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体育祭編
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しおりを挟む「……え」
何この状況。
「ちょ…え?ええ?!」
目が覚めると、そこには巽じゃなくてもっきーがいた。
しかも俺に、跨ってる。
「なっ…、何してんの、もっきー?!」
「……先輩、」
ぐい、と頭を引き寄せられたかと思うと、唇が重なった。
……うそ
「………」
「………っ!!」
我にかえって押しのけようとしたら、逆に強く抱きしめられた。
「やっ、ちょ…っ!」
何これ、どーゆう事?!
「先輩、好き」
そう耳元で囁かれて、不覚にもどきどきしてしまう俺も何?!
「……っ、まっ、待って?とりあえず、はな」
して、という前にまた唇を塞がれる。
「……んーっ!ん、んん…っ」
……しっ、舌がっ
ばしばし背中を叩いて抗議したけど、もっきーはやめてくれない。
「……ん…っ!」
結局キスをしたまま組み敷かれて、その時になってようやく俺は自分が今どんな状況なのかを悟った。
「……っ、もっきー、やめ…っ!」
「……ごめん、先輩」
謝りながらも、手を止めようとはしないもっきー。
「いっ、いやごめんじゃなくて、これ以上はっ」
「………」
「……じ、冗談じゃ済まなく、なる、から…」
もっきーはじっと俺を見つめた。
「……冗談なんかで、済まさないでよ」
「……え、……っあ、」
首筋に舌を這わされる、ぞわりとした感覚。
「……や、やだ、…もっきー…やだ、」
声が震える。
「……お、お願い、ほんと、ゃ…」
Tシャツに入ってくる手は、巽のそれとは違ってて。
鳥肌がたった。
「……っやだ!いやだ!!」
どうにかその手を逃れようと必死でもがくけど、どうにもならなくて。
「……巽!!」
気づいたらそう、叫んでた。
その時がらっと音がして、保健室のドアが開いた。
「………」
「………」
「……おじゃましましたー」
「違うだろ!!」
そこに現われたのは、もちろん巽ではなく。
保健医でもなく。
「……なんでリク?!」
「悪かったな俺で。てゆうか、浮気かよ…命知らずな奴だな」
「んなわけあるか!!襲われてんだろどう見ても!」
思いっきり押し倒されてんじゃん!
「え、そーなの?」
リクはうーん、と唸った。
「……やめといたほうかいいよ?こいつの彼氏超バイオレンスだから」
「……あんた誰?」
「……とも、だち?」
なんで今迷ったっ?!
「てゆうかリク、この事は…っ」
「えー、どうしよっかなぁ」
「お願いします俺まじで殺されます」
「(殺されるのはそいつだろ)あー…ハイハイ」
「頼むから!あいつかなりえげつないから!平気で寸止めとかしちゃうから!」
「そういう生々しい表現やめろ。なぁ、それよりこうちゃんは?」
「それよりって…!障害物競走に出るって言ってたけど…!」
「そっか。さんきゅ」
じゃあな、とリク。
「……俺も連れてけえええ!!」
「はぁ?自分でどうにかしろよ。てゆうか、巽来てるぜ?」
「ええ?!」
「可愛い(男の)子達に囲まれて、逆ハーみたくなってたけど」
……はああああ?!
「うっ、浮気は許さねえええ!!」
「……おまえが言うか?それ」
こんなことしてる場合じゃねえ!!
俺はもっきーの腕をすり抜けてしゅたっとベットから飛び降りると、保健室を飛び出した。
「おーいパンツ見えてんぞー…って聞いてねーし。てかなんだよあいつ、超元気じゃん」
心配して損した、と先輩の友達は溜め息を吐く。
そして、まだベットの上で茫然としていた俺を見た。
「ま、そういうことだから」
「………」
「……ほどほどにしとけよ?」
笑顔でそう言い残すと、そいつは保健室を出ていく。
「……くそっ」
一人取り残された俺は、拳でベットを殴りつけた。
さっきまで腕のなかにあったぬくもりは、一瞬にして消えてしまった。
けれどこっちが持て余した熱は、そう簡単に治まるわけもなく。
「……あーあ…」
力なくベットに寝転がると、溜め息をつく。
そして自分の手が震えてることに気づいて、ちょっと笑った。
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