【本編完結】運命の番〜バニラとりんごの恋〜

みかん桜

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96.卒業式

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 窓から差し込む温かな光が、教室を照らしている。

「今日で高校卒業かぁ…」
「早いね」
「色々あったよな」

 事実は小説より奇なりというか…まさか入学式で運命の番に出会うなんて、誰も想像つかないよな。しかもお互い運命に抗おうとして、本能的にならず、まず友達になってさ。

 光琉と付き合ってからは幸せが続きすぎて、今でもたまに夢じゃないかって思うことがあるくらい。

 もちろん辛いことも嫌なこともあったけどな。

 それに恋愛だけじゃない。テストは嫌だけど、友達とみんなでするテスト勉強は好きだったし、文化祭も修学旅行も楽しかった。結局3年間体育祭には参加できなかったのは残念だけど。

 それでも…

「楽しかったな」
「そうだね」

 思い出がたくさんできた。

「俺、この学校に来て良かったよ」

 中学時代に比べたら新しく出来た友達は少ないけれど、信頼できる友達に出会えたから。

 大好きな人に、ずっと一緒にいたいと思える人…光琉に出会えたから。

「俺も。日向に会えたから」
「ふふ」
「どうしたの?」
「俺も今同じことを思ったからさ」

 ぎゅっと抱きしめてくれる光琉。この教室で抱きしめられるのも今日で最後か…。

 なんとなく周りの視線も、これも見納めかって言っているような気がする。……もう苦笑いするしかない。


 クラスのほとんどが同じ大学に進むとはいえ学部はバラバラ。同じ学部でも選択する授業によっては会わないくらいだし、違う学部なんて会おうとしないと会えないって姉ちゃんから聞いた。

 クラスのみんなも今は笑顔で話に花を咲かせいているけど…式が終わった後は、涙を流している人が多いんだろうな。

 席に座り、俺達も思い出話で盛り上がっていると、式の時間になったようだ。

 ちなみに答辞を読むのは稜ちゃん。成績だけなら光琉だけど、稜ちゃんは1年の時から生徒会に入っていたし…まぁ大人の忖度も働いたんだと思う。

 前に一度、光琉に生徒会に入らないのかと聞いたことがある。その時『日向との時間を削ってまで入るメリットないから』って言われたんだよな。俺も…ただでさえ目立つ光琉が、さらに目立たずに済んで良かったと思ったのが懐かしい。


 式の最中、3年間の思い出に浸っていたらしんみりとした気持ちになった。隣りにいる宇都宮にちょっかいかけられたけど…それすら最後かと思うと…あっ、泣いてないよ? 最後って言っても頭に学校ではって付くし。

「ピヨちゃん?」
「うん?」
「泣く?」
「泣かないけど」

 ただやっぱり…光琉には毎日会えるけど、みんなとは今みたいに会えなくなると思うと寂しいなって…そう思っただけ。


 無事に式も終わり教室に戻ってきた。教室や廊下でみんなが写真を撮っている。

「写真撮ろうぜ~」

 俺達も例に漏れず。

 クラスのみんなとも写真を撮って、最後に教室に残っていたクラスメイト全員で写真を撮ってから、学校を後にした。

「日向。帰ろう」
「うん///」

 実は今日、俺達は同棲するマンションに帰って一緒に過ごす予定なんだ。

「ちょっと待てって」
「卒業祝いしようって約束だろ」

 そうだった。ついうっかり忘れてたよ。

「卒業旅行、行くんだからそれでじゃん。俺と日向はもう帰るから。行こう、日向」
「え?」
「残念だな。ピヨちゃんは行きたいみたいだ」
「日向…」

 すっごく残念そうにしている光琉には悪いけど、俺…早く光琉と二人きりになりたい気持ちと、まだもう少しみんなと一緒にいたい気持ちとあるんだ。

「その…何ていうか…」
「いいよ。もう少しみんなと一緒に過ごそう」
「俺も早く帰りたいんだよ?」

 分かってるよ。と俺の思いをちゃんと分かってくれる光琉。

「ありがと」
「うん」

 俺、本当にこの学校に来て良かった。

 受験勉強、大変だったけど頑張って良かった。

 一緒に頑張ってくれた一樹には、感謝してもしたりないくらいだな。

 それから母さんにも…感謝しないとかもな。

 だってもし小6の時点で、母さんが俺のオメガ性を受け入れてくれていたら…当時の俺の気持ちも違っていたと思うから。

 中学時代からオメガを公表し、高校も当たり前のようにオメガ校に行っていたかもしれないから。


 今までのこと、今の俺には全部必要なことだったんだな。


 なんとなく光琉に抱きつきたくて…念を送るんじゃなく、自分から光琉に抱きついてみた。

「うっ…日向が可愛い」
「…………知ってる」

 なんてな。

 
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