sweetly

kotori

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後編

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「……カナちゃーん、どうしたの~?」

長い足を優雅に組んで、テーブルに座っている三上が書類を捲りながら言う。
その呼び方も座っている場所も気に食わないが、彼には何を言っても無駄だということはわかっている。

「……はい?」
「なんか疲れてるみたいだからさ~」

その整った容姿を完璧に裏切った、ぐたぐだな話し方。

「……大丈夫です」

俺は笑顔で答えた。



放課後の生徒会室。
テスト前なので会議は短時間で終わった。
他の役員は早々と帰ってしまい、今部屋に残っているのはテストなんてどうでもいい三上と、雑務に追われている自分の二人だけだ。

確かに疲れてはいるけど、顔に出てるとは思わなかった。

……不覚…

「カナちゃん、忙しいとは思うけどムリはしないでね~?」

にっこり笑ってそう言うと、三上は冷蔵庫を開ける。

「ケーキ食べる~?疲れには糖分がいいんだよ~?」
「……結構です」

そう、と言って三上は見るからに甘そうなケーキを一人で食べ始める。
俺は仕方なく作業の手を止めて、コーヒーを淹れることにした。



あれから、毎日のように吉河が家に来る。
泊まることもあれば帰ることもあるが、メシだけはしっかり食っていく。

……あいつ、まさかそれが目的で来てんじゃねーだろーな…

てゆうか、大体なんで俺があいつの世話しなきゃなんねーんだよ…。



「……カナちゃんさ~、最近なんかあった~?」

長めの前髪をピンで留めて、フォークをくわえたまま三上が俺を見る。

「……別に、なんにもないですよ?」

にっこり笑って答える。

「そう?ならいいんだけどさ~」

この男は妙なところで勘が鋭いので、気が抜けない。

「あぁ、ところでさ~最近おもしろい話を聞いたんだけどー」

三上はケーキの上の苺をつつきながら言う。

「なんですか?」
「カナちゃん、一年の吉河くんって知ってる~?」
「……いいえ。そいつ…その人が、どうかしたんですか?」
「いやぁ、なんかね~その子、中学ン時に色々やらかしてたらしくて~。よくウチに入れたねーって感じだよね~」
「………」
「大人しくしてたからか、最近まで誰も気づかなかったんだって。でも、この前ちょっと騒ぎ起こしたらしくてさ~」

……それってもしかして、香川の件…

「ちょっとヤバいかもね~」
「え…?」

振り返って、三上を見る。

「今回はね~相手の方が明らかに悪いみたいだったから、先生方も目を瞑ることにしたらしいんだけど」

三上がフォークを置いた。

「ただね~、吉河くん、喧嘩の原因をどうしても言わないんだってー。ただムカついただけだって」
「………」
「それでだいぶ心証変わっちゃったみたいだし~。ほら、ウチはそういうの、厳しいからね~。生徒の間でも、ちらほら噂がたちはじめてるみたいだし~」

……あいつ…

「それとさ~、吉河くんは否定してるらしいんだけど、その現場にカナちゃんもいたって情報があったのね~?それって本当…って、あれ?カナちゃん~?」

俺はやりかけの仕事もそのままに、カバンを掴むと生徒会室を出た。


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