推しの悪役令嬢を幸せにします!

みかん桜

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お兄様の婚約者

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「あっ!」
「どうかされましたか?」
「ううん。お兄様ってどこにいる?」

 私としたことがお兄様の婚約者事情を聞き忘れていたわ。

「午前中は剣術の授業で訓練場にいるそうです。エレナ様は今から刺繍の授業ですね」
「今から訓練場に向かうわっ」
「えっ!? ちょっ、エレナ様っ」

 刺繍って苦手なのよね。何度も針を指に刺してしまうからあまりやりたくないの。

 トタタタッ

「淑女は走ってはいけませんよ」
「っ!!」

 ソフィーに捕まってなるものかと訓練場へ足早に向かっていると、お母様に見つかってしまった。

 そうそう、あの女医はあの後早々に縁を切ったそう。お父様やお母様の学園の後輩の男爵令嬢だったようで、学生時代からお父様に恋をしていたみたい。そのせいで結んでいた婚約も解消し、まだ独身で行き遅れって言われているらしく…25歳で行き遅れって世知辛い世の中よね。

 ちなみにこの話はソフィーから聞いたの。ソフィーのお母さんがお母様の専属侍女で、お母様達が話しているのをたまたま聞いたんだって。

 それにしても学生時代からずっと好意を持ち続けられるって、さすがメインヒーローの父親だわ。

「それにまだ病み上がりなのですから無理をしてはいけませんよ」
「ごめんなさい」
「あら? 今から刺繍の授業ではなかったですか?」
「ぎくっ」

 訓練場に行く願いは叶わず授業へ強制連行されてしまった。みっちりと授業を受け昼食をとりに食堂へ向かう途中、ようやく念願のお兄様に会えた。

「お兄様っ」
「おいでエレナ。……っ!! その指どうしたの?」
「刺繍の授業だったのです」
「あぁ…痛いよね? 大丈夫? たくさん怪我しちゃってる」

 私の手を取り包帯を巻いている指を撫でている。この世界には絆創膏がなく、どれだけ小さな傷でも包帯を巻かれてしまう。だから見た目ほど酷くはないんだよ?

「お兄様こそ怪我はないですか?」
「僕は大丈夫だよ」
「よかったです。そう言えば、お兄様は刺繍入りのハンカチを貰ったことはあるのですか?」

 すでに婚約していたら貰っているかもって思ったの。我ながら良い流れで婚約者の話に持っていけたわ。

「お母様から貰ったことがあるよ。エレナは今ハンカチに刺繍をしているの?」
「そうなのです。婚約者の人に贈るのですよね? お兄様に婚約者は…?」
「僕に婚約者はいないよ。エレナもだね。だからエレナが初めて刺繍したハンカチは僕にちょうだいね?」

 私が贈る理由に繋がる意味は分からないけど、お兄様にはまだ婚約者がいないってことは分かった。

 話が出るのは…7歳以降? 7歳になったらお茶会が始まるってマナー講師が言っていたもの。お友達を作るのがそこからになるから、きっと婚約者もそれ以降なのね。ってことは後1年あるから…この世界の事を知って悪役令嬢を幸せにする方法をいくつか考えておこう!

 そういえば…シスコンの人って尽くすタイプだって、前世ネットか雑誌か…何かで見た気がする。庇護欲が強いから、姉妹と同じように恋人にも尽くしたいと思うようになれば、沢山の愛情を向けるとかなんとか。

 ん? 待て待て………だから主人公を好きになった…の? 確かに守ってあげなきゃって思ってしまう可愛らしい女の子だったし。って、漫画では私がいたかどうか分からないんだったわ。

「エレナ?」
「あ、ごめんなさい。早く食堂へ向かいましょう。昼食はなんですかね。楽しみです」
「エレナの好きなりんごがデザートで出るみたいだよ。たくさん食べたかったら僕の分もあげるからね」
「やった。お兄様大好きっ」

 あっ…こういうのがダメ? でも今まで当たり前のように言っていたから…慣れって怖いわね。でも私達まだ小さいし、ちょっとくらい甘やかされたままでも問題ないよねっ!




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