sweetly

kotori

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後編

17

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なんとか心を落ち着かせて部屋に戻ると、二人は笑顔だった。

「先輩長かったっすね~もしかしてべ」
「それ以上喋ったら、一生口きかねえ」
「ねえ、モノポリーやらない?」
「おっしゃああ!リベンジっ!!」
「いや俺が勝つ。ルール教えろ」
「知らねーのかよ!」

今日だけでいい。
今日だけでも、俺は家族としてここにいたかった。





「……先輩、もう寝た?」

二階にあがったのは三時を過ぎた頃だった。

「………」

起き上がる気配。
優しく頭を撫でられるとなんだか胸が熱くなって、ずっと我慢していた涙がぽろりとこぼれた。
それを見られたくなくて、身体を反転させる。

携帯に残ってた、沢山の着歴。
きっと必死で捜してくれたんだと思う。

――無事でよかった…

何度もそう繰り返して。
そしてホテルでも、俺が眠るまでずっと抱きしめてくれていた。
まるで小さな子どもをあやすように、髪や背中を撫でながら。

「……一緒に寝てい?」

そう言うと、返事を待たずによいしょとばかりに布団の中に入ってくる。

「……狭い」
「でもほら、あったかい」

……もう夏だっつーの…

背中からがばっと抱きしめられると、心臓がバクバクした。

「……先輩、大丈夫だよ」
「………」
「俺は、ずっと傍にいるから」

耳元で囁かれる声に、また涙が溢れる。

「………。ありがと、」

その力強い腕にしがみついて、呟いた。

「……うん」

まわされた腕に力が籠もる。
はなしてほしくない、と思った。
もうずっとこのままでいたい。
その気持ちがどんな感情からくるものなのかは、わからないけど。



「……先輩、こっち向いて」
「………」

そっと、身体をひっくり返された。

「……泣かないで」

指の腹で、そっと涙を拭われる。
そして――ゆっくりと唇が重ねられた。

抵抗は、しなかった。
出来なかったんじゃない。

「……ん、ぅ…」

それは、今までしたキスとは全然違った。
下唇を優しく噛まれたと思ったら、口の中に侵入してきた舌が至る所を這っていく。
そして自分の舌と絡みあう。

息ができないくらい激しくて深いキスは、痛みや悲しさを束の間忘れさせてくれた。

「…キ、イチ…っ」

長いキスの後、俺は季一の首にしがみついた。


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