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第3章
9.海斗side
しおりを挟むなんで話す気になったのかは、自分でもよくわからない。
ただ嘘を吐きたくなかったというよりも、聞いて欲しくなった。
今まで誰にも言えなかった、出来ることなら忘れてしまいたい過去。
「……美咲とは本当に、なんにもなかったんだ。ただ仲は良かったし、その時はよくわかんなかったけど…もしかしたら好きだったのかもしれない」
一度だけ、手をつないだことがあった。
お互いに部活の帰りで、もう辺りが暗かったので家まで送ることにした。
妙に恥ずかしくて、二人ともずっと無言だった。
いつものように冗談を言い合ったりは出来なかった。
たぶん俺はあの時、初めて美咲のことを女の子として意識したんだと思う。
でもその頃はお互いに受験や部活で忙しかったし、気にはなったけどつきあうとかそういう雰囲気にはならなかった。
――今度の日曜、うちで一緒に勉強しない?
そう誘ってきたのは美咲だった。
「やっぱ、緊張した。家に行くのは初めてだったし……正直ちょっと、ヤラシイことも考えてたし」
どきどきしながらインターホンを鳴らした時のことを思い出して、ちょっと笑った。
「……だけど、美咲は家にいなかった」
玄関のドアを開けたのは、美咲の母親。
――あなたが寺嶋くん?美咲から聞いてるわ
彼女はにっこりと笑って言った。
――……あの、
――ごめんね、あの子まだ帰ってきてないの
あがって待っててと言われて、俺は素直に従った。
――たぶん、もうすぐ帰ってくるから
リビングで出されたアイスコーヒーを飲みながら、俺は美咲が帰ってくるのを待っていた。
美咲の母親は若くて綺麗な人だった。
――寺嶋くんは、美咲とつきあってるの?
急にそんな事を言われて、むせかえった。
――……え?!いやあの、別にそんなんじゃ…
――あら、違うの?
彼女は笑って、俺の隣りに座った。
――なんだ、そうなの。残念
――……え?
――ねぇ、背が高いのね。何か運動とか、してるの?
とても蒸し暑かったあの日。
俺は美咲の母親と、関係を持った。
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