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桜
15.
しおりを挟むその日の午後は入学式だった。
クラスを持たない自分にはあまり関係のない行事だが、出席しないわけにはいかない。
欠伸を噛み殺しながら校長の長い話を聞き終え、体育館を出た。
「先生、」
職員室に戻る途中、人気のない渡り廊下で声を掛けられた。
振り返ると、そこには色の白い小柄な生徒が立っている。
「驚いた?」
「……ちょっとな」
ははっ、と少年は笑った。
「俺はすげえ驚いたけど。あんた、学校の先生だったんだね」
「……その口の利き方は、どうにかしろ」
そう言うと少年は特に悪びれた様子もなく、素直にごめんなさいと謝った。
「すみません、だろ」
「スミマセンでした。……あのさ、これ」
渡されたのは、白い封筒。
中には金が入っていた。
「……なんだ、これは」
「この間、貰いすぎたから。また会えたら返そうと思ってて」
「……律儀だな」
「まぁ結構酷くヤラれたし、貰っといてもいいかなって思ったんだけど。でもそれじゃ、ルール違反だから」
「………」
「でさ、もしよかったら…今度は直接連絡して欲しいんだけど」
「……どういう意味だ?」
「面倒じゃなくていいじゃん。どうせこれから、毎日顔合わせるんだし?」
携帯の番号はその封筒の中に入ってるから、と少年は言う。
「……それはルール違反にはならないのか?」
「さぁ?」
じゃあまたね、と言って少年は去っていく。
「………」
小さな溜め息を吐いて中庭の方へと目をやると、遅咲きの桜の花弁がはらはらと舞っていた。
音もなく、ただ静かに。
「海斗ーっ、これからヒマ?」
「合コンならパス」
「えぇー、ノリ悪ぅー」
「おまえな、入学早々…」
溜め息をつきながら桜並木のなかを歩いていると、すれ違ったのは。
「………」
「海斗?」
「……あぁ、ワリぃ」
まだ、互いのことを知らない二人。
それから約一年後、男子トイレで運命的な?出会いを果たすとも露知らず…二人はそれぞれの想いを抱えつつ、散りゆく桜の木の下を歩いていた。
end.
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