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手をつないで
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しおりを挟む従兄弟が入院した。
なんでもストレスからくる神経性の胃潰瘍だそうだ。
……最近の若い子は大変だな
特にあいつは、そういう病気とはまるで無縁そうなのに。
……あーあー、若いねぇ…
病院に向かう途中で、殴りあいをしている若者二人を目撃した。
なんだかどちらも見たことがあるような顔だったけど、面倒だし放っておくことにした。
青春だなぁ、と思う。
悩んだり、間違ったり、ぶつかったり。
不器用で、愚かしくて、だけど時折痛々しいほどに純粋で。
それはきっと、いつかの自分も通ってきた道だ。
もうあまり覚えてはないけれど。
「……あ、瑛兄」
「おう、大丈夫か?」
「うん、だいぶ」
ベットに座っていた従兄弟は笑った。
「………。そうか」
久しぶりに会った従兄弟は顔色が悪かった。
目が赤く、瞼が少し腫れている。
泣いていたのかもしれない。
従兄弟は幼い頃から泣き虫だった。
それに一人っ子だったからかとにかく甘えたがりで。
盆や正月に遊びに行くと、いつもちょこちょこと後をついてきた。
「……淳、」
「ん?」
「無理すんなよ?」
「……うん」
事情はよく知らないし、無理に訊きだすつもりもない。
だけど心配はしていた。
こいつは俺にとって、歳が離れた弟みたいなものだから。
「……瑛兄、」
「ん?」
「俺、どうすればいいのかなぁ」
まるで独り言のように従兄弟は呟く。
「なんかさぁ、お互い、思ってることとか全然伝わらなくて…」
どうやら溜め込んでいたらしい言葉が、とめどなく溢れてきた。
「理由とか、ちゃんと知りたいのに怖くて訊けなくて、でもこのままじゃ」
「淳、落ち着け」
小さく震える背中をさすってやる。
「このままじゃ俺、巽に置いてかれる…」
「………」
数十分後。
ようやく落ち着いたらしい従兄弟から話を聞いた。
「……巽くんはさ、将来のことを考えたんじゃないか?」
「……将来?」
「おまえとの将来だよ」
ゆっくりと背中をさすりながら言う。
「これから先、きっといろんな事がある」
それは幸せなことばかりではないだろう。
「同性ってだけで、いわれのない非難や差別を受ける事もあるかもしれない」
大切なものを失ったり、信じていたものに裏切られたりする事もあるかもしれない。
「だけどそれは、二人で乗り越えていくしかないんだ」
その為には、お互いに強くならないと。
「淳は巽くんと、一緒にいたいんだろ?」
従兄弟は小さく頷く。
「だったら、頑張れ」
病室から出ると、廊下に彼が立っていた。
「結構、ハデにやられたなぁ」
「……俺、サイテーっす」
話を聞いていたらしい彼は、俯いたままぽつりと言う。
「先輩の気持ちとか、なんも考えてなかった…」
「………」
俺は小さく息を吐くと、彼の頭にぽんと手をのせた。
「なぁ、腹減ってないか?なんか奢ってやるよ」
まぁでもその前に傷の手当てしないとな、と笑う。
「ほら、早く行くぞ」
「……てかあんた、何者っすか…」
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