迷子猫(BL)

kotori

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第2章

3.

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「…は…あ…っ、」

寺嶋は時間をかけて、俺を抱いた。

「……も…っ…」

……どんだけ焦らす気だよ!!

少しずつ与えられる快感がもどかしくて身体はどんどん敏感になって、もうおかしくなりそうだった。

「……もっと酷くしても…平気だから、」

耐えられなくなってそう言うと、寺嶋は顔をあげた。

「それは嫌だ」
「………」
「そんなことできないし、したくない」

そっと額に口づけられる。

「あ、でも技術的なものは頑張る」
「……、好きにすれば」

なんなんだろう、この感じ。
言葉には言いあらわせない、この気持ち。





「……っ、ソコじゃ、なくて…っ」

やっと突っこんできたかと思えば、一番いいトコを絶妙に避けて攻めてくる。

……わざとか!!わざとだろ!!

泣きそうになりながら寺嶋を睨む。

「……つまり、ここ?」
「!!ちょっ…」

衝撃で、びくんと身体が震えた。

「あ、わり…」
「や、めなくて…いいけどっ…」

ヤバい。

「あっ…もっと奧っ…!」
「奧…」
「んッ、あ…!!」

……なにこれ

「ああッ…ん、もっと…っ!」

……どうなってんの?





 
――さすがに帰んないと、まずいから

日曜の昼すぎに、あいつはそう言って帰っていった。

――夜、バイト終わったらまた来るから

「………」

静かな部屋に残されて。
俺は部屋の真ん中に座り込んだまま、ぼうっとしていた。

……なんだか

理解不能なことが、起きている。
あいつとヤッてると、いつも変な気持ちになる。

――辛かったら、言えよ?

そう言って俺に触れるあいつは、嫌になるほど丁寧に俺の身体を開いていった。

……なんで俺に、そこまで気を使うわけ?

優しくされればされるほど、どうすればいいのかわからなくなって泣きたくなった。

――好きだ、

そう言われる事が、初めはウザかったはずなのに。
なんだか、今は…。

……今は…?

柄にでもないことを思ってしまって、ハッとした。

……違うし!!

そうじゃないそんなわけないし!!
だいたいあいつ下手くそだし!!
でもなんか気持ち良かったりするのは…なんでだ?

「………!!」

まさか俺、開発されてんの?あいつに?!

「いっ…いやだあああっ」

ショックの余りつい叫んでしまったその時、テーブルの上で携帯が鳴った。

「………」

画面を見て、そのままクッションの下に突っ込む。
着信音はしばらくして、切れた。


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