32 / 68
30.3人目の攻略対象者
しおりを挟む
「入学式ではラインが狙われていたのか」
「はい。講堂に向かう途中で転けてしまい、立ち上がる際にラインハルト殿下が手を貸してくれる。そういった夢を見たそうです」
ここまでのことから推測するに、手を貸してもらったことに感謝しお礼の品…恐らくクッキーあたりを殿下に渡す。それをきっかけに仲良くなる。
きっと間違ってないと思う。でも王族が、よく知らない人間から渡された物を食べるなんてあり得ないのに。
毒見されたものなら食べる? そんなわけないじゃん。王族を守るため…それよりも渡した人間を守るために食べない。だって仮に何かしらの症状が出てしまった場合、その人を容疑者の一人にしてしまうからね。
「そうか。とはいえ普通、刺客と間違えられるような事はしないものだが…」
「あまり深く考えていないのでしょうね」
ヒロインだから何をしても許されると思っているのか、転けたくらいで刺客を疑われるとは思っていなかったか…将又そのどちらもか。
「そんな事よりディア?」
「なんでしょうか」
えっ、もしかしなくてもウィル様怒ってる?
なぜ両手を掴むの? 私が逃げ出さないようにするためだって? そう言われると逃げたくなるんだけど…。
「なんでしょうか、じゃないよね?」
「えっと………」
本当に思い当たらないんだよ? と首を傾げてみる。
「可愛い顔をしたって誤魔化されないからね」
「そんなつもりはっ」
ん? 今の私可愛いの? それは鏡で確認したい! 次に困った時、使えそうだし。
「ディア」
「はい」
ちょっと思い耽けただけじゃんと口を尖らせると、コラッて額を指先でトンっと叩かれた。
「なぜすぐその場を離れなかったんだ」
「?? ……あっ! それは新しい……ではなくて、ローズさんの大声に驚いて足が動かなかったんです!」
「新情報が得られると思ったんだね」
「大声に驚いたんです」
それは本当だもん。
「はぁ…お願いだから無茶はしないでくれ」
「たまたま見かけて、避けようもなかっ………たんですけど、次からは気をつけます」
「うん。次はないからね」
「はい」
私悪くなくない? そりゃあ大声に慣れてきてからも、最後まで独り言を聞いてから教室に戻ろうと思ったよ?
………あぁ、それが悪いのか。
「分かったみたいだね」
「ごめんなさい。でも一気に解決できるかもって思ったのです」
「もういいよ。おいで、ディア」
ちゃんと反省したら、もう怒ってないよと私を抱きしめてくださった。
後ろからデイビット様の『また始まった』って言葉が聞こえてきたってことは、私達、また甘い雰囲気を醸し出しちゃった?
✽.。.:*・3年前・*:.。.✽
「ウィル様~!」
「ふふ。楽しそうだね」
「はいっ」
数日前から、私はウィル様と一緒にお母様の生家に来ている。要は母方の祖父母の家に、婚約者を連れて遊びに来たのだ。ちなみにお母様の実家も伯爵家で、叔父が現当主。
祖父母は叔父に爵位を譲った後、夫婦で旅行を楽しんでいるの。海外に行くことも少なくなく、今回お土産に珍しい木の実を持ち帰ってくれた。
それがなんとっ! カカオなの~! この世界にもあったのね!
「これがこっちのチョコレート? になるんだ…」
うんうん。初めて見ると不思議に思うよね。目を丸くしているウィル様が可愛い。
「信じられないですよね」
ふふふ~♪ カカオだけでなく、完成されたチョコレートもお土産の中にあったのだ。
残念ながらこの国にはチョコレートがなかった。そもそもカカオがなくて…えぇ、調べましたとも。まぁ、カカオがあったところで、チョコレートにする工程を知らないんだけどね。
でも他国にはあったなんて…諦めていた分嬉しすぎる~!
