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しおりを挟む「ひでえ顔」
腕のなかでぽかんとしている俺を見て、皐月は呆れたように笑った。
「……恋人の責任って、なに?」
「……相手を必ず幸せにするってゆう、責任?」
「………」
「………」
「……なんか俺、すごいこと聞いちゃった気がする…」
「……俺もすげぇ恥ずかしいこと、口走った気がする…」
珍しく照れた表情の皐月を見て、思わず吹きだした。
「皐月って、意外と情熱的?」
「……忘れろ」
「やだ」
てゆうか、と皐月は溜め息をついた。
「今更こんなこと、言わせんなよな…」
「……言われたことないし」
「は?」
「今更って、皐月は俺に好きって言ってくれた事ないじゃん!」
あーそうだっけ?と言いながら、皐月は俺の濡れた頬をシャツの袖で拭う。
「言って」
「今度な」
「今すぐ言って」
「あのな……」
「毎日言って!」
「調子にのんな!てゆうかおまえ、さっきワガママ言わねーって」
「やっぱりやめた」
「……おまえほんっと、かわいくねー……」
皐月は苦笑いを浮かべて、俺の額にキスをした。
「晶子とは、六年くらい前につきあってた」
久しぶりに皐月の膝の上に座って、話を聞いた。
「夢中だったよ。どっちかっていうと、俺がハマってた」
皐月は懐かしそうに言った。
「あの頃あいつ、いつも淋しそうに笑っててさ。俺がどうにかしなきゃって、本気で思ってた」
「………」
「けどさ、俺もまだガキで、なんにもわかってなかったんだよ」
「……子どもができたんだ」
「……え、」
俺は目を見開いて、皐月を見た。
「……俺の子じゃなかったけどな」
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