手をつないで(BL)

kotori

文字の大きさ
43 / 51
手をつないで

11

しおりを挟む
 
「進路を変更したいって、どういうことだ?」

担任は困惑気味に言った。

「おまえ、頑張ってたじゃないか。成績だって」
「……すみません」
「………。とにかく、もう一度よく考えなさい」



大学なら地元にだってあるし、なにも無理してここを離れる必要はない。
あんな状態になった淳を放っておく事なんてやっぱり俺にはできないし、傷つけてしまったという負い目もある。

……それに、

――……あんたがその気なら、先輩は俺が貰うよ?

一番大切なものを失ってしまったら、元も子もない。



学校が終わり、いつものように病院に向かう。
淳の病状は比較的軽く、回復も早かったのでもうすぐ退院できるらしい。

「巽くん?」

病室の前で、淳の母親に会った。

「あの子、今さっき眠ったところなの」
「そうっすか」
「あら、どうしたの?その傷」

ああちょっと…と言葉を濁すとおばさんはふふ、と笑った。

「巽くんも意外とやんちゃなのね」

コーヒーでも飲まない?と言われ、病室から少し離れた所にある談話室に向かう。

「ごめんなさいね。巽くんも忙しい時期なのに」
「……いえ、」
「あの子は昔から巽くんに頼りっぱなしで、迷惑ばっかりかけて」
「あの、違うんです」

思わず口を挟んだ。

「……俺があいつを、傷つけたんです」



紙コップに入ったコーヒーは、苦かった。

「……なんか俺、全然余裕なくて…全部裏目にでて、」
「………」 

こんなふうに追い詰めるつもりじゃなかったのに。
お互いの事を考えたつもりだったのに。
どうして、上手くいかないんだろう。

「………。あの子は幸せものね」

コーヒーを飲みながら、おばさんは言った。

「そんなふうに、自分を大切に思ってくれる人がいるんだから」

向けられる、あたたかい笑顔。

「でもね、巽くん。あんまり一人で抱え込みすぎたら駄目よ?」
「………」
「あの子なら大丈夫よ。意外とタフなんだから」

私の息子だしね、と言っておばさんは笑う。

「それに、もう気づいてると思うわ。巽くんの気持ち」
「……え、」
「母親の勘、ってやつよ」





翌日。
学校の屋上でリクと話した。

「……俺は謝らないからな」
「……おう、」
「てかおまえ、なんか傷増えてね?」

何気なく見上げた空は、くすんだ色をしていた。

「……なぁ、」
「なんだよ」
「俺、自分が思ってるよりガキだったみてえ」
「……知ってるよ」

何年一緒にいると思ってんだよ、とリク。

「……なんか悪かったな、いろいろ」
「どういたしまして。今度なんか奢れよ」

そう言って、リクは笑った。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?

cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき) ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。 「そうだ、バイトをしよう!」 一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。 教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった! なんで元カレがここにいるんだよ! 俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。 「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」 「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」 なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ! もう一度期待したら、また傷つく? あの時、俺たちが別れた本当の理由は──? 「そろそろ我慢の限界かも」

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法

あと
BL
「よし!別れよう!」 元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子 昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。 攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。    ……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。 pixivでも投稿しています。 攻め:九條隼人 受け:田辺光希 友人:石川優希 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 また、内容もサイレント修正する時もあります。 定期的にタグ整理します。ご了承ください。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

泣くなといい聞かせて

mahiro
BL
付き合っている人と今日別れようと思っている。 それがきっとお前のためだと信じて。 ※完結いたしました。 閲覧、ブックマークを本当にありがとうございました。

クリスマスには✖✖✖のプレゼントを♡

濃子
BL
ぼくの初恋はいつまでたっても終わらないーー。 瀬戸実律(みのり)、大学1年生の冬……。ぼくにはずっと恋をしているひとがいる。そのひとは、生まれたときから家が隣りで、家族ぐるみの付き合いをしてきた4つ年上の成瀬景(けい)君。 景君や家族を失望させたくないから、ぼくの気持ちは隠しておくって決めている……。 でも、ある日、ぼくの気持ちが景君の弟の光(ひかる)にバレてしまって、黙っている代わりに、光がある条件をだしてきたんだーー。 ※※✖✖✖には何が入るのかーー?季節に合うようなしっとりしたお話が書きたかったのですが、どうでしょうか?感想をいただけたら、超うれしいです。 ※挿絵にAI画像を使用していますが、あくまでイメージです。

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

処理中です...