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後編
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しおりを挟む家に戻ると、吉河はあの人と呑気にお茶を飲んでいた。
「要くん?やだごめんなさい、気がつかなくて」
あの人が慌てて立ち上がる。
「先輩、走って帰ってきたんですか?そんなに俺に会いたかったー?!」
「ちょっと話があるから来い」
そう言うと、二階の部屋に強引に引っ張っていく。
「ちょっ、先輩なに?!大胆っ…」
「……お前、なんで言わなかったんだよ」
「……は?」
「香川のことだよ!なんでちゃんと理由言わないんだよ。俺が絡まれてたって…」
「……あぁ」
吉河はぽりぽりと頭を掻いた。
「……なんかめんどくさくて」
「……あ?」
「別にいーじゃないっすか、そんなんどーでも」
「よくねーだろ!」
由緒正しき伝統校であるあの学校は、校風は比較的自由でも問題を起こす生徒への対処は厳しい。
実際、今回の件で香川達は停学処分になっている。
関わった吉河も間違いなく目を付けられただろう。
「……明日ちゃんと説明しろ。俺も一緒に行くから」
「……やだ」
「……あァ?!」
「いいって、別に。俺そういうの慣れてるし」
吉河はにこにこ笑って言う。
「そういう問題じゃ…」
「……先輩、俺のこと心配してくれてんの?」
……はあ?!
「なっ…そんなんじゃ、ねえよっ!」
単に責任を感じただけ…ってゆうか元はといえばお前が勝手にやったことだけど!
「……先輩」
「なん、っ……!!」
いきなりチュ、とキスされた。
「?!」
驚いて、突き飛ばす。
「ははっ、先輩顔真っ赤ーっ。超かわいーっ」
「……帰れ」
「あっ…そんなごしごし拭かれたら、ちょっとショック…」
「……帰れ」
「ヤです」
「帰れ今すぐッ 」
「ヤ、だー」
そして、嫌々ながら迎えたお勉強の時間…。
こいつにこんなことをしてやる義理はないけど…仕方がない。
成績が上がれば、教師達のこいつに対する印象が少しは変わるかもしれないし…何より俺のメンツがかかってる…。
「……だから違うっつってんだろ。なんでそこでその公式使うんだよ」
丸めた教科書でバカの頭をハタく。
「ええっ、だって問2は…」
「それは全然別モンなの。てゆうかお前、まじでバカだろ」
「……だってわかんねーんだもん?」
……もん、じゃねえよ全然かわいくねーんだよっ
「……俺にもわかんねーよ、お前がどうしてウチの学校に入れたのか」
「……運?てゆうか運命?俺と先輩が出逢う為の」
「本気で殺すぞてめぇ…」
その時、コンコンとドアをノックする音がした。
「お夜食ですよー」
「やりぃ!!もーナミエさん大好き~」
「………」
俺は、こいつと出逢ってしまった運命を本気で呪った。
「……いってきます」
テスト当日の朝。
二人して徹夜明けだった。
……朝日が眩しい…
「…二人とも、大丈夫?」
若干フラついている俺を見て、あの人は心配そうに言う。
「俺は平気っす。基本三日は寝なくて大丈夫なんで」
……どんな身体してんだよ…
元気いっぱいのあいつを呆れて見ていると、あの人はクスクス笑った。
「頑張ってね、二人とも」
「はい!」
「……はい」
「沢山ご馳走作って待ってるから」
「うっわ楽しみっ」
……今日も来る気かよ…!
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