6 / 44
お兄様の婚約者
しおりを挟む
「あっ!」
「どうかされましたか?」
「ううん。お兄様ってどこにいる?」
私としたことがお兄様の婚約者事情を聞き忘れていたわ。
「午前中は剣術の授業で訓練場にいるそうです。エレナ様は今から刺繍の授業ですね」
「今から訓練場に向かうわっ」
「えっ!? ちょっ、エレナ様っ」
刺繍って苦手なのよね。何度も針を指に刺してしまうからあまりやりたくないの。
トタタタッ
「淑女は走ってはいけませんよ」
「っ!!」
ソフィーに捕まってなるものかと訓練場へ足早に向かっていると、お母様に見つかってしまった。
そうそう、あの女医はあの後早々に縁を切ったそう。お父様やお母様の学園の後輩の男爵令嬢だったようで、学生時代からお父様に恋をしていたみたい。そのせいで結んでいた婚約も解消し、まだ独身で行き遅れって言われているらしく…25歳で行き遅れって世知辛い世の中よね。
ちなみにこの話はソフィーから聞いたの。ソフィーのお母さんがお母様の専属侍女で、お母様達が話しているのをたまたま聞いたんだって。
それにしても学生時代からずっと好意を持ち続けられるって、さすがメインヒーローの父親だわ。
「それにまだ病み上がりなのですから無理をしてはいけませんよ」
「ごめんなさい」
「あら? 今から刺繍の授業ではなかったですか?」
「ぎくっ」
訓練場に行く願いは叶わず授業へ強制連行されてしまった。みっちりと授業を受け昼食をとりに食堂へ向かう途中、ようやく念願のお兄様に会えた。
「お兄様っ」
「おいでエレナ。……っ!! その指どうしたの?」
「刺繍の授業だったのです」
「あぁ…痛いよね? 大丈夫? たくさん怪我しちゃってる」
私の手を取り包帯を巻いている指を撫でている。この世界には絆創膏がなく、どれだけ小さな傷でも包帯を巻かれてしまう。だから見た目ほど酷くはないんだよ?
「お兄様こそ怪我はないですか?」
「僕は大丈夫だよ」
「よかったです。そう言えば、お兄様は刺繍入りのハンカチを貰ったことはあるのですか?」
すでに婚約していたら貰っているかもって思ったの。我ながら良い流れで婚約者の話に持っていけたわ。
「お母様から貰ったことがあるよ。エレナは今ハンカチに刺繍をしているの?」
「そうなのです。婚約者の人に贈るのですよね? お兄様に婚約者は…?」
「僕に婚約者はいないよ。エレナもだね。だからエレナが初めて刺繍したハンカチは僕にちょうだいね?」
私が贈る理由に繋がる意味は分からないけど、お兄様にはまだ婚約者がいないってことは分かった。
話が出るのは…7歳以降? 7歳になったらお茶会が始まるってマナー講師が言っていたもの。お友達を作るのがそこからになるから、きっと婚約者もそれ以降なのね。ってことは後1年あるから…この世界の事を知って悪役令嬢を幸せにする方法をいくつか考えておこう!
そういえば…シスコンの人って尽くすタイプだって、前世ネットか雑誌か…何かで見た気がする。庇護欲が強いから、姉妹と同じように恋人にも尽くしたいと思うようになれば、沢山の愛情を向けるとかなんとか。
ん? 待て待て………だから主人公を好きになった…の? 確かに守ってあげなきゃって思ってしまう可愛らしい女の子だったし。って、漫画では私がいたかどうか分からないんだったわ。
「エレナ?」
「あ、ごめんなさい。早く食堂へ向かいましょう。昼食はなんですかね。楽しみです」
「エレナの好きなりんごがデザートで出るみたいだよ。たくさん食べたかったら僕の分もあげるからね」
「やった。お兄様大好きっ」
あっ…こういうのがダメ? でも今まで当たり前のように言っていたから…慣れって怖いわね。でも私達まだ小さいし、ちょっとくらい甘やかされたままでも問題ないよねっ!
「どうかされましたか?」
「ううん。お兄様ってどこにいる?」
私としたことがお兄様の婚約者事情を聞き忘れていたわ。
「午前中は剣術の授業で訓練場にいるそうです。エレナ様は今から刺繍の授業ですね」
「今から訓練場に向かうわっ」
「えっ!? ちょっ、エレナ様っ」
刺繍って苦手なのよね。何度も針を指に刺してしまうからあまりやりたくないの。
トタタタッ
「淑女は走ってはいけませんよ」
「っ!!」
ソフィーに捕まってなるものかと訓練場へ足早に向かっていると、お母様に見つかってしまった。
そうそう、あの女医はあの後早々に縁を切ったそう。お父様やお母様の学園の後輩の男爵令嬢だったようで、学生時代からお父様に恋をしていたみたい。そのせいで結んでいた婚約も解消し、まだ独身で行き遅れって言われているらしく…25歳で行き遅れって世知辛い世の中よね。
ちなみにこの話はソフィーから聞いたの。ソフィーのお母さんがお母様の専属侍女で、お母様達が話しているのをたまたま聞いたんだって。
それにしても学生時代からずっと好意を持ち続けられるって、さすがメインヒーローの父親だわ。
「それにまだ病み上がりなのですから無理をしてはいけませんよ」
「ごめんなさい」
「あら? 今から刺繍の授業ではなかったですか?」
「ぎくっ」
訓練場に行く願いは叶わず授業へ強制連行されてしまった。みっちりと授業を受け昼食をとりに食堂へ向かう途中、ようやく念願のお兄様に会えた。
「お兄様っ」
「おいでエレナ。……っ!! その指どうしたの?」
「刺繍の授業だったのです」
「あぁ…痛いよね? 大丈夫? たくさん怪我しちゃってる」
私の手を取り包帯を巻いている指を撫でている。この世界には絆創膏がなく、どれだけ小さな傷でも包帯を巻かれてしまう。だから見た目ほど酷くはないんだよ?
「お兄様こそ怪我はないですか?」
「僕は大丈夫だよ」
「よかったです。そう言えば、お兄様は刺繍入りのハンカチを貰ったことはあるのですか?」
すでに婚約していたら貰っているかもって思ったの。我ながら良い流れで婚約者の話に持っていけたわ。
「お母様から貰ったことがあるよ。エレナは今ハンカチに刺繍をしているの?」
「そうなのです。婚約者の人に贈るのですよね? お兄様に婚約者は…?」
「僕に婚約者はいないよ。エレナもだね。だからエレナが初めて刺繍したハンカチは僕にちょうだいね?」
私が贈る理由に繋がる意味は分からないけど、お兄様にはまだ婚約者がいないってことは分かった。
話が出るのは…7歳以降? 7歳になったらお茶会が始まるってマナー講師が言っていたもの。お友達を作るのがそこからになるから、きっと婚約者もそれ以降なのね。ってことは後1年あるから…この世界の事を知って悪役令嬢を幸せにする方法をいくつか考えておこう!
そういえば…シスコンの人って尽くすタイプだって、前世ネットか雑誌か…何かで見た気がする。庇護欲が強いから、姉妹と同じように恋人にも尽くしたいと思うようになれば、沢山の愛情を向けるとかなんとか。
ん? 待て待て………だから主人公を好きになった…の? 確かに守ってあげなきゃって思ってしまう可愛らしい女の子だったし。って、漫画では私がいたかどうか分からないんだったわ。
「エレナ?」
「あ、ごめんなさい。早く食堂へ向かいましょう。昼食はなんですかね。楽しみです」
「エレナの好きなりんごがデザートで出るみたいだよ。たくさん食べたかったら僕の分もあげるからね」
「やった。お兄様大好きっ」
あっ…こういうのがダメ? でも今まで当たり前のように言っていたから…慣れって怖いわね。でも私達まだ小さいし、ちょっとくらい甘やかされたままでも問題ないよねっ!
