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しおりを挟む――おまえもガキをよく見てみろ。ビビってないで
「………」
体験学習二日目の朝。
俺はチャリを漕いでいた。
……てか別に、ビビってねーし
俺はただ、仲良くなりたいだけなのだ。
テキトーな事言いやがって、と小さく舌打ちする。
昨日あまり眠れなかったからか、なんだか朝日が目にしみた。
「おはようございます」
教室に入るなり、それまで騒がしかった室内が静かになった。
集中する園児たちの視線が痛い。
「あゆむくん、おはよう」
「………」
……うん、無視されたからってめげてる場合じゃねぇな
そう自分を励ましつつ、園の先生に教わったとおりに膝をついて目線を合わせる。
「何して遊んでるの?」
「……っ、」
その表情を見て、やべっと反射的に身構える。
そして気づいた。
確かに、目の前の泣きだしそうな子どもにビビっている自分がいた。
結局その日も、園児と関わるどころかまともに会話すら出来ずに終わろうとしていた。
「………」
……やっぱ、向いてねーのかな…
大きな溜め息を吐く。
今日一日、なんとか園児たちと交流を持とうと四苦八苦した結果がこれだ。
――まだ慣れてないだけよ、
色々サポートしてくれた園の先生達はそう励ましてくれたけど、さすがに心が折れそうだった。
よく人は見た目じゃないとかっていうけど、見た目ってすごく重要だと思う。
子どもに限らず誰だって、優しそうな人の方がいいに決まってる。
「ねぇ、」
「………」
「ねぇってば」
園庭でぼんやりしていると、エプロンの裾を引っ張られた。
「……え?あ、何?」
そこに立っていたのは、髪を二つに結んだ見覚えのある女の子だった。
名札にはひよこぐみ、くさかべりおん、と書いてある。
「どうしたの?りおんちゃん」
しゃがんで顔を覗きこむ。
「………」
りおんちゃんは大人しそうな子だった。
元気に走りまわっている子達とは違って、よく一人で絵本を読んでいたような気がする。
「………。あそんであげても、いいよ」
「……え、」
「どうせヒマだし」
みんなかえっちゃったし、とりおんちゃん。
「あ、じゃあ…何して遊ぶ?」
「………。おりがみ」
りおんちゃんの両親は共働きで、とても忙しいらしい。
だからいつも遅くまで園に残っていた。
「はい、できた」
「すごーい!」
尻尾を引っ張ると羽がぱたぱたと動く鳥を見て、りおんちゃんは歓声をあげた。
俺は子どもの頃から、手先の器用さだけが取り柄だった。
「ねぇねぇ、もっとつくって!」
目をきらきらさせて、りおんちゃんは俺を見る。
「つぎはおはながいい!」
「……いいよ」
なんだか胸が、じんと痺れた。
そして八時を過ぎた頃、りおんちゃんのお母さんが迎えに来た。
「遅くまですみません、ありがとうございました」
「いえっ、そんな」
「たくさん作ってもらってよかったね、りおん」
「うん!」
……ああ、
なんだろ、これ。
ぼんやりとしたまま見送りに出ようとした時、りおんちゃんにエプロンの裾を引っ張られた。
「ねぇ」
「ん?」
「げんき、でた?」
「……え、」
「あしたもまた、あそんでくれる?」
うん、と頷くとりおんちゃんは笑った。
「やくそくだよ!」
「なんだ、上手くやってるみたいじゃねーか」
園の前でりおんちゃんを見送っていた俺は、その声にぎょっとして振り向いた。
「つまんねーな。てか何おまえ、泣いてんの?」
「……っ泣いてないっすよ!てゆうかなんでここに」
「巡回だよ」
もーめんどくせーのなんのって、と早川はぶつぶつ言う。
「……てか、ガキに同情されるとか」
「………」
……聞いてたのかよ…
それから早川はずっとニヤニヤしてたけど。
胸がいっぱいだった俺は、まったく嫌な気持ちにならなかった。
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