手をつないで(BL)

kotori

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手をつないで

おまけ(2)

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紅みのさす頬、乱れた呼吸、まだ焦点が合わない眼差しと快感に震える身体。
達した直後の淳の姿は、普段からは考えられないほどエロいと思う。

ナカを暴いていた指を引き抜くと、薄い色をしたそこは濡れそぼりひくひくと物欲しそうに収縮していた。

……やば、

思わず息を飲んで、ローションを垂らすと既に限界まで張り詰めた己のモノをそこにあてがう。

「……淳、」
「……っ!!」

淳はぎゅっとシーツを握りしめ、唇を噛んだ。
久しぶりだから辛いのかもしれない。
そう思って出来るだけゆっくり挿入しているものの、こっちにもあまり余裕はない。

「……っ、巽、っ」

泣きそうな声に動きを止めた。

「……きついか?」
「……い、から、はやく、」

伸ばされた細い腕に、ぎゅっと抱きしめられる。

「はやく、きて…っ」
「……っ、」

理性がとぶってこういう事なんだろう、きっと。
いっきに腰を進めると、淳は甘い悲鳴をあげた。

「あああっ!ぁっ、」
「はぁ…っ、」

淳の熱くぬかるんだソコは、まるで待ち望んでいたかのように俺のモノに絡みつく。

「たつみ、たつみ」

うわごとのように繰り返し呼ばれる名前。
余裕なんかもう欠片も残ってない俺は、夢中になって腰を動かす。

「あっ、ああん、んッ」
「淳っ…、」

抱きしめ合って何度も何度もキスをして。
離れていた時間を埋めるかのように、ただひたすら貪りあい求め合った。





明け方目を覚ますと、傍に普段はないぬくもりを感じた。
腕のなかの淳はぐったりした様子で眠っている。

さすがに三回ぶっ続けはちょっとやりすぎたかもしれない。
だけどあんまり時間がなかったし、それもこれもこの馬鹿が迷子になった挙句変な意地を張ったせいだし。

「………」

煙草を吸いながら、淳のやわらかい髪を撫でる。

……少し伸びたな、

前にこの身体の至るところに残したはずのキスマークも、跡形もなく消えていた。

……まぁ、当たり前だけど

その時、ん…と小さな声が聞こえた。

「……たつ、み?」

目を覚ましたらしい淳が、胸元にぐりぐりと額を擦りつけてくる。

「………」
「………」
「……会いたかった」
「……うん、」

電話も、LINEもしてる。
遠恋といっても会おうと思えばいつだって会える距離だ。
だけどそれでも、やっぱり。

「他には?」
「ほか?」

痺れを切らしたように淳が言う。

「だから、好きとか愛してるとかそうゆう」
「……なし」
「えぇー…?」
「てかそうゆうのは小出しにするからいいんだろ」
「……ケチ」
「なに、そんなにしょっちゅう言われたいわけ?」
「……うわ俺噴死するかも!」

まっぱでアホな事を言っている恋人の頬を撫でる。

「……淳、」
「ん?」
「眠い」
「おい」

またしても文句を言い始めるその唇を塞ぐと、ようやく大人しくなった。

「……正月、帰ってくんの?」
「たぶんな」
「そっか、」

淳は嬉しそうに笑う。



順調なんだと思う。
たぶん、今のところは。

だけど知っている。
駅で別れた後の寂しそうな顔も、電話を切る時の急に明るくなる声も。

本当はお互い、いつだってぎりぎりで。
俺だって全部投げだして傍にいたいと思うこともある。
でも、それは出来ないから。

……その場しのぎみたいな、甘い言葉より

今のこのぬくもりを少しでも残せたらいい、なんて。

そのうちカーテンの隙間から朝日が射し込むであろう薄暗い部屋のなかで、俺はそんなことを思った。



end.
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