60
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたので田舎で猫と暮らします
たくわん
恋愛
社交界の華と謳われた伯爵令嬢セレスティアは、王太子から「完璧すぎて息が詰まる」と婚約破棄を告げられる。傷心のまま逃げるように向かったのは、亡き祖母が遺した田舎の小さな屋敷だった。
荒れ果てた屋敷、慣れない一人暮らし、そして庭に住みついた五匹の野良猫たち。途方に暮れるセレスティアの隣には、無愛想で人嫌いな青年医師・ノアが暮らしていた。
「この猫に構うな。人間嫌いだから」
冷たく突き放すノアだが、捨て猫を保護し、傷ついた動物を治療する彼の本当の姿を知るうちに、セレスティアの心は少しずつ惹かれていく。
猫の世話を通じて近づく二人。やがて明かされるノアの過去と、王都から届く縁談の催促。「完璧な令嬢」を脱ぎ捨てた先に待つ、本当の自分と本当の恋——。
引きこもり少女、御子になる~お世話係は過保護な王子様~
浅海 景
恋愛
オッドアイで生まれた透花は家族から厄介者扱いをされて引きこもりの生活を送っていた。ある日、双子の姉に突き飛ばされて頭を強打するが、目を覚ましたのは見覚えのない場所だった。ハウゼンヒルト神聖国の王子であるフィルから、世界を救う御子(みこ)だと告げられた透花は自分には無理だと否定するが、御子であるかどうかを判断するために教育を受けることに。
御子至上主義なフィルは透花を大切にしてくれるが、自分が御子だと信じていない透花はフィルの優しさは一時的なものだと自分に言い聞かせる。
「きっといつかはこの人もまた自分に嫌悪し離れていくのだから」
自己肯定感ゼロの少女が過保護な王子や人との関わりによって、徐々に自分を取り戻す物語。
差し出された毒杯
しろねこ。
恋愛
深い森の中。
一人のお姫様が王妃より毒杯を授けられる。
「あなたのその表情が見たかった」
毒を飲んだことにより、少女の顔は苦悶に満ちた表情となる。
王妃は少女の美しさが妬ましかった。
そこで命を落としたとされる少女を助けるは一人の王子。
スラリとした体型の美しい王子、ではなく、体格の良い少し脳筋気味な王子。
お供をするは、吊り目で小柄な見た目も中身も猫のように気まぐれな従者。
か○みよ、○がみ…ではないけれど、毒と美しさに翻弄される女性と立ち向かうお姫様なお話。
ハピエン大好き、自己満、ご都合主義な作者による作品です。
同名キャラで複数の作品を書いています。
立場やシチュエーションがちょっと違ったり、サブキャラがメインとなるストーリーをなどを書いています。
ところどころリンクもしています。
※小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿しています!
薬師の能力を買われた嫁ぎ先は闇の仕事を請け負う一族でした
あねもね
恋愛
薬師として働くエリーゼ・バリエンホルムは貴族の娘。
しかし両親が亡くなって以降、叔父に家を追い出されていた。エリーゼは自分の生活と弟の学費を稼ぐために頑張っていたが、店の立ち退きを迫られる事態となる。同時期に、好意を寄せていたシメオン・ラウル・アランブール伯爵からプロポーズを申し込まれていたものの、その申し出を受けず、娼館に足を踏み入れることにした。
エリーゼが娼館にいることを知ったシメオンは、エリーゼを大金で身請けして屋敷に連れ帰る。けれどそこは闇の仕事を請け負う一族で、シメオンはエリーゼに毒薬作りを命じた。
薬師としての矜持を踏みにじられ、一度は泣き崩れたエリーゼだったが……。
――私は私の信念で戦う。決して誰にも屈しない。
逆行したので運命を変えようとしたら、全ておばあさまの掌の上でした
ひとみん
恋愛
夫に殺されたはずなのに、目覚めれば五才に戻っていた。同じ運命は嫌だと、足掻きはじめるクロエ。
なんとか前に死んだ年齢を超えられたけど、実は何やら祖母が裏で色々動いていたらしい。
ザル設定のご都合主義です。
最初はほぼ状況説明的文章です・・・
元王太子妃候補、現王宮の番犬(仮)
モンドール
恋愛
伯爵令嬢ルイーザは、幼い頃から王太子妃を目指し血の滲む努力をしてきた。勉学に励み、作法を学び、社交での人脈も作った。しかし、肝心の王太子の心は射止められず。
そんな中、何者かの手によって大型犬に姿を変えられてしまったルイーザは、暫く王宮で飼われる番犬の振りをすることになり──!?
「わん!」(なんでよ!)
(『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)
契約結婚の相手が優しすぎて困ります
みみぢあん
恋愛
ペルサル伯爵の婚外子リアンナは、学園に通い淑女の教育を受けているが、帰宅すれば使用人のような生活をおくっていた。 学園の卒業が近くなったある日、リアンナは父親と変わらない年齢の男爵との婚約が決まる。 そんなリアンナにフラッドリー公爵家の後継者アルベールと契約結婚をしないかと持ちかけられた。
狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します
ちより
恋愛
侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。
愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。
頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。
公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる