ顔してるとこ悪いけどかない、ヨダレ垂れてるから」
かないは真剣な表情しながらも、涎を口からだらしなく垂れ流しながらじっと皿の上のお菓子から目を離さず釘付けになっている
「という訳で皆さんも、試食してくれると有難いのですが」
「承った」
息つく暇すら無く即答、お菓子への執着心が物凄い
「…何でも良いわよもう、ツッコむ気力も無いし」
「ま、まぁまぁ…折角ですし楽しみましょう!!」
「そうそう、もう準備されてるし勿体無いしねッ!!」
「「…………」」
迷惑をかけられた筈ののぞみがなんかもう宥めている方へと回り逆に迷惑をかけている筈のかないが図々しいままって、もうコレ訳分かんねえな
「…いただきます」
「あっ、かさみちゃん!?」
と、そんな事やってる間にもかさみが勝手にパンを一つ口にした
「ちょっ勝手に食べちゃ駄目だよ!?」
「お前が言うな」
現在最もかないには絶対に言われたくない言葉だ、まぁだがどの道かさみにそれを言うのは遅過ぎるのだが
かさみの頬は既に手に持ったパンでいっぱいの様だ
「………おいしい」
「よっしゃ私も食べる!!」
何がよっしゃなのかは正直何一つ分からないが、かさみが食べたのを再確認した途端にタガが外れた様に同じ種類のパンを手に取って頬張った
いや、タガは最初から外れてるっぽいけども
「皆さんもどうぞ、遠慮せずに召し上がって下さい」
かないが食べた後に店長がゆめみとのぞみに腰を低くしながら言う
「はぁ、本当に全く…まぁ折角だし私達も頂きましょう」
「そうですね、食べましょう!!」
そして二人もそれに続いてそれぞれパンや菓子を口に運び始めた
「おおマジで結構美味いよコレぇ!!」
「はむ…はむっ……」
そしてとっく食べている呑気な二人も、味の感想なんかとうに忘れたまま美味しそうに菓子とパンと紅茶にがっついてる
それを後ろで幸せに眺めている店長もご満悦のご様子
そんなこんなで、今日も街は平和です
「はいストーップまだ終わらないよー、半分も終わってないよー」
まぁ、まだ終わらないんだけどね
「…どしたのかない、遂に頭が逝かれた?」
「違うわい!!そうじゃなくてその…第三の壁というか?」
「かないさん今すぐ病院行きましょう、先ずは頭の検査を」
「だから違うっつってんだろーが!!」
とそんなメッタメタな言葉をコチラ側に放ちつつ、結局また親友達とやらにボロクソに言われまくっているかないなのであった
まぁ、それは兎も角本来の目的に戻ろう
「…っとと、危うくすっかり忘れるところでした…それで、そういう訳で皆さんそのパンや菓子の感想を聞きたいんですが宜しいでしょうか?」
「あぁうん良いわよ、というかそういう約束だったしね」
「確か名前も考えるんだったっけ?」
「うん、なまえとかんそう…のはず」
そう、そもそもこのパンと菓子は試食として感想を伝え、商品出来るのであれば商品名も一応考えて欲しいとの話だった筈
まぁつまるところを言えば、このままではただ営業の邪魔をした挙句に勝手にタダ食いしてしまったって事になってしまうのだ
「しかし全部美味しかったですし、選ぶとなると…」
顎に手を当てて深く悩み始めるのぞみ
「うーん、それじゃあこうしよう」
お嬢さん達が特に気に入ったものを一つだけ選んでいって、それの感想ついでに皆で名前を考えるというのはどうだい?」
「あ、それ良いかも!!」
「まぁ確かに標品化するのを絞り込むなら、そっちのが良いかもね」
「そうですね、でも…どれを選べば良いんでしょうか」
という事で感想の出し方が決まったのだが…しかし結局迷ってしまうのは変わりが無く、またものぞみは深く黙りこんでしまった
「はいはいはーい、私最初っ!!」
と、ここでかないが大きく手を上げて名乗りを挙げる
「そんな、ゲームやレクリエーションじゃないんだから…ちゃんとした食べ物の味についての感想を言うのよ?」
「小学生じゃないんだからそれ位分かるわい!!で、私が選ぶのはコレよっ!!」
かないが選んだのは意外にも、お洒落な感じの黄色い蒸しパンだった
「意外ね、アンタはもうちょっとガッツリ系かと思ったわ」
「いつもはそうなんだけどね、この甘さが癖になってさぁ~…」
「分かります、私もこういう甘さとか好きです!!」
「むぐ、むぐ…」
他の三人からもかなりの高評価な様子のパン、人気の秘密はその甘さの様だ
「おっと…それは栗を使った菓子パンでね、自然な甘さに仕上げつつ蒸しパンの味を殺さない様に工夫した自信作なんですよ」
店長が丁寧に四人に説明する、聞く限り女子受けしそうな商品だ
「栗かー、これなら女子とかに人気そうじゃね?」
「そうねぇ…見た目も良いしイ○スタとかにも良いかも」
コラ青の子、ガチの実名をいきなり出すんじゃあない
「と、なるとこれは商品化に…」
「決定だね!!」
「私も良いと思いますっ」
「…良いと、思う」
てなワケで結局この栗を使った蒸しパンは四人全員の満場一致で、商品化にするうちの一つに早速決まったのであった
だがしかしまだ決めていない事もある
「となると名称をどうするかですけども…」
「客を呼び込むとなると、キャッチーかつ気に入られる名前よね」
(別に呼び込まなくても今のままで充分なんだけどなぁ)
という店長の心の声もとい主張を何ら理解する事も無く、四バカは決まった菓子パンの名称に頭を悩ませているのだった
と、その時にかないが一人立ち上がった
「ふっふーん、それなんだけど…実は良い名前があるんだよねー」
「あ?何、どうせ碌な名前じゃ無いんでしょ?アンタの事だから商品にする気にもならなくなる程のひっどいネーミングなんでしょうね」
「貴様は一体私を何だと思っているのか」
少なくともこの場で一番ふざけそうな名前にする奴ではある
「ちゃんと考えたっつーの、ほれ」
「どっから出したんですかちっちゃいボード」
いかにも最近割とスーパーで売ってる様な安っぽい子供用のお絵描きボードを、かないは全員に見える様に堂々と懐から机に立てて出した
何故そんなものを持ってきたのかは不明だが
さて、では一体どんな悪ふざけの篭ったネーミングにしたのか
だが、どうせいつも通りニチアサはとても流せないレベルで下品かもっと酷い名前なんだろうな…と思ってみれば意外や意外
ボードに書いてあった名前は『マロン風味、やわらか~いしっとりパン』と、案外まともかつ割とコンビニにありそうで良さそうな名前であった
そんなネーミングを見てゆめみは一言
「…頭でも打った?」
「喧嘩売ってんのかテメェ」
日頃の行いからすれば、そりゃそうである
「いや結構良い名称ですよ?普通にありそうですし、分かりやすいし…
でもその何というか…意外?」
「もっと、ふざけないの?」
「コレでも割と真面目に考えたんですがまた集中砲火ですかそうですか」
第二話の序盤のアレを引き摺りつつ愕然とするかない
「アンタの事だからもっとアレなのかと…その、屁だとか何だのとか」
「食べ物に何て名前付けてんだお前」
「ドン引くな!!普段のアンタならこれ位言うでしょうが!!」
「少なくとも今ソレ考えて発言したのは間違いなくお前だよ!!」
まぁ、ゆめみの発言とかは兎も角割とそこそこのネーミングではあり、普通に商品として並べるのであれば充分なものではあるのだが
「ま、まぁでも名前は良いですし…コレで良いですよね、ねっ?」
のぞみは何とか場の収集つけようと取り敢えず名称をかないのに決めた
「…うーんでも、ちょっと長いかな…短くは出来ないかい?」
と、そこで店長から横から話を挟み頼み込む
まぁコンビニなら良いのだが普通の喫茶店で売るには少し長い名称ではある、もう少し呼びやすくした方が客も恥ずかしがらずに頼めるだろう
「ふっふーん、そこは問題ナッシング!!そう言うと思って一応前もって呼びやすい略称も決めてあるのだっ!!」
抜かりなし、と言わんばかりにボード手に取って何かを書き足すかない
「うーん、何か腑に落ちないわね…」
「真面目にやってるのは良い事ですし…」
「かない、まじめ?」
そしてかないのに案外真面目な様子に動揺し続ける面々
「っしゃ出来た、これよっ!!」
かないが見せたボードに書き足されたものとは
『マロいしり』だった
「やっぱりじゃねぇかァァアアアアーーーーッッ!!!!」
「ダゴバッッ!!!?」
念の為に解説しとくと「マロン風味、やわらか~いしっとりパン」である
かないは店の奥まで蹴っ飛ばされ数多くの本が並ぶ本棚へと激突、そのままドサドサと雪崩れ落ちた数冊の本の下敷きになってしまった
「あいったたた…何も蹴飛ばさなくても、あーあぁ本が…」
かないは本を掻き分けながら起き上がった
「ち、ちょっとゆめみさん!!流石に蹴るのは…!!」
「あっやば…ついカッとなってやり過ぎたわね」
「店の中でだと本が落ちたりするので、せめて店の外とかで」
「あ、そっちの心配なのね…」
流石ド天然真っ黒少女ことのぞみ、ゆめみの事こそ止めようとするもあくまで本の事が心配と念押しさえしてしまう始末
放置されるかないには堪らないのである、残当だけど
「はっはっは…まぁ、流石に私もそれはちょっと店的に…ね?」
「ないと…思う」
これには大人しい筈の店長とかさみも、当然ではあるが少し引いている
「にしても全く、今日は珍しくと思ってみれば結局コイツ本当に碌な事しないわね…いっそここで懲らしめとこうかしら?」
(不味い…このままだとマジで殺られる!!いやまぁこれは流石に私の自業自得っちゃあ自業自得なんだけども…)
まーこれには悪いと思っていたのかかないにも自覚があったようである、もっとも既にやってしまた後ではもう遅いのだが
「さーて、じゃあちょっと痛い目を見て貰うわよ…」
もう見てるとは思っても敢えてこの場の全員は誰も口を出さぬまま、つか誰も止めないままかないへと向かうゆめみを素通りさせてる
(どうすれば…っとそうだ、さっき落ちてきたあの本が!!)
かないは藁にも縋る思いで、掻き分けた本のうちの一冊を拾いあげる
「おーっとと、そういえばさ!!ついさっき本棚から落ちた本の中にカバーが付いたえらくうっすい本を見つけたんだけどさぁ!!」
が、肝心なその本は異様に薄くペラッペラかつ表面積がかなり広い、漫画や絵本というにも明らかにおかしいものであった
「…ってアレ、本当に一体何の本だコレ?」
拾った本に、何故かかない自身がいの一番に動揺した
「!?」
かないの一言に、店長がほんの少しだけピクリと反応する
「だっからアンタ店の物をコソ泥みたく弄り回すんじゃないの!!」
「まぁまぁちょっと聞いてよ、それがこの本なんだけどさぁ」
「何勝手に持ってきてんの!?」
ここまで来るといよいよ余裕で店側が追い出しても良い位には失礼な行動、だが肝心の店長は何故か冷や汗を垂らし動かないままずっと黙っている
ひょっとするとコレは何か不味いものなのだろうか?
「何でしょう?絵本よりも薄いですし…私も見た事が無いです」
「常連ののぞみちゃんすら見た事無いって、何かきな臭いなぁ…」
不思議そうに見てみるのぞみとそれを取り巻く様に除く少女達、そして自分だけちょっと置いてけぼりで混ざりそうにするゆめみ
「…中身は見たの?」
「いんやまだ読んでないよ、てかなーんだゆめみちゃん何だかんだ私に言ってきて結局この本の事気になるんじゃーん!!」
「ち…違っ、ただ私はその本の内容が気になっただけで…」
慌てふためくゆめみにそれに付け込んでからかい始めるゆめみ
「…でも、どうしましょうコレ」
しかしながら子の得体の知れない本、正体が一体どんなものなのかが分からない以上迂闊に読むのも躊躇ってしまう事だろう
「誰か読んでみる…とか?」
「正体不明の怪しい本なんて、誰も読みたくないわよ」
何せ魔法少女や怪人が世の中に蔓延る世界なのだ、ネクロノ何とかみたいな危険な本等があっても十分におかしくないのである
下手をしたらこれが怪人だという事だってありえる
「でも、読まなきゃ…わからない」
「おーっとかさみちゃんその怪しい本絶対に読むなよ、絶対だぞ?」
「読むのはかさみ以外ね、安全性を考えて」
だが魔法少女ならばもしかしたらある程度なら何とかあるかも知れない
うん多分、きっと、メイビー
「よしかない、逝きなさい」
「何で!?」
ここで突如かないに向けられた殺人キラーパス
「アンタなら多分大丈夫でしょ、店に迷惑をかけた分頑張りなさいよ」
「その言葉に何処も安心するところが無いよねそれ」
「…かないさん、宜しく」
「相変わらず私を四面楚歌にすんのいい加減やめよう!?」
満面に笑みでグッと親指を突き出すゆめみと申し訳無い顔しながらさり気なくかないから離れるのぞみ、そして本を持って絶望するかない
「かない、がんばれ」
「ぐぬぬぬぬぅッ……!!
だぁーっやりゃあ良いんだろこの野郎、そいやぁ!!」
(チョロい)
そしてかさみによるトドメで遂にその本の中身を開いた
かない以外には見えない角度で開かれたその本には、一体何が隠されているのだろうか
「…………ッ!!
…………あ、あぁ…うん、まぁその…うん」
その本を見たかないの表情は、何とも言えないものだった
苦笑いなのか引いてるのかドンマイという顔なのかというとても微妙な顔だ、いやかないがここまでの反応をする程の内容なのは分かるが
それがどのようなものなのかは読んでみないと分からないだろう
「ど、どうしたのかない!?まさか怪人か何かの洗脳とか…」
「いや違う違う!!そうじゃなくて、えーとその…」
何故か歯切れの悪いかない、目が物凄く泳いでいる
「…何か、かくしてる?」
と、ここでかさみが妙に鋭くかないの変な様子を指摘する
「それに何かあるのね?見せなさい!!」
「わぁあダメダメ、こればっかりは流石に駄目だってマジで!!」
ゆめみが強引に奪って中身を見ようとするがかないがそれを必死で阻止
そしてその揉みくちゃで遂に本が手から零れ落ち、のぞみの目の前に転がっていった
「のぞみ、それ拾って!!」
「ちょっ駄目だってば、のぞみちゃん返して!!」
「…………」
かないの必死の抵抗も虚しくのぞみは目前に落ちた本を手に取り物凄く読みたそうな目でソレを見つめる、具体的にはこの前の暴走の時みたいな
「のぞみ、読むの?」
そして、かさみの言葉と同時に一大決心し本を開いた
「……ッ!!」
その本の内容とは…
ぶっちゃけると、【ピンクの薄い本】でした
「」
中身をほんの1ページだけ適当に開いて見ただけなのにのぞみは一瞬にして言葉を失い、今さっきまで猛獣の様だった目から光を無くす
「あーあ…」
「へ?何、どうしたののぞみ!?」
あらかじめ内容を知っていたかないは手で顔を覆い現実逃避、一方のゆめみは何が何だかサッパリちんぷんかんぷんなのであった
「ななななななっ何ですかコレ、なんなんですかコレェッ!!!?」
「落ち着いてのぞみちゃん、今君バイブレーションみたいになってるよ」
勿論のことのぞみは動揺を隠せないどころかもんの凄い顔してる、多分挿絵にしちゃ絶対にいけないレベルどぎついヤツです
「何でこんなのあるんですか!!何でこんなのあるんですか!!」
「ちょっそんな本振り回さないで中身見えちゃう見えちゃうって!?」
「一体どんな本だったのよ…」
もう発言一つ一つのボキャブラリーが皆無な位には混乱しまくってる
やめて、もうのぞみのHPはゼロよ
「…………」
ところで余談なのだが、実はこの喫茶店の本は全て店長が管理している
来て下さったお客様に出来る限り面白いと思って貰える本をと店長が一から仕入れ、また一から整理や管理を誠心誠意毎日毎日しているのである
そう、毎日欠かさず整理整頓をしているのである
つまるところ…この本はうっかり掃除中に店長が落としてしまった秘蔵の本という事なのだ、これならさっき挙動不審だったのも頷ける!!
…いや正直、店でそんなの持って何してたんだって話だけども
「にしても本当に何でこんな本がこんなとこに…」
「ちょっとどうしたのよ、私にも見させなさ」
後ろから本を見ようと覗こうとするゆめみに対しかないは
「必殺かないちゃん目潰しっ!!」
「エンッ!!!?」
「あっやべ、つい反射で…ゴメン」
「目が、目がぁああああああッ!!」
振り向きざまに思いっきり容赦無く両目二つ共にに目潰しと指を一気に突っ込んだ、一応容赦無いといってもほとんど反射であるが
ところで、だが
この喫茶店はのぞみが常連客としてずっと通っていた店である上に、そののぞみ自身もこの店のに限らずだが本を異常な程にまで好んでいる
何が言いたいんですかって?それはつまり…
「…………」
「店長、ちょっと此方へ」
「ッ!?」
本の出処も一応ではあるが、把握済みだという事だ
「充分に納得のいく説明を、お願いしますね?」
「……はい」
脅し気味にのぞみはそう真っ黒な感情を込めた様な笑顔をしながら言い放ち、店長を連こ…いや店の裏に連れて行った
目そのものは全く笑っていなかった、怖い
「…えぇ、あーうん…どうしよコレ」
「帰ってくるのを待つしかないわね」
「むぐむぐっ…」
そして取り残された後の三人は完全に置いてけぼりのまま店に放置
かないは本を再び持ったまま棒立ちでゆめみは何が何だか分らぬまま首を傾げ、かさみに至っては無視したまま菓子をまた頬張り始めている
「「…………」」
そして、放置された三人はというと
「…取り敢えず、食べながら待とうか」
「そうね…」
「んぐ、んぐっ」
戸惑わせるつもりが結局自分達がのぞみと店長に戸惑い、また置いてあるパンと菓子を食いながら茶を飲んでは待ちぼうけたのであったとさ
《【Bパート】へ続く》
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