迷子猫(2)

kotori

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第1章

11.

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「メシ食ってた時に、同居人がいるって言ってたよな」
「あっ…はい」

そういえば、そんな話をしたような気がする。

「仲がいいんだな」

すごく心配してたぞ、と華原さんが言う。

「まぁでも、良かった」
「……え?」
「三宅はさ、人見知りが激しいみたいだし…ちゃんと話ができる相手がいるのか、ちょっと心配だったんだ」
「室長…」
「課の連中もさ、みんなおまえと仲良くなりたいんだよ」

特に女子はな、と言って華原さんは笑った。

「たまには一緒にメシでも食って、話してみろよ」
「……はい」

さっきまで張りつめていた気持ちが、ゆるゆると解れていく。
周囲になかなか馴染めない自分の事を、こんなふうに心配してくれる人がいる。
いつまでも打ち解けようとしない自分を、受け入れようとしてくれている人たちがいる。

……それって、幸せなことだよな…

なんだかちょっと感慨深い気持ちになっていると、不意に華原さんが言った。

「でもおまえ、酒には気をつけた方がいいぞ」
「え、」
「いやおまえ、タクシーのなかで一回、目を覚ましたんだよ。……まぁ酔ってたんだろうし、俺は気にしてないけど」

彼は何くわぬ顔でそんな事を言い残し、絶句する俺を置いてエレベーターから出ていった。





「でもその人、怒ってなかったんでしょ?」

ユカリさんが水割りを作りながら言う。

「だったら、そんなに気にしなくていいんじゃない?」
「………」

そうそう、と頷きながら可奈さんはカウンター越しにグラスを受け取った。

「相手が上司ってのはちょっとアレだけど。寝呆けて人違いしたって思ってるよ、きっと。それか酔っぱらいの冗談、みたいな?」
「そりゃ随分タチが悪りぃ冗談だな」

そう嫌味っぽく言ったのは、可奈さんの隣りに座る裕太だ。

「もう、そんなこと言わないのっ。ほらミケ、元気だしなよ」

よしよしと可奈さんがカウンターに突っ伏している俺の頭を撫でた。

「ところで海斗くんは?」
「……仕事。てゆうか接待」
「また?あの子働きすぎじゃない?」

ユカリさんが心配そうな顔になる。

「若いし体力はありそうだけど…あんまり無理したら、倒れるわよ」
「……この人にも見習って欲しいわ」

可奈さんの嫌味っぽい言い方に、裕太がむっとした顔になった。

「俺だって一応、働いてるっつーの」
「バイトでしょうが」

そこにまぁまぁ、とユカリさんが割って入る。

「今はどこも不景気だし、大変よね…」


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