手をつないで(BL)

kotori

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Valentine編

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《気になるあの子に手作りチョコ》

「…手作り…」

《有名パティシエが作る今話題のスイーツ》

「パティシエ…」

《彼のハートをわしづかみ!バレンタイン大作戦》

「わし…づかみ…?」
「何ぶつぶつ言ってんのー?」
「いや…チョコが……って!」

コンビニで美佳と、まさかの遭遇。

「よっ、弟。久しぶりー♪」
「弟とか言うな!!」

てゆうかあんたの弟はリクだろーが!!

「何してんのー?」
「何って…、買い物」
「ふーん…バレンタイン大作戦?え、淳くん巽にチョコあげんのー?」
「……っ」
「てゆうかー、コンビニでこういう雑誌立ち読みしてる男子校生って…どーなの?」
「……悪かったな!!」

……そんなこと言われたらなんか恥ずかしくなってきたじゃん!!

美佳はけらけら笑いながら、でもさぁと言う。

「なんか手作りとかって、微妙じゃない?」
「……え?」
「んー、なんか重たいってゆーか?」

……重い?

「巽ってそーゆーの、苦手そうだしー」
「……それってどーゆう」
「えー?だからぁ、…あ、ゴメンもう行かなきゃ」

美佳は携帯を見ながら言った。

「今からデートなんだー」
「ええっ、おいちょっと待てよっ」
「またねーっ」

気になる事を言うだけ言って美佳は店から出ていった。



……重いって…いや、好きな子から手作りのチョコを貰って嫌なヤツなんかいねーだろ!

てゆうかむしろ喜ぶだろ!

……だいたい俺、今までの彼氏にはずっと手作り…

「………!!」

……だからフラれたのか?!重いから?!

それに…確かにあの女の言うことも一理ある…。
巽は、なんとゆうか恋愛に関して妙に醒めているところがある。

今までラブレターとか貰ってもあんまり嬉しそうじゃなかったし、去年のバレンタインだって貰ったチョコを平気で俺にくれたし…。
俺とデートしてる時も絶対手ぇ繋いでくれないし、さすがに腕組むのは自重してるけど。
それにエッチだって、今はそんな事ないけど初めは俺から誘ったし…。

つまり、俺と巽には恋愛の熱量みたいなもんに差がありすぎるんだ。

……もし、手作りチョコとか渡したら…引くかも…?

「………」
「……おい、そこの変態」

そんな事になったら、俺絶対立ち直れない…。

「おい」

てゆうかあいつ美味しくない、とか平気で言いそう。

「おいバカ、」
「バカじゃねぇぇ!!」



「おまえ、一人で何ぶつぶつ言ってたの?」
「……いや、別に…」

偶然煙草を買いに来たらしい巽と、一緒にコンビニを出た。

「店員すげえ見てたぜ?」
「………」

……どうしよう

「淳?」
「……ごめん、俺ちょっと先帰る!」

俺はそう言うと、巽を置いて走りだした。





『手作りチョコ?』
「そう!こうちゃんはどう思う?!」
『どうって、別にいいと思うけど…』
「……重くないかな」
『重い?』

電話で事の経緯を説明すると、こうちゃんは笑った。

『そんな事ないって、きっと喜んでくれると思うよ?』
「……けど、」

そういうのって気持ちの問題だと思うし、とこうちゃん。

『むしろ軽く思われた方が嫌じゃない?』
「………。そう、そうだよな?!」

さっすがこうちゃん、いい事言う!

「なんか、すげぇやる気でてきた!ありがとこうちゃん!」

よーし頑張ろう!ラブラブバレンタイン大作戦!!(死語)





バレンタイン前々日。

「ねぇ、あっくん」
「なに、」

台所で、母さんは父さんの為に巨大なチョコケーキを作成していた。

「ママ、あっくんとこうやってお菓子作り出来るのは嬉しいんだけど、」
「そう」
「そのチョコ、誰にあげるの?」
「巽」
「……今、男の子にチョコあげるの、流行ってるの?」
「さあ?昔からじゃねぇの?」

バレンタインの歴史なんて俺は知らない。
巽は甘いものが好きだから、チョコは上手く作れればいいとして。

……あとはプレゼント!

雑誌にも《贈り物で差をつけよう》って書いてあったし!でも全然思いつかない!
巽が喜びそうな物…ってなんだ。
今まで誕生日とかってメシ奢るとかそんなんだったし…。

「……母さんは、父さんにプレゼントとかあげるの?」
「うーん、私?みたいな?」
「………へぇ」

訊いたのが間違いだった。

「何よう冗談よう!」
「………」

普通息子にそんな冗談言うか?

「でも、耕二さんがそう言ったのよー?」

言ったんかい…。

「……直接訊いたの?何が欲しいか」
「そう。そしたら僕は由香里が傍にいてくれればそれでいいって…」
「……俺、バレンタイン家にいないほうがいい?」
「そんな事ないわよ!でも、もし出来たら!」

……俺、今までよくグレなかったよな…


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