迷子猫 番外編

kotori

文字の大きさ
16 / 22

15.

しおりを挟む
 
その日の午後は入学式だった。
クラスを持たない自分にはあまり関係のない行事だが、出席しないわけにはいかない。
欠伸を噛み殺しながら校長の長い話を聞き終え、体育館を出た。



「先生、」

職員室に戻る途中、人気のない渡り廊下で声を掛けられた。
振り返ると、そこには色の白い小柄な生徒が立っている。

「驚いた?」
「……ちょっとな」

ははっ、と少年は笑った。

「俺はすげえ驚いたけど。あんた、学校の先生だったんだね」
「……その口の利き方は、どうにかしろ」

そう言うと少年は特に悪びれた様子もなく、素直にごめんなさいと謝った。

「すみません、だろ」
「スミマセンでした。……あのさ、これ」

渡されたのは、白い封筒。
中には金が入っていた。

「……なんだ、これは」
「この間、貰いすぎたから。また会えたら返そうと思ってて」
「……律儀だな」
「まぁ結構酷くヤラれたし、貰っといてもいいかなって思ったんだけど。でもそれじゃ、ルール違反だから」
「………」
「でさ、もしよかったら…今度は直接連絡して欲しいんだけど」
「……どういう意味だ?」
「面倒じゃなくていいじゃん。どうせこれから、毎日顔合わせるんだし?」

携帯の番号はその封筒の中に入ってるから、と少年は言う。

「……それはルール違反にはならないのか?」
「さぁ?」

じゃあまたね、と言って少年は去っていく。

「………」

小さな溜め息を吐いて中庭の方へと目をやると、遅咲きの桜の花弁がはらはらと舞っていた。

音もなく、ただ静かに。





「海斗ーっ、これからヒマ?」
「合コンならパス」
「えぇー、ノリ悪ぅー」
「おまえな、入学早々…」

溜め息をつきながら桜並木のなかを歩いていると、すれ違ったのは。

「………」
「海斗?」
「……あぁ、ワリぃ」

まだ、互いのことを知らない二人。

それから約一年後、男子トイレで運命的な?出会いを果たすとも露知らず…二人はそれぞれの想いを抱えつつ、散りゆく桜の木の下を歩いていた。



end.
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)

優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。 本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

ふたなり治験棟 企画12月31公開

ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。 男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

処理中です...