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第3章
5.
しおりを挟む学校の近くの河原。
公園。
アパートの部屋。
ミケはそのどこにもいなかった。
「……すいません、明日は絶対出ます」
ドアの前に座りこんで、バイト先に電話を入れた。
「……どこ行ったんだよ」
少しずつ暗くなっていく空を見上げ、溜め息をつく。
携帯は繋がらない。
LINEの返信もない。
――……あいつなら、まだ上にいるよ?
耳元で囁かれた声。
――堪んねえよな、あの声
「……っ、」
信用してないわけじゃないけど。
ただ前にそういう関係があった奴と一緒にいたことがなんだか許せなくて。
……女々しいな、俺…
「………」
あの時の、ミケの怯えた表情が頭からはなれない。
溜め息をついて立ち上がった時、まだ手に持っていた携帯が震えた。
ミケからだった。
「ミケ?!おまえ、今どこに」
『……もしもし?』
聞こえてきたのはミケではなく、知らない女の声だった。
「……え?」
あたしミケの友だちみたいなもんなんだけどー、と電話口で女は言った。
……友だち?
『さっきいきなり電話がかかってきて、なんか取り乱してるみたいだったからウチに連れて帰ってきちゃったんだけど。何、ケンカでもしたの?』
謎の女はぺらぺらと喋った。
「ケンカっていうか…てゆうかなんであんた、ミケの電話で」
『えー?だってあたし、あなたの電話番号知らないし?』
「……そこ、どこですか?」
『あ、良かった、迎えにきてくれるの?あたし仕事途中で抜けてきちゃったからさー、助かるわ』
教えられたマンションは、ミケが住んでいる街から二駅ほど離れた場所にあった。
「お疲れさまー」
教えられた部屋の前に、パンツスーツ姿の女が立っていた。
「初めまして―。あたし、可奈」
「……あの、」
「ミケなら寝てるよ。泣き疲れちゃったみたい」
唖然として彼女を見た。
「……あいつ、泣いたんですか?」
「うん、あたしもびっくりしたけど。ま、取り敢えずあがんなよ」
そう言って彼女はドアを開けた。
……泣いてた?ミケが?
「……おじゃま、します…」
「どうぞー、散らかってるから、空いてるとこに適当に座って?」
彼女はそう言うと、キッチンらしき場所に入っていった。
「………」
……空いてるとこって…
テーブルに乱立しているビールの缶や酒瓶。
床に積まれた雑誌や新聞、そこらじゅうに放置されたコンビニの袋。
足の踏み場もないとはまさにこの事だろう。
取り敢えずソファーに座ろうとしたら、そこには服やバック、ブラジャーまでもが散乱していた。
「………」
……なんなんだあの女…
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