短編集(1)(BL)

kotori

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Happiness

3.イチ

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「……もう帰るの?」

半分寝ぼけた顔で、女は言った。

「ごめん、ゆっくりできなくて」
「……いいけど」

そう言いながらも、彼女はシーツを身体に巻きつけるようにしてすり寄ってくる。

「……ねぇ、イチ」
「なに?」
「このタトゥーって、なんか意味があるの?」

きれいな色に塗られた爪先で、肩をなぞられた。

「……別にない。ただ、かっこいいかなって」
「……ふうん。似合ってるよ」
「ありがとう」





太陽が眩しい。

生ゴミの臭いが漂う街の中を、俺はふらふらと歩いていた。
早朝だからか通りは閑散としており、大きなカラスがネットからはみ出したゴミ袋をつついている。
夜はネオンが瞬いてそれなりに賑わうこの通りも、明るくなればくすんだ色をした街並みでしかない。
でもこんな朝の風景が、結構好きだったりする。
この祭りの後みたいな、侘びしさがいい。

客とホテルに行った日は、始発で帰る事にしている。
週末の地下鉄の、酒臭い車内。
どう見ても同業の女が、口も足も全開、目は半開きで熟睡している。
その反対側の席で、サラリーマンらしいオッサンが泣いていた。
ウォークマンから聞こえてくる音楽。
窓の暗闇に映る自分と、周りの人間の姿。

――その入れ墨、いいわね

前にも、そんなふうに言った人がいた。





「は…ぁっん、いっちゃ…」

明るい部屋の中。
大きな鏡越しに、涙目で訴えられた。
耐えるように唇をぎゅっと結んだなるは、ひくひくと身体を震わせている。

「……あああっ!」

なかを抉るようにして腰を動かすと、なるは髪を振り乱して喘いだ。

「…はうっ…あ、あ」
「……なる、すっげぇヤラシイ顔」

後ろ向きに膝の上に乗せ、小さな顎を掴まえる。

「そんなにイイの?」
「……ひっ、う…っ」
「答えろよ」

すっかり敏感になってぷっくり膨らんだ乳首を摘むと、なるは一際高い声をあげた。

「ほら、」
「やっ…やあっ…あ」
「嫌じゃねえだろ?今すげぇ締まったぜ?」

……ちょっとヤバかったし…

「いっ…いっちゃん、っ…」

ぎゅう、と手を握りしめてくる。

「ん?」
「は、ずかし…、よう」

頬を紅潮させ俯く姿は、更に俺の加虐心を煽った。

「ちゃんと見ろよ」
「……ひっ…!」

ぐい、となるの両足を大きく広げ、腰を持ち上げる。

「俺に突っ込まれて、気持ちイイんだろ?」
「あっ…!あっ、あ、ああっ、」

手を離すと、それはずぶずぶと音をたてて埋め込まれていく。

「ほら、俺のが全部、なるの中に入って…」
「やっ、やめ…っいやあっ…!」
「なるのココも、ぐちゃぐちゃじゃねーか」

完全に勃起したペニスは、先走りでてらてらと濡れそぼっていた。


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