sweet days

kotori

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きみのとなり♯4

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その晩はなかなか寝つけなかった。
目を閉じれば浮かんでくる、昼間の光景。

……なんだろう、この感じ…

心が、ざわざわする。

「………」

――もっと自分に、自信持てよ

村くんはいつも、そう言ってくれるけど。

……ないよ、自信なんて…

僕には人に好かれる要素なんて、何もないから。
だから甲田さんに好きになってもらえる自信なんて、どこにもない。





翌日の放課後、甲田さんに会った。

「なんかこういうのもいいな」

いつもは甲田さんが学校まで迎えに来てくれるけど、今日は待ち合わせにしてほしいと頼んだ。

「デートっぽくて」
「デッ…?!」

慌てる僕を見て、甲田さんが吹き出す。

「とりあえず、どっか入るか」
「……あ、あのっ、これ」
「何、これ」
「……や、やっぱり、お返しします…」

渡した紙袋の中身は、この間買ってもらった服だった。

「なんで?気に入らなかった?」
「そういうわけじゃ…ただ、貰う理由がないし…」
「別に、理由なんていらねーだろ」

甲田さんは笑って言った。

「いいから一回着てみろって。絶対似合うから」
「………」

甲田さんは、きっと何か勘違いしてる…。

「冬馬?」

似合わないのは、服じゃない。

「……甲田さんと僕は、全然似合わない…」
「……は?」

ぽろりとでた言葉。
だけどそれは、ずっと前から思っていたことだった。
甲田さんには僕なんかより、もっと相応しい人がいる。
たとえば昨日の人みたいに…一緒にいるだけで絵になるような、素敵な人が…。

「……意味がよくわかんねーんだけど」

甲田さんの表情が険しくなる。

「てゆうか、一緒にいるのに似合うとか似合わないとか関係あんの?」

その不機嫌な声に、びくっとした。

「……なんかそういうの、ムカつくんだけど」
「……っ、」

言葉が出ない。
気まずい空気が流れたその時だった。

「……あ」
「……あ」
「……なんでここに、」
「おまえこそ何してんだよ」

ド○キの前で偶然出くわしたのは、あの時甲田さんと一緒にいた人だった。


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