一億回の転生者

きのっぴー♪

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第一章「『魔法少女☆マジカラ』編」

第5話(Bパート)

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…とある平日の日
もうちょっと詳しく具体的に言うと、Aパートでかない達がのぞみいきつけの喫茶店へと足を運んでいる真っ最中と同時刻




「さいッッッッきんホント出番が無いんッスよォオッッ!!!!」
かない達を放ってアイリスは何故か、ただしの部屋にお邪魔していた
因みにこの時点で皆さんは予想がついてるかなとは思うが、アイリスがかないと一緒に茶化しに行かなかったのはこの為である
「…何、急に?」
勿論当の被害者であるただしは半目で面倒そうにアイリスを睨む
「何?じゃないッスよ、私達最近出番が無いんスよ!?
魔法少女の戦闘シーンでは私ほぼ空気だし日常パートでは三バカが目立つし仲間だと思ってたかさみさんは露骨に可愛い路線に走るし!!
前回なんか見ました!?出番無いって注意書きまで出たんスよ!?」
「OK一旦落ち着け、【第四の壁】から一旦離れなさい」
ただしはアイリスを宥める様に戸棚から買い置きしていたと思われるスナック菓子と麦茶を机に置き、アイリスの方に寄せる
で、アイリスもそれを見て一旦深呼吸した後に黙々とスナック菓子を頬張っては麦茶を飲み、そしてまた話そうと口を開いた
「んぐっ、ぷはぁ…ふぅで、このままだと出番が無くなるって事ッスよ!!」
「うーんいつまで経っても話が平行線
てか急に押し入れられたと思ったら何?いきなり叫ばれて何のドッキリよ」
「もしゃ…悠長にしてる場合ッスか、これはもぐもぐ…私達の存在そのものをかけた重要なっんぐんぐ、っぷは…問題なんスよ!?」
「うん、出した俺も悪いが一旦菓子と麦茶を頬張るのやめろ」
取り敢えずアイリスは口に溜め込んだ菓子やら茶やらをゴクンと完全に飲み込んでから、少し間を開けて話を続ける

「あー、つまり簡潔に言うッスとね?
私達の出番が最近本当に無くなってきそうッスから、一度ここらで出番になり得る何かを一緒に相談しつつ1パート稼ぎましょうって事なんでスよ」
「最後、オイ最後」
ついでもついでで割と結構酷いのだがそれは一先ず置いておいて、アイリスの相談とは出番を増やす為の何かを得る方法というものであった
「いや出番ってお前…充分あるだろが
前回さえ除けば日常パートにはほぼ確実に参加してるし、ポンコツ妖精とかギャグキャラとしてはおもっくそ目立ってんじゃねーか」
「ポンコツキャラなんて嫌ッスよ、つかギャグキャラて!!
私は魔法少女の妖精として戦闘とかシリアスな場面で活躍したいんスよ、信頼感ある魔法少女の妖精でありヒーローものの相棒としてっ!!」
「それ言っている間は暫くネタキャラ卒業出来ないと思うの俺」
というか第一話だけとはいえ戦闘でもそこそこ目立っていたのに今度はシリアスが欲しいとは、ネタキャラの癖に贅沢っつか面倒臭い奴である
「で、という訳で何か無いッスか?」
「何がという訳なのか一切分からないんだけど、スルーすんなオイ
…まぁ、一応一つあるっちゃあるけど」
「何スか!?何でも良いんで教えて下さいッス!!」
腹を空かせた魚の様に食い付きが物凄いアイリス、顔から飛びつく
しかし本当にそんな簡単に脇役みたいな奴がいきなり作品のメインを張れる様な存在感を持てる方法があるのだろうか?
「そうだな…」
「うんうん、何スか!?」
仕方無さそうにただしも自分でさり気なく持ってきた茶を口に含んで言った

「有名なヒロインは死ぬと、より存在感が引き立つって聞いた事が」
「ストップ」
まぁ、当然ストップはかかるよねその方法じゃ
「手っ取り早い上にもんの凄く目立てるよ、一気に主役級にまで上り詰めて黒幕との関係性大みたいな空気に早変わりするよ、多分」
「それ私が死ぬ上に悪い意味での誤解以外の何物でもないッスよね!?」
オマケに言うと死んで人気キャラになる確証なんて万に一つも無いというか下手したら役立たずのレッテル張られたまんまになる可能性すらある
「んー、じゃあ敢えて敵に捕まってみて人質系ヒロインにでもなったら?」
「嫌だよ結局死ぬじゃんソレぇ!!」
とは言えアイリスはただしの提案に文句を垂れて嫌だ嫌だと言うばかり、当の本人がコレでは一体何を提案すれば良いのだろうか
「と、兎に角!!私が死なないかつ安全に目立つ方法を考えて下さいッス
勿論真面目にッスからね!?」
「要望多いな、犠牲の上に成り立つモンだってあるでしょーが」
「いやアンタのは犠牲しか成り立ってないから!!」」
もう考えなくも良い気すらしてきた
「じゃ修行パートは、一緒に戦えば出番も」
「そもそも魔法少女に追いつける気がしないッス…」
説明こそ今の今まで無かったのだが、実はアイリスは魔法少女と比べるどころか一般の成人男性にも勝てないんです
「なら仲間の数で差はどうだ、町中に居るんだろ」
「皆やられるの怖いって言って出てこないんスよ…まぁ私も同じ立場なら拒否するッスけどもも」
そもそも仲間は怪人達に襲われてたしトラウマもあるかも
「仲間のアシスト」
「そもそも魔力探知と街の修復以外にやる事無いッス、後ガチの戦闘に割り込むのは痛そうだしし怖いんで…」
戦闘力無いとなると解説役やるしか無いよね
「はい解散」
「待て待て待て、待ってマジで待って!?」
という訳でアイリスの相談は、奇しくも全くの無駄に終わるのだった…
「ナレーションもやめろ、勝手に終わらすんじゃないッスよ!!」
「そうですか、では長所を教えてください」
「面接っぽい対応で流すのもやめろァ!!」

と、終始文句を言いっ放しで何一つ満足しないアイリス、どんだけものぐさというかビビりなんだろうかコイツ
「…っと、そうだ!!他人事の様でスがただしさんもッスよ!?」
「んあ、俺?」
するとアイリスは自分の事を一先ず棚に上げつつ、ただしに向けて指をさした
「そうッスよ、ただしさんも出番こそあるけどチョイ役程度…言ってしまえば別に居なくても差程影響なんか無いキャラクターッスからね!?
アンタも強いのは良いけどそのせいでオチ要員になっちゃってるんスよ、良いんスか?このままじゃこの作品から居なくなるッスよ!?」
「え、あぁうん…」
いや、一応プロローグとか一話で説明された通りそもそもただしは全く関連すら無い様な別世界から来た転生者なのである
出番とか以前にその経緯からすれば普通にチョイ役が寧ろ適切なのである
…まぁそんな事、アイリスには知る由なんかこれっぽっちも無いのだが
「…?、何か歯切れが悪いけど…まぁ良いッス
そういう事で早く必死に、何か良いアイディアを考えて下さいッスよ!!」
そんな人の気も知らぬままアイリスは再びただし詰め寄る

そこでただしは、ある考えをアイリスに提示した
「あぁー、そうだな…例えばだが」
「おぉっやっぱり何かあるんじゃないッスか、でどんなのッスか?
…あ、しんどいのは勘弁で」
ではそれが一体何なのかと言うと、至極当然かつ簡単な事であった
「別に難しい事じゃねぇよ…お前は魔法少女の起源を作った妖精で、あの魔法少女とやらの三人よりも魔法とかそういうのに詳しいんだろ?
後、仲間も色んな場所に潜んでるって話も聞いたな」
「えぇまぁ、魔力とかこの街の事とかは色々知ってまスが…それが何か?」
アイリス首を傾げている様子を見るにまだピンときていないみたいだ
「…一から言うとな?
敵の情報とか魔法とか色々知ってるって事じゃん」
「そうッスね」
「オマケに敵の探知とかも出来るじゃんか」
「ちょっと照れるッスね」
ただしの問いに次々とウンウン頷いているアイリス、ここまで言ったなら大抵の人なら既に充分分かるものだとと思うのだが
「で、それがなんスか?」
しかしながら案の定アイリスは分かっておらず、ポンコツ此処に極まれり
つまり何が言いたいのか、というと




「…じゃあサポート役じゃん、メインじゃん、主役のお隣じゃん」
「……あっ!?」
つまるところ、主役かないのお付きらしくサポートしてれば普通に目立てた話なのだ
というかそもそも第一話でかないの隣で充分存在感を示しつつ、魔法少女へのサポートもしていたのに忘れてるのは割と酷いとは思うんだけど
「てかそもそもそれがお前の仕事じゃねーのか」
「そ、そうだ!!そもそも私は魔法少女のサポートの為に居るんじゃないッスか、本当に最近ギャグ要員ばっかだからすっかり忘れてたッス!!」
「気づくの遅くない?本当に君同族救う気あんの?」
「辛辣っ」
そもそも自分の種族代表としての使命すらもすっかり忘れていたとは、色々と不味いというかそれもそれで酷過ぎるというか
…仲間にでも闇討ちされなきゃ良いけど
というアイリスの生死に関わるレベルの問題思考はぶっちゃけ物凄くどうでもいいとして、今はアイリスの目立ちたいという問題だ
まぁ流石にこんな正論を言ったらもう何も言ってくる事は…

「…で、サポート役ってどうすれば良いんスか?」
「ひっでぇな相変わらず、頭の具合が」
はい、いつも通りの前言撤回ポンコツというレベルじゃないねコレ
「サポートっつってもまぁ色々あるが、手っ取り早いのは…
…解説とかナビゲートとかだな」
「か、かいせつとなびげーと?」
セリフの平仮名表記で分かるだろうが気が抜けた声で復唱するアイリス、語感からかイマイチ活躍出来る想像がつかないのだろうか
「ナビっつっても場合によっちゃあ重要だし貴重なもんだ
良くアニメとかにいるだろ?いかにも意味深な言葉を主人公に吐く奴や、情報を暴きまくってもんの凄く貢献しまくってる奴とか」
「あー確かに、活躍してるというかこの人が居ないとって感じで」
そしてただしはアイリスを軽く指さして説明を続ける
「でだ、お前がここに来た目的ってのは?」
「えーっと…私達の国宝を取り返すついでに怪人を倒す事ッスね」
「じゃあお前は魔法の事をどれくらい知ってる?怪人については?」
「まぁあらかたは…流石に怪人に関しては細かいのはッスけど」
といってもさっき言ったように、ただ前に話した事をあらかじめ確認ついでにアイリスの事を照らし合わせているだけなのだが
とはいえこれでもう解決しただろう
「…て事はだ、お前は

今現在戦っている敵とは重要なカギである祖国の秘宝を巡った因縁の相手であり、その敵と唯一対峙出来る力の正体を詳しくしている専門職
かついち早く敵を見つけたりも出来る超便利な情報屋…って言う割と重要な立ち位置になるんだけど」
「…………ホンマや!?」
「気づくの遅っ」
字面で見る限りでも如何にこのポンコツが魔法少女にとっての重要な存在なのかが分かっただろう、張本人が理解してんのかは怪しいけど
つまりこんなギャグ空間とは違う、真面目なメインストーリもりもりなシリアス空間でも十分食っていける程のキャラなのだ
…シリアスなキャラかは置いておくけども
「そ、そうだったんスか、私は超重要ポジのキャラだったんスか…
つまりサポート役で活躍すれば、私は超優秀な真面目参謀キャラに!!」
「ま、そのキャラのままの限りじゃ無理そうだけどな」
「辛辣!!」
目に見えて調子に乗っているアイリスのすぐ横でただしがボソリと呟きアイリスがツッコむ、本当に本当にその通りである
「よぉーしっそうと決まれば頑張るッスよ!!」
しかしまぁなんだかんだでアイリスも元気はついた、随分と阿保らしい終わり方だがこれでスッキリもしただろう
「それは良かった、そんじゃな」
ただしは二度寝をしようとその場を立とうとした

ただしさん…!!」
そしてアイリスはーーーー




「で、何をすれば活躍出来るんスか?」
「…………」
結局何も、学んでいなかった
ただしはもう一度アイリスの方に顔を向け直し、ただ静かに曇りどころか一点の光も無い真っ黒な目で見ていた
そらもう、ブラックホールみたく吸い込まれそうな瞳で
「いやあの…今のは私が悪かったからその邪悪しか感じない目をやめてください、正気ごと吸い込まれそうなんで…」
アイリスもこれに関しては流石に勘づいている様だ
が、しかしそうと分かっていながらも結局実際に口に出してしまうのとそうでないのでは割と大きな差があるのである
「だ、だってだって!!急に情報屋キャラだなんて言われても困るッスよ、こちらと何していいのかがさっぱり分かんないッス!!」
確かにいきなりやった事の無い役割を急にやるとなると、一体どこから手を出せば良いのかと悩んでしまうものである
そもそもいきなりも何も自分が忘れてただけなのだが
「これじゃあ何をやれば良いのかさっぱりで…」
「そうだな、寝る」
「ストーップ、ドントスリィープッ!!」
エセ英語で涙と鼻水垂れ流しながら引き留めようとするアイリスと、無慈悲にも無視して寝ようと寝室に行こうとするただし
毎度の事ながら絵面のインパクトが凄い

とそこでアイリスが遂にとんでもない事を言ってしまった
「まーってくだしゃいマジで何でもしますくぁらぁ!!」
意訳、待ってください本気で何でもしますから
「…………」
「…アレ、止まった?ただしさん漸く私に協力してくれる気に!!」
服をつかむアイリスの目にただしの顔が映り込んだ
「今、何でもっていった?」
さっきの邪悪な目と共に、如何にも悪い事考えてそうな笑みをした顔が
「すいませんやっぱいいッス他を当たりまス」
「まぁまぁゆっくりしてけよ、俺に相談事があるんだろう?」
「嫌だぁ、これ以上オチに使われるのは嫌だぁあ!!」
すぐ様厄介事に巻き込まれたくないと言わんばかりに飛んで逃げようとするアイリスに、それを逃がすまいと羽を毟る様に掴み捕えるただし
さっきとはまた真逆の立場になっていた
いや確かにこの男に脅された側にとって考えたら分からなくも無いが、かないが目の前で男女平等パンチで吹っ飛んだ事あるし

「まぁ落ち着け、悪い言い方して何だが別に変な事する訳じゃねぇよ
ただの悪ふざけだ悪ふざけ」
「…の割には結構マジな顔してらっしゃいますが」
「本当ダヨ、インディアン嘘ツカナイ」
「お前日本人だろうが!!」
ビクビクしながらもアイリスはおずおずとゆっくり寄ってくる
肝心なただしの異様に不気味だった目は光を取り戻していた、いや他人と比べたらどう見ても腐った魚みたいな半目だけども
「そんな気張んなよ、ただちょっと質問をね」
「質問…スか?何を?」
首を傾げつつもまだ警戒してるのか少しだけ距離を取るアイリス
「あー…実は俺って結構ここら辺に来たばっかなのよ、余所者って奴
だから魔法少女とか言われてもアニメの宣伝か特撮か?って感想しかなかったのさ、つまり魔法少女とかについて何も知らんワケ」
(いや、アンタの存在の方が充分現実的じゃ無いんだけど…)
超常現象が服着て歩いてる様な奴には絶対に言われたくない言葉である
「要するに魔法少女とかの事教えてちょーだいって事よ、頼める?」
「いや良いッスけども、別に今じゃなくても…それよりも私のは」
しかしそれよりも私と言わんばかりに私事を優先するアイリス、それをただしは何とかなだめ自分の良い様に持ってこうとする
「いつでも知識を披露できる様に分かりやすい説明を先にやっておくのも良いだろ?前もってテンパらなくなるしさぁ
要は来たるべき時の為の練習よ、俺で練習」
「うーんでも、なーんか良い様に乗せられてる様な…」
だがそれでも中々乗り気にはなれないアイリス、まぁ事実上手い事乗せようとしているのは本当ではあるのだが
すると乗り気でないアイリスにボソリとこう呟いた
「…こういう番外編で知識披露しとくと、株上がるかもよ」
「何でもおっしゃってくださいただし様」
するとまるで人が変わった様に態度を変えて媚び始めるアイリス
…こういう事するから小物臭がするんだよ君達、とは敢えて言わないであげるのが一応申し訳程度の優しさである
「で…確か魔法少女の事ッスよね、何が聞きたいんスか?」
「んーそうだなぁ…どっから聞いたもんか

よし、じゃあ一つ目の質問だ
かないとかが魔法少女に変身して戦ってたが、ありゃあ一体どういう仕組みだ?貰った力ってのは聞いたがそもそもその力自体が分からん」
一番最初に聞いたのは魔法少女、又はそれらが使っている魔法という力ついてだ
少しばかり前に魔法少女の成り立ちこそ聞いていたが詳細自体はまだ聞いていない、そもそも魔力というエネルギーは一体どんな力なのだろうか
「あーはいはい、というと…魔法と魔力の事ッスね」
「魔法…と、魔力ねぇ」
魔力、目ちょいちょいアイリスからその言葉を耳にしていた言葉だ、一応は妖精が備わっている力とだけ聞いている
「まず魔力ってのから説明させて貰いまスね
えー、『魔力』って言うのは前も言った通り私達妖精族にのみ備わっている力…その正体は、言わば『感情エネルギー』ってヤツなんスよ」
「感情エネルギー?」
また何か聞き覚えのない単語が出てきた、その魔力に深く関係すると思われる感情エネルギーとは一体何なのか
「魔力っていうのはちょっと特殊なエネルギーで、簡単に言うとなんでスよ」
「感情に起因するエネルギー、ねぇ」
聞けば聞くほどに割と常識から外れている力だ、人の頭の中どころか気持ち自体に関与している力なんてオカルトじみている
「感情が高ぶれば魔力の量が上がりまスしそれ自体のエネルギーも濃くなりまスし、逆に落ち込めば量も質も減ってしまいまス
これを私達一族が秘宝を元に作った特別な道具で色々な力に変換し利用する技術こそが『魔法』というものッス!!」
簡単に言ってくれるがそもそも本来は人どころか妖精にしか無い力、想像してくれと言われてもそう簡単には出来ないものだ
「感情を利用する技術ねぇ…実感沸かねーな」
「いやいやただしさんももう見た事あるッスよ?ほら、かないさん達が持ってるあのおもちゃみたいなロッドっすよ」
「あ、おもちゃっぽいって自覚はあったのね」
つまりあの魔法少女達が変身し炎などを操っていたのは、その魔力という力を利用した魔法という技法という訳なのだ
あの三人が魔法を使えるのもこの妖精が与えたと思われる魔力という力と、それをコントロールする為の玩具みたいな道具のお陰という事
どれだけその妖精族とやらが関係しているのかが良く分かる

だがそうなると不可解な点もある
「…ならその妖精族が自分でやれば良いだろうに、何であの三人にわざわざ与えるなんて回りくどい事をしてんだ?」
力こそあるのにわざわざ自分達で戦おうとはせずにただの人間の、それも幼い少女の身体を利用する理由は一体何なのかという事だ
「…耳が痛い話ッスね、勿論理由もありますッス」
アイリスは素直に質問受け入れ、すぐに答えようとする
「確かに私達自身は魔力は持っていまス…が身体能力とか許容量とかが低いんスよ、なんせガワ以外は魔力のみで構成されてるのと同じッスからね
許容量超えればガワが破裂して死ぬし、ダメージも同じッス」
つまり人間とは違って物理的な丈夫さ自体がほぼ全く無い為に人間よりも脆い上に、魔力も増やし過ぎると破裂しておじゃんになるという事
空気を魔力、風船を肉体とイメージすれば分かりやすいだろうか
「強い妖精ヒトも勿論居たッスよ?でもかないさん程の強さじゃないッスし、まして昔の魔法少女とだなんてとても…」
「それで敢えて丈夫な人間に魔力を持たせて対抗…って事か」
「ッスね」

では次に何故少女であるかない達なのか、という点だがコレも至って単純だ
「で、何でかないさん達…子供の女の子って事ッスけどね
まー子供とかのが誘いやすいとかそういうのもあるんスけども、やっぱり魔力自体が感情に深く関わる事に一番関係があるんス」
「子供をって…誘拐犯みたいだな、いやもしかして本当にそんな感じ?」
「人聞きの悪い!!いや確かにそんな感じだけども!!」
本当にそんな感じなのか、妖精の一族ってこんなんばっかなのか
「こ、コホン…それは一回置いといて」
「警察に連絡しといた方が良い?誘拐って罪状だっけ?」
「置いといてッ!!」
本当に置いといて良いのだろうか、やっている事は悪徳のそれだし
「この世界の警察って何番だっけ…110?」
「置いといて頼むから!!話進まないってか私の自由の危機ッ!!」
しかし今はまだ聞きたい事があるのでサツにチクるのは後にしてやるとして、それよりも何故目当てが少女なのかが気がかりだ
「子供の、それも女の子っていうのは感情豊かなもんッス
それにその中でも特に魔力を引き出せる、心の底から信じる事の出来るという『真の心』の素質を持つ少女が一番の適任だったんスよ」
「成程ね、その素質の持ったのがかない達と…」
「そういう事ッス!!」
アイリスはニッコリと笑顔で大きく頷いた
「…戦わされる方にとっちゃ、迷惑極まりないな」
いや街が危険という意味では仕方ないのだろうが
「ち、ちゃんと了承得た上だからセーフ…セーフッスよね?」
いやセーフも事も何もそもそも女子中学生に怪し過ぎる契約してる時点でヤバい様な気が…いやよそう俺の勝手な妄想以下略

