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しおりを挟む結局俺は逃げたんだ。
現実と向き合うことから。
誰よりも大切だったはずの、彼女から。
信用できない?と訊くと、祐希は無言で首を振った。
……ったく、
こんな情けない話、聞かせたくなかったのにな。
そんなことを思いながら、細い身体を抱きしめる。
すると祐希は、俺の手をぎゅっと握った。
「………」
もう本気で、誰かを好きになることはないと思っていた。
でも本当は、好きにならないんじゃなくてなれなかったんだ。
彼女と別れてから、誰とつきあってもそれは同じだった。
晶子へ対する想いが本当だろうとそうじゃなかろうと、どっちにしても彼女を失ってしまった俺にはもう何が愛なのかわからなくなっていた。
何より、誰かを想うという自分自身の感情が信じられなくなった。
そしていつしか俺は、誰に対してもある一定の距離を置くようになった。
他人と深く関わらないようにすることで、ずっと逃げ続けてきたんだ。
だけど俺は今、このワガママで泣き虫で意地っ張りな恋人を本気で幸せにしたいと思ってる。守りたいと思ってる。
きっとその為なら、なんだって出来るだろう。
……むしろ、救われたのは俺の方だ
俺を求めて伸ばされた、この小さな手を握りしめたあの時。
こいつを守っていこうと決めた、あの時に。
俺はこいつに、救われたんだ。
「……ところで、おまえさ」
ぐるり、と膝に乗せた祐希の身体を反転させる。
「まだ俺に話してないこと、あるよな?」
「……え、」
戸惑った表情の祐希を見て、俺はにやりと笑った。
「……っ!」
その小さな鬱血の跡に噛みつくと、祐希は小さな悲鳴をあげた。
「いた…い、ッ」
身を捩る祐希を押さえ込むと、ぎしぎしとベットが軋む。
口のなかにうっすらと広がる血の味。
「……ぁん、っ」
「門限、決めときゃよかった」
「……は、ぁっ?」
「六時だな」
「なっ…小学生かよ…、あ、ちょっ…!」
胸の小さな突起を指先で捏ねると、祐希はびくんと身体を跳ねさせた。
「や……っ、ぁ、」
「……誰に、触らせた?」
既に反応し始めた祐希のモノを握りながら言う。
「よかったか?」
「……ぅ、違う、ってば」
「……何が、」
俺は結構、いやかなり本気で怒っていた。
「縛るだけじゃ足りねぇのかよ。もういっそ、首輪でもつけとくか?」
そしてこの部屋に閉じ込めて。
もう俺のことしか、考えられないようにして。
「……。いい、よ」
そう呟くと、祐希は俺の頬に触れた。
そしてふわりと笑う。
「……俺は…全部、皐月だけのものだから…」
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