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手をつないで
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しおりを挟む『入院?!』
電話口でリクくんは驚いていた。
『え、なんで?!』
「それが…」
ここ数日、あっちゃんは学校を休んでいた。
LINEしても既読にならないし、携帯も繋がらないので心配になって家に電話を掛けた。
そしてあっちゃんのお母さんから事情を聞いた。
その日の放課後、リクくんと病院に向かった。
受付で案内された病室の前には、巽さんが立っていた。
「淳は?」
「……寝てる」
そう答えた巽さんは、どこか疲れたような顔をしていた。
「てゆうか、神経性の胃潰瘍って…」
「………」
それを聞いた時は俺も驚いた。
あっちゃんがそこまで思い詰めるなんて、きっと余程のことだ。
そしてその原因として思い浮かぶのは。
「ちゃんと話したんじゃねぇのかよ?」
「……話す前にケンカになった」
「はぁ?なんで?」
「……俺さ、」
巽さんは言った。
「あいつと別れる」
「……は?」
唖然とした。
「……何言ってんだよ、なんで、」
「今回の件でわかった。あいつの為にもそうした方がいい」
巽さんは表情を変えずに言う。
「てか、あいつとやってける自信ねぇ」
「ちょっと待ってください!」
思わず口を挟んだ。
「どうして急に、そんな」
「……んだよ、それ」
次の瞬間、リクくんが巽さんを殴った。
「情けねぇこと言ってんじゃねぇよ!!」
そう怒鳴りながら、バランスを崩した巽さんに掴みかかる。
「てか今更だろ!あいつの性格とかわかっててつきあってたんじゃねぇのかよ?!手に負えなくなったら別れんのかよ!」
俺は本気で怒ったリクくんを初めて見た。
「……ってめぇに何がわかんだよ!」
「わかんねぇよ、おまえが考えてることなんか!」
「はいはいそこまで!!」
今にも殴りあいに発展しそうな二人を止めたのは、えらく体格のいい看護師さんだった。
散々お説教されたあと、俺たちは病院から強制退去させられた。
まぁ、病室の前であんなに騒げば当然だろう。
「……ごめんな、コウタ」
「え?」
病院からの帰り道。
リクくんと俺は駅に向かって歩いていた。
「結局見舞い、行けなかったから」
「いいよ、また明日行ってみるし」
「………」
リクくんはまだ何か言いたそうな顔をしている。
「……どうしたの?」
「……や、殴ることはなかったよなって…。あいつも悩んでんだし…」
「………」
ダメだな俺、とリクくんは苦笑いを浮かべる。
彼は、本当に優しいと思う。
「……リクくんが殴らなかったら、俺が殴ってたよ」
「………」
「でもね、この前リクくんのお姉さんの話を聞いてから、色々考えたんだ」
歩きながら俺は言った。
「確かにあっちゃん、ちょっと巽さんに甘えすぎなとこがあると思う」
勿論それは、恋人っていう前提があるからだろうけど。
「……巽も、あいつの事になると周りが見えなくなるな。それにガキっぽくなるっていうか」
好きな相手だからこそ、ずっと傍にいれば嫌なところも見えてくる。
好きだからこそ、どうしても許せないこともある。
だけどそれでも一緒にいたいのなら、相手を受け入れる気持ちが大切なんだろうけど。
「でも実際、難しいよね…」
「………」
それはあの二人だけに言えたことじゃない。
……俺とリクくんだって、
白い息を吐きながら、すっかり暗くなった空を見上げる。
星はあまり見えなかった。
「……寒いな、」
「うん」
俺たちはなんとなく、手をつないで帰った。
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