迷子猫(2)

kotori

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第1章

13.

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十も齢が離れた彼とそういう関係になったのは、今から一年くらい前だった。



ミケ達の事がきっかけで、祐太とはたまに会うようになった。
恋愛や進路のことをあれこれ相談してくる彼は、いわば齢が離れた弟みたいな感じだった。
だけど彼が高校を卒業してからは連絡を取り合うこともなく、その着歴を見た時はただ懐かしいなぁ、と思った。
そしてその後、何度か飲みに行った。

――大学、ちゃんと行ってんの?

――あんまり。だってつまんねぇもん、勉強嫌いだし

祐太は以前と殆ど変わってなくて、それがなんだか嬉しかった。
だからいきなり告られた時には、本当に驚いた。
とゆうか、冗談だと思った。

――何それ、からかってんの?

笑いながら言うと、祐太は少しムッとした顔になった。

――んなわけねぇだろ

だけどやっぱり信じられなかった。
彼の周りには彼と同年代の可愛い女の子が沢山いるだろう。
なのにそこでわざわざあたしを選ぶ理由がわからない。
そう言うと、深夜でも人通りのある渋谷の歩道橋の上で抱きしめられた。
それはもう、月9並みにドラマチックに。

――そんなん俺だってよくわかんねぇけど

――ちょっ…、はなしてよ

――けどなんか俺、あんたといたら安心すんだよ

ぶっきらぼうに彼は言った。

――そりゃ俺はガキだし、まだなんにも出来ないけど

あんたと一緒ならなんだって出来るような気がすると祐太は言った。
そんな彼に、あたしは不覚にもときめいてしまった。
そしてその時初めて、彼を男として意識した。

齢は離れていても、こんなふうに抱きしめられると自分をすっぽりと包んでしまうその身体。
遠慮もないけど迷いがない、そして嘘がないその言葉。
幼さが残る、だけど時折男らしくなるその表情。



あの頃。
ようやく前の男の事がふっきれつつあったあたしは、恋愛に懲りていた。
もう傷つくのは嫌だと臆病になっていた。

……でも、この子となら

もしダメになったとしても、まぁ仕方ないかって思えるんじゃない?

……今のあたしには、それくらいが丁度いいかもしれない

結婚とか将来とか、そういうものに縛られる恋愛にはもううんざりしていた。
だからといって、別に誰でもよかったわけじゃないけど。
ただ彼となら、そういう面倒な事をいろいろ考えずに済むし。
正直すぐに別れても、お互いに失うものは少ないと思ったのだ。

ところが彼は、予想以上に真剣だった。
仕事が忙しくて会えるのは週末くらいで、それすらドタキャンする事もあったのに、彼は嫌な顔一つせず頑張れと言ってくれた。
クリスマスや誕生日にはネットを駆使して調べたらしいデートプランを用意して、バイト代を貯めて買ったプレゼントをくれた。

――可奈さんと釣り合うような男になるって、張りきってるんすよ

海斗くんがこっそり教えてくれた。

――あいつ、本気っすよ

同年代の子に比べたらハリもツヤもなくなってるだろうあたしの身体を、綺麗だと誉めてくれた。
風邪を引いたらなんやかんや買いこんで駆けつけてくれて、慣れない手つきで林檎の皮を剥いてくれた。

そんな事までしてくれる恋人がこれまでにいただろうか。
優しいのは初めだけで後はぐだぐだ、結果はいつも同じようなもので。
だけど祐太は今でもあの頃と変わらず、あたしを好きだと言ってくれる。
あたしは先が見えてる恋愛だと思っていた自分を恥じた。
そして今では自分も、彼の事を心から大切だと感じていた。

だけど、そう上手くはいかないのが人生なのだ。


    
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