迷子猫 番外編

kotori

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あなたは変わった人だと言うと、彼女は笑った。

「どうしてですか?」
「どうしてでしょうね」

近くのレストランで食事をした後、散歩がてらに代々木公園を歩いていた。
足元で、かさかさと枯れ葉が音をたてる。

「ストイックなんですね」
「……僕が?」
「敢えて自分を見せないようにしているというか、」
「……人は多かれ少なかれ、そういうものでしょう」

するとそうですね、と答えた彼女は空を見上げる。
冬の薄い日差しが、彼女の黒く美しい髪と白い肌を照らしていた。

「でも私は、見えないものに興味なんてないんです」
「……つまり、自分に見える部分だけでいいということですか」
「ええ」

彼女はにっこりと笑う。

「その人が知られない方がいいと思っている事を、わざわざ知ろうとする必要なんてないでしょう?」
「………」
「そもそも知ることって、そんなに重要ですか?」





――私にはあなたがわからない

別れた恋人に、よく言われていた。

――だって私は、あなたのことを何も知らない

どんなに傍にいても寂しくなる。
だったら一緒にいる意味なんてないじゃない。





その晩、部屋に帰ると留守電のランプが点滅していた。
それを無視してキッチンに向かい、グラスにウィスキーを注ぐ。

「………」

グラスを手にリビングに戻り、数日前からテーブルの上に放置されている白い封筒に目をやった。
それは学生時代の恋人の、結婚式の招待状。



不器用で、優しい奴だった。
生真面目で他人に左右されない強さもあった。
そんなあいつに泣きながら謝られたら、責められるわけがない。

それに、わかっていた。
いつかこうなるということも、その関係に未来も希望もないことも、それでも離れられなかったのはお互いの弱さであるということも。
だから俺はただ頷いて、その手を離した。

それはあいつの為に俺ができる、唯一のことだったから。


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