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二章 混ざり怪編
三十四話
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「………………」
「………………」
まだ太陽が頂点にも達していない時間、家主が不在のその家では無言の空間が形成されていた。
そこにいる存在は二人。
一人は最近同居者に正体を明かすことになり、尻尾を自由に伸ばすことが出来るようになった妖狐ハク。
もう一人は最近この家に住み着き、家主から渡された宿題を早々に終わらせ部屋の隅で体育座りをしている少女磨。
大黒が学校に行っている間、当然家は二人だけになるのだが、こんなにも長時間二人の状況になったことがないのでお互い距離感を測りかねていた。
そもそも距離感以前に、磨は口数が極端に少ないため自分から話しかけることはほとんど無く、ハクは口数が少ないわけではないが子供と接するのがあまり得意ではないためどう話しかければいいか分からない様子であった。
子供は好きだが子供に好かれず、子供と遊ぶこともままならない。それがハクの持つコンプレックスの一つだった。
それに加え磨には自分が妖怪であることを明かしている(九尾の狐とは言わずただの狐の妖怪と説明している)。
明かした時の反応こそ薄かったものの、内心どう思っているかは不明で、話しかけて怖がらせてしまったらどうしようという悩みも抱えていた。
(あの人は今日大学がある上にバイトもあると言っていましたね……。それならば帰ってくるのはおよそ十一時間後……。さすがにそれまで会話がないのはよくありません。よくないと言うかダメですね、ここがあの子にとって居心地の良い空間にするためにも私が頑張らないといけません。幸いにも遊び道具は揃っていますし、色々試してみましょうか)
たとえ苦手でも磨のことを考えたら話しかけないという選択肢はなく、その糸口としてハクは部屋にある様々なゲームに目を向けた。
部屋には古今東西のボードゲームや、新旧問わないテレビゲーム、またカルタや百人一首等のカードゲームも取り揃えられていた。
それらはハクの服と同様に、大黒がハクのことを考えて用意していたものである。家から出す気は無いが、家の中で退屈しないように、ハクがどんな趣味でも対応出来るようにと思って、多種多様なゲームを揃えていた。もちろん、二人でも出来るようにゲームのコントローラーも全て二つずつ揃えられている。
あまりの用意の良さに監禁当時は引いていたハクだったが、今は大黒にほんの少し感謝をしながらゲームを手に取った。
「磨、今日の分の勉強も終わったのなら遊びに付き合ってもらえませんか? 私も一通り家事を終えて暇なんです」
膝を抱えて俯いていた磨はハクに話しかけられて、ゆっくりと顔を上げた。
「遊び?」
「ええ、今まであまり嗜んだことはありませんでしたが、実は私テレビゲームというものに興味がありまして」
ハクはゲームのコントローラーを二つ持ち、そのうち片方を磨に差し出した。
「前も言ったように私はちょっと古い妖怪でして、現代の物には慣れていないんです。なので手解きをしてもらえると助かります」
「私も慣れてるとは言い難いわよ?」
「たまにあの人と遊んでるのを見かけたことがありますし、一度もやったことがない私よりは知識もあるでしょう。……それに色々理由を付けてしまいましたが私はただ磨と遊びたいだけなんです」
ハクは柔和な笑みを浮かべてそう言った。
「……分かったわ。ゲームのソフトは何でもいいの?」
「そうですね……では磨が一番好きなものでお願いします」
「好きな……」
ハクからコントローラーを受け取った磨は、テレビの前へと移動して一つのソフトを手に取った。
それは長年愛され続けているレースゲームで、多くのキャラや機体から自分の好みの組み合わせを選び、妨害アイテムや加速アイテムを使って一位を目指すゲームであった。
磨はそのソフトで口元を隠して、目線を斜め下に向ける。
「好き、かどうかは分からないけれど真とはよくこれで遊ぶから……」
「分かりました。ではそれにしましょう」
そうしてハクの了承を得ると、磨はゲームを始めるための準備に取り掛かり始めた。
ゲームについては本当に未経験なハクは勝手が分からず、ソファに座って磨の用意が終わるのを待つことにした。
(それにしても……、あの人が『真』と呼ばれるのは未だに違和感がありますね……。名字で呼ぶのは他人行儀が過ぎますし、兄に関連した呼称をさせるのはあの妹が許さなさそうですし当然の帰結ではあるんですけども。うーん……、私もそろそろ別の呼び方をしたほうが良いんでしょうか……? でも今更名前で呼ぶのはなんだか気恥ずかしいような……)
ハクが尻尾を左右にゆらゆらさせて考え事をしている内に、磨はゲームの準備をやり終えて、ハクの隣に座った。
それに伴ってハクも考え事を止め、目の前のことに集中することにした。
「なるほど、このゲームですか。確かによく遊んでいるのを見ますね」
ソフトのパッケージでは気付かなかったが、ゲームのスタート画面を見てハクはそれがどんなゲームか思い至った。
「ええ。私もハクと一緒でここに来るまでゲームをしたことなかったけど、これはすぐに操作を覚えられたし初心者にもやりやすいものなんだと思う」
「それはありがたいですね。私も物覚えは良い方ですし、初心者向けというならすぐにコツを掴んでみせましょう」
ハクは胸を張って自信満々に宣言する。
磨はそれに特に何か言うこともなく、ゲームを進めていく。
そしてハクも見様見真似でキャラ選択の画面に行き、お互いの準備が整ったところでゲームが開始された。
「………………」
まだ太陽が頂点にも達していない時間、家主が不在のその家では無言の空間が形成されていた。
そこにいる存在は二人。
一人は最近同居者に正体を明かすことになり、尻尾を自由に伸ばすことが出来るようになった妖狐ハク。
もう一人は最近この家に住み着き、家主から渡された宿題を早々に終わらせ部屋の隅で体育座りをしている少女磨。
大黒が学校に行っている間、当然家は二人だけになるのだが、こんなにも長時間二人の状況になったことがないのでお互い距離感を測りかねていた。
そもそも距離感以前に、磨は口数が極端に少ないため自分から話しかけることはほとんど無く、ハクは口数が少ないわけではないが子供と接するのがあまり得意ではないためどう話しかければいいか分からない様子であった。
子供は好きだが子供に好かれず、子供と遊ぶこともままならない。それがハクの持つコンプレックスの一つだった。
それに加え磨には自分が妖怪であることを明かしている(九尾の狐とは言わずただの狐の妖怪と説明している)。
明かした時の反応こそ薄かったものの、内心どう思っているかは不明で、話しかけて怖がらせてしまったらどうしようという悩みも抱えていた。
(あの人は今日大学がある上にバイトもあると言っていましたね……。それならば帰ってくるのはおよそ十一時間後……。さすがにそれまで会話がないのはよくありません。よくないと言うかダメですね、ここがあの子にとって居心地の良い空間にするためにも私が頑張らないといけません。幸いにも遊び道具は揃っていますし、色々試してみましょうか)
たとえ苦手でも磨のことを考えたら話しかけないという選択肢はなく、その糸口としてハクは部屋にある様々なゲームに目を向けた。
部屋には古今東西のボードゲームや、新旧問わないテレビゲーム、またカルタや百人一首等のカードゲームも取り揃えられていた。
それらはハクの服と同様に、大黒がハクのことを考えて用意していたものである。家から出す気は無いが、家の中で退屈しないように、ハクがどんな趣味でも対応出来るようにと思って、多種多様なゲームを揃えていた。もちろん、二人でも出来るようにゲームのコントローラーも全て二つずつ揃えられている。
あまりの用意の良さに監禁当時は引いていたハクだったが、今は大黒にほんの少し感謝をしながらゲームを手に取った。
「磨、今日の分の勉強も終わったのなら遊びに付き合ってもらえませんか? 私も一通り家事を終えて暇なんです」
膝を抱えて俯いていた磨はハクに話しかけられて、ゆっくりと顔を上げた。
「遊び?」
「ええ、今まであまり嗜んだことはありませんでしたが、実は私テレビゲームというものに興味がありまして」
ハクはゲームのコントローラーを二つ持ち、そのうち片方を磨に差し出した。
「前も言ったように私はちょっと古い妖怪でして、現代の物には慣れていないんです。なので手解きをしてもらえると助かります」
「私も慣れてるとは言い難いわよ?」
「たまにあの人と遊んでるのを見かけたことがありますし、一度もやったことがない私よりは知識もあるでしょう。……それに色々理由を付けてしまいましたが私はただ磨と遊びたいだけなんです」
ハクは柔和な笑みを浮かべてそう言った。
「……分かったわ。ゲームのソフトは何でもいいの?」
「そうですね……では磨が一番好きなものでお願いします」
「好きな……」
ハクからコントローラーを受け取った磨は、テレビの前へと移動して一つのソフトを手に取った。
それは長年愛され続けているレースゲームで、多くのキャラや機体から自分の好みの組み合わせを選び、妨害アイテムや加速アイテムを使って一位を目指すゲームであった。
磨はそのソフトで口元を隠して、目線を斜め下に向ける。
「好き、かどうかは分からないけれど真とはよくこれで遊ぶから……」
「分かりました。ではそれにしましょう」
そうしてハクの了承を得ると、磨はゲームを始めるための準備に取り掛かり始めた。
ゲームについては本当に未経験なハクは勝手が分からず、ソファに座って磨の用意が終わるのを待つことにした。
(それにしても……、あの人が『真』と呼ばれるのは未だに違和感がありますね……。名字で呼ぶのは他人行儀が過ぎますし、兄に関連した呼称をさせるのはあの妹が許さなさそうですし当然の帰結ではあるんですけども。うーん……、私もそろそろ別の呼び方をしたほうが良いんでしょうか……? でも今更名前で呼ぶのはなんだか気恥ずかしいような……)
ハクが尻尾を左右にゆらゆらさせて考え事をしている内に、磨はゲームの準備をやり終えて、ハクの隣に座った。
それに伴ってハクも考え事を止め、目の前のことに集中することにした。
「なるほど、このゲームですか。確かによく遊んでいるのを見ますね」
ソフトのパッケージでは気付かなかったが、ゲームのスタート画面を見てハクはそれがどんなゲームか思い至った。
「ええ。私もハクと一緒でここに来るまでゲームをしたことなかったけど、これはすぐに操作を覚えられたし初心者にもやりやすいものなんだと思う」
「それはありがたいですね。私も物覚えは良い方ですし、初心者向けというならすぐにコツを掴んでみせましょう」
ハクは胸を張って自信満々に宣言する。
磨はそれに特に何か言うこともなく、ゲームを進めていく。
そしてハクも見様見真似でキャラ選択の画面に行き、お互いの準備が整ったところでゲームが開始された。
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