sweetly

kotori

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後編

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――…なめ

声が聞こえる。

――かなめ、せんぱい

……俺を、呼ぶ声



瞼を開くと目の前にあいつの顔があって、つい反射的に殴ろうとした。

「…っとおー、先輩意外とバイオレンス」

意味不明。

「ごはん、できたって」

腕を掴まれた状態で、にこにこ笑っているあいつを睨みつける。

「……はなせ」
「はーい」

ばっと手を振りはらう。

「……てめぇ、なんでここにいんだよ」
「てめぇって…キイチって呼んで?」
「嫌だ」

……まじでびっくりした…てゆうかいつ来たんだ?いつからここにいたんだ?!

「先輩、寝顔かわいいね」
「……っ」

力いっぱい枕を投げつけるが、キャッチされた。
しかも顔を埋めている。

「先輩の匂いがする…!!」
「やめろヘンタイっ!!」



「いや~やっぱナミエさんのごはん、サイコーっす」

さっきからガツガツ飯を食っているこいつは、遠慮という言葉を知らないらしい。

……調子のいい奴…

「俺、普段外食かコンビニばっかでー。こんなにうまい手料理食ったの、初めて」
「もう、季一くんったら…」

あの人は嬉しそうに笑っている。

……季一くんって…

心底げんなりしつつ、俺は無言で箸を動かした。

「要くんは、どう?」

答えはわかってるのに、なんで聞くんだろう。

「おいしいです」
「どれが一番おいしい?」

吉河が口を挟む。

「…どれって…全部」

……ヤロー…なに言いだしやがる…

「肉の焼き加減とか、ちょうどいいし…煮物も味が染みてて…」
「ですよねー!いいなぁ先輩、こんなメシ毎日食えてー。ナミエさん優しいしー」
「いつでも食べにきて?季一くんなら大歓迎よ」
「マジっすか!!」

……冗っ談じゃねええぇ!!

「……ごちそうさまでした」
「あら、もういいの…?」

……食欲が失せたんだよっ

「せんぱーい、いっぱい食わなきゃデカくなれねーっすよー」

……てめぇがデカすぎんだよっっ

「……上にいきます」



苛々しながら煙草を吸ってると、あいつが部屋に入ってくる。

「せ・ん・ぱ・い」
「やめろキモい」
「勉強教えてください」

吉河がバックから教科書を出す。

「だから誰が教えるっつった」
「ええーっ、ダメっすか?」

ダメに決まってんだろっ

「……俺先生に言っちゃったのに…。そしたら先生、藤村なら安心して任せられるなって…」
「~~~っ」

わなわなと拳を震わせる俺の前で、吉河はにこにこ笑って言った。

「季一って呼んでくだ…ッダァアアっ!!痛えって!!ちょ、まじで!!」

そんな感じで、最悪な一週間が始まった。


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