九尾の狐、監禁しました

八神響

文字の大きさ
58 / 117
二章 混ざり怪編

二十六話

しおりを挟む
合成獣キメラ?」

「ああ、俗っぽい言い方するとな」

 鵺との戦いが終わった後、大黒と鬼川の二人はまず磨と純を迎えに行くことにした。

 そして大黒は最寄りの駅までの道中で磨と純に今回のことの説明をしようと思っていたのだが、磨の方は待ちくたびれたのか結界の中で眠っており、数キロ先の廃ビルの屋上にいた純は霊力をほぼ使い果たしてその場で意識を失っていた。

 結果、大黒は磨を、鬼川は純を、とそれぞれ請け負って、そう近くもない駅まで二人でトボトボと歩いていた。

「合成獣ってあれっすよね? なんか、色んな動物を合体させたみたいな生き物的な?」
「一昔前の女子高生みたいな話し方するな……。まあ概ねその認識で合ってるよ。要するに今回の鵺は人工的に作られた生き物だったってことだ」

 人一人分の重量を抱えながら、二人は先程の戦いの振り返りをする。

「ああん!? 一昔前ってなんすか! あたしがもう若くないとでも言いたいんすか!?」
「悪かったよ! 他意はなかったんだって!」

 それまでは普通に会話をしていた二人だったが、大黒の不用意な発言により鬼川の顔が般若の如く険しくなってしまう。

 大黒としては本当に深い意味もなく発した言葉だったのだが、軽率すぎたと反省をして謝ることにした。

「まさかそこまで過敏に反応するとは思わなかったよ、鬼川だってまだまだ若いだろうに」
「そうなんすけどね、でも今の大黒家で一番年食ってるのあたしなんでつい」
「あー、環境の問題か……。まあそれは置いといて、話の続きだ」

 これ以上年齢の話を続けないほうが良いと判断した大黒は、話を鵺のことに戻す。

「あの鵺は複数の妖怪を無理やりつなぎ合わされて作られたものだった。笑い声から頭は狒々ひひ、竹を切るような音がしたし胴体は竹伐狸たけきりだぬき、雷を使ってたし多分手足は虎猫とらねこ、水を使う蛇の妖怪は結構いるけど恐らく尻尾は化蛇かだとかその辺り。正確には違う妖怪が混じってたかもしれないが、少なくとも四種類の妖怪が混じってたことは間違いない」

 大黒は鵺の見た目と能力から鵺の素材・・となった妖怪にあたりをつける。 そのほとんどは鬼川にとっては聞き覚えの無い妖怪達だったが、複数の妖怪と戦っていたということは理解し、嬉しそうに口笛を吹く。

「ひゅぅっ、んじゃあたしらは合計八体の妖怪を相手にしてたってことっすね。いやー、妖怪との戦闘は久しぶりだったってのに八体にあんだけ戦えるとはあたしってやっぱ天才なんすかねー!」
「調子の乗り方がすごい、よくそんなんで今まで生き残ってこれたな」

 大黒ははしゃぐ鬼川を見て、呆れるというよりも尊敬の念に近いものを感じていた。

 陰気で後ろ向きな者が多い陰陽師の世界の中にいて、ここまで前向きでいれる人間はそういない。

 自分もいっそこれくらい振り切れたら、と思いながらも口には出さず、大黒は鬼川がこれから足元をすくわれないように釘を差すことにした。

「鬼川、言っとくけど本来のあいつらはあんなもんじゃないぞ。どの部位の妖怪にしたって本物なら街一つ壊滅させれるくらいの火力があるんだ」
「え……! い、いやいや合成獣なんでしょう? 合体したらむしろ元より強くなるもんじゃないんすか?」
「そんなわけ無いだろ、そもそも合成獣ってのが無理ありすぎるんだよ。一口に妖怪って言ってもその生態は千差万別、人間で言うなら哺乳類ってくらい大雑把な分類だ。人間同士の臓器移植すら拒絶反応が出たりするのに、普通そんな上手くいくものじゃない」 

 大黒の解説に鬼川な納得のいかない表情を見せる。

「えー、でもさっきの奴はちゃんと動いてたじゃないっすか。不可能と言えるくらい難しいものだとしても成功さえしたら凄い効果があるもんでしょ、そういう技術って」
「効果はともかく凄いのは凄いさ。元々色んな動物のパーツがある鵺って枠組みだからこそ成功した代物なんだろうが、並の奴じゃただのハリボテが出来るだけだろうし。それにちゃんと再現性があるってのも凄いな、偶然の成功じゃないってことだ」
「だったら……」
「でも、それと強さはまた別の話だ。縫合跡すら見せない完璧な合成獣、だけど結局は別々の生き物から取ってきた体だ。本物と同じような強さを発揮できるわけもない。それに他の理由もあるしな」
「?」

 大黒の言う『他の理由』の想像がつかず、鬼川は首を傾げる。

「あの鵺の元になった妖怪、それすら本物じゃあなかった。要するに俺達は二体相手とはいえ、部品にされた本物一体よりも五段は強さが落ちた敵にあれだけ手間取ってたってことだ」
「ちょ、ちょっと待って下さい。元の妖怪が本物じゃなかったってどういう意味っすか?」
「そのまんまの意味だよ。俺も戦いの途中で気付いたんだが、今回の一件は十中八九俺の知り合いの仕業だ。そいつの式神には野槌って妖怪がいて、その野槌は妖怪を産み出すって能力を持ってるんだ。野槌が妖怪を産む条件は妖怪を食うこと、一度元の妖怪を食いさえすれば何度でもそれを産み出せる」
「チートじゃないっすかそんなん!」
「本当にな、俺もずるいと思うよ。でも野槌の能力にも欠点はある、野槌は何度でも妖怪を産み出すことは出来るが、産み出した妖怪は本物よりも力が落ちる。あくまでも本物みたいな模造品ってわけだ」
「へー……、そんで今回のあいつには模造品が使われてたってわけっすか。なんか自信なくすなぁ。…………ん?」

 そこで鬼川は何かに気付いたのか、顎に手を当てて眉間に皺を寄せる。

 そんな鬼川の様子に不穏なものを感じたのか、大黒は目が合わないように鬼川から顔を逸らした。

「今回の敵がお兄さんの知り合いだったんなら、あの妖怪達はお兄さんを狙ってきてたってことっすか?」
「……その知り合いには悪癖があってな。自分がしてる実験が成功したらその実験結果を見せびらかしに来るんだ。獲物を仕留めた猫みたいにな。危険な成果物ばっかりだし、こっちとしてはありがた迷惑どころかただの迷惑だから止めろって言ってたんだけど全く聞く耳をもたなくて……」
「はい、それで?」
「…………そいつとはかれこれ八年会ってないんだが、まさかまだそんな子供っぽい癖が直ってないとは思わなかった」
「要するに?」
「………………あの鵺もどきは俺を狙ってきたもので相違ありません」
「ってことっすよねぇ!」

 一連の騒動の原因が大黒にあったことが発覚し、鬼川は声を荒げて大黒を糾弾し始める。

「やっぱりあたしは完全なとばっちりじゃないっすか! おかしいと思ったんすよ! 子供の磨にしろ、品行方正に生きてるあたしにしろあんなんに狙われる筋合いは無いっすもん! そうなりゃお兄さんしかいないってのに、何か全員狙われる心当たりはあるみたいなこと言っちゃって!」
「ああ、悪かったと思ってるよ。磨にはもちろん、こんなところにまで駆出してしまった純にもな。二人には後で美味いもんでも奢るとするか……」
「いや、あたしにはぁ!?」

 しかしここぞとばかりに責め立てる鬼川の言葉が大黒に響いた様子は一切なく、鬼川は肩透かしを食らってしまう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

処理中です...