32 / 51
anniversary編
おまけ
しおりを挟む……なんか、去年もこんな感じだったような…
巽の部屋で、こたつに入って。
あの時初めてキスをした。
「………」
「どうした?」
ううんと小さく首を振り、背中を預ける。
巽の腕のなかは、あったかい。
「……なんでもない」
本当は別に、どこかに行ったりしなくてもいい。
特別な事なんてしなくても、こうやって一緒にいられるだけで幸せだけど。
……でもそれを、当たり前にしたくないから、
これから先も、ずっとずっと一緒にいたいから。
「……明日、晴れるといいな」
ぎゅうっとしがみつきながら言うと、そうだなと巽は笑って俺の髪を撫でた。
―――
イルミネーションどころか街灯すらあまりない公園で、コウタと初めてキスをした。
軽く唇が触れただけ…そんなキス。
「………」
「………」
「……なんか、」
「……え?」
「この身長差が気に食わねぇ」
「ええっ」
キスしたつもりが、された感じになってるし。
「そ、それは…どうしようも、」
コウタの本気で戸惑った声に吹きだした。
「ほら、」
「え、」
「飯、食いにいこ」
手を差し出すと、コウタは恥ずかしそうに笑って自分の手を重ねてくる。
手をつないだだけなのに、なぜか心までほっこりとあたたかくなった。
「あ、やべ。予約の時間過ぎてんじゃん」
「予約してたのっ?」
「うん。なのにあの女のせいで…。あぁそうだ、麻里のことだけど…」
俺達は並んで、明るい街の方へと歩きだした。
――――
悩めるサンタは、どうやら年上の女にハマっているらしい。
「色白でちっさくてー、とにかくすげぇかわいいんすよ!」
酒はあんまり強い方じゃないのか、訊いてもない事をぺらぺらと喋る。
「でもその子、彼氏がいるんだろ?」
「そうなんすよ…たぶん今ごろ、一緒に…」
サンタはホールのケーキを抱え、フォークをくわえたままガクンとうなだれる。
「まぁ、飲めよ」
「……お兄さんの彼女さんて、どんな人だったんすか?」
「どんなって…まぁ、普通?」
正直なところ、よく知らなかったりする。
そんなに長くなかったし。
「てゆうか、なんで別れたんすか?」
「さぁ、忙しくてあんまり会えなかったからなぁ」
忙しくなくても会わなかったかもしれないけど。
そもそも、なんでつきあってたんだろうな。
「すれ違いってやつですね…」
サンタの神妙な顔つきを見て、思わず吹きだした。
「え、なんで笑うんすか?!」
「いや、ごめん」
最後に本気で恋をしたのは、いつだっただろう。
煙草に火をつけながら、ぼんやりと思った。
こいつくらいの年の頃は、まだ誰かを本気で想えてたような気がするんだけど。
「恋愛って難しいっすね…」
「そうだな」
笑いを堪えながら答える。
いつか俺にもまた、このケーキのように胸やけがするほど甘い恋をする日がやってくるんだろうか。
彼のように誰かを想い、焦がれ、悩む日が。
そんなことを思いながら、俺はこくりこくりと揺れだしたサンタに毛布を掛けてやるために立ち上がった。
end
10
あなたにおすすめの小説
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
もう一度言って欲しいオレと思わず言ってしまったあいつの話する?
藍音
BL
ある日、親友の壮介はおれたちの友情をぶち壊すようなことを言い出したんだ。
なんで?どうして?
そんな二人の出会いから、二人の想いを綴るラブストーリーです。
片想い進行中の方、失恋経験のある方に是非読んでもらいたい、切ないお話です。
勇太と壮介の視点が交互に入れ替わりながら進みます。
お話の重複は可能な限り避けながら、ストーリーは進行していきます。
少しでもお楽しみいただけたら、嬉しいです。
(R4.11.3 全体に手を入れました)
【ちょこっとネタバレ】
番外編にて二人の想いが通じた後日譚を進行中。
BL大賞期間内に番外編も完結予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる