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きみのとなり♯2
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しおりを挟む僕はただ、地味でもいいから平和に暮らしていたくて。
いざこざに巻き込まれたり、誰かから反感をかったり、嫌われたりするのがイヤで。
――……つきあってるって…
村くんの顔を、見れなかった。
――……ごめん、先…帰る…
そう呟くのが、精一杯。
店から出た僕は、近くの公園のベンチに座っていた。
……たった一人の、友達だったのに…
僕の話を聞いてくれて、僕に話をしてくれる、大切な友達だったのに。
……こんなことになるなら…
ぎゅっと手を握りしめた、その時。
「……冬馬!」
ビクッとして振り返ると、そこには村くんが立っていた。
「なんでいきなり帰るんだよ」
「………」
「てゆうか…さっきの、なんなんだよ」
「………」
黙ったまま俯いていると、おい、と肩を掴まれた。
「ちゃんと説明しろ」
……説明って…
「……言いたくない…」
「なんでだよ」
「……だって、」
……言ったら、きっと…
「……冬馬?って、え、なに泣いてんだよっ」
「いっ、言えない…だって」
「はぁ?」
「こ、怖いっ…」
「………」
とりあえず落ち着け、と村くんは言った。
「ほら、そこ座れ」
「………」
それから村くんは、僕が泣きやむまでずっと待っていてくれた。
僕はとめどなく涙を流しながらようやく決心して、村くんに甲田さんのことを話した。
村くんは、ちゃんと話を聞いてくれた。
「……だいたい、わかった」
「………」
「てか、びっくりした」
「………」
「……でもまぁ、いいんじゃね?」
「……え」
あまりにもあっさりした返答。
「冬馬がいいなら、いいんじゃねえの?別に」
「……え、あ、あの」
「もういい加減泣きやめよ!ほら、笑え!」
ぐにっと頬を摘まれる。
「てゆうかさー、怖いってなんだよ」
「……だっ、だって」
「別にそんなんで引いたりしないって」
びっくりしている俺を見て、村くんはいつものように笑った。
そのまま公園のベンチで、村くんが買ってくれた缶コーヒーを飲んだ。
「……てゆうかさ、どういうきっかけ?」
「え?」
「告られたんだろ?」
「………。それが、僕にもよくわからなくて…」
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