「…ん?待った、その魔法ってのは色んなモンに使えんのか?」
「そりゃそうッス!!戦闘から日常にと用途は様々、果ては炊事洗濯掃除とあらゆる家事のサポートまでこなせる万能エネルギーッス!!」
「や、そんな通販みたいな言い方されても」
と、ツッコミどころはあるもののある程度汎用は効く力の模様、ならば
「て事はアレか、あの髪の色とかアホ毛とか服とか変わるのも魔法か?」
ただしが言っているのは所謂魔法少女特有の変身の事である
「そうッスね、アレも『変身メタモルフォーゼ』という魔法少女化する魔法なんでス!!
…あ、アホ毛に関しては本人達ちょっと気にしてるっぽいんでそっとしてあげてッス、魔法少女の仕様なんで」
実は挿絵を見れば分かると思うが魔法少女三人は(主に作者の特徴訳兼個性出しの都合によって)それぞれ別のデカいアホ毛があるのだ
因みに一本で丸まってるのがレッドことかないでピンと立っているのがブルーことゆめみ、二つに別れてるのがグリーンもといのぞみである
「いやでも魔法少女のどこにアホ毛要素がひつよ」
「仕様なんで」
「…あっ、ハイ」
無理矢理ゴリ押しによって何か知らんけど強引に誤魔化されたアホ毛設定は兎も角、アイリスはその変身自体の問いに答えようとした
「まぁ要は魔法を使える様にする魔法でスね、変身すると魔力が身体中に駆け巡り身体能力や耐久力も爆上がりっ!!
更にセットで認識阻害魔法によって正体バレも無い安心設計ッス!!」
「だからそんな通販みたいな説明止めなさい」
この妖精モドキはネットショッピングにでもハマっているのか、何にせよ何故かテンション高いのは間違いないのだが
「で、でも実際隠れて魔法少女出来るんで結構役には立ってるんスよ!?学校生活にも支障無いってあの三人からの声もあるッス!!」
確かに正体を隠せる能力というのは日常生活を変わりなく過ごす為には欠かせないもの、案外魔法というものは厄介なものなのかも知れない

が、一つ忘れてる点がある
「んー、て事はアイツら正体隠してんの?」
「らしいッスね」
「…戦闘中とか、名前で呼んでるけど本当にバレないの?」
「…………」
押し黙るアイリス、頭を抱えそうになるただし
この世界のヒーローは色んな意味でずさん過ぎやしないのか
「ま、まぁ今んとこバレて無いッスし…」
「ちゃんと注意しとけよ、一応」
「……はい」
念入りに忠告し最初の質問を終えた、異世界に悩む異世界攻略済み転生者
というか妖精共々この時点でかなり疲れきっているのであった





しかし小説の尺は待ってくれないのだ、ましてギャグ回などは
「んじゃ次の質問、良い?」
「切り替え早っ!?」
休憩させる暇もする暇も無くただしは二つ目の質問に移った、いやまぁ合計すると二つ目どころでは無いのだがそこはどうでも良いので置いておく
「別に良いッスけど…アンタも大概暇なんでスね」
「余計なお世話だこの野郎」
こんな茶番回に出てきている時点でそんなもんお察しである

「で、次の質問だが…怪人が出てくるってのはこの街だけなのか?」
ただしの質問は如何にも今更それ聞くのかとでも思ってしまうようなものではある、のだがコレ実は割と重要な情報でもある
「そうでスね、少なくともこの街以外にってのは聞いた事が無いッス」
アイリスは当然そうにそう言った、だがそれがおかしいのだ
「…もう一つ聞く、怪人ってのは自然発生するのか?」
「多分そうッスねぇ、まだ前の組織も残ってるかもッスけどね」
読者の皆様はもうお気付きだろうか、この答えの変な所が
「この街にゃ何かあんのかよ、そんな怪人が狙うようなモンが」
「…あー、ただしさんの疑問はそういう事ッスか!!」
幾らポンコツでネタキャラほぼ一歩手遅れといえども流石は国から選ばれた使者の妖精、察しはそこまで悪くは無い様ではある
要は、怪人が何故である
「そういう事、で怪人ってのの目的ってのはそもそも何なんだ?」
もしも本当にただの自然発生ならばこの街にしか現れないなんてのはおかしいだろう、普通は少なからず他の場所にも出てくる筈だ
となるとこの街自体、余程の何かがあるとしか思えないだろう
だがアイリスはその理由に関して何か、いやかなり知っている様子だ
「そういう事なら簡単ッスよ

実はこの街、てかこの辺りの土地から魔力が物凄く湧いてくるんスよ」
「はい?」
待った、湧いて出るってなんだ湧いて出るって
「いやー何故かは知らんッスけどもこの辺りは魔力が自然発生している様でしてね、魔法少女が存在するには事欠かない場所なんスよ」
「待った、色々待った」
妖精族のアイデンティティが現在進行形で物凄く激減している様な気がする、妖精族限定オリジナルのエネルギーじゃねぇのか
「妖精の皆は此処の土地の人間が地面掘ったら遥か昔の妖精の集団か何かが秘蔵用に封印してたエネルギーが湧いたんじゃないかって噂ッス」
「そんな埋蔵金か温泉じゃないんだから」
兎に角色々とツッコミどころはあるものの、ただしは取り敢えずアイリスの話を落ち着いて聞き続ける事にした

「まぁでも実際問題、その魔力は怪人にも影響があるらしくッスねぇ
アイツら自然発生した魔力で雑草みたいに生まれてくるんッスよ、魔法少女からしたらザコッスけど人からしたら割とガチな方で脅威なんで…」
「そりゃそうか、あんなに街を真っ黒にされちゃ堪んないだろうに」
事実魔力によって自然発生されていると思われるドロドローンという怪人は汚染能力があり、少なくとも生身の人間じゃとても歯が立たない
ましていつもの様に集団で襲ってこられては対抗すら出来ないだろう
「そんな理由もあってかないさん達を選んだんスよ、この土地に住んでるのなら色々と困らない上にやりやすいでスしねー
…あの破天荒な性格さえ除けば、ッスけども」
「ポジティブには困んないし良いんじゃねーの」
「あの、加減って知ってまス?」
アイリスは不本意そうな顔をして俯きながらそう言う

「…っていうか!!
私にとっちゃただしさんのがもっと酷いと思うんスけどもねぇ!?本当に超能力者というか人間なんスか、てか生物というか有機物なんスか!?」
かと、思えばいきなり顔を上げてただしの方に勢い良く指をさした
いや当然といえば当然な疑問なんだが、五話目に来て物凄く今更な気もする
「はっはっは失礼な、俺はただの超能力持ってるだけの凡人バンピーですよ」
「こんな超ド級人型最終兵器みたいな一般人がいてたまるか!!
魔力も無いのにあんな超威力パンチとかビームどうやって出してんスか!?」
勿論の事ではあるがこの世界の人間は某緑色の巨体ヒーローみたいな怪力なんて持ち合わせても無いし目からビームなんて出せないのである
あくまでただの人間である、あくまで
「んー?何かこう…力を溜めて放つ、みたいな感じで
あ、それならどうせ空気中に魔力があるってんなら気合いか何かで吸収して、コレと同じ要領で光線技とか色々いけそうか…?」
「やめて!!マジで出来そうだからやめて!?」
「こう、ぬぅうぅぅ~…って、あっ何か若干それっぽい感じのが出来て…」
「だからやめろっつってんでしょうが!!私どころか魔法少女まで存在意義とアイデンティティがマジで無くなるんだよコッチ!!!!」
そうただしへ必死に訴えかけるアイリスの顔面は、眼力が半端無かったそうな

「あー、というかさ」
「ハァハァ…つ、次は一体何スか?」
「次ってなんだ次って、お前の出番横取りすんぞ」
「やめてください(主に私の存在感が)しんでしまいまス」
ボケる側なのに一気に疲れ切っていたアイリスを他所に、ただしは自然発生する魔力とやらに関して話続けに質問を投げつけようとする
「さっき俺が魔力を取り込もうとしたのは、まぁ…別の問題として」
「置いちゃ駄目な気が…」
しかし話も続かないのでこのままスルーする
…ぶっちゃけ後もうちょい位でこの回終わりになりますし
「そんな得体の知れないエネルギー空気中に蔓延してるって、普通の人間にゃ多少有害になりそうだけどもそこんとこどうなの?」
まぁ感情に大きく左右される様な得体のしれないエネルギーなんて、一体人間にどんな影響があるかも分からないもんである
で、実際どうなのかというと
「あぁ、その事なら余裕で大丈夫ッスよ?
人間には魔力に対しては体質的に機能しないし素通りするんで、てかそもそも魔力そのもの自体妖精以外に影響無いッスし」
全然そんな大変な事は無かったのである
「つくづく分からん力だなー、正に妖精オリジナルってとこか」
「いやぁだからこその妖精だけの力でスし、というか本当に悪影響とかあったらこの街自体既に閉鎖されてまスし…」
言われてみればそらそうである、っていうかそんなんあったらゾンビゲーも真っ青のバイオテロである
「まぁそりゃあそうだよなー、流石妖精族かー」
「そうッスよ!!妖精あってこその魔法少女なんスからねっ!!」
ただしはそりゃあそうかという様な顔で座りながら寄りかかり、アイリスもそれに乗っかる様にまた調子に乗り始めた
妖精族オリジナルの力というもの間違っては無い、だが
「それもそうか、はっはっは」
「はっはっはっ!!」