ではでは気を取り直しまして。一口頂いてみようじゃない。色味がビターだと主張しているのが気になるけど…
「苦すぎる」
「うん。僕、チョコレート苦手かも」
なんだコレ!? 土みたい。絶対、カカオ100%だ。
ウィル様と2人、うえぇ…っていう顔をすると、すかさずミルクを差し出された。
ふぅ。生き返るわ。
「わははっ! ディア、これは溶かし、砂糖やミルクと混ぜて飲む物だ」
「えっ!? そのまま食べたりしないのですか?」
「苦すぎるからな」
と大笑いのお祖父様。お祖母様も隣でお上品に笑っている。
なるほどね。砂糖は貴重だしミルクの消費期限も早い。後から自分好みで混ぜて飲む…これが一番理に適っているのね。
「ここにあるカカオもチョコレートも、全部ディアが持って帰っていいぞ」
いいの? これだけあれば色々作れる。
「やったぁ!! お祖父様大好き! ありがとうございますっ」
嬉しさのあまりお祖父様に抱きついた。
「ふふ。あなた、よかったですわね」
「お祖母様も大好きですっ!」
「あらまぁ。お祖母様もディアが大好きですよ」
お祖母様にも抱きつく……とウィル様に『僕も』って引き剥がされ、抱きしめられた。
私のお祖父様とお祖母様だから、ウィル様は抱きつくわけにいかないもんね。ちょっと寂しい思いをさせちゃったのかも。
「カカオからチョコレートにする工程は教えてもらえたのですか?」
「もちろんだ」
よかったぁ。どんだけ買ってきたのよってくらいここにカカオがあるから。
「実はチョコレート以外にも加工できないかと相談を受けてな」
「そうだったんですね」
だから加工方法を教えてくれたってことね。ってことは、その国でもチョコレートは完成したばっかりなのかも。
私に任せてっ! 今は飲み物としてのチョコレートを、スイーツに変化させてあげるから。工程さえ分かればこっちのものよ。
「んふふ~」
チョコレートを逆輸出…これはウィル様の実績が増える予感。
「はい。講堂に向かう途中で転けてしまい、立ち上がる際にラインハルト殿下が手を貸してくれる。そういった夢を見たそうです」
ここまでのことから推測するに、手を貸してもらったことに感謝しお礼の品…恐らくクッキーあたりを殿下に渡す。それをきっかけに仲良くなる。
きっと間違ってないと思う。でも王族が、よく知らない人間から渡された物を食べるなんてあり得ないのに。
毒見されたものなら食べる? そんなわけないじゃん。王族を守るため…それよりも渡した人間を守るために食べない。だって仮に何かしらの症状が出てしまった場合、その人を容疑者の一人にしてしまうからね。
「そうか。とはいえ普通、刺客と間違えられるような事はしないものだが…」
「あまり深く考えていないのでしょうね」
ヒロインだから何をしても許されると思っているのか、転けたくらいで刺客を疑われるとは思っていなかったか…将又そのどちらもか。
「そんな事よりディア?」
「なんでしょうか」
えっ、もしかしなくてもウィル様怒ってる?
なぜ両手を掴むの? 私が逃げ出さないようにするためだって? そう言われると逃げたくなるんだけど…。
「なんでしょうか、じゃないよね?」
「えっと………」
本当に思い当たらないんだよ? と首を傾げてみる。
「可愛い顔をしたって誤魔化されないからね」
「そんなつもりはっ」
ん? 今の私可愛いの? それは鏡で確認したい! 次に困った時、使えそうだし。
「ディア」
「はい」
ちょっと思い耽けただけじゃんと口を尖らせると、コラッて額を指先でトンっと叩かれた。
「なぜすぐその場を離れなかったんだ」
「?? ……あっ! それは新しい……ではなくて、ローズさんの大声に驚いて足が動かなかったんです!」
「新情報が得られると思ったんだね」
「大声に驚いたんです」
それは本当だもん。
「はぁ…お願いだから無茶はしないでくれ」
「たまたま見かけて、避けようもなかっ………たんですけど、次からは気をつけます」
「うん。次はないからね」
「はい」
私悪くなくない? そりゃあ大声に慣れてきてからも、最後まで独り言を聞いてから教室に戻ろうと思ったよ?
………あぁ、それが悪いのか。
「分かったみたいだね」
「ごめんなさい。でも一気に解決できるかもって思ったのです」
「もういいよ。おいで、ディア」
ちゃんと反省したら、もう怒ってないよと私を抱きしめてくださった。
後ろからデイビット様の『また始まった』って言葉が聞こえてきたってことは、私達、また甘い雰囲気を醸し出しちゃった?
✽.。.:*・3年前・*:.。.✽
「ウィル様~!」
「ふふ。楽しそうだね」
「はいっ」
数日前から、私はウィル様と一緒にお母様の生家に来ている。要は母方の祖父母の家に、婚約者を連れて遊びに来たのだ。ちなみにお母様の実家も伯爵家で、叔父が現当主。
祖父母は叔父に爵位を譲った後、夫婦で旅行を楽しんでいるの。海外に行くことも少なくなく、今回お土産に珍しい木の実を持ち帰ってくれた。
それがなんとっ! カカオなの~! この世界にもあったのね!
「これがこっちのチョコレート? になるんだ…」
うんうん。初めて見ると不思議に思うよね。目を丸くしているウィル様が可愛い。
「信じられないですよね」
ふふふ~♪ カカオだけでなく、完成されたチョコレートもお土産の中にあったのだ。
残念ながらこの国にはチョコレートがなかった。そもそもカカオがなくて…えぇ、調べましたとも。まぁ、カカオがあったところで、チョコレートにする工程を知らないんだけどね。
でも他国にはあったなんて…諦めていた分嬉しすぎる~!
ではでは気を取り直しまして。一口頂いてみようじゃない。色味がビターだと主張しているのが気になるけど…
「苦すぎる」
「うん。僕、チョコレート苦手かも」
なんだコレ!? 土みたい。絶対、カカオ100%だ。
ウィル様と2人、うえぇ…っていう顔をすると、すかさずミルクを差し出された。
ふぅ。生き返るわ。
「わははっ! ディア、これは溶かし、砂糖やミルクと混ぜて飲む物だ」
「えっ!? そのまま食べたりしないのですか?」
「苦すぎるからな」
と大笑いのお祖父様。お祖母様も隣でお上品に笑っている。
なるほどね。砂糖は貴重だしミルクの消費期限も早い。後から自分好みで混ぜて飲む…これが一番理に適っているのね。
「ここにあるカカオもチョコレートも、全部ディアが持って帰っていいぞ」
いいの? これだけあれば色々作れる。
「やったぁ!! お祖父様大好き! ありがとうございますっ」
嬉しさのあまりお祖父様に抱きついた。
「ふふ。あなた、よかったですわね」
「お祖母様も大好きですっ!」
「あらまぁ。お祖母様もディアが大好きですよ」
お祖母様にも抱きつく……とウィル様に『僕も』って引き剥がされ、抱きしめられた。
私のお祖父様とお祖母様だから、ウィル様は抱きつくわけにいかないもんね。ちょっと寂しい思いをさせちゃったのかも。
「カカオからチョコレートにする工程は教えてもらえたのですか?」
「もちろんだ」
よかったぁ。どんだけ買ってきたのよってくらいここにカカオがあるから。
「実はチョコレート以外にも加工できないかと相談を受けてな」
「そうだったんですね」
だから加工方法を教えてくれたってことね。ってことは、その国でもチョコレートは完成したばっかりなのかも。
私に任せてっ! 今は飲み物としてのチョコレートを、スイーツに変化させてあげるから。工程さえ分かればこっちのものよ。
「んふふ~」
チョコレートを逆輸出…これはウィル様の実績が増える予感。
114
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。
その事実だけを抱えて、離縁をつきつけ家を出た。
そこで待っていたのは、
最悪の出来事――
けれど同時に、人生の転機だった。
夫は、愛人と好きに生きればいい。
けれど、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。
妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。
彼女が選び直す人生と、
辿り着く本当の幸せの行方とは。
真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください
LIN
恋愛
「私には真実に愛する人がいる。私から愛されるなんて事は期待しないでほしい」冷たい声で男は言った。
伯爵家の嫡男ジェラルドと同格の伯爵家の長女マーガレットが、互いの家の共同事業のために結ばれた婚約期間を経て、晴れて行われた結婚式の夜の出来事だった。
真実の愛が尊ばれる国で、マーガレットが周囲の人を巻き込んで起こす色んな出来事。
(他サイトで載せていたものです。今はここでしか載せていません。今まで読んでくれた方で、見つけてくれた方がいましたら…ありがとうございます…)
(1月14日完結です。設定変えてなかったらすみません…)
10回目の婚約破棄。もう飽きたので、今回は断罪される前に自分で自分を追放します。二度と探さないでください(フリではありません)
放浪人
恋愛
「もう、疲れました。貴方の顔も見たくありません」
公爵令嬢リーゼロッテは、婚約者である王太子アレクセイに処刑される人生を9回繰り返してきた。 迎えた10回目の人生。もう努力も愛想笑いも無駄だと悟った彼女は、断罪イベントの一ヶ月前に自ら姿を消すことを決意する。 王城の宝物庫から慰謝料(国宝)を頂き、書き置きを残して国外逃亡! 目指せ、安眠と自由のスローライフ!
――のはずだったのだが。
「『顔も見たくない』だと? つまり、直視できないほど私が好きだという照れ隠しか!」 「『探さないで』? 地の果てまで追いかけて抱きしめてほしいというフリだな!」
実は1周目からリーゼロッテを溺愛していた(が、コミュ障すぎて伝わっていなかった)アレクセイ王子は、彼女の拒絶を「愛の試練(かくれんぼ)」と超ポジティブに誤解! 国家権力と軍隊、そしてS級ダンジョンすら踏破するチート能力を総動員して、全力で追いかけてきた!?
物理で逃げる最強令嬢VS愛が重すぎる勘違い王子。 聖女もドラゴンも帝国も巻き込んだ、史上最大規模の「国境なき痴話喧嘩」が今、始まる!
※表紙はNano Bananaで作成しています
【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。
《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
※他サイト様にも掲載中です
いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!
夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。
しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。
ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。
愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。
いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。
一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ!
世界観はゆるいです!
カクヨム様にも投稿しております。
※10万文字を超えたので長編に変更しました。
好きだった人 〜二度目の恋は本物か〜
ぐう
恋愛
アンジェラ編
幼い頃から大好だった。彼も優しく会いに来てくれていたけれど…
彼が選んだのは噂の王女様だった。
初恋とさよならしたアンジェラ、失恋したはずがいつのまにか…
ミラ編
婚約者とその恋人に陥れられて婚約破棄されたミラ。冤罪で全て捨てたはずのミラ。意外なところからいつのまにか…
ミラ編の方がアンジェラ編より過去から始まります。登場人物はリンクしています。
小説家になろうに投稿していたミラ編の分岐部分を改稿したものを投稿します。
私は既にフラれましたので。
椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…?
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる