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V.D
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しおりを挟む「うぅわスゲっ、売るほどあんじゃん」
苦労して持ち帰った紙袋の中のチョコを見て、季一は唖然としていた。
「相変わらずモテてんねぇ」
「……お前は?」
「俺?もうショボいよ?4個よ4個」
「………」
「あ、なんなら食うの手伝いましょうか?」
季一は呑気に笑う。
「……やるよ、全部」
「えっ」
「どうせ食わねえし」
「相変わらずヒドいねえ…」
「………」
かわいい子だったな、と思った。
……なんか、健気って感じで
きっと性格も、素直なんだろうな。
……季一はなんで、俺なんかを好きになったんだろう
「……あのさ」
「ん?」
「そこにあるチョコ、全部やるから… お前が貰ったやつ、よこせ」
「え?」
……何言ってんだ、俺…
いっきに顔が熱くなる。
……これじゃ、まるで…
「……っやっぱなんでもな」
「いーよ?」
あっさりと返事がかえってきた。
「………」
「でもまじでアレ、全部貰っていーの?」
季一はおやつが増えて、単純に喜んでいるようだ。
さっそく紙袋からチョコを出し、物色を始めている。
……どうしよう
「うおっ、ゴデ○バじゃん」
「……あ、のさ」
「ん~?」
「……これ、」
「…あっそうだ、さっきあげた中のさー、赤い箱のやつだけ、やっぱ返して?」
「……え?」
「いや、アレは俺が食わないと」
照れたように笑う季一。
「………」
……それって、
真っ赤な顔をした、あの子の顔を思い出す。
「……要?ってオウッ?!」
気づいたら、背中に隠していたそれを投げつけていた。
バンっ、と勢いよくドアを閉める。
……っ…ムカつく!!
そのままベッドに身を投げ出して、ぎゅうっと枕にしがみつく。
買う時、死ぬほど恥ずかしかったのに。
……さっきだって、すげえ緊張してっ…
初めはあげる気なんてなかった。
……でも、一年に一回だし
あの子の事は関係ないって言ったら、嘘になるけど。
やっぱ気になってるけど。
……――っ、
もう嫌だ、ほんっとやだ。
……ムカつくっ…
こんな感情に、いちいち振り回されている自分が。
季一といるようになってから、俺は自分がよくわからなくなることが度々あった。
とその時、ノックの音がした。
「………」
「……要~?」
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