(…いやあの、アンタその使えない筈のさっきほぼ吸収して使いかけてたよね、思いっきり目の前で使おうとしてたよね?
マジで何なのこの人、もう色々と怖いんスけど!?)
どれもこれも今更だが内心焦りまくりのアイリスであった
「どうした?」
「あぁいや何でもないッス…」
そのアイリスの表情は既に疲れ切った様なものだったという
「顔色悪いぞー、帰った方が良いんじゃねーの?」
「あぁうんそうさせてもらいますッス、もう色々と疲れた…」
「ってマジで帰んの?もうちょいしつこいと思ってたんだけど」
「ええその通りッスよ、誰かさんがつかれさせなきゃねぇ!!」
結構本気な感じのトーンの切れ方である、これ以上はあまり弄ってやらない方が一応可哀想でもあるし良いだろう
だがしかしアイリスの体力とかその他諸々が犠牲になったとはいえ有益な情報も聞けたし、魔法とやらの存在も何となく分かっただろう
なによりアイリスにとっても当初の目的である「そこそこ有能アピール」というものも、本当にそこそこっぽいけど一応出来ただろう
つまり今回の目的は割と成せたという事だ
「それなら仕方ないな…お疲れ様、今回の予習復習忘れんなよー」
「アンタは私の教師か!!
ったく、疲れたのは誰のせいだと思ってるんスか…」
五割程は悪ノリしたこの男も悪いけど、そもそも自分から来たのはアイリスである
という事を考える余裕も無いままアイリスはふよふよと玄関に移動し、そのまま疲れ切った背中を見せながらドアを開けて帰った
「おつかれちゃーん」
そしてただしもまたソファーにダイブし豪快に寝転がって、さっきまでの事が無かったかの様にだらけ始めたのであった




「あ、そういやもう一つだけちょっと聞くの忘れてた」
と、その時一個だけ最後に質問し忘れた事を思い出したただし
と言ってもそれは本当に一つだけで、それも今はそこまで必要というわけでも無くコレを言うと質問もキリが無くなってしまうのだが
だがそれでも分からなかった手前、気になってしまうものだ
ただしは少し物欲しそうな顔をしながらも仕方ないとばかりに目を瞑り、静かに寝息を立てて寝始め様とした

そのもう一つの質問というのは
「…何で、怪人も魔力の影響があるんだろうな」
そう一言だけ、そう言って






ーーーー

その頃、とある黒い城の大きな王の間
そこには前の様にある正体不明の少女が堂々と居座り、フードを被りながら部下の様子を上から見下げている
が、どうやら今日に限っては何やら城の様子がいつもと違う様だ、城全体のモノの動きがかなり慌ただしくなってきている
まるで何かを仕掛けようと準備してるかの様に
そんな時に少女は前で頭を下げている怪人に話しかけていた、どうやら前の怪しそうで変な語尾の怪人とはまた別の個体の様だ
「さてと…様子はどうだい?」
「はっ、準備は滞り無く順調に進んでいます」
怪人は頭を下げたまま、少女の問いに答える
「そうかそうかそれは良い事だね…
…という事は、明日にでも実行は出来そうかい?」
「…はい、計画通りに」
頷く怪人を見て少女はどうやらご満悦の様子
「それじゃあきっちり計画通りに頼むよ、明日にでも出るあの騎士くんにもちゃんとよろしく頼むよとでも言っておいてくれ」
「了解です、それでは私はこれにて」
そう言って部下らしき怪人は静かに持ち場に戻っていった
少女は腰を落ち着かせて眺める様に部下達の慌ただしそうな様子を眺めながら、口元の口角をほんの少しだけ上げた
「さて…あの魔法少女達、それとあの男はどう動くかな?

…戦争の、始まりだよ」
その少女はふんぞり返って、笑っていた




《第五話に続く!!》
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