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手をつないで
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しおりを挟む「進路を変更したいって、どういうことだ?」
担任は困惑気味に言った。
「おまえ、頑張ってたじゃないか。成績だって」
「……すみません」
「………。とにかく、もう一度よく考えなさい」
大学なら地元にだってあるし、なにも無理してここを離れる必要はない。
あんな状態になった淳を放っておく事なんてやっぱり俺にはできないし、傷つけてしまったという負い目もある。
……それに、
――……あんたがその気なら、先輩は俺が貰うよ?
一番大切なものを失ってしまったら、元も子もない。
学校が終わり、いつものように病院に向かう。
淳の病状は比較的軽く、回復も早かったのでもうすぐ退院できるらしい。
「巽くん?」
病室の前で、淳の母親に会った。
「あの子、今さっき眠ったところなの」
「そうっすか」
「あら、どうしたの?その傷」
ああちょっと…と言葉を濁すとおばさんはふふ、と笑った。
「巽くんも意外とやんちゃなのね」
コーヒーでも飲まない?と言われ、病室から少し離れた所にある談話室に向かう。
「ごめんなさいね。巽くんも忙しい時期なのに」
「……いえ、」
「あの子は昔から巽くんに頼りっぱなしで、迷惑ばっかりかけて」
「あの、違うんです」
思わず口を挟んだ。
「……俺があいつを、傷つけたんです」
紙コップに入ったコーヒーは、苦かった。
「……なんか俺、全然余裕なくて…全部裏目にでて、」
「………」
こんなふうに追い詰めるつもりじゃなかったのに。
お互いの事を考えたつもりだったのに。
どうして、上手くいかないんだろう。
「………。あの子は幸せものね」
コーヒーを飲みながら、おばさんは言った。
「そんなふうに、自分を大切に思ってくれる人がいるんだから」
向けられる、あたたかい笑顔。
「でもね、巽くん。あんまり一人で抱え込みすぎたら駄目よ?」
「………」
「あの子なら大丈夫よ。意外とタフなんだから」
私の息子だしね、と言っておばさんは笑う。
「それに、もう気づいてると思うわ。巽くんの気持ち」
「……え、」
「母親の勘、ってやつよ」
翌日。
学校の屋上でリクと話した。
「……俺は謝らないからな」
「……おう、」
「てかおまえ、なんか傷増えてね?」
何気なく見上げた空は、くすんだ色をしていた。
「……なぁ、」
「なんだよ」
「俺、自分が思ってるよりガキだったみてえ」
「……知ってるよ」
何年一緒にいると思ってんだよ、とリク。
「……なんか悪かったな、いろいろ」
「どういたしまして。今度なんか奢れよ」
そう言って、リクは笑った。
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